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朝起きると、いつも寝ている薄っぺらい布団ではなく、硬めだけど寝心地は悪くないベッドの中だった。
出し忘れたゴミのすえた臭いがしていたはずの部屋は、ふわりと甘く、布団からはおひさまに干したばかりの香りがしていた。
小さい頃両親が生きていて、幸せだった時代を思い出す。
寝ぼけた頭で現状の把握が出来ないまま、ゆるっと寝返りを打った。
ふにゃり。
手の甲に柔らかくて温かいものが触れた。
ペットも飼っていないのになにが?と思い目を開けると、赤ん坊が隣に眠っていた。
「……え? 赤ちゃん……?なんで……?」
施設に帰った記憶も乳児院に顔を出した記憶もない。
乳児院に手伝いに行っていた頃に一緒に昼寝したことはあっても、昼寝用マットに雑魚寝状態で、ベッドで一緒にではなかった。
この状況を把握するために、すやすや眠る赤ん坊を起こさないように、慎重に体を起こす。
ベッドに着いた手が目に入った。
荒れた手は細っそりとしていて、続く腕も華奢だ。
肌の色味も違う。
白いを通り越して肌色が悪い。
児童クラブでバイトして、外で子供と駆け回ることも多かった俺は、定着してしまった日焼けで健康的な肌色で、子供を抱えたり荷物を運んだりで細くても筋肉はしっかりついていた。
辺りを見回して鏡を探す。
布団から出した身体もやけに細い。
脚なんて俺の腕くらいしかないんじゃないか?
それが自分の意思で動かせている現状、違和感しかない。
部屋は正直狭かった。
俺のアパートより狭いかもしれない。
昔雑誌で見た、海外の古いアパルトマンの最上階を思い出す。
ベッドと2人分の食器も置けない小さなテーブル、服が数着掛かったハンガーパイプ。
1Kサイズのコンパクトなキッチンと、かろうじて2段扉のある木製の棚と壁に造り付けの板状の棚。
ベッドとキッチンの間に対面で扉が二つ。
片方は玄関で、もう片方は水回りか。
赤ん坊の様子をちらりと見る。
幸せそうな寝顔でまだすやすやと安眠中だ。
ふくふくとした薔薇色の頬をしているから、栄養も愛情もたっぷりなんだろう。
水回りと思われる扉を、音を立てないようにそっと開ける。
トイレとバスと洗面が一つになっている。
が、三点ユニットではない。
こんな感じのは海外ドラマで見たような。
なんにしても、俺が住んでいた部屋ではないことは確かだ。
洗面台の上に掛かっていた申し訳程度のサイズの鏡を覗く。
映っているのは、黒髪黒目短髪浅黒な大学生ではなかった。
何回ブリーチしたんだってくらい明るいベージュカラーの金髪。
パサパサだけど。
灰色混ぜたような青い眼。
肌の色は腕や脚と同じく、白を超えて青い。
綺麗な顔をしているはずなのに、頬がこけてて、目の下のクマが濃い。
明らかに俺じゃない、俺。
混乱しかけた頭にふと過るのは、友人のマラソン上映会に付き合わされた、異世界転生アニメだ。
「……マジかよ……」
俺の動かしたように動く手足、表情、口。
発した声は掠れていたけど、元の俺より何オクターブか高く感じた。
呆然と鏡を見つめていると、扉の向こうから赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
慌てて戻ると、ぱっちり目が開いた赤ん坊が顔を真っ赤にして泣いている。
赤ん坊の髪は少しブラウンかかった黒髪だ。
俺が寝ぼけ頭でも違和感なかったのはこの所為だろう。
ぱっちりと開いた眼は、鏡に映っていた俺と同じ灰色かかった青色だ。
赤ん坊を抱き上げる。
ふわりとミルクの甘い匂いがする。
ああ、多分これは俺の子供だ。
なにがどうなっているのかさっぱりわからないけど、それだけはわかった。
ひとりぼっちにされて悲しかったのか、抱き上げて軽く揺さぶりながら、宥めるようにオムツの上をポンポン叩く。
この子を育てなければ。
そして隠さなければ。
あの人達に見つからないように。
あの人に知られないように。
頭の中に不意に湧き上がる。
誰から、何から隠すのかはわからない。
でもそれが"俺"の意思なら、そうするしかないだろう。
この子を幸せにするために。
この子と幸せになるために。
あの人との思い出をなくさないために。
ともかく俺は部屋を探す。
赤ん坊のオムツと着替え、それからミルク。
あと名前がわかるもの。
これは赤ん坊と俺ね両方分だ。
母子手帳とかあればいいんだが、この世界にそんなものはあるのか?
