6 / 6
選んだ道(最終話)
しおりを挟む
ジョージが二十歳となった年に、グレイキャット伯爵家当主の代替わりが行われた。
またそれに伴い、前当主が持つもう一つの爵位――グリーズ男爵を彼の息子が継いだことも発表された。
間もなく貴族名鑑が更新され、そこには次の名が記載されている。
カレン・グレイキャット伯爵。
ジョージ・グリーズ男爵。
グリーズ男爵となったジョージは本日、親族と親しい友人のみを招待した平民街の式場で、愛しい人との結婚式を挙げた。
ジョージが男爵となったことにより、平民の妻を迎えることへの障害を取り払うことができたのだ。
男爵となったジョージの周囲からは多くの人が去り僅かな友人だけが残ったが、彼はそれを嘆くことなく変わらずに付き合える友人の存在を喜んだ。
マリとの結婚を選んだことで多くのものを失いはしたが、伯爵家の次期当主であった頃よりも彼の生活は充実している。
「マリ…」
「なぁに?」
「結婚してくれてありがとう――愛してるよ」
「ふふ。私もよ!」
(姉さんには一生頭が上がらないままだろうな…)
だが嫌な気持ちにならない。
あの日アドバイスをくれた姉のおかげで、ジョージは一番大切なものを諦めずに済んだ。
マリもまた、ジョージを愛する気持ちは確かだが伯爵夫人としての生活は受け入れ難いため、生活環境の変化が少ないことに安堵していた。
「姉さん、本当にありがとう」
「ありがとうございます」
新郎新婦は揃ってカレンに感謝の言葉を告げ、その顔はどちらも幸せそうであった。
自然とカレンも微笑む。
傍で見守るジョージの両親と、マリの母も笑顔だった。
来場した皆が、彼らの結婚を心から祝福していた。
「よかったね、カレン」
「――ええ」
カレンの肩を抱くのは、2年前に結婚した彼女の夫であるロックだ。
彼もまた、優しい眼差しで義弟夫婦を見つめている。
ホワイトフォックス子爵家の三男であったロックは、カレンより6歳年上である。
ジョージがマリと結婚するため男爵になるにあたって、カレンがグレイキャット伯爵を継ぐことは必須条件であった。
親戚から後継者を選ぶには、教育する時間が足りないので却下だ。
そのためカレン――もちろん両親もだが急いで彼女の伴侶を探した。
あくまでも伯爵を継ぐのはカレンだ。
彼女に変わって伯爵家を乗っ取るような野心のある男は避けなければならない。
伯爵となっても研究する時間をとるつもりのカレンは、欲を言えば領地経営や書類仕事が滞りなく出来る相手を求めていた。
やがて母の社交の成果により、長兄が治める領地で雑務をこなしていたロック・ホワイトフォックスと縁を結ぶことが出来た。
今まで縁が無く結婚を諦めていたロックは突然の婚約話に驚いたが、すぐさま了承した。
密かに憧れていた才女との婚約話なのだ。断る理由など無い。
ロックは己の幸運を神に感謝した。
カレンが爵位を継ぐ経緯を聞くと、より一層好きになった。
ロックはカレンに誠実であることを常に心がけている。
ゆっくりと信頼関係を築き上げた2人は良き夫婦となり、現在は協力し合って領地経営を行っている。
当主としての仕事のため、カレンは独身時代と比べると研究する時間がまったく取れなくなっているが、後悔はしていない。
弟にアドバイスをするという選択をしたのは自分だから。
またそれに伴い、前当主が持つもう一つの爵位――グリーズ男爵を彼の息子が継いだことも発表された。
間もなく貴族名鑑が更新され、そこには次の名が記載されている。
カレン・グレイキャット伯爵。
ジョージ・グリーズ男爵。
グリーズ男爵となったジョージは本日、親族と親しい友人のみを招待した平民街の式場で、愛しい人との結婚式を挙げた。
ジョージが男爵となったことにより、平民の妻を迎えることへの障害を取り払うことができたのだ。
男爵となったジョージの周囲からは多くの人が去り僅かな友人だけが残ったが、彼はそれを嘆くことなく変わらずに付き合える友人の存在を喜んだ。
マリとの結婚を選んだことで多くのものを失いはしたが、伯爵家の次期当主であった頃よりも彼の生活は充実している。
「マリ…」
「なぁに?」
「結婚してくれてありがとう――愛してるよ」
「ふふ。私もよ!」
(姉さんには一生頭が上がらないままだろうな…)
だが嫌な気持ちにならない。
あの日アドバイスをくれた姉のおかげで、ジョージは一番大切なものを諦めずに済んだ。
マリもまた、ジョージを愛する気持ちは確かだが伯爵夫人としての生活は受け入れ難いため、生活環境の変化が少ないことに安堵していた。
「姉さん、本当にありがとう」
「ありがとうございます」
新郎新婦は揃ってカレンに感謝の言葉を告げ、その顔はどちらも幸せそうであった。
