38 / 177
第四章 爆発
断章 「世界」
しおりを挟む
遥か昔。
かつての世界で、生物が誕生するよりも、ずっとずっと前の話である。
世界には闇があった。
高きモノは光を創ったが、しかし闇を照らす光は、矮小なものであった。
高きモノは、小さな光の中に数多の、大いなる世界を創った。
世界は空と地に分けられた。
そして、高きモノは大いなる世界に幾多の命と、流れる時間を創った。
命が巡り、増え、世界が続くようにするためである。
やがて空は陸と海に分かち、高きモノの僕となった。
陸と海に分かたれた地にて、命はさらに増えた。
しかし、やがて増えた命は、同じもの達で争い、殺し合うようになった。
高きモノは、自らの創ったものを悔やんだ。
そこで高きモノは命を強いものと弱いものに細かく分け、命が正しく巡るようにした。
そして、中でも最も賢く、己に近いものに「人間」という名前をつけた。
しかし、それでも人間達は互いの賢さ故に争い、血を流した。
高きモノは、またもや後悔した。
弱い人間達は嘆いた。
彼らは自らの不幸を、報われない命に生まれたことを悔やんだ。
高きモノは嘆いた。
自らの生み出した似姿が、その生まれに悔いることをひどく悲しんだ。
弱い人間達は、高きモノの手によって新たなる命となり、報われることを願った。
そして高きモノは、それを承諾した。
極稀に、身に覚えのない記憶をもつ者が生まれることがある。
それは、高きモノによって生まれ直した、弱い人間の変わり身であった。
しかし高きモノは、それを最後に姿を消してしまった。
己の力を使い果たしてしまったためである。
中略。
やがて、世界は完成した。
多くの命を生み、また殺した世界は、長い時を経て高きモノを蘇らせる程の世界と成った。
目を覚ました高きモノは、完成したそれを「天国」と名付けた。
そこに生きる命の全ては、そこで永遠の頂を約束された。
しかし、高きモノが創造された数多の世界は、未だ成らずにいた。
永遠より弾かれし命は、またもや嘆いた。
自らの不運を、短命を、ひどく悲しんだ。
高きモノは彼らを見かねて、弱い人間達をそれぞれ違う、成っていない世界へと送り込んだ。
家族と家族は同じ世界へ、友人と友人は同じ世界へ。
共に、他の世界で頂を迎えることができるようにである。
今も数多の世界が頂へ向かっている。
しかし何処の世界も、それは遥か彼方である。
終末は訪れず、しかし命は増え、そして消えていく。
高きモノは、自らが創った世界を疑った。
そこで高きモノは、自らに人としての姿を与え、弱い人間の変わり身に聞くことにした。
自らの創った世界で、どのような人生を送ってきたのか。
何に嘆き、何に悲しみ、何を憂いたのか。
人としての高きモノは「クダリ」と名乗った。
高きところより下ったものだからである。
そしてクダリは、天に近い山に一人の青年を招いた。
目的は当然、それを知るためであった。
かつての世界で、生物が誕生するよりも、ずっとずっと前の話である。
世界には闇があった。
高きモノは光を創ったが、しかし闇を照らす光は、矮小なものであった。
高きモノは、小さな光の中に数多の、大いなる世界を創った。
世界は空と地に分けられた。
そして、高きモノは大いなる世界に幾多の命と、流れる時間を創った。
命が巡り、増え、世界が続くようにするためである。
やがて空は陸と海に分かち、高きモノの僕となった。
陸と海に分かたれた地にて、命はさらに増えた。
しかし、やがて増えた命は、同じもの達で争い、殺し合うようになった。
高きモノは、自らの創ったものを悔やんだ。
そこで高きモノは命を強いものと弱いものに細かく分け、命が正しく巡るようにした。
そして、中でも最も賢く、己に近いものに「人間」という名前をつけた。
しかし、それでも人間達は互いの賢さ故に争い、血を流した。
高きモノは、またもや後悔した。
