銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
156 / 281
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

156 ウィル オ ウィプス

しおりを挟む
「好きで来たんじゃねぇけど」
 
 ちびっ子爺さん、もとい! ウィル オ ウィプスにオレは不本意なんだと態度で示しつつ言ってみた。
 
『ふむ。精霊王の所望はあの足を踏み外した魔法使いの一族か?』
「そうみたいだけどさ」
『そこにいる者は実験で孵化した存在ではないな? 少しばかり波動が違う。で、お前はまた、変わった魔力を持っているな?』
「好きでこう生まれたんじゃねぇよ」
 
 オレの言葉に軽く目を見開いたウィル オ ウィプス。どこが目かよく分んねぇけど。
 
『お前は卵から孵化した魔法使いではないのか?!』
「違うけど」
 
 ウィル オ ウィプスは少し驚いた? ような仕草をした。そして、リッカとコウガに視線? を向けて直ぐ、オレに向き直る。
 
『たまたま、ここに閉じ込められてな。結界を張ったのが魔法使いの中でも特殊な一族だったらしく、儂も出られんくてな』
「妖精? 精霊?」
『儂はどっちになるのか? だがな、妖精も精霊も紙一重よ』
 
 ウィル オ ウィプスはカラカラと楽しげに笑う。微妙に純粋さを感じねぇのは気のせいか?
 
『なにを感じ取っておる?』
「今まで見たどの精霊や妖精よりも黒い!」
 
 オレは思ったままを口にした。一瞬の沈黙。それを破ったのはウィル オ ウィプスだった。
 
『隠し事が出来ぬ奴だな。まあ、いい。儂も本当の意味で外に出たいのでな。協力してやる』
「なあ、なんで、この屋敷、廊下しかねぇの?」
『そこの者が迷宮と言ってただろう。この屋敷の主人が、どうやってもお前達に会いたくないらしい。当たり前といえば当たり前だ』
「それは感知しているということか?」
 
 リッカが唸るように言った。
 
『ふむ。お前がここの結界を解いた奴だな。変な魔法は違う者が解いたようだが』
「まあな」
『あの者は少々、厄介だぞ。自分の身から出た錆とは言え、一族の者を巻き込み、挙句、この屋敷に入り込んだ者を手当たり次第に取り込んだ。儂の仕事を増やしおったからな』
 
 ウィル オ ウィプスの仕事ってなんだ?
 
『浮かばれぬ魂や罪を犯した者の魂を本来の場所に導く。愚者の火に相応しい仕事だろう』
 
 ……なんで黒く感じたのか、今の言葉で納得。
 
「この迷宮を作り出しているのは?」
 
 ルイは探るようにウィル オ ウィプスに問い掛ける。
 
『そんなもの。あの愚か者に決まっておるだろう?』
「後悔から自殺したはずでしょう?」
 
 コウガが納得できないように反論する。
 
『後悔……。それはちと違うぞ』
 
 ……話が違うんじゃねぇの。
 
『あやつは自慢していた。破壊の魔力だけを持つ存在を、そう、意図的に創り出せたと。そのあとの惨劇をお前達は知らないだろう?』
「知らないだろう、ってさ、身をもって体験した後だけど」
 
 知らないどころか、ルイは被害者でオレはそのせいでここにいんだよ。オレが魔法使いになったのは、あいつのせいなんだからさ。本当にここに閉じ込められてたんだな。外でなにがあったのか、全く分かってねぇんだもん。
 
『体験?』
「それはいいだろう?」
『よくはないぞ。隠さねばならないことか?』
「口外は極力避けたいのが本音だよ」
 
 ルイが憮然と言い放つ。
 
『儂は人ではない』
「そんなのは言われなくても分かるよ」
 
 コウガが当たり前のことを言ったウィル オ ウィプスにうんざりしたように言った。
 
『仕方ない。外に出れば自ずと知れるだろう』
 
 やっぱりか。ウィル オ ウィプスは手に持っていた青白い鬼火を廊下の先に向け、次いで背後に向けた。小さく唸って、次は左右の壁に鬼火を向ける。オレ達について来るように言って、スッと右の壁に姿を消した。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

神官姫と最強最弱の王

深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。 隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。 ※週一回 マイペース更新

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...