自然とカレンも微笑む。
傍で見守るジョージの両親と、マリの母も笑顔だった。
来場した皆が、彼らの結婚を心から祝福していた。
「よかったね、カレン」
「――ええ」
カレンの肩を抱くのは、2年前に結婚した彼女の夫であるロックだ。
彼もまた、優しい眼差しで義弟夫婦を見つめている。
ホワイトフォックス子爵家の三男であったロックは、カレンより6歳年上である。
ジョージがマリと結婚するため男爵になるにあたって、カレンがグレイキャット伯爵を継ぐことは必須条件であった。
親戚から後継者を選ぶには、教育する時間が足りないので却下だ。
そのためカレン――もちろん両親もだが急いで彼女の伴侶を探した。
あくまでも伯爵を継ぐのはカレンだ。
彼女に変わって伯爵家を乗っ取るような野心のある男は避けなければならない。
伯爵となっても研究する時間をとるつもりのカレンは、欲を言えば領地経営や書類仕事が滞りなく出来る相手を求めていた。
やがて母の社交の成果により、長兄が治める領地で雑務をこなしていたロック・ホワイトフォックスと縁を結ぶことが出来た。
今まで縁が無く結婚を諦めていたロックは突然の婚約話に驚いたが、すぐさま了承した。
密かに憧れていた才女との婚約話なのだ。断る理由など無い。
ロックは己の幸運を神に感謝した。
カレンが爵位を継ぐ経緯を聞くと、より一層好きになった。
ロックはカレンに誠実であることを常に心がけている。
ゆっくりと信頼関係を築き上げた2人は良き夫婦となり、現在は協力し合って領地経営を行っている。
当主としての仕事のため、カレンは独身時代と比べると研究する時間がまったく取れなくなっているが、後悔はしていない。
弟にアドバイスをするという選択をしたのは自分だから。
536
この作品は感想を受け付けておりません。
あなたにおすすめの小説
私の旦那様はつまらない男
おきょう
恋愛
私の旦那様であるロバート伯爵は、無口で無愛想な仕事バカ。
家庭を返り見ず仕事に精を出すのみのつまらない男である。
それでも私は伯爵家の妻として今日も面倒な社交の場に出なければならないのだ。
伯爵家の名を落とさないために。あぁ面倒くさい。
※他サイトで投稿したものの改稿版になります。
ここだけの話だけど・・・と愚痴ったら、婚約者候補から外れた件
ひとみん
恋愛
国境防衛の最前線でもあるオブライト辺境伯家の令嬢ルミエール。
何故か王太子の妃候補に選ばれてしまう。「選ばれるはずないから、王都観光でもしておいで」という母の言葉に従って王宮へ。
田舎育ちの彼女には、やっぱり普通の貴族令嬢とはあわなかった。香水臭い部屋。マウントの取り合いに忙しい令嬢達。ちやほやされてご満悦の王太子。
庭園に逃げこみ、仕事をしていた庭師のおじさんをつかまえ辺境伯領仕込みの口の悪さで愚痴り始めるルミエール。
「ここだけの話だからね!」と。
不敬をものともしない、言いたい放題のルミエールに顔色を失くす庭師。
その後、不敬罪に問われる事無く、何故か妃選定がおこなわれる前にルミエールは除外。
その真相は?
ルミエールは口が悪いです。言いたい放題。
頭空っぽ推奨!ご都合主義万歳です!
彼氏の婚約者が現れて酷いことをされたのでもう貴方とはお別れします
柊 うたさ
恋愛
大好きな彼氏の18歳の誕生日、彼氏に婚約者がいることを知った。
*バッドエンド
*前・後で視点かわります
*小説家になろうにも掲載しています
婚約者の初恋を応援するために婚約解消を受け入れました
よーこ
恋愛
侯爵令嬢のアレクシアは婚約者の王太子から婚約の解消を頼まれてしまう。
理由は初恋の相手である男爵令嬢と添い遂げたいから。
それを聞いたアレクシアは、王太子の恋を応援することに。
さて、王太子の初恋は実るのかどうなのか。
「最初から期待してないからいいんです」家族から見放された少女、後に家族から助けを求められるも戦勝国の王弟殿下へ嫁入りしているので拒否る。
下菊みこと
恋愛
悪役令嬢に仕立て上げられた少女が幸せなるお話。
主人公は聖女に嵌められた。結果、家族からも見捨てられた。独りぼっちになった彼女は、敵国の王弟に拾われて妻となった。
小説家になろう様でも投稿しています。
僕の我儘で傲慢な婚約者
雨野千潤
恋愛
僕の婚約者は我儘で傲慢だ。
一日に一度は「わたくしに五分…いいえ三分でいいから時間を頂戴」と僕の執務室に乗り込んでくる。
大事な話かと思えばどうでも良さそうなくだらない話。
※設定はゆるめです。細かいことは気にしないでください。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる