銀の鳥籠

善奈美

文字の大きさ
193 / 281
銀の鳥籠Ⅰ ルイ&サクヤ編

193 染まる色

しおりを挟む
 ルイの言葉に言葉を失う。そうだ。過去の出来事がなければ、オレはここにはいないんだ。その事実が、急に現実味を帯びた。
 
「調べれば、特A生は私達になにかしら関係のある存在なんだと思うよ。調べる気はないけどね」
 
 ルイは静かに告げた。そうだよな。もう、終わったことだし。穏やかに話していたルイがいきなり、眉間に皺を寄せた。表情が険しいし。
 
「……嘘でしょう?」
 
 ルイがいきなり腰を上げた。どうしたんだ?
 
「トウヤ。一時間したら、ユエを私達の部屋に連れてきて」
「どうかしたのか?」
「それも後で」
 
 ルイはそう言うとオレの腕を取った。
 
「部屋に魔法使いの気配だよ」
 
 オレの耳元でルイが囁く。魔法使いの気配って、クレハさんとカエデさんか? でも、さっき、ユエを連れてくるように言ったよな? 特Aの部屋を足早に出て、ルイは振り返る。
 
「ライカだよ。まだ、三日しか経ってない。早すぎるし、それに……」
「なんだよ?」
「普通じゃない」
 
 ルイは指を鳴らし杖を出すと、移動魔法を使った。いきなり視界が変わって、目に飛び込んで来たモノ。ルイがすぐに動いた。
 
「ライカ?!」
「ルイ? さすがに今回は無傷ってわけにはいかなかったよ」
「なに悠長なことを言ってるの?!」
「……サクヤのおかげで助かったよ」
 
 オレは慌てて指を鳴らすと杖を出す。ルイがオレを連れてきたのは副会長の怪我をなんとかするためだ。
 
「なに無茶してんだよ!」
「……無茶をしないと駄目だった。ドラゴンに説明して、納得してもらいはしたけど、俺の力を試される。生きるのに飽いているとは言っていたけど、命を捨てる気はないってね……」
 
 そんなの当たり前だろう?!
 
「傷を塞ぐから。出血が止まってねぇ」
「お願い」
「……ルイにも感謝してる。あの水晶を渡されなかったら、ここに移動できなかった」
 
 いつの間にそんな物渡してたんだ? オレは息を整えて魔法の詠唱を始める。オレが近くにいれば怪我の治りは早いけど、すぐに傷口が塞がるわけじゃねぇし。
 
「……?!」
 
 嘘だろう。内臓も傷付いてる。これ、ツユハ先生に……。いや、ツユハ先生は駄目だ。絶対、パニックを起こす。ここは、将来、内科医のセイトに来てもらって、診てもらわねぇと分からねぇ。相当、やり合ったんだ。目立つ傷口は塞いだけど、内臓はオレではお手上げだ。専門知識なんかねぇもん。
 
「オレ、セイトを連れて来る」
「どうして? 傷口は塞がったでしょう?」
「内臓までやられてる。オレは専門知識がねぇから、手を出せないし」
「外傷だけじゃないの?」
「魔法使って分かった。傷が深いんだ」
 
 特Aの部屋に移動して、セイトの腕を取った。セイトはいきなり現れたオレに驚いたような表情を見せる。当然、隣にいるユエも驚いたようにオレに視線を向けてきた。
 
「一緒に来てくれ」
「なんだ?」
「説明は後!」
 
 有無を言わさずに、寮の部屋に移動した。血に濡れた床と、その上にいる副会長にセイトは瞬時に察してくれた。
 
「内臓まで達してるのか?」
「そうなんだ。出血は止めたけど、オレじゃあ、体の中はどうすることもできねぇし」
「傷の深さが分かっただけでも上出来だよ」
 
 セイトは杖を出して、副会長に近付いた。杖を使い体の中を探ってるみてえ。
 
「どんな感じなの?」
「命に関わるものはないけど。随分、器用に攻撃されたんだな」
 
 ん? 器用に攻撃? って?
 
「致命傷を避けて攻撃してる」
 
  それを聞いた副会長が、可笑しそうに喉の奥で笑った。
 
「……最後までひよっこ扱いか。……参ったね……」
 
 副会長の顔に映るの、寂しそうな色だった。やっぱり、長い間、関わってきたドラゴンに引導を渡すのは辛かったんだろうな。
 
「内臓の傷を塞ぐから、少し痛みと熱さを感じる。覚悟してくれよ」
「分かってるよ」
 
 副会長はそう言うと静かに瞳を閉じだ。
 
 
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

完成した犬は新たな地獄が待つ飼育部屋へと連れ戻される

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ふたなり治験棟 企画12月31公開

ほたる
BL
ふたなりとして生を受けた柊は、16歳の年に国の義務により、ふたなり治験棟に入所する事になる。 男として育ってきた為、子供を孕み産むふたなりに成り下がりたくないと抗うが…?!

神官姫と最強最弱の王

深也糸
BL
アズカヴァル国の王、リヴェラ・ライト・アズカヴァルは十八歳になり、成人したことで妃を娶らなければならなかった。 隣国のリゼルハイドの姫、シファ・ヴィオラ・リゼルハイドはリヴェラと娶せられるためにアズカヴァルに逗留することになる。リヴェラに城の中を案内してもらい親睦を深めようとするが、早々に男だとバレてしまい……。 ※週一回 マイペース更新

兄弟カフェ 〜僕達の関係は誰にも邪魔できない〜

紅夜チャンプル
BL
ある街にイケメン兄弟が経営するお洒落なカフェ「セプタンブル」がある。真面目で優しい兄の碧人(あおと)、明るく爽やかな弟の健人(けんと)。2人は今日も多くの女性客に素敵なひとときを提供する。 ただし‥‥家に帰った2人の本当の姿はお互いを愛し、甘い時間を過ごす兄弟であった。お店では「兄貴」「健人」と呼び合うのに対し、家では「あお兄」「ケン」と呼んでぎゅっと抱き合って眠りにつく。 そんな2人の前に現れたのは、大学生の幸成(ゆきなり)。純粋そうな彼との出会いにより兄弟の関係は‥‥?

灰かぶりの少年

うどん
BL
大きなお屋敷に仕える一人の少年。 とても美しい美貌の持ち主だが忌み嫌われ毎日被虐的な扱いをされるのであった・・・。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

処理中です...