21 / 109
20
しおりを挟む
「あぁ相変わらず良い匂いがするなルーシュ。抱き心地も以前より柔らかくて気持ち良い事この上ない!若葉色の髪と稲穂色の瞳も美しい。私に会いに来たと言う事はようやく私のモノになる決意が付いたと思って良いのだな。ドレスは国1のデザイナーに仕立てさせよう。いや、その前に指輪の用意か?お前が望むものなら何でも用意してやる。結婚式は国を挙げて盛大にしようではないか!!」
「ちょ、ちょっとポラリス様!ノンブレスちょーこえーっすから!!」
ルーシュとポラリスのやり取りを皆がポカンと口を開けて見ていた。
固まっていた時が動き出したのは、聖騎士の1人がルーシュの姿に気づきを得たからだ。
「ルーシュ?って、ルーシュ・サウザント・ドラゴニア!?」
「なっ、あの最年少で聖騎士団に入ったルーシュ!?」
「でもルーシュは仕事中に殉職したって」
「それにあの子どうみても女の子だぞ!」
「でも髪も瞳の色も同じだし、背丈も同じぐらいだぞ?」
「いや、でもすね毛ねーぞ?」
「ちいさいけどおっぱいもあるし…」
「「「「「………おっぱい」」」」」
皆の視線がルーシュの胸に集中した。
この場に居る者はおっぱいに飢えているのだ。
聖騎士なんて言われているが特訓と警備と執務で聖騎士に女と接する機会はない。
紅一点のポラリスは上司であるし、なにより美形だが胸はまな板だ。
存在を忘れられているが聖女もロリ体型である。
そんな中、ちっぱいとはいえ、ちゃんと服の下から主張するおっぱいの持ち主が現れたのだ。
見るなと言うものが無理だろう。
「貴様ら、私のルーシュを視姦するのは止めて貰おうか…」
「言い方ぁ―――っ!!」
その場を凍てつかしそうな冷たい声を、ルーシュ悲鳴が遮った。
危ない所であった。
ポラリスは”冬の化身”と呼ばれるほどの氷魔術の使い手だ。
その気になったら聖騎士全員が凍てついていたかもしれない…。
「そのノリ、その不憫なオーラ!」
「不憫なオーラは必要ないかんね!」
「皆に振り回される突っ込み役!」
「好きで突っ込んでいるんじゃねーから!!」
「「「「「ルーシュお前、女だったのかぁぁ――――――っ!!!!」」」」」
聖騎士団の大声が訓練所に木霊した。
:::
そうしてルーシュの正体は無事にバレて、現在どうしてこうなったのかを吐かされていた。
「男装して聖騎士団って…」
「男性ホルモン増幅の魔術…」
「確かにあの頃は男よりの中性的だったが…」
「今はボーイッシュな女の子にしか見えないよね…」
「つーかコイツ、俺らと風呂入ってたよな…」
「あの頃は紛れもない雄っぱいだったのに…」
「今は小さいが見事なおっぱいだ…」
「じゃぁ頑なに腰のタオル外さなかったのって…」
ブッ!!
数名が鼻血を拭いた。
何せ女性慣れしていないのだ。
一緒に風呂に入っていたのが女だと言うだけで鼻血案件である。
しかも相手はタオル1枚。
男に見えようが、そのタオルの下には女の子の大事な所がちゃんと隠されていたのだ。
「タオル、剥ぎ取れば良かった…」
「こえー話し止めなさいって!!」
聖騎士団はルーシュを中心に賑わう。
逃げ出したいルーシュの腰はがっしりとポラリスに抱きかかえられている。
四面楚歌と言う奴だ。
「ちょっと――――っ!!」
金切り声が響いた。
視線を下に落とせば聖女が怒りで顔を真っ赤にしていた。
「これはこれは聖女様、急に大声で怒鳴るなど淑女にあるまじき行いですよ」
ポラリスが冷ややかなアメジストの瞳で聖女を見つめる。
ルーシュを見つめる熱の籠った眼の対極だ。
「そっか、今日は聖女様に加護を授けて貰うんだったな」
「ルーシュの存在で忘れていたわ」
「つーか本当ルーシュ可愛くなったな」
「うんうん、ちゃんとおっぱいあるしな」
皆の視線がルーシュを上から下を眺めた後、聖女を上から下まで眺める。
真っ平だ。
身長も低い。
せめてポラリスくらいの美貌があれば真っ平でも女性として意識するのだろうが…。
刺激されて微かに父性が、と言うところだろう。
はぁ、誰かが溜息を吐いた。
「何よ!元聖騎士?男装?意味わからない!平民の癖に聖騎士だなんて!!」
「ルーシュは公爵位の将軍家の令嬢だ」
「へ?」
ポラリスの言葉に聖女が間の抜けた声を出した。
「聖女殿は偉く自分の位に自信があるようだが、所詮は伯爵家。ルーシュは公爵位の将軍家、比べるのもおこがましいほどの爵位の差だな」
「う、嘘よ!そんな訳!!」
「さらには最年少で聖騎士団の試験に受かり、3年間”歴代最強の剣聖”とまで言われていた天才だ」
「それでも、私は聖女なの!そんな女より私の方が偉いんだからぁっ!!」
「五月蠅い」
「ひっ!」
「私のルーシュをそれ以上侮辱するなら、それなりの処置は取らせて貰う。聖女だから何でも許されると思わないで貰おうか。確かに聖女の破邪結界は必要かもしれないが、だからと言ってお前の身が王家より尊い立場だとでも勘違いしてないか?聖女はあくまで国民で私は王女だ。そしてお前は王女の宝に暴言を吐いた。不敬罪に取られても仕方ないかとは思わないか?」
「あ、ちがっ、私そんな、つもり、じゃ……」
ノンブレスで攻め立てるポラリスに聖女は今にも泣きそうである。
それでも救いの言葉をかける者は居なかった。
同じ死線をくぐって来た元同僚を貶められて誰が好意を抱けようか?
「ポーラ様、聖女様の加護は後にしても良いでしょうか?体調が優れないようなので少しお休みを頂きたいです。構いませんか?」
「ぐっ、こんな時に愛称で呼ぶなんてズルいぞルーシュ。好きにしろ」
「有難うございます。そちらの使用人の方、聖女様を休憩できるところへ」
「其方が付いて行くのではないのかルーシュ?」
「私がいっては逆効果でしょうから…」
使用人に肩を抱かれよろよろと聖女は広場を後にした。
「ちょ、ちょっとポラリス様!ノンブレスちょーこえーっすから!!」
ルーシュとポラリスのやり取りを皆がポカンと口を開けて見ていた。
固まっていた時が動き出したのは、聖騎士の1人がルーシュの姿に気づきを得たからだ。
「ルーシュ?って、ルーシュ・サウザント・ドラゴニア!?」
「なっ、あの最年少で聖騎士団に入ったルーシュ!?」
「でもルーシュは仕事中に殉職したって」
「それにあの子どうみても女の子だぞ!」
「でも髪も瞳の色も同じだし、背丈も同じぐらいだぞ?」
「いや、でもすね毛ねーぞ?」
「ちいさいけどおっぱいもあるし…」
「「「「「………おっぱい」」」」」
皆の視線がルーシュの胸に集中した。
この場に居る者はおっぱいに飢えているのだ。
聖騎士なんて言われているが特訓と警備と執務で聖騎士に女と接する機会はない。
紅一点のポラリスは上司であるし、なにより美形だが胸はまな板だ。
存在を忘れられているが聖女もロリ体型である。
そんな中、ちっぱいとはいえ、ちゃんと服の下から主張するおっぱいの持ち主が現れたのだ。
見るなと言うものが無理だろう。
「貴様ら、私のルーシュを視姦するのは止めて貰おうか…」
「言い方ぁ―――っ!!」
その場を凍てつかしそうな冷たい声を、ルーシュ悲鳴が遮った。
危ない所であった。
ポラリスは”冬の化身”と呼ばれるほどの氷魔術の使い手だ。
その気になったら聖騎士全員が凍てついていたかもしれない…。
「そのノリ、その不憫なオーラ!」
「不憫なオーラは必要ないかんね!」
「皆に振り回される突っ込み役!」
「好きで突っ込んでいるんじゃねーから!!」
「「「「「ルーシュお前、女だったのかぁぁ――――――っ!!!!」」」」」
聖騎士団の大声が訓練所に木霊した。
:::
そうしてルーシュの正体は無事にバレて、現在どうしてこうなったのかを吐かされていた。
「男装して聖騎士団って…」
「男性ホルモン増幅の魔術…」
「確かにあの頃は男よりの中性的だったが…」
「今はボーイッシュな女の子にしか見えないよね…」
「つーかコイツ、俺らと風呂入ってたよな…」
「あの頃は紛れもない雄っぱいだったのに…」
「今は小さいが見事なおっぱいだ…」
「じゃぁ頑なに腰のタオル外さなかったのって…」
ブッ!!
