銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

084 幾多の命と一つの命

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「質問があるなら聞くよ」
 
 パジャマに着替えてベッドに腰掛けたオレの両手を取って、ルイが問い掛けてきた。訊きたいことはたくさんあるんだ。でもよ。気になることがあるんだ。
 
「妖魔が生徒達を捕食するってどういうことだよ?」
「ここにいる生徒は、普通クラスにいる生徒でも、強い魔力を持ってる。共学校に通っていない時点で並より上なんだよ。妖魔は魔力を持つ者を捕食することで、その捕食した者の魔力を奪うことができる。それを魔法省は危惧してるんだ」
 
 嘘だろう?!
 
「父さんがわざわざ手間を掛けてまであの方法で知らせてきたのは痕跡を残さないためなんだ。下手な方法をとるとあの人に読まれる。妖魔個々の能力は低くても集まれば膨大な力だから。あの人の庇護下にあるならやりたい放題だよ」
 
 生唾を飲み込んで、ルイを見詰める。
 
「オレがルイの知識に耐えられなかったら?」
「大丈夫だよ。絶対にサクヤは耐えられる。ベニがある程度肩代わりをしてくれるしね」
「どういうことだ?」
「ベニはサクヤと全てを共にする。ベニはクレナイが持つたくさんの命の一つなんだ」
 
 なにを言ってるのか分からない。クレナイの命の一つってなんだよ?
 
「ベニは炎の転生をしない。サクヤの命が尽きたときに一緒にその命を終える」
「待てよ! ベニは火の鳥なんだろう?!」
「火の鳥だよ。でも、サクヤの為に生まれて、サクヤと共にその命を終えるんだ」
「嘘だ!」
「本当だよ。クレナイが最近、教えてくれたんだ。クレナイの中の一つの命がサクヤの為に個の命を望んだ。だから、与えたって」
 
 オレの横にいるベニに視線を向けた。ベニはいつものようにポテッとそこにいる。
 
「だから、孵化するときに、サクヤの魔力が必要だったんだよ」
 
 こいつはオレのためだけにここにいるのかよ。
 
「キュウ」
「後悔してねぇのかよ?」
「キュウキュウ!」
 
 いつもながら、躊躇いねぇのな。
 
「どれくらいかかるんだよ?」
「分からない。できる限り、サクヤには基本中の基本を教えてきたよ。脳に負担がかからないように。それでも、分からないんだ。今まで、知識の譲渡の禁呪文を使った例がない。私の魔力もそこに関しては拾ってきていない。ただ、呪文そのものは存在しているから、使われたことはあるはずなんだ。ただ、禁呪文になったということは危険が伴うからだと思う。本人の能力以上の知識を詰め込めば、精神が持たない」
 
 オレはルイの手を強く握り締めた。もし、オレとルイの能力に差があったら……。
 
「サクヤは大丈夫だよ。杖が言っていたでしょう。私と同じ強さの魔力だって。ただ、質が真逆なだけだよ。それに、サクヤの魔力は癒しを得意としてる。もし、負荷がかかったら、勝手に修復しようと動くだろうし」
 
 それ、何度も聞くけどさ、本当なのかよ?
 
「癒しの魔力は本当に特殊なんだよ。ユエのように半々の場合が多いんだ。私の両親もそうだしね。ただ、どちらかに傾倒するんだよ」
「でもさ。先生がユエも特殊とか言ってただろう?」
「それは隠れの魔力だからだよ。鍵を外さなければ、ユエは破壊の魔力の方が強かったんだ。鍵を外すことで半々になったんだよ」
「じゃあ、オレは?」
「サクヤは本当に稀なんだ。破壊の魔力を全く持っていないんだよ。ただ、癒すためだけの魔力なんだ」
 
 それじゃあ、知識を渡されたって、何も役に立たないじゃないか。癒すだけって。
 
「サクヤはいるだけで妖魔を滅することができる。大丈夫だから」
 
 それ、前にも聞いた。ルイが穏やかに微笑んで、いつまでも時間を使うのは駄目なんだと感じた。しっかりルイを見据えて、頷いてみせた。
 
「杖を出して」
 
 その言葉にオレはルイの手を離して、ベニとクレナイも小さく身じろぐ。一つ深呼吸して指を鳴らし杖を出した。
 
 
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