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3.街
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盗賊を討ち取ったあと、俺は自分のステータスを細かく確認できることに気づいた。
アシル・カバネル:レベル25
【冒険者】……自動地図
【商人】……鑑定
【不死者】……痛覚遮断
【殺人鬼】……急所攻撃
ステータスを見ると、見知らぬ名前が表示されていた。
アシルっていうのが、この身体の本来の持ち主らしい。
「……俺、別人の身体を乗っ取ったのか?」
今更だが、着ている服も全然身に覚えのないものだったしな。
返すことなんかできないが、申し訳ない気持ちになる。
(名前も服もこの身体も、大事に使わせてもらうからな)
何の慰めにもならないだろうが、感謝はしておこう。
俺はステータス画面を見ながら、目についたスキルをタップした。効果が表示されて、ご丁寧に使い方が分かるようになっていた。こういう仕様はゲームみたいだと思う。
さて、あんまり長居して別の盗賊に襲われたら最悪だからな。
食糧と金目の物を頂戴したら、さっさと移動を開始しよう。
財布らしき革袋と武器、それから装飾品に至るまで、一つ一つ丁寧に確認する。鑑定のスキルがあるお陰で、手に取った物の性能と市場での価値が分かった。
ロングソード(+10)、レザーアーマー(+9)、革の服(+3)、それと盗賊から集めた金貨、銀貨を頂戴する。貨幣は全部かき集めると24万ゴールドになった。奪われた服を取り返して着替えつつ、装備も新調する。
装備にはプラスの表示がある物とない物があって、明らかに前者の方が性能が良かった。面倒だったが、殺した連中の装備を全部確認した甲斐があった。それなりに強くなれたんじゃないだろうか。
「これでよしと」
盗賊が持っていた水と食料も当然奪う。革袋に入った水を飲むと、生き返った気がした。荷物は増えるが、水は多めに持って移動をしよう。馬は迷ったが置いていくことにする。悪いが俺には乗りこなせない。
「行くか」
歩みを再開したが、不思議と先程までと比べて体力の消耗を感じない。これは、レベルが上がった影響なんだろうな。
レベルが上がってステータスが上昇するというのは、ゲームではよくあることだ。
ゲームじみたこの世界が同じ法則でもさほど驚きはない。
盗賊に襲われるという大事件はあったが、ステータスが強化されたおかげで、日が暮れるまでに街まで辿り着けそうだ。
俺の予想は的中して、なんと日が照っている内に街まで辿り着くことができた。
街まで辿り着くと、人間が豆粒に思えるほど大きな門があった。
堅牢な守りを思わせる門は解放されており、騎士らしい格好の男が2人いる。
若い騎士とベテランらしい風格の騎士の組み合わせだ。
近づいていくと、若い騎士から「見ない顔だな」と声をかけられた。
「お前、名前は?」
「アシル・カバネルといいます」
若い騎士が鼻で笑った。ベテランの騎士の方も眉をひそめているが、若い騎士ほどあからさまな反応は見せない。それでも、何かしら感じているものはありそうだ。それくらい、分かりやすい反応ではあった。
「驚いた。お前、従者もつけずにこの街まで来たのか? つーか、入学試験に落ちた癖になんでローライまで来てんだよ。観光でもする気か?」
俺ってこの世界じゃ有名人なのか?
名前を言っただけでこの反応、尋常じゃないぞ。
反応から察するに、あまり良い評判じゃないことは明らかだ。
「ユーリ、失礼な態度を取るな。侯爵家の方が護衛をつけずに平原を渡ってくるなど、何かあったに違いない。もしかして、道中で盗賊に襲われたのですか?」
「はい。そのとおりです」
アシルの記憶がなくなっていることは伏せる。
誰が味方で誰が敵かも分からない中で、迂闊に話し過ぎるのは危険だろう。
特に、目の前のあからさまな敵愾心を持ってる若い騎士には何も知られない方がいいはずだ。年上の騎士の方はマトモそうだが。
「おいおい、盗賊に襲われただって? 魔法も使えない癖にどうやって逃げ切ったんだ。お前、嘘をついてるんじゃないか?」
「剣で撃退しました」
「嘘に嘘を重ねるか。お前は大嘘つきだな。真実の鐘を有するこの街に相応しくない奴だ。ローライから出ていくがいい」
話の途中だが、鑑定を行う。
俺に嘘つきのレッテルを貼ったこの騎士の名は覚えておこう。
ユーリ・エルランジェ:Lv14
家名がついてるってことは、こいつも貴族なのか?
