銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
189 / 281
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

189 あれで焦ってる

しおりを挟む
 風紀委員長も何がしたいんだか。部屋にまで引き摺り込んだんだし、目的なんてはっきりしてるよな。ルイや副会長みたいに切羽詰まってないから、のんびり構えてんだろうけど。
 
「ライカに逆らえなかった俺が思うに、折れた方が身のため」
 
 ユエの言葉は御尤もだ。
 
「ユエはずいぶん簡単に折れたよな?」
 
 セイトが疑うような視線を向けてくる。
 
「だってさ、簡単に鍵を外しちゃったんだもん。逆らう以前の問題だよ」
 
 ユエの告白に固まったセイト。予想外の言葉だったんだろうな。
 
「あれ、簡単に外したのか?」
「一瞬で。逆らう気力も削がれたっていうの」
「恐ろしい人だな」
「会長は外して掛け直してもいたけどな」
「は?!」
 
 セイトが思いっきり目を見開いてオレを凝視。そんなに見られたら照れるだろう。
 
「オレもユエと同じだったみてぇ」
「化け物並みの珍獣魔力が、更に隠れてたのか?」
「その言い方もどうよ?!」
 
 癒しの魔力のみ、はかなり珍しいのは分かるけど、オレ的にはずっとこの魔力で生きてきたんだ。珍獣扱いは非常に不愉快だ。
 
「大体さ。部屋に連れ込まれて、じんわりじんわり、真綿で首絞めるように追い詰められてるって、自覚あるんだろう?」
「……それは、気がついてはいる」
「絶対、委員長がワタワタしてるの楽しんで見てんじゃね?」
 
 オレの言葉にセイトがガックリと肩を落とした。外堀は完全に埋められてんだしさ。大体、親に話が通ってるあたりで、逃げるのは不可能だって。風紀委員長はそこを狙ったんだろうし。
 
「本人通り越して、親を味方につけたんだろう? その時点で、負け決定じゃねぇの?」
 
 風紀委員長ももっと早くにセイトに会っていれば、親を味方につけはしなかっただろうな。学校生活も一ヶ月切ってんだし。セイトが実家に戻ってしまうと、不都合なんだろうし。下手したら卒業後に相手を見つける可能性もある。
 
「あれで、焦ってんだと思うけど」
「焦ってるようには、どんなに斜めに見ても見えない!」
「焦ってるだろう? 親を味方につけたって時点で焦ってんだよ」
 
 ルイと副会長は本当に切羽詰まってた。魔力に呑まれる寸前だ。だから、強硬手段に出たんだ。今は納得してるけど、あの時は本当にどうして?! って、思ったからな。
 
「ルイから聞いたけどさ、内科は癒しの魔力で、外科は破壊の魔力の魔法使いが多いって」
「そうだ。内科は魔法を使うことが多いが、外科は人の手で処理する場合が多い。ある意味、技術職だ」
 
 そう言うことか。
 
「あれ? 薬とかはまた、別か?」
「おまっ、俺の幼馴染みでそこ知らないのか?!」
「俺はあくまで幼馴染みで、そんなん、知る必要ないじゃん」
 
 ユエ、軽い。
 
「薬は薬師の領分だ。簡単な調合や緊急を要するときならするけどな」
 
 なるほど。分担してんだな。
 
「諦めて受け入れたら」
 
 ユエがジッとセイトを見詰めて諭すように言う。
 
「それに、病院を使う人にしたら、内科と外科が一緒だと便利だろうし。何より、他の科も併設されたら便利だろう」
「患者側からすれば一つの建物の中に多くの科があるのは良いことだっていうのは分かってるんだ」
 
 問題はセイトの気持ちだよな。魔法使いって気持ちが後回しだし。まず、既成事実で、気持ちは後から育むって感じだ。周りはオレ達の結婚式で風紀委員長が求愛したから、いつ纏まるかって固唾を飲んで見守ってる。まあ、ユエのように野次馬が多いと思うけどさ。
 
「それに、俺が受け入れる側だっていうのが、まだ、ちょっと……」
「慣れると受ける方も良いと思う」
 
 ユエは無害な微笑みをセイトに向け、セイトはその言葉に完全に固まった。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

神官姫と最強最弱の王

深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。 隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。 ※週一回 マイペース更新

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...