赤ん坊に必要なものはすぐに見つかった。
とりあえずオムツを替えて服を着替えさせる。
ミルクはなかった。
うん、やっぱりこれは俺の胸にあるんだろうな。
胸が張ってるし、乳首周りが濡れている。
赤ん坊もその辺りに吸い付きたがってるしな。
「俺が母親……なんだろうな」
不思議と違和感はなかったし、納得出来てしまった。
シャツをはだけてみると、ささやかだがちゃんと"おっぱい"ではあった。
洗濯物の所にあったタオルを濡らして軽く乳を拭いて、赤ん坊を吸い付かせる。
いい子に飲むなあ。
この身体も自然に動く。
自分の身よりも子供を優先していたんだろう。
自分よりも子を優先で、身を削るような生き様は、まるで――
「なんか野良猫みたいだな」
赤ん坊が満足するだけ飲ませて、ゲップをさせる。
飲みながら少しうとうとしていたから、もう少し眠ってくれるかもしれない。
ゆっくりと寝かしつけるようにしてやる。
寝落ちたと同時に、背中スイッチにドキドキしながらベッドに降ろす。
起きず、泣かずで寝入ってくれた。
極力音を立てずに家探しを開始する。
キッチンにある木製の棚は冷蔵庫だった。
小学生の頃の授業で見た、氷を入れるタイプかと思ったが、そうでもないらしい。
上の段は冷凍庫で、下は冷蔵庫。
中身はほとんど入っていない。
冷蔵庫に卵とハムが少しだけ。
冷凍庫の方に丸い石が嵌め込まれている。
コンセントは無い。
不思議に思いながらも、温度が上がる前に扉を閉める。
造り付けの棚には申し訳程度の食料。
固そうなパンとパスタのような乾麺。
少しの塩と砂糖。
足元のカゴにじゃがいもと玉ねぎ。
食べ物はあまり変わらないようだ。
だが少なすぎる。
俺の部屋の食料だって、これよりはストックがある。
インスタントとかレトルトも多いけど。
この世界の文化レベル的に、そういう便利食品がないのかもしれない可能性は高いかもな。
キッチンには皿とカップとカトラリーが一つずつ。
鍋も大小一つずつで、あとは小さめの包丁。
ハンガーパイプにかかった服もその下に畳まれているボトム類も下着も片手に満たない数だけだ。
代わりに赤ん坊の服や下着はそれなりの枚数がある。
偏った生活してたんだな。
赤ん坊に全振りじゃないか。
そりゃ疲れて青白くもなるし痩せ細るし、パサパサにもなるよ。
椅子に置かれたカバンを開ける。
母子手帳は無かったが、病院の明細があった。
俺の名前はロアン、赤ん坊はカイル。
ファミリーネームは無さそうだ。
赤ん坊が寝てる間に、自分の飯をなんとかした。
キッチンのガス台は前の世界とそんなに変わらなかった。
ただこちらも丸い石が嵌め込まれていて、ガス栓はなかった。
異世界転生によくある、魔石文化なのかもしれない。
ともあれ自分と赤ん坊の腹を満たして、一先ず病院に行ってみることにした。
多分妊娠出産から赤ん坊の事まで、この病院にお世話になっているのだろう。
明細は何枚もあった。
道はその辺にいる人に聞けばいい。
文字がすんなり読めてる以上、言葉も伝わるはずだ。
赤ん坊と自分の服を着替えて、鞄を取り玄関を開ける。
と、同時に隣の部屋の玄関ドアも開いた。
中からはふくよかな中年の女性が出てきた。
心配そうな顔で俺と赤ん坊を見てくる。
「あの、なにか……?」
じっと見つめてくる女性に、声を掛ける。
「ロアン、体調はどう?
カイルちゃんはご機嫌そうだけど、あなたは?」
「あ、えと、はい。体調は悪くはないですが」
俺の返答に、女性はホッと息を吐いた。
「よかったわ。この三日体調が優れないって言ったまま籠ったままだったでしょ?
あなた達のことが気になって、何度かノックしたけど反応もないから、心配してたのよ」
赤ん坊の頬をつるりと撫でながら、女性は俺に微笑みかける。
ロアンは隣人に恵まれてたのか。
体調不良で買い足せずに、食料が減っていたのか。
彼の生活が酷いものではないかもしれないことに、俺は少し安堵した。
だが、自分の立ち位置が変わる訳ではない。
「あの、すみませんが、今から病院に行こうと思っていたんですが」
「あら、やっぱり体調悪いの?もし大変なら少しカイルちゃんを預かるわよ?」
「あ、いえ、そうではなくて、病院の場所を教えてもらえませんか?」
「は……?」
絶句したまま部屋に引っ込み、上着と鞄を手にして戻ってきた隣人女性に引っ張られるように、俺は病院に到着した。
「体調が悪いって言ったあと、やっと顔を見られたと思ったら、言動がおかしいんですよ!