俺も侯爵家の人間らしいが。
腕を組んで俺とユーリの会話を見ていた強面の騎士が、訝しむような視線を投げかけてくる。『鑑定』がバレたか? と思ったが違った。
「ユーリ。今、鐘の音が聴こえたか?」
「え? いや、鳴ってないような……。おかしいな」
「彼は嘘をついてないようだ。本当に剣で撃退したんだろう」
話しぶりから、嘘を検知する方法があるらしい。若い騎士は気まずそうに視線を逸らした。
「部下が失礼をしました。私はライアン、衛兵達の指揮を一任されている騎士です。事情を聞かせていただけませんか?」
「彼のいない場所でなら構いません」
「なんだと!? エルランジェ家とカバネル家は対等なんだ。あまり偉そうなことを言うと許さないぞ!」
「ユーリ、今のお前は門を守る兵士だ。お前の態度は騎士として不適格だぞ」
「しかし、こいつは妹を強姦するようなクズですよ? こんな奴に払う礼儀はありません!」
新事実が発覚した……。妹を強姦だって?
ただの噂だと信じたい。もし本当ならカスすぎるだろ。
「公私混同はよせ」
「してませんが」
ユーリという若い騎士に対する不満はあるが、相手にするだけ時間の無駄だ。
上官の命令にさえ反発する人間に、何を言っても無駄だと思う。
「部下の教育がなっておらず申し訳ありません。続きは詰め所で聞きましょう」
「なんでこんな奴に対応するんですか! 俺は納得できませんよ!」
「いつからお前は俺の上官になったんだ? 頼むから大人しく仕事をしてくれ」
「……ッ」
納得しないユーリは置いて、ライアンの引率で俺は詰め所に入った。
入れ替わりに待機していた若い騎士が門へ向かう。
ライアンはベテランの風格があるし、それなりの地位にいるんだろうな。
「ここにある人相書きを見てください。この中に撃退した盗賊の顔はありますか?」
ライアンが見せてきた手配書と俺の記憶を照らし合わせる。
いくつか見た顔があった。
「この3人は斬りました」
「なるほど。まさか本当にリード達を討ち取っていたとは……」
あっさり信用されたが、嘘を判別する方法があるなら納得がいく。
「私が倒した盗賊は有名な賞金首なんですか?」
「領主の家族を手に掛けた連中です。首領には100万、幹部には50万ゴールドの懸賞金が掛かっていました」
盗賊に襲われた時は不運だと思ったものの、逆に運が良かったのかもしれない。
「念の為の確認ですが、今までに犯罪歴は?」
「一度もありません。まっとうに生きてきたつもりです」
「では、すぐに懸賞金を準備します」
俺はライアンに渡された書類にサインをして(問題なく読むことができた)、賞金の入った革袋を受け取った。総額200万ゴールド……。ずっしりと重たい。
「この街の市場はどこにありますか?」
「大通りをまっすぐ行けばあります。ぼったくりもいるので気をつけてください」
軽く礼をして、詰め所を後にした。
「……はぁー。疲れた」
あっさり元の身体の持ち主について分かったのはありがたいが、妹を強姦したとかとんでもない噂が流れてるな。
最初、平原に転生させられたのは女神の手配ミスだと思ってたが、当人が勘当されて行き場を失った結果なのかもしれない。噂が真実かは知らないが、こんな男に転生したことを呪いたい気分だ。
(せめて、知り合いに会わないよう祈ろう)
あまりに評判が悪いなら、この街を離れて遠くに行くことも視野に入れたい。
ひとまず、アシルという名前は伏せて、今後はミトと名乗ろう。
あの騎士達が俺の名前を言い触らさないことを祈るしかない。
アシル・カバネル:レベル25
【冒険者】……自動地図
【商人】……鑑定
【不死者】……痛覚遮断
【殺人鬼】……急所攻撃
ステータスを見ると、見知らぬ名前が表示されていた。
アシルっていうのが、この身体の本来の持ち主らしい。
「……俺、別人の身体を乗っ取ったのか?」
今更だが、着ている服も全然身に覚えのないものだったしな。
返すことなんかできないが、申し訳ない気持ちになる。
(名前も服もこの身体も、大事に使わせてもらうからな)
何の慰めにもならないだろうが、感謝はしておこう。
俺はステータス画面を見ながら、目についたスキルをタップした。効果が表示されて、ご丁寧に使い方が分かるようになっていた。こういう仕様はゲームみたいだと思う。
さて、あんまり長居して別の盗賊に襲われたら最悪だからな。
食糧と金目の物を頂戴したら、さっさと移動を開始しよう。
財布らしき革袋と武器、それから装飾品に至るまで、一つ一つ丁寧に確認する。鑑定のスキルがあるお陰で、手に取った物の性能と市場での価値が分かった。
ロングソード(+10)、レザーアーマー(+9)、革の服(+3)、それと盗賊から集めた金貨、銀貨を頂戴する。貨幣は全部かき集めると24万ゴールドになった。奪われた服を取り返して着替えつつ、装備も新調する。
装備にはプラスの表示がある物とない物があって、明らかに前者の方が性能が良かった。面倒だったが、殺した連中の装備を全部確認した甲斐があった。それなりに強くなれたんじゃないだろうか。
「これでよしと」
盗賊が持っていた水と食料も当然奪う。革袋に入った水を飲むと、生き返った気がした。荷物は増えるが、水は多めに持って移動をしよう。馬は迷ったが置いていくことにする。悪いが俺には乗りこなせない。
「行くか」
歩みを再開したが、不思議と先程までと比べて体力の消耗を感じない。これは、レベルが上がった影響なんだろうな。
レベルが上がってステータスが上昇するというのは、ゲームではよくあることだ。
ゲームじみたこの世界が同じ法則でもさほど驚きはない。
盗賊に襲われるという大事件はあったが、ステータスが強化されたおかげで、日が暮れるまでに街まで辿り着けそうだ。
俺の予想は的中して、なんと日が照っている内に街まで辿り着くことができた。
街まで辿り着くと、人間が豆粒に思えるほど大きな門があった。
堅牢な守りを思わせる門は解放されており、騎士らしい格好の男が2人いる。
若い騎士とベテランらしい風格の騎士の組み合わせだ。
近づいていくと、若い騎士から「見ない顔だな」と声をかけられた。
「お前、名前は?」
「アシル・カバネルといいます」
若い騎士が鼻で笑った。ベテランの騎士の方も眉をひそめているが、若い騎士ほどあからさまな反応は見せない。それでも、何かしら感じているものはありそうだ。それくらい、分かりやすい反応ではあった。
「驚いた。お前、従者もつけずにこの街まで来たのか? つーか、入学試験に落ちた癖になんでローライまで来てんだよ。観光でもする気か?」
俺ってこの世界じゃ有名人なのか?
名前を言っただけでこの反応、尋常じゃないぞ。
反応から察するに、あまり良い評判じゃないことは明らかだ。
「ユーリ、失礼な態度を取るな。侯爵家の方が護衛をつけずに平原を渡ってくるなど、何かあったに違いない。もしかして、道中で盗賊に襲われたのですか?」
「はい。そのとおりです」
アシルの記憶がなくなっていることは伏せる。
誰が味方で誰が敵かも分からない中で、迂闊に話し過ぎるのは危険だろう。
特に、目の前のあからさまな敵愾心を持ってる若い騎士には何も知られない方がいいはずだ。年上の騎士の方はマトモそうだが。
「おいおい、盗賊に襲われただって? 魔法も使えない癖にどうやって逃げ切ったんだ。お前、嘘をついてるんじゃないか?」
「剣で撃退しました」
「嘘に嘘を重ねるか。お前は大嘘つきだな。真実の鐘を有するこの街に相応しくない奴だ。ローライから出ていくがいい」
話の途中だが、鑑定を行う。
俺に嘘つきのレッテルを貼ったこの騎士の名は覚えておこう。
ユーリ・エルランジェ:Lv14
家名がついてるってことは、こいつも貴族なのか?
