銀の鳥籠

善奈美

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銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

083 急展開

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 学校生活は細かいことを気にしなきゃ、何事もなく過ぎていった。オレが授業についていけてないのを教師連中は分かっていて、隣りでルイが教えていても見て見ぬ振りをしてくれてた。
 
 その生活に変化があったのは、冬の気配が色濃くなってきた頃だ。授業中にいきなりクレナイがルイの前に現れた。一枚の手紙を携えて。それを見たルイの顔色が変わった。読んだわけじゃねぇ。その手紙本体を視界に収めてすぐだ。
 
「すいません。サクヤと二人で席を外します」
 
 口早に教師にそう告げて、ルイは授業を受けている教師の部屋からオレの手を取って出て行った。なにがどうなってんだよ?!
 
「父さんが?」
「ギャアギャア!」
「見れば分かるって?」
「ギャア」
 
 へ? 読むんじゃねぇの?!
 
 慌てたように寮の部屋に戻って、手に持っていた教科書やらをテーブルの上に置いたルイは手紙を開封するために手を伸ばした。
 
「サクヤ、よく聞いて。この手紙は一回しか見られない。だから、伝えてきたことは重要で、誰かに知られてはならないことなんだよ」
「どういうことだよ?」
「魔法省内で騒ぎになるなにかが起こったんだ」
 
 封を切ると中に入っていたのは紙じゃない。ふわりと霧のような煙のようなものが中から漂ってきた。それが一つの形をとる。
 
「クレハさん?」
『危惧していたことが起こった。あの人がこちらの次元に姿を現した。多数の妖魔を引き連れていて、正確な場所が特定できない。魔法省でこのままでは大変なことになると判断した。サクヤの勉強だけでは間に合わない。禁呪文の使用許可が出た。ルイの知識をサクヤと共有する魔法を使え。ルイなら循環の魔法を利用すればできるだろう』
「……早すぎる」
『当然、授業を受けることができなくなるだろう。サクヤはほぼ、眠りにつくことになる。魔法省の方から学校側に連絡が入るようになっている。本来なら守ってやりたいが、こればかりは二人に対応を願うしかない。申し訳ない』
 
 ルイが難しい顔をしている。それに早いって。
 
『こちらでもできるだけ場所の特定をするつもりだが、あちらの方が確実に上手だ。学校内に魔法省地下の番人が常駐することになる。それについては反発も考えられるが、二人だけの問題じゃない。あの人の狙いはサクヤだが、妖魔達の中には生徒達を捕食しようとする輩もいるだろう』
 
 クレハさんの姿が薄くなる。一瞬垣間見えたその表情。それは苦痛をうつしていた。
 
『親としてなにもできない。本当に済まないと思っている』
 
 その言葉を最後に、姿が掻き消えた。ルイはジッとクレハさんの姿があった場所を睨み付けていた。
 
「ルイ?」
 
 制服の裾を引いて、名前を呼んだ。ルイは我に返ったようにオレに視線を向けてきた。
 
「ごめん。時間がなくなった。まだ、魔法の基本が理解できていないのに、私の知識をサクヤに渡さないといけない」
 
 クレハさんが言ってたことだろう? それと魔法の基本がどう繋がるんだよ?
 
「私の知識は魔法だけじゃない。魔法にしても初級から上級、応用と、際限なく溢れている。攻撃魔法から回復魔法、補助魔法、特殊魔法。私が扱えない知識も含まれてる」
 
 ルイがやたらと基本と言っていたのは、まさか……?!
 
「こうなるって分かってたのかよ?」
「分かっていたよ。サクヤは他の生徒達が十年近く掛かって得ていたものをたかだか半年で得られるとは考えていなかったでしょう?」
「当たり前だ!」
 
 そんなことを言ったら、他の奴等に失礼だろう!
 
「あの人はサクヤが無知なうちに手に入れたいんだよ。抵抗されたくないからね」
 
 ルイの言葉に、オレは目を見開いた。
 
 
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