いつものように通っていたここの場所がわからないって言うんですから!」
診察室で俺を医者の前に座らせたあと、赤ん坊を抱き取って、隣人女性が捲し立てる。
「いつもは顔を合わせると、ロージーさん、ご機嫌いかがですか?って聞いてくれるのにそれもなくて、他人行儀なんですよ!絶対何かあったに違いないんです。きちんと調べてくださいな!」
隣人女性――ロージーさんの勢いに、医者も苦笑いだ。
「わかりました、問診から始めますから、ロージーはカイルと待合室でお待ちください」
医者の言葉に看護師が反応して、2人を待合室に連れて行った。
「それでロアン、何がありましたか?」
医者はまだ若そうで、穏やかな雰囲気をしていて、声も低めで耳障りがいい。
明るめの茶髪は短く切り揃えられていて、ラフなシャツに白衣を羽織っている。
どう思われても構わないと腹を括って、
目が覚めてからのことを正直に話した。
「んー……違う世界、ねえ。
ともかく、目が覚めたらこれまでのことを忘れてしまった、ということですね。
自分のことやカイルのことだけでなく、身近なことも全て」
「状況的にはそうなるかと、思います」
「話していても確かに全く感じが変わっているから、信じなくはないけどねえ」
医者は腕を組んで考え込む。
「じゃあ第二性についても、覚えていないのかい?」
「だいにせい……?」
「ああ、覚えてないんだね。君がオメガで、3月半前に出産したこともわからないんだね?」
「はあ、まあそうですね。……赤ちゃんが居て、育てなきゃいけないことだけはわかりましたけど」
「うん、まあそれだけはわかっていたなら、とりあえずはいいよ。
これからどうするつもりでいるかな?」
「それすら、わからないんですが。赤ちゃんは俺の子なので育てるとして、生活費とかどうしてたのかもわからないし……本当になにも」
言いながら途方に暮れてしまった。
生活費だよ。うっかり病院に来ちゃったけど、財布も確認してなかったし、出産直後のロアンがどうやって飯食ってたかもわからない。
肩を落とす俺の背を、医者が優しく摩ってくれる。
「君の優先順位は1番がカイルで次に生活費かな。生活費は魔石への魔力チャージで得ていたよ」
顔を上げると、医者の柔らかい笑顔があった。
「この世界は男女の性別とアルファ・ベータ・オメガという、3種類の性別があるんだ。これを第二性という」
合計六種類の性別があるのだという。
優秀な能力を持った上澄み層のアルファ、第二性の大多数を占めるベータ、少数派で何かと劣ると見做されてかつては差別の対象でもあったオメガ。
その中でロアンは希少な男性オメガなのだそう。
オメガは男女問わず子供を産める。
アルファはオメガのうなじを噛むことで、自分の番にすることが出来るのだそう。
それはオメガを縛る事にはなるので、今の時代選ばないカップルも多いらしい。
俺のうなじには噛み跡があった。
医者が言うにはカイルの父親ではないかとのことだ。
その辺のことは、ロアンは話さなかったらしい。
アルファとオメガには、魔力があるのだそう。
アルファには魔法を使えるものも多いが、オメガには少ないらしい。
代わりにオメガは魔石をチャージすることが出来る。
一般市民にも広く使われている魔石だが、価格は安いものではない。
貴族や王族はチャージ要員として、オメガを雇うのが基本だそうだ。
その方が費用が安い。
多分ロアンも、そうやって貴族の屋敷か王宮で働いていたのだろう。
そう思えるだけの、現実味があった。
子供を堕ろされそうになって逃げ出したのかもしれない。
それか知られる前にか。
今は病院の魔石にチャージして、お金を稼いでいたみたいだ。
「おかげで出費が抑えられて助かっていたよ。
薬剤の保管に冷蔵庫は欠かせないからね」
医者は言いながら、俺の手に小さな石ころを乗せた。
「これは空の魔石。やり方は私にはわからないけど、君の本能は覚えているかもしれないからね」
試してごらん、と笑う。
「ああ、今すぐでなくてもいいよ。まずは世の中のことを知る方が先だからね。
さあ、ロージーに助けてもらおう。私からいいように伝えるから、彼女を呼んでくれるかな」
医者の説明を聞いて、ロージーさんが積極的に俺たち親子に関わってくれるようになった。
「今までもあなた達のお世話したくてヤキモキしていたの」
抱いたままのカイルを構いながら、ロージーさんは笑う。