俺も侯爵家の人間らしいが。
腕を組んで俺とユーリの会話を見ていた強面の騎士が、訝しむような視線を投げかけてくる。『鑑定』がバレたか? と思ったが違った。
「ユーリ。今、鐘の音が聴こえたか?」
「え? いや、鳴ってないような……。おかしいな」
「彼は嘘をついてないようだ。本当に剣で撃退したんだろう」
話しぶりから、嘘を検知する方法があるらしい。若い騎士は気まずそうに視線を逸らした。
「部下が失礼をしました。私はライアン、衛兵達の指揮を一任されている騎士です。事情を聞かせていただけませんか?」
「彼のいない場所でなら構いません」
「なんだと!? エルランジェ家とカバネル家は対等なんだ。あまり偉そうなことを言うと許さないぞ!」
「ユーリ、今のお前は門を守る兵士だ。お前の態度は騎士として不適格だぞ」
「しかし、こいつは妹を強姦するようなクズですよ? こんな奴に払う礼儀はありません!」
新事実が発覚した……。妹を強姦だって?
ただの噂だと信じたい。もし本当ならカスすぎるだろ。
「公私混同はよせ」
「してませんが」
ユーリという若い騎士に対する不満はあるが、相手にするだけ時間の無駄だ。
上官の命令にさえ反発する人間に、何を言っても無駄だと思う。
「部下の教育がなっておらず申し訳ありません。続きは詰め所で聞きましょう」
「なんでこんな奴に対応するんですか! 俺は納得できませんよ!」
「いつからお前は俺の上官になったんだ? 頼むから大人しく仕事をしてくれ」
「……ッ」
納得しないユーリは置いて、ライアンの引率で俺は詰め所に入った。
入れ替わりに待機していた若い騎士が門へ向かう。
ライアンはベテランの風格があるし、それなりの地位にいるんだろうな。
「ここにある人相書きを見てください。この中に撃退した盗賊の顔はありますか?」
ライアンが見せてきた手配書と俺の記憶を照らし合わせる。
いくつか見た顔があった。
「この3人は斬りました」
「なるほど。まさか本当にリード達を討ち取っていたとは……」
あっさり信用されたが、嘘を判別する方法があるなら納得がいく。
「私が倒した盗賊は有名な賞金首なんですか?」
「領主の家族を手に掛けた連中です。首領には100万、幹部には50万ゴールドの懸賞金が掛かっていました」
盗賊に襲われた時は不運だと思ったものの、逆に運が良かったのかもしれない。
「念の為の確認ですが、今までに犯罪歴は?」
「一度もありません。まっとうに生きてきたつもりです」
「では、すぐに懸賞金を準備します」
俺はライアンに渡された書類にサインをして(問題なく読むことができた)、賞金の入った革袋を受け取った。総額200万ゴールド……。ずっしりと重たい。
「この街の市場はどこにありますか?」
「大通りをまっすぐ行けばあります。ぼったくりもいるので気をつけてください」
軽く礼をして、詰め所を後にした。
「……はぁー。疲れた」
あっさり元の身体の持ち主について分かったのはありがたいが、妹を強姦したとかとんでもない噂が流れてるな。
最初、平原に転生させられたのは女神の手配ミスだと思ってたが、当人が勘当されて行き場を失った結果なのかもしれない。噂が真実かは知らないが、こんな男に転生したことを呪いたい気分だ。
(せめて、知り合いに会わないよう祈ろう)
あまりに評判が悪いなら、この街を離れて遠くに行くことも視野に入れたい。
ひとまず、アシルという名前は伏せて、今後はミトと名乗ろう。
あの騎士達が俺の名前を言い触らさないことを祈るしかない。
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