四つの前世を持つ青年、冒険者養成学校にて「元」子爵令嬢の夢に付き合う 〜護国の武士が無双の騎士へと至るまで〜

最上 虎々

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第四章 爆発

第三十四話 誘うもの

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 冒険者の先駆けである開拓者達が、現フィオレリア王国の国土の実に六割にあたる土地を開拓していた頃。

 山を開拓しようと足を踏み入れた開拓者達が次々に不審な死を遂げた、曰く付きの土地。

 それが、後にマハト霊山と呼ばれる場所である。

 しかし、俺にはここを調べなければならない。
 そんな気がしているのだ。

 理由は分からない。
 幽霊に招かれている……というのは、前世における心霊スポットでもよく聞いた話だ。

 しかし、今回ばかりは違う気がする。
 俺の魔法、俺の風。
 何故か火封じを受けてもなお、威力が減衰しなかった理由。

 肉体を超えた次元、魂から力が放たれるような、あの感覚。

 俺は、その理由をこの山に見出せずにはいられなかった。

 この山がどう、という話ではない。
 しかし、この山が放つオーラというのだろうか。
 それが、俺を惹きつけて止まなかったのである。

 呼ばれているとすれば、俺はこの山に呼ばれているのだろう。
 或いは俺が山へ向かうように、魂の方が山を呼んでいた可能性さえある。

 夜の山に一人きり。
 獣道を辿ることとなって尚、俺は不安を覚えていない。

 身体が山を求めるように、気づけば足はズンズン奥へ進んでいる。

 そして俺は、山か或いは魂に導かれるがまま、大きな滝へと辿り着いた。

 マハト大滝。

 そう呼ばれる滝が、この山にはあるという。
 そして、今目の前に広がる巨大な滝が、おそらくそれなのだろう。

 華厳の滝、そのような規模であろうこの滝へ、俺は無心で足を進める。

 俺の魂が引き寄せられていく感覚。
 気でも狂ったのだろうか、水流の下へ向かう。

 しかし、俺の頭頂へ巨大な水の塊が降り注ぐよりも前に、聞き慣れない声が俺を止めた。

「これこれ、そこのお兄さん。そんなことせんでも、君の求めるものは見つかるぞい」

 振り向くと、そこには中性的な外見の子供が一人。

「いや、情報量……多すぎてちょっとよく分からないんですけど……。君?貴方?は、誰ですか?」

 その子はゆっくりとこちらへ近付き、いつの間にか目線は並んでいた。

「私は『クダリ』。まあ……自分で言うのも何だけど、仙人だよん」

「仙人」

 ずいぶんとふざけた口調である。

 しかし、見た目と口調からは判断がつかない程に、その貫禄は本物であると、戦士としての勘が告げていた。

「そう、仙人。気軽に『クダリ仙人』とでも呼んでおくれ」

「はぁ、クダリ仙人……。ところで、俺に何かご用でも……?」

「このアホみたいな滝で滝行する意味は無いってことを言いたかっただけよん、そんだけそんだけ」

「そうなんですか。ありがとうございます」

「あー、大丈夫大丈夫。君は貴重な人材だからね惜しいってだけだヨ」

「どういうことですか」

「そのまんまだよ。君が『仙人』って言葉に聞き覚えがあったってことで分かったよ。この世界に仙人はいないからネ」

「っ……!?」

 背筋が凍るような感覚。

 この人は、「今の俺ではない俺」を知っているのか?
 心当たりは無いが、「いずれかの俺」と面識がある転生者か、或いは……それ以上のものか?

「おおっと、そんなに警戒しないで。私は何も、君を殺すだとか、何かを奪おうとしているとか……そういうことをしたいんじゃあないんだよ。ただ……君の人生を聞かせて欲しい、それだけなんだ」

「……はい?」

「君はあの世界で、何回の生を受けたのか。それはどんな生まれで、どんな死に様だったのか。君はその人生をどう思うか。……それを聞かせてくれれば、君が今、何故この世界で生きているのか……それを教えてあげても良い」

「なっ、マ、マジですか!?」

「マジだよ。私だって、道楽それを聞いているわけじゃあないんだからね」

「じゃあ何で……?」

「君が全部話してくれたら、そういうとこも含めて色々と話してあげようじゃあないの」

「……わかりました」

 何が何だか分からないが、クダリ仙人が敵である可能性は低いだろう。

 貫禄は然り、会話内容からも、今のところ露骨に危うい要素は見つからない。

 俺はソドムで生まれてから今まで、覚えている限りのことを全て話した。

「へェ~。何気に難儀な人生送ってるのネ」

「軽いですね、反応」

「ちょっと文句言われた気分だったからネ」

「何を言ってるかよく分からないんですけど……」

「ま、今に解るヨ。それも兼ねて、約束のお礼をしなくっちゃあネ。君の転生について……全てを、教えよう。と、その前に。まずは世界のシステムから説明しないと分かりにくいかな。ちょっと長くなるけど、付き合ってもらうヨ」

 クダリ仙人はそう言って、戸惑う俺の前に座り込み、辺りの空気を集めてスクリーンのようなものを作り、それに何かを映しながら、話を始めた。
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