「うちも子供達が独り立ちして久しいし、旦那も早くに亡くなって、お世話したい欲が満たされなくって。だから遠慮なく声掛けちょうだい」
言葉に甘えて、早速帰り道に食料品の買い出しをしたいと伝えた。
「お店もなんですが、お金のことも忘れてしまって。見てもらえるとありがたいです」
「あら、そこからなのね。任せてちょうだい。値切り方まで教えちゃうわ」
頼もしく胸を叩いて応じてくれる。
まず財布の中身を確認してもらう。
「そうねえ……倹約家なんだわあなた。
ちゃんとお金入っているもの。
子供のために節約して生きていたのねぇ。
でももう少し美味しいもの食べてもいいのよ。
あなたの栄養がカイルちゃんの栄養になるんだから」
安いお店教えてあげるわね。
そう言ってロージーさんは、僕たちを商店街に誘った。
結果教えを乞うて大正解だった。
金銭の種類から買い物の仕方、売ってるものや美味しいの目利き。
さらには約束通り値切り方まで、こと細かく教えてくれた。
食べものは向こうとさほど変わらない。
野菜も肉も魚も、想像もつかないようなものはなかった。
料理は自炊してたし、簡単なものなら作れるから、困ることはなさそうだ。
そう告げると、ロージーさんは
「大事なことをちゃんと覚えていてよかったわね」
とカイルに笑いかけた。
始終朗らかなこの人と居ると、安心感が湧く。
アパートに着いてお礼を言い、ロージーさんと別れた。
まだ小さい赤ちゃんを思ったより長く連れ回してしまった。
カイルの様子を見ると、疲れた様子もなく、ご機嫌さんなままだ。
「ずいぶんいい子なんだな、お前。ロアンの育て方が良かったのかな」
上着を脱がせてとりあえず乳をやる。
飲ませ終わってゲップをさせてベッドに寝かせると、発していた喃語はたちまち寝息に変わった。
棚に置かれた時計を見ると、昼を回っていた。
買ったものをしまってから、自分の昼飯だ。
出来合いの惣菜を買ってきたからそれで済ませた。
自炊もいいけど、惣菜を食べても贅沢じゃないと諭されてしまった。
確かにこの世界の惣菜は基本量り売りだったから、1人分ならむしろ安いかもしれない。
カイルの散歩がてら買いに出かけられる距離だし、考えてもいいだろう。
ご馳走様をして、片付ける。
まだわからないことしかないが、こうなってしまった以上、生きていくしかない。
生活レベルが大きく変わらないだけマシだろう。
オメガという性別に関しては、子供が一歳になる頃から問題点が現れると言われた。
今はまだ気にしなくていいそうだが。
医者は、番が居るから他人への影響は考えなくていいだけまだマシだよ、と笑っていた。
……素のままだと他人にも影響があるなんて、随分と厄介な性別のようだ。
すやすや眠る赤ん坊を横目に、カバンの中身をテーブルに取り出した。
財布、ハンカチ、ハンドタオル。
医療明細の束と手帳。
「ごめんな、ロアン。手帳見せてくれな」
小さな声で身体の持ち主に謝ってから、手帳を開く。
中には妊娠が発覚してからの日記が書かれていた。
****
一夜のことだと思ったら、うなじを噛まれていたし、この気持ち悪さはもしかして。
吐き気が止まらない。
悪いものを食べたのかと思われている間に逃げなければ、取返しがつかないかもしれない。
貯めたお金が思ったよりもあって良かった。
馬車は不安だったけど、なんとか辺境までのチケットが買えた。
先を思うと馬車にしてお金を節約したかったけど、お腹の子のことを考えると、選択肢には入れられない。
駅に着いたけど、この先はどうするべきか。
まずはお医者に掛かりたい。
妊娠かどうか、妊娠しているならお腹の子は大丈夫か。安心が欲しい。
医師のロバート先生はとても親身にしてくれた。
当面の仕事として、魔石への魔力注入を依頼までしてくれた。
二、三日病院に泊めてもらった。
アパートの大家さんをしている、ロージーさんという女性を紹介してもらった。
格安で部屋を貸してくれるそうだ。
甘えるのは良くないと断りかけたら、気になってしまう方が迷惑だからと、部屋に連れて行かれた。
この街でこの部屋に住んで、細々と仕事して。
見つからないようにそっと生きていきたい。
****
この街に来ての話がわかった。
周りの人の温かさに助けられて、ロアンとカイルは生きてきたんだな。
特に日付が書かれている訳でもない、散文だ。
ロアンは思ったより弱くなかった。
でも生活の中で、甘えるのを良しとせず生きてきて、身も心も削れてしまったんだろう。
なんで俺がロアンの身体にいるのかはわからないけど、引き継いで生きていくしかない。
ロアンが起きるまで。
出し忘れたゴミのすえた臭いがしていたはずの部屋は、ふわりと甘く、布団からはおひさまに干したばかりの香りがしていた。
小さい頃両親が生きていて、幸せだった時代を思い出す。
寝ぼけた頭で現状の把握が出来ないまま、ゆるっと寝返りを打った。
ふにゃり。
手の甲に柔らかくて温かいものが触れた。
ペットも飼っていないのになにが?と思い目を開けると、赤ん坊が隣に眠っていた。
「……え? 赤ちゃん……?なんで……?」
施設に帰った記憶も乳児院に顔を出した記憶もない。
乳児院に手伝いに行っていた頃に一緒に昼寝したことはあっても、昼寝用マットに雑魚寝状態で、ベッドで一緒にではなかった。
この状況を把握するために、すやすや眠る赤ん坊を起こさないように、慎重に体を起こす。
ベッドに着いた手が目に入った。
荒れた手は細っそりとしていて、続く腕も華奢だ。
肌の色味も違う。
白いを通り越して肌色が悪い。
児童クラブでバイトして、外で子供と駆け回ることも多かった俺は、定着してしまった日焼けで健康的な肌色で、子供を抱えたり荷物を運んだりで細くても筋肉はしっかりついていた。
辺りを見回して鏡を探す。
布団から出した身体もやけに細い。
脚なんて俺の腕くらいしかないんじゃないか?
それが自分の意思で動かせている現状、違和感しかない。
部屋は正直狭かった。
俺のアパートより狭いかもしれない。
昔雑誌で見た、海外の古いアパルトマンの最上階を思い出す。
ベッドと2人分の食器も置けない小さなテーブル、服が数着掛かったハンガーパイプ。
1Kサイズのコンパクトなキッチンと、かろうじて2段扉のある木製の棚と壁に造り付けの板状の棚。
ベッドとキッチンの間に対面で扉が二つ。
片方は玄関で、もう片方は水回りか。
赤ん坊の様子をちらりと見る。
幸せそうな寝顔でまだすやすやと安眠中だ。
ふくふくとした薔薇色の頬をしているから、栄養も愛情もたっぷりなんだろう。
水回りと思われる扉を、音を立てないようにそっと開ける。
トイレとバスと洗面が一つになっている。
が、三点ユニットではない。
こんな感じのは海外ドラマで見たような。
なんにしても、俺が住んでいた部屋ではないことは確かだ。
洗面台の上に掛かっていた申し訳程度のサイズの鏡を覗く。
映っているのは、黒髪黒目短髪浅黒な大学生ではなかった。
何回ブリーチしたんだってくらい明るいベージュカラーの金髪。
パサパサだけど。
灰色混ぜたような青い眼。
肌の色は腕や脚と同じく、白を超えて青い。
綺麗な顔をしているはずなのに、頬がこけてて、目の下のクマが濃い。
明らかに俺じゃない、俺。
混乱しかけた頭にふと過るのは、友人のマラソン上映会に付き合わされた、異世界転生アニメだ。
「……マジかよ……」
俺の動かしたように動く手足、表情、口。
発した声は掠れていたけど、元の俺より何オクターブか高く感じた。
呆然と鏡を見つめていると、扉の向こうから赤ん坊の泣き声が聞こえてきた。
慌てて戻ると、ぱっちり目が開いた赤ん坊が顔を真っ赤にして泣いている。
赤ん坊の髪は少しブラウンかかった黒髪だ。
俺が寝ぼけ頭でも違和感なかったのはこの所為だろう。
ぱっちりと開いた眼は、鏡に映っていた俺と同じ灰色かかった青色だ。
赤ん坊を抱き上げる。
ふわりとミルクの甘い匂いがする。
ああ、多分これは俺の子供だ。
なにがどうなっているのかさっぱりわからないけど、それだけはわかった。
ひとりぼっちにされて悲しかったのか、抱き上げて軽く揺さぶりながら、宥めるようにオムツの上をポンポン叩く。
この子を育てなければ。
そして隠さなければ。
あの人達に見つからないように。
あの人に知られないように。
頭の中に不意に湧き上がる。
誰から、何から隠すのかはわからない。
でもそれが"俺"の意思なら、そうするしかないだろう。
この子を幸せにするために。
この子と幸せになるために。
あの人との思い出をなくさないために。
ともかく俺は部屋を探す。
赤ん坊のオムツと着替え、それからミルク。
あと名前がわかるもの。
これは赤ん坊と俺ね両方分だ。
母子手帳とかあればいいんだが、この世界にそんなものはあるのか?
赤ん坊に必要なものはすぐに見つかった。
とりあえずオムツを替えて服を着替えさせる。
ミルクはなかった。
うん、やっぱりこれは俺の胸にあるんだろうな。
胸が張ってるし、乳首周りが濡れている。
赤ん坊もその辺りに吸い付きたがってるしな。
「俺が母親……なんだろうな」
不思議と違和感はなかったし、納得出来てしまった。
シャツをはだけてみると、ささやかだがちゃんと"おっぱい"ではあった。
洗濯物の所にあったタオルを濡らして軽く乳を拭いて、赤ん坊を吸い付かせる。
いい子に飲むなあ。
この身体も自然に動く。
自分の身よりも子供を優先していたんだろう。
自分よりも子を優先で、身を削るような生き様は、まるで――
「なんか野良猫みたいだな」
赤ん坊が満足するだけ飲ませて、ゲップをさせる。
飲みながら少しうとうとしていたから、もう少し眠ってくれるかもしれない。
ゆっくりと寝かしつけるようにしてやる。
寝落ちたと同時に、背中スイッチにドキドキしながらベッドに降ろす。
起きず、泣かずで寝入ってくれた。
極力音を立てずに家探しを開始する。
キッチンにある木製の棚は冷蔵庫だった。
小学生の頃の授業で見た、氷を入れるタイプかと思ったが、そうでもないらしい。
上の段は冷凍庫で、下は冷蔵庫。
中身はほとんど入っていない。
冷蔵庫に卵とハムが少しだけ。
冷凍庫の方に丸い石が嵌め込まれている。
コンセントは無い。
不思議に思いながらも、温度が上がる前に扉を閉める。
造り付けの棚には申し訳程度の食料。
固そうなパンとパスタのような乾麺。
少しの塩と砂糖。
足元のカゴにじゃがいもと玉ねぎ。
食べ物はあまり変わらないようだ。
だが少なすぎる。
俺の部屋の食料だって、これよりはストックがある。
インスタントとかレトルトも多いけど。
この世界の文化レベル的に、そういう便利食品がないのかもしれない可能性は高いかもな。
キッチンには皿とカップとカトラリーが一つずつ。
鍋も大小一つずつで、あとは小さめの包丁。
ハンガーパイプにかかった服もその下に畳まれているボトム類も下着も片手に満たない数だけだ。
代わりに赤ん坊の服や下着はそれなりの枚数がある。
偏った生活してたんだな。
赤ん坊に全振りじゃないか。
そりゃ疲れて青白くもなるし痩せ細るし、パサパサにもなるよ。
椅子に置かれたカバンを開ける。
母子手帳は無かったが、病院の明細があった。
俺の名前はロアン、赤ん坊はカイル。
ファミリーネームは無さそうだ。
赤ん坊が寝てる間に、自分の飯をなんとかした。
キッチンのガス台は前の世界とそんなに変わらなかった。
ただこちらも丸い石が嵌め込まれていて、ガス栓はなかった。
異世界転生によくある、魔石文化なのかもしれない。
ともあれ自分と赤ん坊の腹を満たして、一先ず病院に行ってみることにした。
多分妊娠出産から赤ん坊の事まで、この病院にお世話になっているのだろう。
明細は何枚もあった。
道はその辺にいる人に聞けばいい。
文字がすんなり読めてる以上、言葉も伝わるはずだ。
赤ん坊と自分の服を着替えて、鞄を取り玄関を開ける。
と、同時に隣の部屋の玄関ドアも開いた。
中からはふくよかな中年の女性が出てきた。
心配そうな顔で俺と赤ん坊を見てくる。
「あの、なにか……?」
じっと見つめてくる女性に、声を掛ける。
「ロアン、体調はどう?
カイルちゃんはご機嫌そうだけど、あなたは?」
「あ、えと、はい。体調は悪くはないですが」
俺の返答に、女性はホッと息を吐いた。
「よかったわ。この三日体調が優れないって言ったまま籠ったままだったでしょ?
あなた達のことが気になって、何度かノックしたけど反応もないから、心配してたのよ」
赤ん坊の頬をつるりと撫でながら、女性は俺に微笑みかける。
ロアンは隣人に恵まれてたのか。
体調不良で買い足せずに、食料が減っていたのか。
彼の生活が酷いものではないかもしれないことに、俺は少し安堵した。
だが、自分の立ち位置が変わる訳ではない。
「あの、すみませんが、今から病院に行こうと思っていたんですが」
「あら、やっぱり体調悪いの?もし大変なら少しカイルちゃんを預かるわよ?」
「あ、いえ、そうではなくて、病院の場所を教えてもらえませんか?」
「は……?」
絶句したまま部屋に引っ込み、上着と鞄を手にして戻ってきた隣人女性に引っ張られるように、俺は病院に到着した。
「体調が悪いって言ったあと、やっと顔を見られたと思ったら、言動がおかしいんですよ!
いつものように通っていたここの場所がわからないって言うんですから!」
診察室で俺を医者の前に座らせたあと、赤ん坊を抱き取って、隣人女性が捲し立てる。
「いつもは顔を合わせると、ロージーさん、ご機嫌いかがですか?って聞いてくれるのにそれもなくて、他人行儀なんですよ!絶対何かあったに違いないんです。きちんと調べてくださいな!」
隣人女性――ロージーさんの勢いに、医者も苦笑いだ。
「わかりました、問診から始めますから、ロージーはカイルと待合室でお待ちください」
医者の言葉に看護師が反応して、2人を待合室に連れて行った。
「それでロアン、何がありましたか?」
医者はまだ若そうで、穏やかな雰囲気をしていて、声も低めで耳障りがいい。
明るめの茶髪は短く切り揃えられていて、ラフなシャツに白衣を羽織っている。
どう思われても構わないと腹を括って、
目が覚めてからのことを正直に話した。
「んー……違う世界、ねえ。
ともかく、目が覚めたらこれまでのことを忘れてしまった、ということですね。
自分のことやカイルのことだけでなく、身近なことも全て」
「状況的にはそうなるかと、思います」
「話していても確かに全く感じが変わっているから、信じなくはないけどねえ」
医者は腕を組んで考え込む。
「じゃあ第二性についても、覚えていないのかい?」
「だいにせい……?」
「ああ、覚えてないんだね。君がオメガで、3月半前に出産したこともわからないんだね?」
「はあ、まあそうですね。……赤ちゃんが居て、育てなきゃいけないことだけはわかりましたけど」
「うん、まあそれだけはわかっていたなら、とりあえずはいいよ。
これからどうするつもりでいるかな?」
「それすら、わからないんですが。赤ちゃんは俺の子なので育てるとして、生活費とかどうしてたのかもわからないし……本当になにも」
言いながら途方に暮れてしまった。
生活費だよ。うっかり病院に来ちゃったけど、財布も確認してなかったし、出産直後のロアンがどうやって飯食ってたかもわからない。
肩を落とす俺の背を、医者が優しく摩ってくれる。
「君の優先順位は1番がカイルで次に生活費かな。生活費は魔石への魔力チャージで得ていたよ」
顔を上げると、医者の柔らかい笑顔があった。
「この世界は男女の性別とアルファ・ベータ・オメガという、3種類の性別があるんだ。これを第二性という」
合計六種類の性別があるのだという。
優秀な能力を持った上澄み層のアルファ、第二性の大多数を占めるベータ、少数派で何かと劣ると見做されてかつては差別の対象でもあったオメガ。
その中でロアンは希少な男性オメガなのだそう。
オメガは男女問わず子供を産める。
アルファはオメガのうなじを噛むことで、自分の番にすることが出来るのだそう。
それはオメガを縛る事にはなるので、今の時代選ばないカップルも多いらしい。
俺のうなじには噛み跡があった。
医者が言うにはカイルの父親ではないかとのことだ。
その辺のことは、ロアンは話さなかったらしい。
アルファとオメガには、魔力があるのだそう。
アルファには魔法を使えるものも多いが、オメガには少ないらしい。
代わりにオメガは魔石をチャージすることが出来る。
一般市民にも広く使われている魔石だが、価格は安いものではない。
貴族や王族はチャージ要員として、オメガを雇うのが基本だそうだ。
その方が費用が安い。
多分ロアンも、そうやって貴族の屋敷か王宮で働いていたのだろう。
そう思えるだけの、現実味があった。
子供を堕ろされそうになって逃げ出したのかもしれない。
それか知られる前にか。
今は病院の魔石にチャージして、お金を稼いでいたみたいだ。
「おかげで出費が抑えられて助かっていたよ。
薬剤の保管に冷蔵庫は欠かせないからね」
医者は言いながら、俺の手に小さな石ころを乗せた。
「これは空の魔石。やり方は私にはわからないけど、君の本能は覚えているかもしれないからね」
試してごらん、と笑う。
「ああ、今すぐでなくてもいいよ。まずは世の中のことを知る方が先だからね。
さあ、ロージーに助けてもらおう。私からいいように伝えるから、彼女を呼んでくれるかな」
医者の説明を聞いて、ロージーさんが積極的に俺たち親子に関わってくれるようになった。
「今までもあなた達のお世話したくてヤキモキしていたの」
抱いたままのカイルを構いながら、ロージーさんは笑う。
「うちも子供達が独り立ちして久しいし、旦那も早くに亡くなって、お世話したい欲が満たされなくって。だから遠慮なく声掛けちょうだい」
言葉に甘えて、早速帰り道に食料品の買い出しをしたいと伝えた。
「お店もなんですが、お金のことも忘れてしまって。見てもらえるとありがたいです」
「あら、そこからなのね。任せてちょうだい。値切り方まで教えちゃうわ」
頼もしく胸を叩いて応じてくれる。
まず財布の中身を確認してもらう。
「そうねえ……倹約家なんだわあなた。
ちゃんとお金入っているもの。
子供のために節約して生きていたのねぇ。
でももう少し美味しいもの食べてもいいのよ。
あなたの栄養がカイルちゃんの栄養になるんだから」
安いお店教えてあげるわね。
そう言ってロージーさんは、僕たちを商店街に誘った。
結果教えを乞うて大正解だった。
金銭の種類から買い物の仕方、売ってるものや美味しいの目利き。
さらには約束通り値切り方まで、こと細かく教えてくれた。
食べものは向こうとさほど変わらない。
野菜も肉も魚も、想像もつかないようなものはなかった。
料理は自炊してたし、簡単なものなら作れるから、困ることはなさそうだ。
そう告げると、ロージーさんは
「大事なことをちゃんと覚えていてよかったわね」
とカイルに笑いかけた。
始終朗らかなこの人と居ると、安心感が湧く。
アパートに着いてお礼を言い、ロージーさんと別れた。
まだ小さい赤ちゃんを思ったより長く連れ回してしまった。
カイルの様子を見ると、疲れた様子もなく、ご機嫌さんなままだ。
「ずいぶんいい子なんだな、お前。ロアンの育て方が良かったのかな」
上着を脱がせてとりあえず乳をやる。
飲ませ終わってゲップをさせてベッドに寝かせると、発していた喃語はたちまち寝息に変わった。
棚に置かれた時計を見ると、昼を回っていた。
買ったものをしまってから、自分の昼飯だ。
出来合いの惣菜を買ってきたからそれで済ませた。
自炊もいいけど、惣菜を食べても贅沢じゃないと諭されてしまった。
確かにこの世界の惣菜は基本量り売りだったから、1人分ならむしろ安いかもしれない。
カイルの散歩がてら買いに出かけられる距離だし、考えてもいいだろう。
ご馳走様をして、片付ける。
まだわからないことしかないが、こうなってしまった以上、生きていくしかない。
生活レベルが大きく変わらないだけマシだろう。
オメガという性別に関しては、子供が一歳になる頃から問題点が現れると言われた。
今はまだ気にしなくていいそうだが。
医者は、番が居るから他人への影響は考えなくていいだけまだマシだよ、と笑っていた。
……素のままだと他人にも影響があるなんて、随分と厄介な性別のようだ。
すやすや眠る赤ん坊を横目に、カバンの中身をテーブルに取り出した。
財布、ハンカチ、ハンドタオル。
医療明細の束と手帳。
「ごめんな、ロアン。手帳見せてくれな」
小さな声で身体の持ち主に謝ってから、手帳を開く。
中には妊娠が発覚してからの日記が書かれていた。
****
一夜のことだと思ったら、うなじを噛まれていたし、この気持ち悪さはもしかして。
吐き気が止まらない。
悪いものを食べたのかと思われている間に逃げなければ、取返しがつかないかもしれない。
貯めたお金が思ったよりもあって良かった。
馬車は不安だったけど、なんとか辺境までのチケットが買えた。
先を思うと馬車にしてお金を節約したかったけど、お腹の子のことを考えると、選択肢には入れられない。
駅に着いたけど、この先はどうするべきか。
まずはお医者に掛かりたい。
妊娠かどうか、妊娠しているならお腹の子は大丈夫か。安心が欲しい。
医師のロバート先生はとても親身にしてくれた。
当面の仕事として、魔石への魔力注入を依頼までしてくれた。
二、三日病院に泊めてもらった。
アパートの大家さんをしている、ロージーさんという女性を紹介してもらった。
格安で部屋を貸してくれるそうだ。
甘えるのは良くないと断りかけたら、気になってしまう方が迷惑だからと、部屋に連れて行かれた。
この街でこの部屋に住んで、細々と仕事して。
見つからないようにそっと生きていきたい。
****
この街に来ての話がわかった。
周りの人の温かさに助けられて、ロアンとカイルは生きてきたんだな。
特に日付が書かれている訳でもない、散文だ。
ロアンは思ったより弱くなかった。
でも生活の中で、甘えるのを良しとせず生きてきて、身も心も削れてしまったんだろう。
なんで俺がロアンの身体にいるのかはわからないけど、引き継いで生きていくしかない。
ロアンが起きるまで。
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