67 / 67
本日の話し合いは、ここまでのようです。
しおりを挟む
ヨナリウスを抱えたまま、その場にうずくまっているユーリ――いや、ユリアーナ。
彼女に差し伸べられた手は、コンラッドのものだった。
「――大丈夫か?」
返事はない。
ただ、その声にびくりと大きく身体が跳ね、ユリアーナはさらに強くヨナリウスを抱きしめた。
まるで、奪われるのを恐れる小動物みたいに。
「母様……?」
さっきまで母と同じ色だと喜んではしゃいでいたヨナリウスは、母の顔を見るなり不安でいっぱいになり、今にも泣きそうな顔へ変わっていった。
――その顔を作ったのが自分だと気づいて、ユリアーナの胸がきりきりと痛んだ。
「ごめんなさい、ごめんなさいヨナ。母様も、ヨナと同じ色でうれしいの。」
笑わなければ。
この子にこんな顔をさせるわけにはいかない。
涙に濡れたヨナリウスの顔を、ユリアーナは両手でそっと包み込んだ。
「ぼくも。母様と同じでうれしい。」
ヨナリウスが、涙だらけでぐちゃぐちゃになった顔のまま、にっこりと微笑んだ。
(私はまた、ユリアーナにかける言葉を間違ってしまった……そして、ヨナリウスにも……)
そんな二人の姿を見つめたコンラッドの顔に、悲壮感が濃く落ちる。
「ご婦人……ユーリ様。ひとまず場所を移しましょう。」
見かねたディーバリーが、今度は穏やかに手を差し出した。
「お話をせねば、何も始まりませんゆえ。」
ユリアーナはこくり、とだけ頷いた。
ヨナリウスを抱き上げ、ディーバリーの手を取って、ゆっくりと立ち上がる。
――その瞬間。
銀髪が灯りを弾き、アメジストの瞳が夜を切った。
ドモンの口がわずかに開いたまま止まり、ケイオスは息を呑む。
そして、不思議な静けさが落ちる。
まるでこの場所に、親子だけが存在するみたいに。
コンラッドだけが、傷ついた顔のまま動けなかった。
その場の誰もが息を止め、次の言葉を失っていた。
そんな周りの状況にまったく気がついていない、コンラッドは。
眠ってしまったヨナリウスと、うつむいたままのユリアーナを寂しそうにじっと眺めていた。
(でも、私は決めたんだ。今度こそ……)
差し出したはずなのに取ってもらえなかった自分の手へ視線を移し、強く握りしめる。
その中で、やっとのことで我に返ったディーバリーが、慌てて咳払いをした。
その咳払いをきっかけに、次々と他の者たちも我に返っていった。
「で……では、移動しましょう。皆様、よろしいですね?」
ディーバリーが皆に声をかけたとき、ヨナリウスが、ふにゃりと目を細めた。
抱き上げた腕の中で、小さな体温がとろけていく。
眠気だけじゃない。
お腹も空いているだろうし、外はとっくに真っ暗になってしまっている。
「今日はもう遅いので、明日にできませんか?」
スヤスヤと小さな寝息を立て始めたヨナリウスを抱きしめながら、ユリアーナはディーバリーに頼み込んだ。
「……失礼。確かに、もう遅い時間でしたね。私としたことが、申し訳ございません。」
ディーバリーが左胸の位置に手を当て、ユリアーナに向かって頭を下げた。
「確かに……あまりにもいろんな事がありすぎて……」
「建物の中にいると、時間感覚が……」
ドモンとケイオスが言うように、ここは窓が一つもなく、誰もが時間を見失っていたのだ。
「使節団一行の方がこちらに着いたのは、夕方くらいでしたしね。」
「お腹も空いたしな。」
そんな声までもが聞こえ、結局ここで一時、話は中断することとなった。
今日のところは、全員がお城にある来客室に泊まることになった。
ただし、シュバリエ皇国の使節団一行の一部は、騎士宿舎になったのだが。
「お城の客室って、こんなにも広いのね……」
ユリアーナはヨナリウスと二人で使うこととなったが、あまりの広さに言葉を失ってしまった。
母子で寝るには広すぎるベッド。
ふかふかの布団にソファー。
隣には入浴室まで完備されている。
調度品もどれも高級そうで、目が眩みそうだった。
食事にと誘われたが、ユリアーナは首を横に振った。
ヨナリウスはぐっすりと眠ってしまっており、起きる気配が全くない。
小さな睫毛が頬に影を落とし、呼吸だけが規則正しい。
「私はこのまま、ヨナリウスと休ませてもらいます。」
そう言って丁寧にお断りした。
使用人は「こちらでヨナリウス様を見ますから、少しでも」と何度も言ってくれたが――今日は無理だ。
いろんな事がありすぎて、胃の奥がきしむ。
スープでさえ、食べられる気がしない。
(本当は今すぐにでも、ヨナを連れてこのままどこかに行きたいのだけれど……)
ここは三階だ。
外へ逃げるのは現実的ではない。
廊下には護衛の気配がある。
守りか監視か。
どちらでも同じだ。
ユリアーナは下着の一部分に指を滑らせた。
そこに縫い付けたマジックバッグの中。
最後の切り札――転移札が一枚。
最後の一枚になってしまったため、使い方は慎重にならなければならない。
今ここで使えば、状況はひっくり返せる。
けれど、ひっくり返した先に待つのが救いだとは限らない。
それに、今日みたいに突然、何かに反応して燃えてしまっても困る。
(アレは一体、何だったのだろう……)
原因は、いくら考えても分からなかった。
(最後の一枚は、慎重に使わないと……)
明日。
ひとまずは正式に、離婚してもらおう。
そう結論づけた瞬間、胸の奥が少し軽くなる。
軽くなった分だけ、どこか空っぽになる。
ベッドにヨナリウスを寝かせ、自分も隣に身を沈めた。
眠りはすぐには来ない。
けれど、子どもの呼吸に耳を澄ませているうちに、意識はゆっくり沈んでいった。
(いざとなったら、最後の一枚を使ってでも……)
ユリアーナは目を閉じたまま、ヨナリウスの小さくも温かな手を強く握りしめた。
*
――壁一枚、隔てた隣室。
ユリアーナとヨナリウスの隣には、あえて“安全のため”という名目で、コンラッドがいた。
「隣室」といっても、繋がっているのは“護衛の控え室”だけだった。
内扉があるのは、護衛の控え室同士だけ。
主の寝室は、同じ廊下に並んでいるのに鍵も通路も別だった。
「――今日のところは、知らせない方がよろしいかと。」
ディーバリーの判断で、ユリアーナとヨナリウスには伝えられていない。
彼もまた食事を断り、一人で部屋に籠もっていた。
隣の二人に、自分の存在がバレないよう、気配を消しながら慎重に動いている。
「はぁ~……」
先ほどから自分の口から出るのは、深い深~いため息ばかり。
それさえも、クッションに顔を押しつけて、声が聞こえないようにと気を配った。
(やっとだ。やっと見つけたのに……)
この五年間。
毎日夢に見るのは、彼女の笑顔だけだった。
そして今度こそ――そう思った。
それなのに。
(あんな顔をさせる気なんて……)
胃が痛い。
空腹の痛みではない。
壁の向こうにいるのは、いまや“妻”ではなく、“拒絶する他人”になりかけている人間だ。
(……また、失敗した)
何度目だ。
言葉を尽くせば尽くすほど、距離は開いた。
近づこうとした手は、怖がらせただけだった。
コンラッドはソファーに深く腰を落とし、両手で顔を覆った。
反省会という名の、拷問が始まる。
何を言うべきではなかったのか。
何を言えばよかったのか。
そもそも、言葉でどうにかできる段階なのか。
守りたいだけなのに、やっていることは監視と変わらない。
答えは出ない。
出ないのに、考えることだけは止まらない。
壁の向こうは静かだ。
静かすぎて、恐ろしい。
(眠っているのだろう。あの子と一緒に)
ユリアーナとも、ヨナリウスとも、自分はたった数日しか過ごしたことがない。
そして今日――ヨナリウスの母が、彼女だと分かった。
本来なら喜ぶべきことのはずなのに、現実は最悪だった。
(明日……)
明日こそ、きちんと話し合おう。
(話し合って、今度こそ……)
コンラッドは唇を噛み、暗闇の中でひとり、呼吸を整えた。
彼女に差し伸べられた手は、コンラッドのものだった。
「――大丈夫か?」
返事はない。
ただ、その声にびくりと大きく身体が跳ね、ユリアーナはさらに強くヨナリウスを抱きしめた。
まるで、奪われるのを恐れる小動物みたいに。
「母様……?」
さっきまで母と同じ色だと喜んではしゃいでいたヨナリウスは、母の顔を見るなり不安でいっぱいになり、今にも泣きそうな顔へ変わっていった。
――その顔を作ったのが自分だと気づいて、ユリアーナの胸がきりきりと痛んだ。
「ごめんなさい、ごめんなさいヨナ。母様も、ヨナと同じ色でうれしいの。」
笑わなければ。
この子にこんな顔をさせるわけにはいかない。
涙に濡れたヨナリウスの顔を、ユリアーナは両手でそっと包み込んだ。
「ぼくも。母様と同じでうれしい。」
ヨナリウスが、涙だらけでぐちゃぐちゃになった顔のまま、にっこりと微笑んだ。
(私はまた、ユリアーナにかける言葉を間違ってしまった……そして、ヨナリウスにも……)
そんな二人の姿を見つめたコンラッドの顔に、悲壮感が濃く落ちる。
「ご婦人……ユーリ様。ひとまず場所を移しましょう。」
見かねたディーバリーが、今度は穏やかに手を差し出した。
「お話をせねば、何も始まりませんゆえ。」
ユリアーナはこくり、とだけ頷いた。
ヨナリウスを抱き上げ、ディーバリーの手を取って、ゆっくりと立ち上がる。
――その瞬間。
銀髪が灯りを弾き、アメジストの瞳が夜を切った。
ドモンの口がわずかに開いたまま止まり、ケイオスは息を呑む。
そして、不思議な静けさが落ちる。
まるでこの場所に、親子だけが存在するみたいに。
コンラッドだけが、傷ついた顔のまま動けなかった。
その場の誰もが息を止め、次の言葉を失っていた。
そんな周りの状況にまったく気がついていない、コンラッドは。
眠ってしまったヨナリウスと、うつむいたままのユリアーナを寂しそうにじっと眺めていた。
(でも、私は決めたんだ。今度こそ……)
差し出したはずなのに取ってもらえなかった自分の手へ視線を移し、強く握りしめる。
その中で、やっとのことで我に返ったディーバリーが、慌てて咳払いをした。
その咳払いをきっかけに、次々と他の者たちも我に返っていった。
「で……では、移動しましょう。皆様、よろしいですね?」
ディーバリーが皆に声をかけたとき、ヨナリウスが、ふにゃりと目を細めた。
抱き上げた腕の中で、小さな体温がとろけていく。
眠気だけじゃない。
お腹も空いているだろうし、外はとっくに真っ暗になってしまっている。
「今日はもう遅いので、明日にできませんか?」
スヤスヤと小さな寝息を立て始めたヨナリウスを抱きしめながら、ユリアーナはディーバリーに頼み込んだ。
「……失礼。確かに、もう遅い時間でしたね。私としたことが、申し訳ございません。」
ディーバリーが左胸の位置に手を当て、ユリアーナに向かって頭を下げた。
「確かに……あまりにもいろんな事がありすぎて……」
「建物の中にいると、時間感覚が……」
ドモンとケイオスが言うように、ここは窓が一つもなく、誰もが時間を見失っていたのだ。
「使節団一行の方がこちらに着いたのは、夕方くらいでしたしね。」
「お腹も空いたしな。」
そんな声までもが聞こえ、結局ここで一時、話は中断することとなった。
今日のところは、全員がお城にある来客室に泊まることになった。
ただし、シュバリエ皇国の使節団一行の一部は、騎士宿舎になったのだが。
「お城の客室って、こんなにも広いのね……」
ユリアーナはヨナリウスと二人で使うこととなったが、あまりの広さに言葉を失ってしまった。
母子で寝るには広すぎるベッド。
ふかふかの布団にソファー。
隣には入浴室まで完備されている。
調度品もどれも高級そうで、目が眩みそうだった。
食事にと誘われたが、ユリアーナは首を横に振った。
ヨナリウスはぐっすりと眠ってしまっており、起きる気配が全くない。
小さな睫毛が頬に影を落とし、呼吸だけが規則正しい。
「私はこのまま、ヨナリウスと休ませてもらいます。」
そう言って丁寧にお断りした。
使用人は「こちらでヨナリウス様を見ますから、少しでも」と何度も言ってくれたが――今日は無理だ。
いろんな事がありすぎて、胃の奥がきしむ。
スープでさえ、食べられる気がしない。
(本当は今すぐにでも、ヨナを連れてこのままどこかに行きたいのだけれど……)
ここは三階だ。
外へ逃げるのは現実的ではない。
廊下には護衛の気配がある。
守りか監視か。
どちらでも同じだ。
ユリアーナは下着の一部分に指を滑らせた。
そこに縫い付けたマジックバッグの中。
最後の切り札――転移札が一枚。
最後の一枚になってしまったため、使い方は慎重にならなければならない。
今ここで使えば、状況はひっくり返せる。
けれど、ひっくり返した先に待つのが救いだとは限らない。
それに、今日みたいに突然、何かに反応して燃えてしまっても困る。
(アレは一体、何だったのだろう……)
原因は、いくら考えても分からなかった。
(最後の一枚は、慎重に使わないと……)
明日。
ひとまずは正式に、離婚してもらおう。
そう結論づけた瞬間、胸の奥が少し軽くなる。
軽くなった分だけ、どこか空っぽになる。
ベッドにヨナリウスを寝かせ、自分も隣に身を沈めた。
眠りはすぐには来ない。
けれど、子どもの呼吸に耳を澄ませているうちに、意識はゆっくり沈んでいった。
(いざとなったら、最後の一枚を使ってでも……)
ユリアーナは目を閉じたまま、ヨナリウスの小さくも温かな手を強く握りしめた。
*
――壁一枚、隔てた隣室。
ユリアーナとヨナリウスの隣には、あえて“安全のため”という名目で、コンラッドがいた。
「隣室」といっても、繋がっているのは“護衛の控え室”だけだった。
内扉があるのは、護衛の控え室同士だけ。
主の寝室は、同じ廊下に並んでいるのに鍵も通路も別だった。
「――今日のところは、知らせない方がよろしいかと。」
ディーバリーの判断で、ユリアーナとヨナリウスには伝えられていない。
彼もまた食事を断り、一人で部屋に籠もっていた。
隣の二人に、自分の存在がバレないよう、気配を消しながら慎重に動いている。
「はぁ~……」
先ほどから自分の口から出るのは、深い深~いため息ばかり。
それさえも、クッションに顔を押しつけて、声が聞こえないようにと気を配った。
(やっとだ。やっと見つけたのに……)
この五年間。
毎日夢に見るのは、彼女の笑顔だけだった。
そして今度こそ――そう思った。
それなのに。
(あんな顔をさせる気なんて……)
胃が痛い。
空腹の痛みではない。
壁の向こうにいるのは、いまや“妻”ではなく、“拒絶する他人”になりかけている人間だ。
(……また、失敗した)
何度目だ。
言葉を尽くせば尽くすほど、距離は開いた。
近づこうとした手は、怖がらせただけだった。
コンラッドはソファーに深く腰を落とし、両手で顔を覆った。
反省会という名の、拷問が始まる。
何を言うべきではなかったのか。
何を言えばよかったのか。
そもそも、言葉でどうにかできる段階なのか。
守りたいだけなのに、やっていることは監視と変わらない。
答えは出ない。
出ないのに、考えることだけは止まらない。
壁の向こうは静かだ。
静かすぎて、恐ろしい。
(眠っているのだろう。あの子と一緒に)
ユリアーナとも、ヨナリウスとも、自分はたった数日しか過ごしたことがない。
そして今日――ヨナリウスの母が、彼女だと分かった。
本来なら喜ぶべきことのはずなのに、現実は最悪だった。
(明日……)
明日こそ、きちんと話し合おう。
(話し合って、今度こそ……)
コンラッドは唇を噛み、暗闇の中でひとり、呼吸を整えた。
73
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(2件)
あなたにおすすめの小説
結婚して5年、冷たい夫に離縁を申し立てたらみんなに止められています。
真田どんぐり
恋愛
ー5年前、ストレイ伯爵家の美しい令嬢、アルヴィラ・ストレイはアレンベル侯爵家の侯爵、ダリウス・アレンベルと結婚してアルヴィラ・アレンベルへとなった。
親同士に決められた政略結婚だったが、アルヴィラは旦那様とちゃんと愛し合ってやっていこうと決意していたのに……。
そんな決意を打ち砕くかのように旦那様の態度はずっと冷たかった。
(しかも私にだけ!!)
社交界に行っても、使用人の前でもどんな時でも冷たい態度を取られた私は周りの噂の恰好の的。
最初こそ我慢していたが、ある日、偶然旦那様とその幼馴染の不倫疑惑を耳にする。
(((こんな仕打ち、あんまりよーー!!)))
旦那様の態度にとうとう耐えられなくなった私は、ついに離縁を決意したーーーー。
私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました
放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。
だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。
「彼女は可哀想なんだ」
「この子を跡取りにする」
そして人前で、平然と言い放つ。
――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」
その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。
「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」
「お幸せに」と微笑んだ悪役令嬢は、二度と戻らなかった。
パリパリかぷちーの
恋愛
王太子から婚約破棄を告げられたその日、
クラリーチェ=ヴァレンティナは微笑んでこう言った。
「どうか、お幸せに」──そして姿を消した。
完璧すぎる令嬢。誰にも本心を明かさなかった彼女が、
“何も持たずに”去ったその先にあったものとは。
これは誰かのために生きることをやめ、
「私自身の幸せ」を選びなおした、
ひとりの元・悪役令嬢の再生と静かな愛の物語。
婚約辞退いたします。だってこの国、沈みますもの
鍛高譚
恋愛
「婚約はお断りいたします――この国は近い将来、崩壊しますので」
そう言い放ったのは、社交界でも目立たない子爵令嬢、マリン・アクアリウム。
ある日、とある舞踏会に突如現れた王太子ガイア殿下。
誰もが驚く中、なんと彼はマリンに婚約を申し出る。
周囲は騒然。「子爵令嬢が王太子妃!?」「断る理由などないはず!」
――だが、彼女は断った。「この国は、もうすぐ滅びます」――と。
そんな不吉な言葉を口にしたことで、彼女は“狂言癖のある嘘つき令嬢”と噂され、
家族にさえ見放され、ついには国外追放の身に。
だが、彼女の予言は本物だった――
数年後、王国に未曾有の大災厄が迫る。
国土が崩れ、海に沈む都市。人々が絶望する中、思い出されるのは、
あの舞踏会でただひとり“滅び”を告げた少女の名。
「彼女なら、この国を救えるかもしれない……」
皮肉にも“追放令嬢”マリンは、再び王都に呼び戻され、
滅びゆく国で最後の希望として担ぎ上げられる。
信じてもらえなかった過去。
それでも人々の命を守ろうと奔走するマリン。
そして、王子ガイアが差し伸べた、あの日と変わらぬ手。
――たとえ国が滅んでも、あなたとともに歩んでいきたい。
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
王妃さまは断罪劇に異議を唱える
土岐ゆうば(金湯叶)
恋愛
パーティー会場の中心で王太子クロードが婚約者のセリーヌに婚約破棄を突きつける。彼の側には愛らしい娘のアンナがいた。
そんな茶番劇のような場面を見て、王妃クラウディアは待ったをかける。
彼女が反対するのは、セリーヌとの婚約破棄ではなく、アンナとの再婚約だったーー。
王族の結婚とは。
王妃と国王の思いや、国王の愛妾や婚外子など。
王宮をとりまく複雑な関係が繰り広げられる。
ある者にとってはゲームの世界、ある者にとっては現実のお話。
七年目の裏切り 〜赴任先の夫から届く愛の手紙は、愛人の代筆でした〜
恋せよ恋
恋愛
「君は僕の最愛だ。もう二度と、君を危険に晒したくない」
命懸けの出産後、涙を流して私を抱きしめた夫ジュリアン。
その言葉通り、彼は「私を大切にするため」に夜の営みを断った。
私は、女としての寂しさを「愛されている誇り」に変え、
隣国へ赴任した夫を信じて二人の子供と家を守り続けていた。
毎週届く、情熱的な愛の手紙。タイプライターで綴られた
その愛の言葉を、私は宝物のように抱きしめていた。
……しかし、その手紙は「裏切り」だった。
夫が異国の地で、愛人と肌を重ねながら綴らせていた「偽りの愛」。
身分を隠して夫の赴任先の隣国へと向かった私が見たのは……。
果たして、貞淑な妻・メラニアが選んだ結論は……。
子供たちのため結婚生活の継続か、それとも……。
🔶登場人物・設定は筆者の創作によるものです。
🔶不快に感じられる表現がありましたらお詫び申し上げます。
🔶誤字脱字・文の調整は、投稿後にも随時行います。
🔶今後もこの世界観で物語を続けてまいります。
🔶 『エール📣』『いいね❤️』励みになります!
勝手にサインしろと仰いましたので、廃嫡書類に国璽を押して差し上げました
鷹 綾
恋愛
「確認? 面倒だ。適当にサインして国璽を押しておけ」
そう言ったのは、王太子アレス。
そう言われたのは、公爵令嬢レイナ・アルヴェルト。
外交も財政も軍備も――
すべてを裏で処理してきたのは彼女だった。
けれど功績はすべて王太子のもの。
感謝も敬意も、ただの一度もない。
そして迎えた舞踏会の夜。
「便利だったが、飾りには向かん」
公開婚約破棄。
それならば、とレイナは微笑む。
「では業務も終了でよろしいですね?」
王太子が望んだ通り、
彼女は“確認”をやめた。
保証を外し、責任を返し、
そして最後に――
「ご確認を」と差し出した書類に、
彼は何も読まずに署名した。
国は契約で成り立っている。
確認しない者に、王の資格はない。
働きたくない公爵令嬢と、
責任を理解しなかった王太子。
静かな契約ざまぁ劇、開幕。
---
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
『愛さない宣言した方』の公爵閣下、冒頭で『侯爵』になってますよ。
ご指摘ありがとうございました。修正させていただきます。誤字脱字を教えてもらえるのは本当に助かります。ありがとうございます。
旦那たちが戦慄している…(笑) 公爵領には隠れアマゾネスが?
そうですね。気がついたらそうなっていました。私が強い女性が好きだからでしょうか?強い女性はお好きですか?