36 / 177
第四章 爆発
第三十三話 作戦会議
しおりを挟む
馬車を走らせること丸二日。
俺達はマハト霊山の麓にある「マハト村」へと訪れ、俺達はそこを治めるメイラークム男爵のゲストハウスへと移動した。
保健室で介抱してもらった養護教諭のサニラ・メイラークム先生の実家であると聞き、驚くと同時に安心する。
前世の林間学校で過ごした自然の家よりも少し広い建物が丸々、ウェンディル学園一年生の貸し切り。
しかし、それにしては妙に人の気配がある。
「……あ?おい!来やがったぞ!王都の連中だ!」
「同業者だな!三日後、覚悟してろよ!」
妙にこちらを敵視しているらしい同年代の子供達が、次から次へと宣戦を布告してくる。
見慣れた装いに、「同業者」という言葉。
……どうやら先生方は、やってくれたようである。
特訓と同級生の交流を目的とした遠征に見せかけた、国が支援する冒険者養成学校の他キャンパスあたる、この辺りだと……リートベル学園だろうか。
「ジィン、あの人達って……」
「……どうやら、ただの遠征じゃないっぽいですね」
「冒険者養成学校の者か?何故?」
「結構ニブチンだね、マーズさん。多分、これは……」
「うん……」
「ええ……」
「は……?」
「なんのことだろ、ガラテヤ姉さん」
三日後、と彼らは言っていた。
詳しい話は後にされるだろうが……。
少なくとも、三日後に俺たちは彼らと何かをすることとなるように、そう一方的に仕組まれていたと考えて良いだろう。
数時間後。
俺達は講堂へと集められ、予想していた通りにリゲルリット先生から今後の予定を告げられた。
「我々がここへ来た真の目的を伝える!三日後!我らがウェンディル学園と……メイラークム男爵領にある姉妹校、リートベル学園の模擬戦を行う!フィールドはこのマハト霊山全てとし、模擬戦において全ての学生が与えられる衛星型魔法盾を一つ残らず破壊された学園の敗北とする、シンプルな戦いだ!勝利した方の学園に所属する学生には、相手を倒した数に応じて特別奨学金……という名目で、賞金も与えられることになっている。……という訳でぇゃっ、だから、本番までに備えをしておけ!以上!」
リゲルリット先生、抜け目なく噛む。
「……おどろき」
「ええっ!?……え?あれ、三人とも?」
俺、ガラテヤ様、ロディアは「ほーらね」と、手を軽く上げて首を振った。
「さぁて、どうしたものかねぇ」
「どうしようかな」
晩の集会が終了した後、俺達はそそくさと自室へ戻った。
幸いにも、俺達は予備も含めた全ての武装を持ってきている。
メインウェポンとなるファルシオンに加え、サブウェポンの弓矢、さらにもう一つのサブウェポンはこの拳そのものにある。
防御武装のフルプレートアーマーとハーフプレートメイル、そしてバックラーも持参済み。
体勢は万全といったところだ。
鎧は片方しか着ることができないが、それは追々考えるとして……まずは、作戦と立ち回りを考えなければ。
「どうするの、ジィン兄さん」
「まあ、俺も予想していたとはいえ何が何だかよく分からないんだよ。作戦って言っても、他のパーティとどう協力すれば良いものか分からないし」
「それも、模擬戦とはいえ割とガチっぽい戦いだし……僕の魔法も、どう使うかなぁ」
「おいらは大丈夫。ナイフもあるし、魔法も学園で少しは覚えた」
「私も大剣と鎧は忘れず持ってきた。ムーア先生の時のようにはいかないとも」
「……ガラテヤ姉さんはいつもの軽装」
「私の武器は拳一つ。身軽はいいわよね、ファーリちゃん」
「ん」
俺達はガラテヤ様の部屋に集まり、それぞれの武装を見せ合う。
そして小一時間続いた作戦会議の結論は。
「……これでいいんじゃないかなぁ?」
「もうダメだ。私も何も思いつかない」
「ぷしゅー」
「やれやれね。結局こうするしかないのかしら」
「無理なものは無理みたいですね」
