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4.奴隷市場
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歩きがてら、懸賞金を稼いだことでステータスに変化が表れてないか確認すると、『賞金稼ぎ』というジョブが追加されていた。
【賞金稼ぎ】……危険感知
一つ確信したのは、何か経験を積んだり達成したりすると、ジョブが付与されるというシステムだ。
『賞金稼ぎ』は俺が懸賞金を受け取ったから手に入ったのだろう。
他に持っている『冒険者』『不死者』『剣士』『殺人鬼』についても、何か条件を満たしたのだろうと予測できる。
例えば、『不死者』は残機によって蘇ったから手に入ったのだと推測できる。
『剣士』は剣で戦ったから、『殺人鬼』は盗賊を討伐したことが理由だろうな。
『冒険者』が分かりづらいが、目的地を決めて行動したことが要因かもしれない。
あるいは、転生して別世界に来たことが冒険とみなされたかだ。
転生前の経歴も加味されるというなら、俺が『商人』というスキルを持っていた理由も納得がいく。
商社で働いていたことがあるから、商人という扱いになったのだろう。
スキルの仕様が分かってきたので、積極的に行動して増やしていきたいと思う。自分の身は自分で守れるようになりたいし、この先どう転んでもいいように、備えだけはしておこう。
「ここが市場か」
大通りに沿ってまっすぐ歩いていると、道を挟むように露店がひしめき合っているのが見えた。露店の奥には店舗も立ち並んでいる。見た感じ、庶民は露店で、富裕層は店舗の方で買い物をしているようだ。
(人込みが凄いな)
大通りは、馬車が余裕で3~4台は通れる程の道幅がある。
それでも、行き交う人々の距離は近いと感じる。
いくら道幅が広かったとしても、それ以上に人の移動が集中していれば、自ずと距離は近くなる。
誰も彼も活力に溢れていて、買い手も売り手も声を張っている。
物理的な距離の近さに加えてこの熱気だ。
慣れない者が長時間ここに居たら、あっという間に熱中症にかかりそうだ。
それくらい、ここは暑い。
軽装にしてから来れば良かったと後悔しつつ果物の値段を見ると、パインのようなものが銅貨4枚で売りに出されていた。
食料品に関しては日本とそう変わらない相場に見える一方で、古着は高く取引されているようだ。
この世界の技術力で制作に掛かった日数と人件費が、そのまま値段に乗っているのだろう。
露店を観察しながら歩いていると、「そこの方、少し覗いていきませんか?」と声をかけられた。
見ると肥満のオッサンが手招きしている。後ろのこじんまりとしたテントに客の呼び込みをしている所だった。
「見ない顔ですね。ローライの街は初めてで?」
「そうだが、俺に用か?」
「奴隷に興味はないかと思いましてね」
「ないな」
キッパリ断って歩き出そうとすると、「まあまあまあ」と呼び止められた。
「損はさせません。よろしければ私が奴隷についてご教示させていただきますよ」
「ただ話を聞くだけになるぞ」
「構いませんとも。ささ、テントへどうぞ」
悪びれもせずに案内されて、苦笑いするしかない。
テントの中は薄暗く、布が掛けられた檻が一つ置いてあるだけだった。
「私は奴隷商を営んでいるレイドと申します。奴隷商は道楽でやっている私の趣味のようなものでして。この方にお譲りしたい、と思ったお客様に声を掛けさせていただいてます」
「ミトだ。よろしく頼む」
「ミト様は奴隷についてどれくらい知識がおありで?」
「全くないな。世間知らずなんだ」
「なるほど。奴隷とは、奴隷紋を刻まれた者のことを指します。奴隷紋は禁則事項を設けることができる魔法で、禁則を破った際の罰則も定めることができます。例えば、主人には絶対服従と奴隷紋に刻んでおけば、何でも言うことを聞く奴隷が出来上がるという訳です」
説明が終わると、レイドは檻を覆っていた布を取り払った。
現れたのは妖精のように美しい少女だった。
金髪碧眼の見目麗しい少女が、笑顔を作って俺を見つめている。胸はお椀一杯程度でやや控え目だが、精巧に作られた人形のように美しい。一目で欲しいと思わされてしまった。
「私、エレナっていいます。もし良ければ買ってください。って……あなたアシルじゃない?」
外見の美しさに見惚れていたが、話し出すとガラッと印象が変わった。気安い話し方で、自分の美しさを鼻にかけた感じがない。オタクに優しいギャルみたいだ。いや、そんなことより、この娘はアシルのことを知ってるのか?
「ねえ、無視しないでよ。あなたアシルでしょう?」
「人違いだ」
「え? 本当に? あなたどう見たってアシルなのに。学園の入学試験に落ちたあなたが腹いせに平民を妾にしようとした時に、領主に睨まれるから止めないって止めてあげたの覚えてない?」
「他人の空似だろう。俺はミトだ。ほら、鐘が鳴ってるか?」
「え……あ、本当ね。ごめんなさい」
「いずれにせよ、彼女は俺に買われたくないらしい」
かなり買いたかったが、悪名高いアシルに似た男には買われたくないだろう。
長く店内にいると買えない悔しさに苛まれそうだったので、俺はさっさと外に出ることにした。
「ちょっと待って! あなたに買ってもらわないと困るの!」
意外なことに、店を出ようとすると慌てたエレナに呼び止められた。
おかしいな。アシルって評判最悪なはずだし、そいつに似てるってだけでマイナスポイントだと思うんだが。
「どういうことだ? 俺に買ってほしい訳じゃないんだろう?」
「それは……。正直に言うとちょっと嫌だけど、ワガママは言えない事情があるの」
やっぱり嫌なんじゃないか。残念に思いつつ、レイドに尋ねる。
「彼女はどういう経緯で売られて来たんだ?」
「エレナは元々は男爵令嬢だったのですが、家業が上手く行かず借金のカタに売られてしまったのですよ。健気なことに、自分から売りに出すよう進言したそうです。父親思いな娘ですね」
「貴族の令嬢が売りに出されるほど落ちぶれるなんてこと、実際にあるのか?」
「彼女の家は爵位を買った一代限りの貴族でした。特定の派閥にも参加しておらず、救いの手を差し伸べてくれるような者はいなかったのです」
エレナは俺と目が合うと必死に訴えてきた。
「お父様の商会の馬車が盗賊に襲われたのよ。私を買ったらきっとお父様に感謝されると思う。だから、お願いします! 私を買ってください!」
同情はするが、なぜ俺に買ってもらおうと必死なのか分からない。
「レイド、何か隠してる情報があるんだろ?」
「バレてしまいましたな……。実はとある探索者パーティが、彼女を共同で購入しようとしているのです。複数人での奴隷の共有となりますと、奴隷の負担は増えますし、主人同士での諍いの元にもなります。何より私としては後から男爵に睨まれるのも嫌なので断りたいところなのですが、しつこくつきまとわれた挙句、強引に契約を結ばされてしまいまして。一応、探索者ギルドに抗議はしているのですが、向こうの言い分とこちらの言い分が平行線でしてね。……このまま買い手がつかなければ、私は泣く泣く彼女を手放すしかありません」
エレナは柵を掴んで必死に自分を売り込もうとしている。
「何でもするわ。この身体を好きにしてくれてもいいから」
「値段は?」
「金貨を100枚ほどいただければすぐにお譲りします」
エレナは美しい少女だ。そんな彼女がこれから男達の共有財産になるというのは、胸糞悪い話ではある。とはいえ、値段を考えると、彼女を買うのは結構なリスクだ。せっかく稼いだ大金の半分が吹っ飛ぶ。
これから先、稼ぐアテもないのに彼女を買っていいのか?
「話に出てきた探索者ってのは、どういう仕事なんだ?」
「ローライは巨大迷宮がある街ですからね。迷宮に潜って一攫千金という輩が後を絶ちません。奴ら、腕は立つのですが気性が荒くて問題ばかり起こすんですよ。現に私も被害を被っておりますし……」
「彼女を買おうとしてるのは、ベテランの探索者パーティなのか?」
「装備からの判断ですが、中堅どころにはなるでしょうな。もしかして、これから探索者を目指されるのですか?」
「評判はよくないらしいが、そうなる可能性はある。だから、あまり先輩に睨まれるようなことはしたくない」
エレナを見つめると、彼女は諦めたように目を伏せた。
「見ず知らずのあなたに負担を強いることはできないわ。私のことは気にしないでちょうだい」
「おやおや、よろしいので? 処女がいきなり探索者パーティに買われるというのは、かなりの負担になりますよ? 生死の境にいる彼らは、職業柄子孫を残そうという意思が強い。かなり可愛がられることになるでしょう」
「……仕方ないじゃない。この人にはこの人の事情があるもの。我慢してみせるわ」
無理をしてるのが分かる。エレナは人が良いんだな。
そんな彼女をむざむざ男達の餌にするというのも無慈悲な話だ。
「分かった。エレナを俺の奴隷にする」
「え? いいの?」
「俺が欲しいと思ったんだ」
「これから探索者になるかもしれないんでしょ?」
「関係ない。君を俺のものにしたい」
「……ッ」
エレナが頬を染めて俺を見上げてくる。
ぶっちゃけかなり可愛い。
こんな綺麗な娘の前でなら、多少格好つけたくなるのも仕方ないと思う。
奴隷商に目配せすると頷いた。
「契約内容はミト様が決めることになります。何か特別に条件はつけられますか?」
「そうだな。彼女が自分を買い戻せるようにしてあげてくれ。一生奴隷なんて可哀想だからな」
「嘘……。あなた人が良すぎるわよ。そんな契約する人いないわ」
「一生俺の奴隷でいたいなら無理強いはしないが」
「私は自由になりたい。目標ができたわ。ありがとう!」
「ああ、そう……」
少しだけ寂しいが、やる気のある奴は好きだ。
「では、条件付きの解放がご希望でしたら契約内容に含めましょう」
「それで頼む」
「あの……本当に助けてくれてありがとう」
礼を言いたいのはこちらの方だ。近くで見るとかなりの美少女だ。
「あ、もうあなたの奴隷になるんだし、敬語の方がいいですよね?」
「いや、敬語を使われると逆に気遣うからな。エレナも平民相手に敬語なんて嫌だろ? 普通に話してくれるとありがたい」
「あなたは知り合いに似すぎてるからそんなことないけど……。せっかくだしお言葉に甘えるわ」
金髪碧眼の美少女奴隷を購入できた。これから仲良くしていきたい。
「いやはや、助かりました。これでアムラン男爵に睨まれずにすみます」
「購入する予定だったパーティの連中は大丈夫なのか?」
「御心配には及びません。私も商人の端くれ、口先三寸で何とかしてみせますよ」
奴隷紋を胸に刻み、契約が完了した。
「じゃあさっそく、腕を組んで歩いてくれ」
「こうかしら?」
エレナは恥ずかしそうに腕を組んできた。
初々しくて可愛いな。
「あんまりジロジロ見ないで。恥ずかしいから」
「ああ、悪い」
視線を感じて隣をチラ見すると、エレナが俺の顔を覗き込んでいた。
(そっちから覗き込んでくるのはありなのか?)
気恥ずかしくて、自分で命じておきながらエレナを見れない俺だった。
【賞金稼ぎ】……危険感知
一つ確信したのは、何か経験を積んだり達成したりすると、ジョブが付与されるというシステムだ。
『賞金稼ぎ』は俺が懸賞金を受け取ったから手に入ったのだろう。
他に持っている『冒険者』『不死者』『剣士』『殺人鬼』についても、何か条件を満たしたのだろうと予測できる。
例えば、『不死者』は残機によって蘇ったから手に入ったのだと推測できる。
『剣士』は剣で戦ったから、『殺人鬼』は盗賊を討伐したことが理由だろうな。
『冒険者』が分かりづらいが、目的地を決めて行動したことが要因かもしれない。
あるいは、転生して別世界に来たことが冒険とみなされたかだ。
転生前の経歴も加味されるというなら、俺が『商人』というスキルを持っていた理由も納得がいく。
商社で働いていたことがあるから、商人という扱いになったのだろう。
スキルの仕様が分かってきたので、積極的に行動して増やしていきたいと思う。自分の身は自分で守れるようになりたいし、この先どう転んでもいいように、備えだけはしておこう。
「ここが市場か」
大通りに沿ってまっすぐ歩いていると、道を挟むように露店がひしめき合っているのが見えた。露店の奥には店舗も立ち並んでいる。見た感じ、庶民は露店で、富裕層は店舗の方で買い物をしているようだ。
(人込みが凄いな)
大通りは、馬車が余裕で3~4台は通れる程の道幅がある。
それでも、行き交う人々の距離は近いと感じる。
いくら道幅が広かったとしても、それ以上に人の移動が集中していれば、自ずと距離は近くなる。
誰も彼も活力に溢れていて、買い手も売り手も声を張っている。
物理的な距離の近さに加えてこの熱気だ。
慣れない者が長時間ここに居たら、あっという間に熱中症にかかりそうだ。
それくらい、ここは暑い。
軽装にしてから来れば良かったと後悔しつつ果物の値段を見ると、パインのようなものが銅貨4枚で売りに出されていた。
