妹に手を出したというカルマを背負って転生する羽目になったけど、スキルを持ってるの俺だけなんで割と余裕な世界でした

みかん畑

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30.結末

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 最後のスキル、天魔降臨がインストールされた。
 発動と同時、俺のステータス画面が文字化けした。
 今まで持っていたスキルは容量の都合か消滅し、使えなくなっている。

「なるほどな。人には過ぎた力ってことか」

 そんなものを入れられた俺の身体は、自壊するしかない。

「なんだ。何が起こってる」

 レオンが変貌していく俺の身体を見て後退りした。
 皮膚がひび割れ、背中からは天使のような白い羽根が生えている。
 身体が作り変えられていく感覚。

 容量を超えたスキルによって肉体は絶えず自壊しているが、不思議と痛みはなかった。
 女神による最後の慈悲だろうか?

 時間はあまり残されていない。
 刻一刻と削られていくのは、俺が持っている残機だ。
 数秒過ぎるごとに残機が一つ砕け散る。

 天魔降臨は常時発動型のパッシブスキルで、自分の意思では止めることもできない。

 全ての残機を使い切った時点で、肉体どころか魂さえも自壊して、俺はこの世界から消滅する。

 死が迫っているが、俺にとって恐ろしいのは、エレナとリーナを失うことだけだ。

「もう一度オメガを喰らわせてやる」

 黒鬼がオメガを発動させるが、天魔となった俺には通じない。
 引力の影響を無視して迫る俺に、レオンの表情が引きつった。

「女神め。せっかく父上を手に掛けて私が頂点に立っていたのに! 邪魔をするなよ!」

 レオンが吼えるが、当然ながら応答はない。
 女神はレオンに微笑まない。

「ホーリー」

 天から降り注いだ光が屋根を貫通して黒鬼に降り注ぐ。
 オメガがブラックホールを生み出す魔法なら、ホーリーは原子を崩壊させる魔法だ。

 光は黒鬼へと降り注ぎ、肉体を分解し始めた。巨体の表面が焼き爛れ、融解していく。生きたまま分解される苦痛に耐えかね、堪らず絶叫している。

「やられて堪るか!!!」

 レオンが黒鬼を黒刀に変化させ、シールドの魔法を使用した。
 だが、光の膜を貫通して、ホーリーはレオンに降り注ぐ。

「うあああぁぁぁ!!!」

 ホーリーはあらゆるモノを貫通する。
 レオンは防ぐのではなく、避けることを優先するべきだった。

 レオンが黒い羽根を生やし、ホーリーの射程圏外へと逃れた。
 爛れたレオンの皮膚は戻らず、美形だった顔が台無しになっている。

「屈辱だよ。ああ、顔が焼けつくように痛い! だが、まだ私は終わってない。死ぬのは君の方だ!」

 俺とレオンは互いに剣を構える。

 リーナの屋敷で初めて会った時は、こうして対峙することなんて考えもしなかった。

「そもそも君さえいなければ、私はリーナを失わずに済んだのに。公爵家の力添えだって得られたんだ。どうして私の邪魔ばかりするんだよ」
「俺は関係ない。自分の失敗を他人のせいにするな」
「君とは何一つ分かりあえないね」
「親を真っ二つにするような奴とは分かりあいたくもない」

 互いに魔力を剣に込める。恐らく、次で最後になる。

 空間が歪んで見える程の力を剣に込め、レオンと向かい合う。滞空しているレオンに合わせて、俺も飛翔した。

「エレナ、リーナ、俺に力を……!」
「ミーシャ、私は君のもとに帰る!」

 決意を抱いて、俺達は空中で激突した。黒刀と聖剣がぶつかり合い、あらゆるものに破壊が及ぶ。余波で完全に部屋が吹き飛び、瓦礫の山と化した。

「自滅して死んでろ!」
「お前も道連れにしてやる!」
「「ウォォォォォ!!!!」」

 神域の力が激突し、超爆発が起こる。謁見の間を中心として、何もかもを消滅させる破滅の光が炸裂した。
 王宮は消し飛び、俺とレオンは極光の中でしばらくは鍔迫り合いを行った。

 だが、最後にはレオンも極光に消え、残されたのは俺一人だった。

「はぁ……はぁ……」

 残りの残機は僅か6だ。
 戦いは終わったが、スキルは解除不能になっている。
 あと数分と経たずに俺は死ぬのか。

 瓦礫の山に座る気にもなれず、謁見の間の跡地を離れる。
 誰か、いないだろうか。
 せめてエレナとリーナへの伝言だけでも頼みたい。

 聖剣解放のスキルは失い、転移魔法は失われた。
 もう、生きて彼女達に会うことはないだろう。

「おめでとう。さすがは救世主といったところか」

 この声は――

「は……?」

 ズブリと、槍が俺の胸を貫いた。

 振り向くと、痩せこけた大司教が立っていた。
 思ったより武闘派だな。
 まさか、槍で突いてくるなんて。

「儚くも散られたレオン様の為に、これは私ができる最後の手向けだ」

 吐血し、膝を折る。
 槍を抜いたジェルマンが、トドメを刺そうと再度槍を向けてきた。

 振り向きがてら、俺は大司教を斬った。

「なっ……。まだ、動けたのか……不覚……」

 天魔の耐久力を甘く見たな。

「しかし……」

 ここまでらしい。
 最後の最後で油断した。

 ずっと、『危険感知』頼りだったからな。
 危険を察知する嗅覚が薄れていたのかもしれない。

 聖剣解放のスキルは失われ、転移もできない。

「ふ……。これが救世主の末路かよ」

 もう疲れた。仰向けに倒れて、快晴の空を見つめる。

(まあ、俺なりにやった方だよな。エレナとリーナには申し訳ないことをしたが)

 散々抱いておきながら、責任も取らずにこの有様だ。
 世界は救えたものの、後悔の方がどちからと言えば多いか。

 ただ、やりきったという感慨だけはある。

 元の日本じゃ味わえないような冒険をして、世界を救った。
 愛しい女ができた。たくさん抱いて、愛し合うことができた。
 無責任かもしれないが、俺は幸せだった。

 社畜として一生を終えるよりかは、まあ悪くない人生だった。
 悪くないよな――

 なんて、思いながら、涙で世界が滲んで見えた。

 ああ、やっぱり最後に2人に会いたかったよな。
 なんて、思ったせいか。

 聖剣が輝いて、

「アシル……!」
「アシル様!」

 光は既に失われたが、声は届く。
 ああ、最後の最後に、粋な計らいだ。

 スキルを失くしたのに、聖剣は俺を所有者と認めてくれたのだろうか?
 だとしたら、頑張った甲斐があったな……。

「起きて! なに死にそうになってるのよ!」
「アシル様、羽根がすごく綺麗です。どうしてこうなったのか、しっかり説明してください」

 愛してるエレナ。
 愛してるリーナ。

 2人の声を聴いて、思わず口元が緩む。
 ああ――本当に、もう十分だ。

 これ以上は何もいらない。
 2人分のぬくもりを感じながら、名残惜しむように……。
 俺はゆっくりと意識を手放した。
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