今回の模擬作戦よろしくシンプルなものであった。
パーティでの行動は前提として、ただバラけずに立ち回ること。
そして、互いの攻撃が仲間同士でヒットしないように、避け合うこと。
そしてとにかく高所をとるため、山をある程度登っておくこと。
それ以上の作戦は練ることができなかった。
そもそもよく地理を知りもしない、詳しい地図無い山での凝った作戦を練るなど無謀であったのだ。
何はともあれ、模擬戦は三日後。
俺達は武装のメンテナンスを済ませ、戦いの日を待つこととした。
……その前に。
夜が深まった頃、俺は何を血迷ったのか。
一人きり、マハト霊山へと向かってしまっていた。
俺達はマハト霊山の麓にある「マハト村」へと訪れ、俺達はそこを治めるメイラークム男爵のゲストハウスへと移動した。
保健室で介抱してもらった養護教諭のサニラ・メイラークム先生の実家であると聞き、驚くと同時に安心する。
前世の林間学校で過ごした自然の家よりも少し広い建物が丸々、ウェンディル学園一年生の貸し切り。
しかし、それにしては妙に人の気配がある。
「……あ?おい!来やがったぞ!王都の連中だ!」
「同業者だな!三日後、覚悟してろよ!」
妙にこちらを敵視しているらしい同年代の子供達が、次から次へと宣戦を布告してくる。
見慣れた装いに、「同業者」という言葉。
……どうやら先生方は、やってくれたようである。
特訓と同級生の交流を目的とした遠征に見せかけた、国が支援する冒険者養成学校の他キャンパスあたる、この辺りだと……リートベル学園だろうか。
「ジィン、あの人達って……」
「……どうやら、ただの遠征じゃないっぽいですね」
「冒険者養成学校の者か?何故?」
「結構ニブチンだね、マーズさん。多分、これは……」
「うん……」
「ええ……」
「は……?」
「なんのことだろ、ガラテヤ姉さん」
三日後、と彼らは言っていた。
詳しい話は後にされるだろうが……。
少なくとも、三日後に俺たちは彼らと何かをすることとなるように、そう一方的に仕組まれていたと考えて良いだろう。
数時間後。
俺達は講堂へと集められ、予想していた通りにリゲルリット先生から今後の予定を告げられた。
「我々がここへ来た真の目的を伝える!三日後!我らがウェンディル学園と……メイラークム男爵領にある姉妹校、リートベル学園の模擬戦を行う!フィールドはこのマハト霊山全てとし、模擬戦において全ての学生が与えられる衛星型魔法盾を一つ残らず破壊された学園の敗北とする、シンプルな戦いだ!勝利した方の学園に所属する学生には、相手を倒した数に応じて特別奨学金……という名目で、賞金も与えられることになっている。……という訳でぇゃっ、だから、本番までに備えをしておけ!以上!」
リゲルリット先生、抜け目なく噛む。
「……おどろき」
「ええっ!?……え?あれ、三人とも?」
俺、ガラテヤ様、ロディアは「ほーらね」と、手を軽く上げて首を振った。
「さぁて、どうしたものかねぇ」
「どうしようかな」
晩の集会が終了した後、俺達はそそくさと自室へ戻った。
幸いにも、俺達は予備も含めた全ての武装を持ってきている。
メインウェポンとなるファルシオンに加え、サブウェポンの弓矢、さらにもう一つのサブウェポンはこの拳そのものにある。
防御武装のフルプレートアーマーとハーフプレートメイル、そしてバックラーも持参済み。
体勢は万全といったところだ。
鎧は片方しか着ることができないが、それは追々考えるとして……まずは、作戦と立ち回りを考えなければ。
「どうするの、ジィン兄さん」
「まあ、俺も予想していたとはいえ何が何だかよく分からないんだよ。作戦って言っても、他のパーティとどう協力すれば良いものか分からないし」
「それも、模擬戦とはいえ割とガチっぽい戦いだし……僕の魔法も、どう使うかなぁ」
「おいらは大丈夫。ナイフもあるし、魔法も学園で少しは覚えた」