食料品に関しては日本とそう変わらない相場に見える一方で、古着は高く取引されているようだ。
この世界の技術力で制作に掛かった日数と人件費が、そのまま値段に乗っているのだろう。
露店を観察しながら歩いていると、「そこの方、少し覗いていきませんか?」と声をかけられた。
見ると肥満のオッサンが手招きしている。後ろのこじんまりとしたテントに客の呼び込みをしている所だった。
「見ない顔ですね。ローライの街は初めてで?」
「そうだが、俺に用か?」
「奴隷に興味はないかと思いましてね」
「ないな」
キッパリ断って歩き出そうとすると、「まあまあまあ」と呼び止められた。
「損はさせません。よろしければ私が奴隷についてご教示させていただきますよ」
「ただ話を聞くだけになるぞ」
「構いませんとも。ささ、テントへどうぞ」
悪びれもせずに案内されて、苦笑いするしかない。
テントの中は薄暗く、布が掛けられた檻が一つ置いてあるだけだった。
「私は奴隷商を営んでいるレイドと申します。奴隷商は道楽でやっている私の趣味のようなものでして。この方にお譲りしたい、と思ったお客様に声を掛けさせていただいてます」
「ミトだ。よろしく頼む」
「ミト様は奴隷についてどれくらい知識がおありで?」
「全くないな。世間知らずなんだ」
「なるほど。奴隷とは、奴隷紋を刻まれた者のことを指します。奴隷紋は禁則事項を設けることができる魔法で、禁則を破った際の罰則も定めることができます。例えば、主人には絶対服従と奴隷紋に刻んでおけば、何でも言うことを聞く奴隷が出来上がるという訳です」
説明が終わると、レイドは檻を覆っていた布を取り払った。
現れたのは妖精のように美しい少女だった。
金髪碧眼の見目麗しい少女が、笑顔を作って俺を見つめている。胸はお椀一杯程度でやや控え目だが、精巧に作られた人形のように美しい。一目で欲しいと思わされてしまった。
「私、エレナっていいます。もし良ければ買ってください。って……あなたアシルじゃない?」
外見の美しさに見惚れていたが、話し出すとガラッと印象が変わった。気安い話し方で、自分の美しさを鼻にかけた感じがない。オタクに優しいギャルみたいだ。いや、そんなことより、この娘はアシルのことを知ってるのか?
「ねえ、無視しないでよ。あなたアシルでしょう?」
「人違いだ」
「え? 本当に? あなたどう見たってアシルなのに。学園の入学試験に落ちたあなたが腹いせに平民を妾にしようとした時に、領主に睨まれるから止めないって止めてあげたの覚えてない?」
「他人の空似だろう。俺はミトだ。ほら、鐘が鳴ってるか?」
「え……あ、本当ね。ごめんなさい」
「いずれにせよ、彼女は俺に買われたくないらしい」
かなり買いたかったが、悪名高いアシルに似た男には買われたくないだろう。
長く店内にいると買えない悔しさに苛まれそうだったので、俺はさっさと外に出ることにした。
「ちょっと待って! あなたに買ってもらわないと困るの!」
意外なことに、店を出ようとすると慌てたエレナに呼び止められた。
おかしいな。アシルって評判最悪なはずだし、そいつに似てるってだけでマイナスポイントだと思うんだが。
「どういうことだ? 俺に買ってほしい訳じゃないんだろう?」
「それは……。正直に言うとちょっと嫌だけど、ワガママは言えない事情があるの」
やっぱり嫌なんじゃないか。残念に思いつつ、レイドに尋ねる。
「彼女はどういう経緯で売られて来たんだ?」
「エレナは元々は男爵令嬢だったのですが、家業が上手く行かず借金のカタに売られてしまったのですよ。健気なことに、自分から売りに出すよう進言したそうです。父親思いな娘ですね」
「貴族の令嬢が売りに出されるほど落ちぶれるなんてこと、実際にあるのか?」
「彼女の家は爵位を買った一代限りの貴族でした。特定の派閥にも参加しておらず、救いの手を差し伸べてくれるような者はいなかったのです」
エレナは俺と目が合うと必死に訴えてきた。
「お父様の商会の馬車が盗賊に襲われたのよ。私を買ったらきっとお父様に感謝されると思う。だから、お願いします! 私を買ってください!」
同情はするが、なぜ俺に買ってもらおうと必死なのか分からない。
「レイド、何か隠してる情報があるんだろ?」
「バレてしまいましたな……。実はとある探索者パーティが、彼女を共同で購入しようとしているのです。複数人での奴隷の共有となりますと、奴隷の負担は増えますし、主人同士での諍いの元にもなります。何より私としては後から男爵に睨まれるのも嫌なので断りたいところなのですが、しつこくつきまとわれた挙句、強引に契約を結ばされてしまいまして。一応、探索者ギルドに抗議はしているのですが、向こうの言い分とこちらの言い分が平行線でしてね。……このまま買い手がつかなければ、私は泣く泣く彼女を手放すしかありません」
エレナは柵を掴んで必死に自分を売り込もうとしている。
「何でもするわ。この身体を好きにしてくれてもいいから」
「値段は?」
「金貨を100枚ほどいただければすぐにお譲りします」
エレナは美しい少女だ。そんな彼女がこれから男達の共有財産になるというのは、胸糞悪い話ではある。とはいえ、値段を考えると、彼女を買うのは結構なリスクだ。せっかく稼いだ大金の半分が吹っ飛ぶ。
これから先、稼ぐアテもないのに彼女を買っていいのか?
「話に出てきた探索者ってのは、どういう仕事なんだ?」
「ローライは巨大迷宮がある街ですからね。迷宮に潜って一攫千金という輩が後を絶ちません。奴ら、腕は立つのですが気性が荒くて問題ばかり起こすんですよ。現に私も被害を被っておりますし……」
「彼女を買おうとしてるのは、ベテランの探索者パーティなのか?」
「装備からの判断ですが、中堅どころにはなるでしょうな。もしかして、これから探索者を目指されるのですか?」
「評判はよくないらしいが、そうなる可能性はある。だから、あまり先輩に睨まれるようなことはしたくない」
エレナを見つめると、彼女は諦めたように目を伏せた。
「見ず知らずのあなたに負担を強いることはできないわ。私のことは気にしないでちょうだい」
「おやおや、よろしいので? 処女がいきなり探索者パーティに買われるというのは、かなりの負担になりますよ? 生死の境にいる彼らは、職業柄子孫を残そうという意思が強い。かなり可愛がられることになるでしょう」
「……仕方ないじゃない。この人にはこの人の事情があるもの。我慢してみせるわ」
無理をしてるのが分かる。エレナは人が良いんだな。
そんな彼女をむざむざ男達の餌にするというのも無慈悲な話だ。
「分かった。エレナを俺の奴隷にする」
「え? いいの?」
「俺が欲しいと思ったんだ」
「これから探索者になるかもしれないんでしょ?」
「関係ない。君を俺のものにしたい」
「……ッ」
エレナが頬を染めて俺を見上げてくる。
ぶっちゃけかなり可愛い。
こんな綺麗な娘の前でなら、多少格好つけたくなるのも仕方ないと思う。
奴隷商に目配せすると頷いた。
「契約内容はミト様が決めることになります。何か特別に条件はつけられますか?」
「そうだな。彼女が自分を買い戻せるようにしてあげてくれ。一生奴隷なんて可哀想だからな」
「嘘……。あなた人が良すぎるわよ。そんな契約する人いないわ」
「一生俺の奴隷でいたいなら無理強いはしないが」
「私は自由になりたい。目標ができたわ。ありがとう!」
「ああ、そう……」
少しだけ寂しいが、やる気のある奴は好きだ。
「では、条件付きの解放がご希望でしたら契約内容に含めましょう」
「それで頼む」
「あの……本当に助けてくれてありがとう」
礼を言いたいのはこちらの方だ。近くで見るとかなりの美少女だ。
「あ、もうあなたの奴隷になるんだし、敬語の方がいいですよね?」
「いや、敬語を使われると逆に気遣うからな。エレナも平民相手に敬語なんて嫌だろ? 普通に話してくれるとありがたい」
「あなたは知り合いに似すぎてるからそんなことないけど……。せっかくだしお言葉に甘えるわ」
金髪碧眼の美少女奴隷を購入できた。これから仲良くしていきたい。
「いやはや、助かりました。これでアムラン男爵に睨まれずにすみます」
「購入する予定だったパーティの連中は大丈夫なのか?」
「御心配には及びません。私も商人の端くれ、口先三寸で何とかしてみせますよ」
奴隷紋を胸に刻み、契約が完了した。
「じゃあさっそく、腕を組んで歩いてくれ」
「こうかしら?」
エレナは恥ずかしそうに腕を組んできた。
初々しくて可愛いな。
「あんまりジロジロ見ないで。恥ずかしいから」
「ああ、悪い」
視線を感じて隣をチラ見すると、エレナが俺の顔を覗き込んでいた。
(そっちから覗き込んでくるのはありなのか?)
気恥ずかしくて、自分で命じておきながらエレナを見れない俺だった。
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