妹に手を出したというカルマを背負って転生する羽目になったけど、スキルを持ってるの俺だけなんで割と余裕な世界でした

みかん畑

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31.すべて世は事も無し

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「救世主アシル。よく世界を救ってくれましたね」

 ――気がつくと、俺は見知らぬ部屋にいた。
 真っ白い空間には、俺と女神の2人だけがいる。

「どうして俺は生きてるんだ?」
「あなたは命を落としました。ですが、魂だけは辛うじて無事だったのです」
「事前の話と違うような……」

 それこそ、消滅する覚悟で俺は剣を握ったんだ。
 なのに、肉体は失くしたとはいえ、こうして無事でいる。
 嬉しいとは思うが、釈然としない気持ちもある。

「実は、あなたがレオンを倒した直後に、一時的な処理として次代の王に認定させていただきました。分かりづらいと思いますが、イレギュラーな方法で運用していた神獣を、正規の手段で手元に置くことができた。そのおかげで、魂の自壊までは防げたのです」
「神獣? 俺が身体に降ろしてたのは天魔じゃなかったんですか?」
「名前こそ変えてましたが、あなたに降ろしたのは実際のところ神獣でした。もちろん、人間の器で耐えられる力ではありませんので、絶えず自壊しながら戦うことになってしまいました。あなたには本当に酷なことをしてしまったと思います」

 女神の声がトーンダウンしている。まあ、実際酷い戦いではあった。自滅覚悟の特攻で、良くて相打ち、最悪は無駄死にだったからな。元々残機を持たせていたということは、既定路線だったとも言える。

「最初から俺が死ぬと分かっていて送り込んだんですね」
「申し訳ありません! アシルさんには本当に申し訳ないことをしました!」
「謝らないでください。俺としてはむしろ感謝してます。大事な人を最後に守れたんですから」
「うう……。なんて素晴らしい人なのでしょう」

 女神がハンカチで涙を拭ってる。

「救世主アシル。あなたは私の期待に見事応えてみせました。よって、褒美を与えねばなりません」
「だったら地上に戻れたりしませんか?」
「それは……。申し訳ありません。魂には、研鑽の為に新たな世界に生まれという変わるという機能がありまして。どうしても、同じ世界に戻ることはできないんです」
「残機みたいにはいかないんですね」
「あれは、天界に向かう魂を地上に留めている間に肉体を超速再生させていて、厳密には完全に死んでない判定なんです。形としては仮死状態に近いものでして」
「だったら、ご褒美にあなたを抱きたいです」
「えええええ!?」

 女神カナエルは非常に美しい女神だ。エレナとリーナに会えない悲しみを癒す為に抱きたいと思った。

「それはちょっとないんじゃない?」

 と、中性的な声の少女が部屋に転移してきた。この声、どこかで聞いたことがあるような……。

「やあ、こうして会うのは二度目だね。救世主アシル」
「ええっと……」
「天使に扮して一度だけ会いにいったんだけど」
「ああ、あの時の……」

 教会でジェルマンの罪を暴いた時に協力してくれた天使。
 雰囲気は全く違うが、同一人物だったらしい。

「僕はクオン。カナエルと同じ女神の一柱だよ」
「初めまして。その節はどうもありがとうございました」
「いいよいいよ。後輩の女神を助けるのも私の仕事の内だし。ところで、君は元の世界に戻れなくて困ってるみたいだね。僕が助けてあげようか?」
「え、クオン先輩。何をする気ですか?」
「地上に戻す代わりに、さっきのご褒美はなしだからね?」

 釘を刺されるが、俺だってエレナ達の元に戻れるならそれが一番の願いだ。

「分かりました。方法を教えてください」
「魂を凍結した上で、僕が荷物として地上に運べば問題はクリアできるよ。本来、神が地上に降りることは許可されてないんだけどね。僕のように管理神の肩書を持つ者は、視察という名目で地上へ行くことが許されているんだよ」
「クオン先輩は女神の頂点に立つ方なんです。人間一人の為に地上に降りることなんて本来ありえないんですが……」
「可愛い後輩を助けてくれた御礼さ。それに、君はまだあの世界に必要な人間だ。レオンはまだ死んじゃいないからね」

 クオンが俺の手を掴んだ。

「君を地上に連れていく。心配はいらないよ。少し眠ってるだけでいいから」
「レオンはまだ生きてるんですか?」
「君より酷い状態だったから、動けるようになるのは当面先だろうけど、生きてはいるよ。本当に、ただ生きてるだけの状態だけど」
「分かりました。地上に連れていってください」
「せっかく天国行きのチケットを手に入れたのに、君の行い次第ではそれが失くなってしまう可能性もある。それでも君はもう一度地上に行くのかい?」
「もちろんです。もう一度2人に会いたい」
「君、本当にぶれないね」

 クオンが苦笑する。

「思ったんだけどさ。地上に戻る前に、僕と稽古していかない? どれだけ力の差があっても、それを封印する技があってね。どうかな? 興味ない?」
「その力があれば、神獣にも対抗できるんですか?」
「もし僕が君の立場だったら、どれだけの戦力差があっても力を封印することはできたよ」

 エレナとリーナに一刻も早く会いたい気持ちはある。
 しかし、一番大事なのは彼女達を守り切ることだ。

「俺に修行をつけてください。その力で、今度こそ命を落とさずに救世主の使命を全うします」
「オーケー。よく言い切ったね。ところで、実はボロボロだった君の魂を治した時に、いくつか罪人の魂を使わせてもらっててね。性格が極端に変わるとかはないんだけど、今後は業の深い選択肢を取りがちになるかもしれない。欲望に傾きやすくなるって意味でね」

 全然自覚してなかったが、女を抱く方面で確かに欲深くなってたかもしれない。

「だから、さっきのこの娘を抱きたいって発言は見逃してあげる。だけど、また手出そうとしたりしたら承知しないからね?」

 心臓が握りつぶされるようなプレッシャーを味わった。と、同時に一つ思い出したことがあった。

『よくないね。女の子を泣かせるような悪い子には罰を与えないとね』

 転生する前に俺を脅してた声、よくよく思い返してみると、クオンのものだったような……。

 可愛い後輩に手を出す輩は全力で処すからな?
 そんなオーラを確認して、俺は彼女を敵に回さないようにしようと思った。
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