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11.決闘
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迷宮での狩りは順調に終わった。今日は一つ目の階層しか回ってないが、とても全部の区画は見れなかった。
行き止まりに通じる通路は地図上で分かったし、次はもっと効率的に進めらるだろう。それにしても迷宮は広すぎた。一日潜って、一層の2割にも満たない範囲しか地図が埋まってない。
「他のパーティはどうやって長期間、迷宮に潜ってるんだろうな。食糧だって携行食だけじゃ足りなくなるだろ」
「マジックポーチを使ってるのかしら? でも、高価なものだし全員に行き渡ってるとは思えないわね」
無事に迷宮から帰還した俺達は、換金作業を終えた後、受付嬢のアイリスに質問した。
「迷宮がセーフルームという部屋を作っているんです。セーフルームには魔物が発生しませんし、保存の利く食糧や水があります」
「まさか、魔素で作られた食糧なのか?」
「ご安心ください。健康への害は確認されておりません」
(そういう問題かよ)
「もし迷宮の食料に不安があるなら、マジックポーチという選択肢もありますよ?」
「マジックポーチは賢者が生産してる物で、一度に大量のアイテムを格納できるの。実物は見たことがないけど、明らかに外から見たポーチの容量を超えて、いくらでもアイテムが入るそうよ?」
「便利そうだな。購入しとこう」
受付嬢に礼を言って帰路につく。
「足が疲れたな」
「私はお腹が空いたかも」
1日歩き詰めで疲れた俺は、エレナと共に適当な酒場に入った。一杯だけ飲んで帰ろう。そんなことを思ってたら、見知った顔が店内にいることに気づいた。非番らしく、ユーリが仲間と飲んでいる。
「ユーリさん、何か嫌なことでもあったんすか? 今日はペースが早いっていうか」
「配置転換だとよ。ライアンが武器庫の管理の方に俺を回しやがったんだ」
「え? それ、新兵がやるような裏方じゃないですか」
「ふざけやがって! 俺は討伐部隊にも参加したことがあるんだ! 腕なら隊長にだって負けてねえ! 俺に追い越されるのが怖いんだろあいつは!」
(かなり荒れてるな)
「お店、変えた方がよさそうね」
「そうしよう。絡まれたら面倒だ」
酒場を出た俺達は、別の酒場に入って夕食にした。肉が食いたかったので、串焼きと適当に腹が膨れそうなものを幾つか頼む。エレナの好みも聞きながら注文し、財布の金を気にすることなく注文した。
「ね、私が食べさせてあげる。は~い、お口あけてご主人様」
「ん……美味いな」
可愛いエレナをはべらせて美味しい料理に舌鼓を打つ。なかなか良い人生じゃないか。酔って上機嫌になった俺は、エレナを抱き寄せて「可愛いな」と洩らしてしまった。
「今夜は可愛がってくれる?」
「なんだ。やけに素直だな」
「ミトが守ってくれたけど、迷宮はちょっとだけ怖かったから。抱きしめて大丈夫って言ってほしいの」
「俺が守るから大丈夫だ」
「チュってして?」
エレナの唇に吸い寄せられるように顔を近づけたところで、食器の割れる音がした。いつの間に入店してたのか、音の正体はユーリが叩き割った皿だった。
もったいないな。床に散らばったサラダを無感動に眺めていると、酔ったユーリが「うぜぇんだよ」と吐き捨てた。
「強姦魔のアシルさんよぉ。随分と派手にやってんじゃねえか。英雄気取りで女まで買って……。エレナ! そんな奴より俺の相手をしろよ!」
「エレナ、ユーリを知ってるのか?」
「学園の先輩だったのよ。私は親の借金で通えなくなったけど、在学中にけっこう声をかけてきた男子の一人ね」
思わぬ接点だった。ていうか、学校でもエレナはモテてたんだな。
これだけ美人だと仕方がないことではあるが。
「おい、喚くなら表でやってろ」
「エレナ、無視するんじゃねえ!」
吠えながらユーリが近くにあった椅子を蹴り飛ばした。
先程の店にいた後輩らしき青年の姿はない。止められる者のいない場で、ユーリの暴走は拍車をかけていた。
「なぁ、エレナを一晩貸してくれよ。俺も限界なんだよ」
「ふざけないで。私は彼のモノだし、他の男に身体を許す気はないの。酔っぱらいは消えてよ」
「気が強くていいなぁ。簡単に靡かないところがよかったんだ。聞いてるぜ。親父さんが事業に失敗して売られちまったんだろ? 実家から金借りてくるからさ。俺に買われろよ」
「気持ち悪い……。ねえ、もう帰ろう? こんな人に構うことないわよ」
エレナが俺の腕を抱く。思い通りに靡かないエレナを見て、ユーリの怒りは限界に達した。
「決闘だ。エレナを賭けて俺と戦え」
「その展開は見飽きた。一人でやってろ」
「じゃあこっちから始めさせてもらうぜぇ!」
いきなり殴りかかってきたユーリの拳を冷静に受け止める。ユーリは唖然としてるが、レベル差を考えれば当然の結果だった。
「誰がリード達を討伐したのか忘れたのか?」
「ひっ」
拳を潰すくらい握り込んでやると、ユーリは膝をついて悲鳴を上げた。
「うあぁぁぁぁ!!!」
「ここだと迷惑だな」
衆人環視の中、ユーリを引きずって外に連れていく。甘さは身を滅ぼすだけだ。ユーリを赦せば、俺は舐めても構わない相手だと判断される。エレナの為にも、俺は受けた屈辱を倍以上で返す必要に迫られた。言い換えれば、ここでユーリを痛めつければ、その分だけ俺とエレナは安泰だと言うことだ。
「や、やめてくれ。もう片手が使えない」
「黙れ。お前が言い出したことだ。決闘をするんだろ?」
「もう、俺の負けでいいですから!」
「俺にとってエレナは姫なんだよ。お前、死にたいらしいな」
剣を抜く。ユーリは震えながら土下座した。赦しはしない。今回はスコットの時とは状況が違う。あの時はスコットのパーティしかいなかったし、お仲間と当人には分からせてやった。だが、今回は俺とユーリの間だけでは解決しない問題だ。周囲からの評価とは伝染する病のようなものだ。噂が伝播するなら、それは容赦のない探索者という触れ込みの方がいいはずだ。
「もう二度と逆らいません! 舐めた口利いてすみませんでした! どうか穏便に話をさせてください!」
「ちょ……僕がトイレに行ってる間に何があったんですか!」
青年が駆け寄ってくる。ユーリの後輩の騎士なのだろうが、細身で人の好さそうな顔立ちをしている。
「こいつが俺の女を一晩抱かせろと言ってきたから抵抗したまでだ。言っておくが、先に決闘を仕掛けたのはこいつの方だ」
「本当ですか!?」
「……酔ってたんだ。本気じゃねえって!」
「あなたって人は……。決闘を相手が承諾した以上、戦うしかありませんよ。それが嫌なら敗北を認めて身代金を払うしかないです」
自分の身を自分で買えという話か。
「幾ら払うのが相場なんだ?」
「貴族の身代金となると、金貨300枚が相場ですね。この人は伯爵家の三男なんで、誓約書を書かせれば取り立てることはできると思います」
「この場で誓約書を書くから許してください!」
「エレナはどう思う?」
「ちょうど家が買えるんじゃない?」
前向きな反応だ。
「なら、誓約書を書いてもらおうか。命の代わりに金貨300枚を支払う。それができない時は、知り合いの奴隷商に買い取ってもらうとしよう」
「ああ……なんでこんなことに……」
絶望してるが、自分のせいだろうが。
行き止まりに通じる通路は地図上で分かったし、次はもっと効率的に進めらるだろう。それにしても迷宮は広すぎた。一日潜って、一層の2割にも満たない範囲しか地図が埋まってない。
「他のパーティはどうやって長期間、迷宮に潜ってるんだろうな。食糧だって携行食だけじゃ足りなくなるだろ」
「マジックポーチを使ってるのかしら? でも、高価なものだし全員に行き渡ってるとは思えないわね」
無事に迷宮から帰還した俺達は、換金作業を終えた後、受付嬢のアイリスに質問した。
「迷宮がセーフルームという部屋を作っているんです。セーフルームには魔物が発生しませんし、保存の利く食糧や水があります」
「まさか、魔素で作られた食糧なのか?」
「ご安心ください。健康への害は確認されておりません」
(そういう問題かよ)
「もし迷宮の食料に不安があるなら、マジックポーチという選択肢もありますよ?」
「マジックポーチは賢者が生産してる物で、一度に大量のアイテムを格納できるの。実物は見たことがないけど、明らかに外から見たポーチの容量を超えて、いくらでもアイテムが入るそうよ?」
「便利そうだな。購入しとこう」
受付嬢に礼を言って帰路につく。
「足が疲れたな」
「私はお腹が空いたかも」
1日歩き詰めで疲れた俺は、エレナと共に適当な酒場に入った。一杯だけ飲んで帰ろう。そんなことを思ってたら、見知った顔が店内にいることに気づいた。非番らしく、ユーリが仲間と飲んでいる。
「ユーリさん、何か嫌なことでもあったんすか? 今日はペースが早いっていうか」
「配置転換だとよ。ライアンが武器庫の管理の方に俺を回しやがったんだ」
「え? それ、新兵がやるような裏方じゃないですか」
「ふざけやがって! 俺は討伐部隊にも参加したことがあるんだ! 腕なら隊長にだって負けてねえ! 俺に追い越されるのが怖いんだろあいつは!」
(かなり荒れてるな)
「お店、変えた方がよさそうね」
「そうしよう。絡まれたら面倒だ」
酒場を出た俺達は、別の酒場に入って夕食にした。肉が食いたかったので、串焼きと適当に腹が膨れそうなものを幾つか頼む。エレナの好みも聞きながら注文し、財布の金を気にすることなく注文した。
「ね、私が食べさせてあげる。は~い、お口あけてご主人様」
「ん……美味いな」
可愛いエレナをはべらせて美味しい料理に舌鼓を打つ。なかなか良い人生じゃないか。酔って上機嫌になった俺は、エレナを抱き寄せて「可愛いな」と洩らしてしまった。
「今夜は可愛がってくれる?」
「なんだ。やけに素直だな」
「ミトが守ってくれたけど、迷宮はちょっとだけ怖かったから。抱きしめて大丈夫って言ってほしいの」
「俺が守るから大丈夫だ」
「チュってして?」
エレナの唇に吸い寄せられるように顔を近づけたところで、食器の割れる音がした。いつの間に入店してたのか、音の正体はユーリが叩き割った皿だった。
もったいないな。床に散らばったサラダを無感動に眺めていると、酔ったユーリが「うぜぇんだよ」と吐き捨てた。
「強姦魔のアシルさんよぉ。随分と派手にやってんじゃねえか。英雄気取りで女まで買って……。エレナ! そんな奴より俺の相手をしろよ!」
「エレナ、ユーリを知ってるのか?」
「学園の先輩だったのよ。私は親の借金で通えなくなったけど、在学中にけっこう声をかけてきた男子の一人ね」
思わぬ接点だった。ていうか、学校でもエレナはモテてたんだな。
これだけ美人だと仕方がないことではあるが。
「おい、喚くなら表でやってろ」
「エレナ、無視するんじゃねえ!」
吠えながらユーリが近くにあった椅子を蹴り飛ばした。
先程の店にいた後輩らしき青年の姿はない。止められる者のいない場で、ユーリの暴走は拍車をかけていた。
「なぁ、エレナを一晩貸してくれよ。俺も限界なんだよ」
「ふざけないで。私は彼のモノだし、他の男に身体を許す気はないの。酔っぱらいは消えてよ」
「気が強くていいなぁ。簡単に靡かないところがよかったんだ。聞いてるぜ。親父さんが事業に失敗して売られちまったんだろ? 実家から金借りてくるからさ。俺に買われろよ」
「気持ち悪い……。ねえ、もう帰ろう? こんな人に構うことないわよ」
エレナが俺の腕を抱く。思い通りに靡かないエレナを見て、ユーリの怒りは限界に達した。
「決闘だ。エレナを賭けて俺と戦え」
「その展開は見飽きた。一人でやってろ」
「じゃあこっちから始めさせてもらうぜぇ!」
いきなり殴りかかってきたユーリの拳を冷静に受け止める。ユーリは唖然としてるが、レベル差を考えれば当然の結果だった。
「誰がリード達を討伐したのか忘れたのか?」
「ひっ」
拳を潰すくらい握り込んでやると、ユーリは膝をついて悲鳴を上げた。
「うあぁぁぁぁ!!!」
「ここだと迷惑だな」
衆人環視の中、ユーリを引きずって外に連れていく。甘さは身を滅ぼすだけだ。ユーリを赦せば、俺は舐めても構わない相手だと判断される。エレナの為にも、俺は受けた屈辱を倍以上で返す必要に迫られた。言い換えれば、ここでユーリを痛めつければ、その分だけ俺とエレナは安泰だと言うことだ。
「や、やめてくれ。もう片手が使えない」
「黙れ。お前が言い出したことだ。決闘をするんだろ?」
「もう、俺の負けでいいですから!」
「俺にとってエレナは姫なんだよ。お前、死にたいらしいな」
剣を抜く。ユーリは震えながら土下座した。赦しはしない。今回はスコットの時とは状況が違う。あの時はスコットのパーティしかいなかったし、お仲間と当人には分からせてやった。だが、今回は俺とユーリの間だけでは解決しない問題だ。周囲からの評価とは伝染する病のようなものだ。噂が伝播するなら、それは容赦のない探索者という触れ込みの方がいいはずだ。
「もう二度と逆らいません! 舐めた口利いてすみませんでした! どうか穏便に話をさせてください!」
「ちょ……僕がトイレに行ってる間に何があったんですか!」
青年が駆け寄ってくる。ユーリの後輩の騎士なのだろうが、細身で人の好さそうな顔立ちをしている。
「こいつが俺の女を一晩抱かせろと言ってきたから抵抗したまでだ。言っておくが、先に決闘を仕掛けたのはこいつの方だ」
「本当ですか!?」
「……酔ってたんだ。本気じゃねえって!」
「あなたって人は……。決闘を相手が承諾した以上、戦うしかありませんよ。それが嫌なら敗北を認めて身代金を払うしかないです」
自分の身を自分で買えという話か。
「幾ら払うのが相場なんだ?」
「貴族の身代金となると、金貨300枚が相場ですね。この人は伯爵家の三男なんで、誓約書を書かせれば取り立てることはできると思います」
「この場で誓約書を書くから許してください!」
「エレナはどう思う?」
「ちょうど家が買えるんじゃない?」
前向きな反応だ。
「なら、誓約書を書いてもらおうか。命の代わりに金貨300枚を支払う。それができない時は、知り合いの奴隷商に買い取ってもらうとしよう」
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