数名が鼻血を拭いた。
何せ女性慣れしていないのだ。
一緒に風呂に入っていたのが女だと言うだけで鼻血案件である。
しかも相手はタオル1枚。
男に見えようが、そのタオルの下には女の子の大事な所がちゃんと隠されていたのだ。
「タオル、剥ぎ取れば良かった…」
「こえー話し止めなさいって!!」
聖騎士団はルーシュを中心に賑わう。
逃げ出したいルーシュの腰はがっしりとポラリスに抱きかかえられている。
四面楚歌と言う奴だ。
「ちょっと――――っ!!」
金切り声が響いた。
視線を下に落とせば聖女が怒りで顔を真っ赤にしていた。
「これはこれは聖女様、急に大声で怒鳴るなど淑女にあるまじき行いですよ」
ポラリスが冷ややかなアメジストの瞳で聖女を見つめる。
ルーシュを見つめる熱の籠った眼の対極だ。
「そっか、今日は聖女様に加護を授けて貰うんだったな」
「ルーシュの存在で忘れていたわ」
「つーか本当ルーシュ可愛くなったな」
「うんうん、ちゃんとおっぱいあるしな」
皆の視線がルーシュを上から下を眺めた後、聖女を上から下まで眺める。
真っ平だ。
身長も低い。
せめてポラリスくらいの美貌があれば真っ平でも女性として意識するのだろうが…。
刺激されて微かに父性が、と言うところだろう。
はぁ、誰かが溜息を吐いた。
「何よ!元聖騎士?男装?意味わからない!平民の癖に聖騎士だなんて!!」
「ルーシュは公爵位の将軍家の令嬢だ」
「へ?」
ポラリスの言葉に聖女が間の抜けた声を出した。
「聖女殿は偉く自分の位に自信があるようだが、所詮は伯爵家。ルーシュは公爵位の将軍家、比べるのもおこがましいほどの爵位の差だな」
「う、嘘よ!そんな訳!!」
「さらには最年少で聖騎士団の試験に受かり、3年間”歴代最強の剣聖”とまで言われていた天才だ」
「それでも、私は聖女なの!そんな女より私の方が偉いんだからぁっ!!」
「五月蠅い」
「ひっ!」
「私のルーシュをそれ以上侮辱するなら、それなりの処置は取らせて貰う。聖女だから何でも許されると思わないで貰おうか。確かに聖女の破邪結界は必要かもしれないが、だからと言ってお前の身が王家より尊い立場だとでも勘違いしてないか?聖女はあくまで国民で私は王女だ。そしてお前は王女の宝に暴言を吐いた。不敬罪に取られても仕方ないかとは思わないか?」
「あ、ちがっ、私そんな、つもり、じゃ……」
ノンブレスで攻め立てるポラリスに聖女は今にも泣きそうである。
それでも救いの言葉をかける者は居なかった。
同じ死線をくぐって来た元同僚を貶められて誰が好意を抱けようか?
「ポーラ様、聖女様の加護は後にしても良いでしょうか?体調が優れないようなので少しお休みを頂きたいです。構いませんか?」
「ぐっ、こんな時に愛称で呼ぶなんてズルいぞルーシュ。好きにしろ」
「有難うございます。そちらの使用人の方、聖女様を休憩できるところへ」
「其方が付いて行くのではないのかルーシュ?」
「私がいっては逆効果でしょうから…」
使用人に肩を抱かれよろよろと聖女は広場を後にした。
12
あなたにおすすめの小説
敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています
藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。
結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。
聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。
侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。
※全11話 2万字程度の話です。
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
ブックマーク・評価、宜しくお願いします。
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
【完結】転生したら悪役継母でした
入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆
恋愛
聖女を優先する夫に避けられていたアルージュ。
その夜、夫が初めて寝室にやってきて命じたのは「聖女の隠し子を匿え」という理不尽なものだった。
しかも隠し子は、夫と同じ髪の色。
絶望するアルージュはよろめいて鏡にぶつかり、前世に読んだウェブ小説の悪妻に転生していることを思い出す。
記憶を取り戻すと、七年間も苦しんだ夫への愛は綺麗さっぱり消えた。
夫に奪われていたもの、不正の事実を着々と精算していく。
◆愛されない悪妻が前世を思い出して転身したら、可愛い継子や最強の旦那様ができて、転生前の知識でスイーツやグルメ、家電を再現していく、異世界転生ファンタジー!◆
*旧題:転生したら悪妻でした
愛された側妃と、愛されなかった正妃
編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。
夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。
連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。
正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。
※カクヨムさんにも掲載中
※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります
※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。
娼館で元夫と再会しました
無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。
しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。
連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。
「シーク様…」
どうして貴方がここに?
元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる