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27.大司教(下)※三人称
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宰相と別れた大司教は、その足で王子の私室へ向かった。
「早かったな。もう話し合いは終わったのか?」
「ええ、陛下は大変に心配されておいででしたよ」
「どうせリーナについての話だろう」
足を投げ出してソファに座る王子と、にこやかに声をかけるジェルマン。傍から見ると好々爺とその孫のような関係性に見える。実際、2人は深い絆で結ばれており、ジェルマンは魔法の手ほどきを通じて厚い信頼を得ていた。
「妃教育終えたリーナの方が、婚約者に相応しい。父上はいつもそれだからな」
「陛下なりに、殿下のことを大切になさっておいでなのです」
「くだらん。あんな生真面目だけが取り柄の魔法も使えない欠陥品と、心優しく清らかで魔法の才能もあるミーシャ。どちらが国母に相応しいかは明らかだろうに」
「今は堪え時です。愛するミーシャ嬢を幸せにする為にも、公爵家の協力は不可欠です」
ミーシャというのはジェルマンが与えた餌である。ミーシャは心が清らかな男爵令嬢で、信仰に対して疑いの気持ちを微塵も持ってない。信仰心の篤いレオンのことを純粋に尊敬しており、大司教がレオンの熱心な信徒ぶりを伝えるだけで、勝手に好感度が上がっていた。
自尊心の高いレオンは魔法の成績が高く、教会に貢献する度に自分を褒めまくってくれるミーシャを気に入っており、彼女を正妃にすると公言している。
ジェルマンとしては、次期国王であるレオンが宰相よりも自分を重用してくれればいいと考えており、その為にミーシャが後宮に入れれば御の字だと考えていた。だが、リーナが後宮に追いやられるのは、ジェルマンにとっても望まぬことである。
レオンの治世を盤石にする為にも、公爵家の後ろ盾は欲しい。その為には、リーナが正妃となり、ミーシャが後宮に入ることが望ましかった。
問題は山積みだが、歴史上ここまで王家に食い込んだ大司教がいただろうか? ジェルマンは自分の政治的手腕を自画自賛していた。
「公爵は婚約破棄をさせると仰っていました。そして、アシルという者をリーナ嬢の夫にすると。経緯は分かりませんが、アシルが救世主である可能性を考えているようです」
「リーナは迷信に引っ掛かって迷宮に挑むような女だ。おおかた、アシルの口車に乗せられているんだろうな」
「では、殿下がお救いになった方がよろしいでしょうな。そうすれば、婚約破棄の話も立ち消えになるでしょう」
「まったく、ミーシャと違って手の掛かる女だ。大司教、アシルを救世主にする件は絶対に認めるなよ。まずはあの男が救世主の器じゃないってことに気づかせる。そのあと俺が寛大な態度で接すれば、リーナだって思い直すはずだ。あいつは俺の妃になりたくて人生の大半を費やしたような奴だからな」
「それが良い考えでしょう。宰相の説得は私が行います」
その後、ジェルマンはレオンを連れて国王と面会をした。
クロヴィスはリーナに対する態度の悪さを叱責した。
数えるほどしか怒られたことがないレオンにとって、これは珍しいことだ。
「父上、リーナ嬢に対して私は酷い態度を取ってしまいました。謝罪し、もう一度関係を作り直したいと考えております」
「反省し、当面は王宮で謹慎するように。大司教よ、息子をよく説得してくれた」
「いえ、王家と公爵家の繋がりをより強くするべきだと気づいたのは殿下です。私など大したことは言っておりません」
「宰相もお前のように冷静になってくれるといいのだがな。いつも的確な助言を授けてくれる男だが、娘に対しては存外甘さを見せる。国益という観点で話をしてもらわねば困るのだが」
レオンの対応の不味さを棚に上げて、宰相に対する愚痴を漏らす。国王は結局のところ、息子に対する甘さを捨てきれなかった。
「父上、リーナ嬢について相談があるのですが、よろしいでしょうか?」
「うむ。聞こう」
「実は、彼女はアシル・カバネルという男に騙されているようなのです。アシルは自分を救世主だと言い触らし、私の婚約者であるリーナを誘惑しています」
「なんと……。そういえば、カバネル家の嫡男はろくでなしと聞いたことがあるが、まさか救世主を僭称するとは……」
「ご安心ください。私ジェルマンが直々に偽救世主をこらしめてやります」
ジェルマンは大袈裟に胸を張った。
「アシルという男が救世主足りえないことを説けば、おのずとリーナ嬢も目を醒ますはずです」
「そうか。大司教が味方になってくれるなら心強い。アシルが救世主に選ばれると、リーナ嬢はまずます入れ込むはずだ。そうなれば、公爵家は王家と距離を置くかもしれぬ。それだけは避けたいところだ。四大侯爵家と王家が対等に渡り合えているのは、公爵家の後ろ盾があるからだ」
「承知しております。アシルが救世主になる為には、5つの奇跡が必要です。私が奇跡を認めなければ、あやつは救世主にはなり得ません」
「早かったな。もう話し合いは終わったのか?」
「ええ、陛下は大変に心配されておいででしたよ」
「どうせリーナについての話だろう」
足を投げ出してソファに座る王子と、にこやかに声をかけるジェルマン。傍から見ると好々爺とその孫のような関係性に見える。実際、2人は深い絆で結ばれており、ジェルマンは魔法の手ほどきを通じて厚い信頼を得ていた。
「妃教育終えたリーナの方が、婚約者に相応しい。父上はいつもそれだからな」
「陛下なりに、殿下のことを大切になさっておいでなのです」
「くだらん。あんな生真面目だけが取り柄の魔法も使えない欠陥品と、心優しく清らかで魔法の才能もあるミーシャ。どちらが国母に相応しいかは明らかだろうに」
「今は堪え時です。愛するミーシャ嬢を幸せにする為にも、公爵家の協力は不可欠です」
ミーシャというのはジェルマンが与えた餌である。ミーシャは心が清らかな男爵令嬢で、信仰に対して疑いの気持ちを微塵も持ってない。信仰心の篤いレオンのことを純粋に尊敬しており、大司教がレオンの熱心な信徒ぶりを伝えるだけで、勝手に好感度が上がっていた。
自尊心の高いレオンは魔法の成績が高く、教会に貢献する度に自分を褒めまくってくれるミーシャを気に入っており、彼女を正妃にすると公言している。
ジェルマンとしては、次期国王であるレオンが宰相よりも自分を重用してくれればいいと考えており、その為にミーシャが後宮に入れれば御の字だと考えていた。だが、リーナが後宮に追いやられるのは、ジェルマンにとっても望まぬことである。
レオンの治世を盤石にする為にも、公爵家の後ろ盾は欲しい。その為には、リーナが正妃となり、ミーシャが後宮に入ることが望ましかった。
問題は山積みだが、歴史上ここまで王家に食い込んだ大司教がいただろうか? ジェルマンは自分の政治的手腕を自画自賛していた。
「公爵は婚約破棄をさせると仰っていました。そして、アシルという者をリーナ嬢の夫にすると。経緯は分かりませんが、アシルが救世主である可能性を考えているようです」
「リーナは迷信に引っ掛かって迷宮に挑むような女だ。おおかた、アシルの口車に乗せられているんだろうな」
「では、殿下がお救いになった方がよろしいでしょうな。そうすれば、婚約破棄の話も立ち消えになるでしょう」
「まったく、ミーシャと違って手の掛かる女だ。大司教、アシルを救世主にする件は絶対に認めるなよ。まずはあの男が救世主の器じゃないってことに気づかせる。そのあと俺が寛大な態度で接すれば、リーナだって思い直すはずだ。あいつは俺の妃になりたくて人生の大半を費やしたような奴だからな」
「それが良い考えでしょう。宰相の説得は私が行います」
その後、ジェルマンはレオンを連れて国王と面会をした。
クロヴィスはリーナに対する態度の悪さを叱責した。
数えるほどしか怒られたことがないレオンにとって、これは珍しいことだ。
「父上、リーナ嬢に対して私は酷い態度を取ってしまいました。謝罪し、もう一度関係を作り直したいと考えております」
「反省し、当面は王宮で謹慎するように。大司教よ、息子をよく説得してくれた」
「いえ、王家と公爵家の繋がりをより強くするべきだと気づいたのは殿下です。私など大したことは言っておりません」
「宰相もお前のように冷静になってくれるといいのだがな。いつも的確な助言を授けてくれる男だが、娘に対しては存外甘さを見せる。国益という観点で話をしてもらわねば困るのだが」
レオンの対応の不味さを棚に上げて、宰相に対する愚痴を漏らす。国王は結局のところ、息子に対する甘さを捨てきれなかった。
「父上、リーナ嬢について相談があるのですが、よろしいでしょうか?」
「うむ。聞こう」
「実は、彼女はアシル・カバネルという男に騙されているようなのです。アシルは自分を救世主だと言い触らし、私の婚約者であるリーナを誘惑しています」
「なんと……。そういえば、カバネル家の嫡男はろくでなしと聞いたことがあるが、まさか救世主を僭称するとは……」
「ご安心ください。私ジェルマンが直々に偽救世主をこらしめてやります」
ジェルマンは大袈裟に胸を張った。
「アシルという男が救世主足りえないことを説けば、おのずとリーナ嬢も目を醒ますはずです」
「そうか。大司教が味方になってくれるなら心強い。アシルが救世主に選ばれると、リーナ嬢はまずます入れ込むはずだ。そうなれば、公爵家は王家と距離を置くかもしれぬ。それだけは避けたいところだ。四大侯爵家と王家が対等に渡り合えているのは、公爵家の後ろ盾があるからだ」
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