弱い人間達は嘆いた。
彼らは自らの不幸を、報われない命に生まれたことを悔やんだ。
高きモノは嘆いた。
自らの生み出した似姿が、その生まれに悔いることをひどく悲しんだ。
弱い人間達は、高きモノの手によって新たなる命となり、報われることを願った。
そして高きモノは、それを承諾した。
極稀に、身に覚えのない記憶をもつ者が生まれることがある。
それは、高きモノによって生まれ直した、弱い人間の変わり身であった。
しかし高きモノは、それを最後に姿を消してしまった。
己の力を使い果たしてしまったためである。
中略。
やがて、世界は完成した。
多くの命を生み、また殺した世界は、長い時を経て高きモノを蘇らせる程の世界と成った。
目を覚ました高きモノは、完成したそれを「天国」と名付けた。
そこに生きる命の全ては、そこで永遠の頂を約束された。
しかし、高きモノが創造された数多の世界は、未だ成らずにいた。
永遠より弾かれし命は、またもや嘆いた。
自らの不運を、短命を、ひどく悲しんだ。
高きモノは彼らを見かねて、弱い人間達をそれぞれ違う、成っていない世界へと送り込んだ。
家族と家族は同じ世界へ、友人と友人は同じ世界へ。
共に、他の世界で頂を迎えることができるようにである。
今も数多の世界が頂へ向かっている。
しかし何処の世界も、それは遥か彼方である。
終末は訪れず、しかし命は増え、そして消えていく。
高きモノは、自らが創った世界を疑った。
そこで高きモノは、自らに人としての姿を与え、弱い人間の変わり身に聞くことにした。
自らの創った世界で、どのような人生を送ってきたのか。
何に嘆き、何に悲しみ、何を憂いたのか。
人としての高きモノは「クダリ」と名乗った。
高きところより下ったものだからである。
そしてクダリは、天に近い山に一人の青年を招いた。
目的は当然、それを知るためであった。
10
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
元・異世界一般人(Lv.1)、現代にて全ステータスカンストで転生したので、好き放題やらせていただきます
夏見ナイ
ファンタジー
剣と魔法の異世界で、何の才能もなくモンスターに殺された青年エルヴィン。死の間際に抱いたのは、無力感と後悔。「もし違う人生だったら――」その願いが通じたのか、彼は現代日本の大富豪の息子・神崎蓮(16)として転生を果たす。しかも、前世の記憶と共に授かったのは、容姿端麗、頭脳明晰、運動万能……ありとあらゆる才能がカンストした【全ステータスMAX】のチート能力だった!
超名門・帝聖学園に入学した蓮は、学業、スポーツ、果ては株や起業まで、その完璧すぎる才能で周囲を圧倒し、美少女たちの注目も一身に集めていく。
前世でLv.1だった男が、現代社会を舞台に繰り広げる、痛快無双サクセスストーリー! 今度こそ、最高に「好き放題」な人生を掴み取る!
修学旅行のはずが突然異世界に!?
中澤 亮
ファンタジー
高校2年生の才偽琉海(さいぎ るい)は修学旅行のため、学友たちと飛行機に乗っていた。
しかし、その飛行機は不運にも機体を損傷するほどの事故に巻き込まれてしまう。
修学旅行中の高校生たちを乗せた飛行機がとある海域で行方不明に!?
乗客たちはどこへ行ったのか?
主人公は森の中で一人の精霊と出会う。
主人公と精霊のエアリスが織りなす異世界譚。
「元」面倒くさがりの異世界無双
空里
ファンタジー
死んでもっと努力すればと後悔していた俺は妖精みたいなやつに転生させられた。話しているうちに名前を忘れてしまったことに気付き、その妖精みたいなやつに名付けられた。
「カイ=マールス」と。
よく分からないまま取りあえず強くなれとのことで訓練を始めるのだった。
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる