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10.迷宮
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スコット達と別れた俺は、エレナと一緒に迷宮に侵入した。
「少し待ってくれ」
(迷宮内でもスキルは問題なく発動してるな)
視界の端に簡単な地図が映り、移動すると勝手にマッピングが行われる。通路は想像以上に入り組んでいるようだが、『自動地図』のお陰で迷う心配はない。
「私が地図を書こうかしら?」
「いや、道順は全て記憶するから問題ない」
「え、さすがに無理だと思うんだけど。本当に覚えられるの?」
「嘘だと思うならエレナも書けばいい」
「分かったわ」
この世界でたった一人、システムの恩恵に与れるのが俺だ。他の探索者が命懸けで潜ってる迷宮も、俺からすればイージーモードでしかない。
探索者が命を落とす一番の理由は、恐らく彼我の戦力差を測れないことだ。自分のレベルが1だったとして、相手がレベル10だと分かっていれば、戦闘など仕掛けずに引く判断ができる。
しかし、数値で相手の強さを測れない他の探索者は、判断を経験に頼るしかない。
よほど鋭い直感を持っているか、忍耐強い者でなければ、早々に脱落していくことだろう。その点、俺は非常に恵まれている。相手のレベルが分かるから安全に狩りができるし、他の探索者が技能でカバーしている部分を、スキルであっさり超えることができる。さらには、ダメ押しとばかりに残機まであるんだからな。
――俺が成功することは予定調和だ。神様にお膳立てされてるんだからな。
女神に感謝しつつ、俺は迷宮の内部へと足を進めていく。
さて、俺は前世で数多くのRPGをプレイしてきた。そのなかで数多の迷宮に挑んできた訳だが、この世界の迷宮はいささか型破りだと思う。迷宮は歩みを進める度に姿を変え、景色が次々と変化していく。
天井が消え、星空となり、足元が平原へと変化する。そして、しばらく歩くとまた天井が現れ、迷宮らしい通路に戻っていたりするのだ。
区画ごとに変貌する風景を眺めながら、俺は迷宮に対する認識を改めつつあった。
「こんなに景色が変わってたら地図書くの無理なんだけど」
「通路の構造自体は変わってないはずだ」
「えー。ちょっと頭の中の地図と見比べてくれる?」
エレナが描いた地図を見たが、全く合ってなかった。
「全然違うぞ」
「え……嘘でしょ?」
「こっちの台詞だよ。あ、宝箱見つけた」
古びた廃墟っぽい区画を歩いていると、くたびれた宝箱を見つけた。
特に警戒するでもなく開けると、宝石が入ってた。
「これ、もしかして魔石なのか?」
「きっとそうよ! すごい。もう魔石を見つけるなんて」
鑑定してみる。『黒金剛石』と表示された。黒ダイヤ……つまりブラックダイアのことだと思う。魔石とは別物のようだ。
鑑定スキルによる査定では、5万ゴールドと表示されている。金貨5枚分と考えれば、安くはないものだし、十分当たりの範疇だと思う。エレナも嬉しそうにしている。
「持っててくれるか?」
「え、私にくれるの? 綺麗だから嬉しい」
あげるとは言ってないだろ。
でもまあ、取り上げるのも可哀想なのでもうやろう。
「この調子ならあっという間に自由になれるかも」
エレナは気合を入れた。
微笑ましいと思って見つめてたら、周囲に黒い霧が漂い始めた。
危険感知が発動すると同時、俺は剣を抜いた。
「オオオオォォォ」
実体化した魔物は小型の狼と人を掛け合わせたような姿をしている。
『コボルト:Lv7』とステータスが表示された。
リード達を討伐してレベルが23まで上がった俺からすれば、物足りない相手だ。
「エレナは見てるだけでいい。手を出すなよ」
「任せるわ!」
爪を武器に襲い掛かってきた魔物を、俺はロングソードで両断した。
急所攻撃を発動させるまでもなく、魔物は一撃で霧散した。
肉体を維持できなくなり、魔素に戻ったということだろう。
一匹倒して安堵したが、濃霧は更に膨らみ3体のコボルトを作り出した。
高い個体でレベルが9あったが、3体同時に攻撃されても軽くいなすことができた。
「ねえ、私も魔法使っていい!?」
「ああ、魔法で牽制してくれ。止めは俺が刺す」
唸り声を上げ飛び掛かってくるコボルトを両断し、2体目を刺突で倒す。3体目にエレナの魔法が着弾するが、喰らったコボルトは鬱陶しげに手で払うだけで、ダメージは入ってないように見えた。
まあ、一瞬動きを止めただけでも上出来だ。俺は3匹目に向かって疾駆し、首を飛ばしてやった。魔物の死体は霧散し、黒い霧も薄れた。今回の襲撃はやり過ごしたと思ってよさそうだ。
迷宮内は常に魔物が徘徊してると思ったが、魔素が集まって探索者を襲う時だけ実体化しているようだった。よく分からないが、迷宮目線では省エネになるんだろうか?
「すごすぎ……。全然余裕そうだった」
『中級剣術』の効果で剣が馴染んでる。まるで十数年握ってきたかのように馴染んだ剣は、敵を狩る為の最適な動きを身体に教えてくれた。何も考えず、スキルに身体を委ねるだけでよかった。剣を握ったばかりだと言っても信じる者はいないだろう。
「エレナの魔法も役に立ってくれたな」
「牽制程度にはね。でも、ちゃんと強い魔法も身につけたい」
「魔法はどうやって覚えるんだ?」
「え!?」
エレナは驚いたあと、失言だと思ったのか口を押さえた。
「ごめんなさい。あなた記憶喪失だったわね。魔導書を読めば魔法は身につくの」
「そんな簡単な条件なのか」
「ただ、相性があるから、確実に身につくものでもないのよ」
「そうなのか。一冊買えば何度でも読めるものなのか?」
「そうね。かなり値は張るけど」
「高価な上に身につくかは運次第か」
「一応、簡単な魔法ほど身につきやすいって言われてるの。でも初級魔法って使い勝手よくないし、魔導書を買うなら、誰でも使えるマジックアイテムとか、強力な装備を手に入れた方がいいわよね。私は魔法が好きなんだけど」
魔法に憧れはある。俺も使ってみたい。
「魔導書自体もマジックアイテムに分類されるのか?」
「もちろん」
「魔術師はどうやってマジックアイテムを作れるようになるんだ?」
「かつて女神様が地上にいらっしゃった時に、魔法を与えられた者達がいたの。『暁の賢者』と呼ばれる彼らは、『付与』という道具に効果を与える魔法が使えた。今、マジックアイテムを作っているのは、暁の賢者の子孫よ。たんに賢者と呼ばれることが多いわね」
「魔法は遺伝するのか?」
「魔力は遺伝するけれど、魔法は別よ。賢者だけが特別なの。彼らの血筋だけが、自分達の魔法を後世に残すことができる」
興味深い話だ。話に出てきた女神というのは、女神カナエルと同一人物なのだろうか。教会にでも行けば分かるかもしれない。魔神王相手に魔法は通じるのか気になるところだ。
「少し待ってくれ」
(迷宮内でもスキルは問題なく発動してるな)
視界の端に簡単な地図が映り、移動すると勝手にマッピングが行われる。通路は想像以上に入り組んでいるようだが、『自動地図』のお陰で迷う心配はない。
「私が地図を書こうかしら?」
「いや、道順は全て記憶するから問題ない」
「え、さすがに無理だと思うんだけど。本当に覚えられるの?」
「嘘だと思うならエレナも書けばいい」
「分かったわ」
この世界でたった一人、システムの恩恵に与れるのが俺だ。他の探索者が命懸けで潜ってる迷宮も、俺からすればイージーモードでしかない。
探索者が命を落とす一番の理由は、恐らく彼我の戦力差を測れないことだ。自分のレベルが1だったとして、相手がレベル10だと分かっていれば、戦闘など仕掛けずに引く判断ができる。
しかし、数値で相手の強さを測れない他の探索者は、判断を経験に頼るしかない。
よほど鋭い直感を持っているか、忍耐強い者でなければ、早々に脱落していくことだろう。その点、俺は非常に恵まれている。相手のレベルが分かるから安全に狩りができるし、他の探索者が技能でカバーしている部分を、スキルであっさり超えることができる。さらには、ダメ押しとばかりに残機まであるんだからな。
――俺が成功することは予定調和だ。神様にお膳立てされてるんだからな。
女神に感謝しつつ、俺は迷宮の内部へと足を進めていく。
さて、俺は前世で数多くのRPGをプレイしてきた。そのなかで数多の迷宮に挑んできた訳だが、この世界の迷宮はいささか型破りだと思う。迷宮は歩みを進める度に姿を変え、景色が次々と変化していく。
天井が消え、星空となり、足元が平原へと変化する。そして、しばらく歩くとまた天井が現れ、迷宮らしい通路に戻っていたりするのだ。
区画ごとに変貌する風景を眺めながら、俺は迷宮に対する認識を改めつつあった。
「こんなに景色が変わってたら地図書くの無理なんだけど」
「通路の構造自体は変わってないはずだ」
「えー。ちょっと頭の中の地図と見比べてくれる?」
エレナが描いた地図を見たが、全く合ってなかった。
「全然違うぞ」
「え……嘘でしょ?」
「こっちの台詞だよ。あ、宝箱見つけた」
古びた廃墟っぽい区画を歩いていると、くたびれた宝箱を見つけた。
特に警戒するでもなく開けると、宝石が入ってた。
「これ、もしかして魔石なのか?」
「きっとそうよ! すごい。もう魔石を見つけるなんて」
鑑定してみる。『黒金剛石』と表示された。黒ダイヤ……つまりブラックダイアのことだと思う。魔石とは別物のようだ。
鑑定スキルによる査定では、5万ゴールドと表示されている。金貨5枚分と考えれば、安くはないものだし、十分当たりの範疇だと思う。エレナも嬉しそうにしている。
「持っててくれるか?」
「え、私にくれるの? 綺麗だから嬉しい」
あげるとは言ってないだろ。
でもまあ、取り上げるのも可哀想なのでもうやろう。
「この調子ならあっという間に自由になれるかも」
エレナは気合を入れた。
微笑ましいと思って見つめてたら、周囲に黒い霧が漂い始めた。
危険感知が発動すると同時、俺は剣を抜いた。
「オオオオォォォ」
実体化した魔物は小型の狼と人を掛け合わせたような姿をしている。
『コボルト:Lv7』とステータスが表示された。
リード達を討伐してレベルが23まで上がった俺からすれば、物足りない相手だ。
「エレナは見てるだけでいい。手を出すなよ」
「任せるわ!」
爪を武器に襲い掛かってきた魔物を、俺はロングソードで両断した。
急所攻撃を発動させるまでもなく、魔物は一撃で霧散した。
肉体を維持できなくなり、魔素に戻ったということだろう。
一匹倒して安堵したが、濃霧は更に膨らみ3体のコボルトを作り出した。
高い個体でレベルが9あったが、3体同時に攻撃されても軽くいなすことができた。
「ねえ、私も魔法使っていい!?」
「ああ、魔法で牽制してくれ。止めは俺が刺す」
唸り声を上げ飛び掛かってくるコボルトを両断し、2体目を刺突で倒す。3体目にエレナの魔法が着弾するが、喰らったコボルトは鬱陶しげに手で払うだけで、ダメージは入ってないように見えた。
まあ、一瞬動きを止めただけでも上出来だ。俺は3匹目に向かって疾駆し、首を飛ばしてやった。魔物の死体は霧散し、黒い霧も薄れた。今回の襲撃はやり過ごしたと思ってよさそうだ。
迷宮内は常に魔物が徘徊してると思ったが、魔素が集まって探索者を襲う時だけ実体化しているようだった。よく分からないが、迷宮目線では省エネになるんだろうか?
「すごすぎ……。全然余裕そうだった」
『中級剣術』の効果で剣が馴染んでる。まるで十数年握ってきたかのように馴染んだ剣は、敵を狩る為の最適な動きを身体に教えてくれた。何も考えず、スキルに身体を委ねるだけでよかった。剣を握ったばかりだと言っても信じる者はいないだろう。
「エレナの魔法も役に立ってくれたな」
「牽制程度にはね。でも、ちゃんと強い魔法も身につけたい」
「魔法はどうやって覚えるんだ?」
「え!?」
エレナは驚いたあと、失言だと思ったのか口を押さえた。
「ごめんなさい。あなた記憶喪失だったわね。魔導書を読めば魔法は身につくの」
「そんな簡単な条件なのか」
「ただ、相性があるから、確実に身につくものでもないのよ」
「そうなのか。一冊買えば何度でも読めるものなのか?」
「そうね。かなり値は張るけど」
「高価な上に身につくかは運次第か」
「一応、簡単な魔法ほど身につきやすいって言われてるの。でも初級魔法って使い勝手よくないし、魔導書を買うなら、誰でも使えるマジックアイテムとか、強力な装備を手に入れた方がいいわよね。私は魔法が好きなんだけど」
魔法に憧れはある。俺も使ってみたい。
「魔導書自体もマジックアイテムに分類されるのか?」
「もちろん」
「魔術師はどうやってマジックアイテムを作れるようになるんだ?」
「かつて女神様が地上にいらっしゃった時に、魔法を与えられた者達がいたの。『暁の賢者』と呼ばれる彼らは、『付与』という道具に効果を与える魔法が使えた。今、マジックアイテムを作っているのは、暁の賢者の子孫よ。たんに賢者と呼ばれることが多いわね」
「魔法は遺伝するのか?」
「魔力は遺伝するけれど、魔法は別よ。賢者だけが特別なの。彼らの血筋だけが、自分達の魔法を後世に残すことができる」
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