「私も大剣と鎧は忘れず持ってきた。ムーア先生の時のようにはいかないとも」
「……ガラテヤ姉さんはいつもの軽装」
「私の武器は拳一つ。身軽はいいわよね、ファーリちゃん」
「ん」
俺達はガラテヤ様の部屋に集まり、それぞれの武装を見せ合う。
そして小一時間続いた作戦会議の結論は。
「……これでいいんじゃないかなぁ?」
「もうダメだ。私も何も思いつかない」
「ぷしゅー」
「やれやれね。結局こうするしかないのかしら」
「無理なものは無理みたいですね」
今回の模擬作戦よろしくシンプルなものであった。
パーティでの行動は前提として、ただバラけずに立ち回ること。
そして、互いの攻撃が仲間同士でヒットしないように、避け合うこと。
そしてとにかく高所をとるため、山をある程度登っておくこと。
それ以上の作戦は練ることができなかった。
そもそもよく地理を知りもしない、詳しい地図無い山での凝った作戦を練るなど無謀であったのだ。
何はともあれ、模擬戦は三日後。
俺達は武装のメンテナンスを済ませ、戦いの日を待つこととした。
……その前に。
夜が深まった頃、俺は何を血迷ったのか。
一人きり、マハト霊山へと向かってしまっていた。
10
あなたにおすすめの小説
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
異世界転生特典『絶対安全領域(マイホーム)』~家の中にいれば神すら無効化、一歩も出ずに世界最強になりました~
夏見ナイ
ファンタジー
ブラック企業で過労死した俺が転生時に願ったのは、たった一つ。「誰にも邪魔されず、絶対に安全な家で引きこもりたい!」
その切実な願いを聞き入れた神は、ユニークスキル『絶対安全領域(マイホーム)』を授けてくれた。この家の中にいれば、神の干渉すら無効化する究極の無敵空間だ!
「これで理想の怠惰な生活が送れる!」と喜んだのも束の間、追われる王女様が俺の庭に逃げ込んできて……? 面倒だが仕方なく、庭いじりのついでに追手を撃退したら、なぜかここが「聖域」だと勘違いされ、獣人の娘やエルフの学者まで押しかけてきた!
俺は家から出ずに快適なスローライフを送りたいだけなのに! 知らぬ間に世界を救う、無自覚最強の引きこもりファンタジー、開幕!
おいでよ!死にゲーの森~異世界転生したら地獄のような死にゲーファンタジー世界だったが俺のステータスとスキルだけがスローライフゲーム仕様
あけちともあき
ファンタジー
上澄タマルは過労死した。
死に際にスローライフを夢見た彼が目覚めた時、そこはファンタジー世界だった。
「異世界転生……!? 俺のスローライフの夢が叶うのか!」
だが、その世界はダークファンタジーばりばり。
人々が争い、魔が跳梁跋扈し、天はかき曇り地は荒れ果て、死と滅びがすぐ隣りにあるような地獄だった。
こんな世界でタマルが手にしたスキルは、スローライフ。
あらゆる環境でスローライフを敢行するためのスキルである。
ダンジョンを採掘して素材を得、毒沼を干拓して畑にし、モンスターを捕獲して飼いならす。
死にゲー世界よ、これがほんわかスローライフの力だ!
タマルを異世界に呼び込んだ謎の神ヌキチータ。
様々な道具を売ってくれ、何でも買い取ってくれる怪しい双子の魔人が経営する店。
世界の異形をコレクションし、タマルのゲットしたモンスターやアイテムたちを寄付できる博物館。
地獄のような世界をスローライフで侵食しながら、タマルのドキドキワクワクの日常が始まる。
最凶と呼ばれる音声使いに転生したけど、戦いとか面倒だから厨房馬車(キッチンカー)で生計をたてます
わたなべ ゆたか
ファンタジー
高校一年の音無厚使は、夏休みに叔父の手伝いでキッチンカーのバイトをしていた。バイトで隠岐へと渡る途中、同級生の板林精香と出会う。隠岐まで同じ船に乗り合わせた二人だったが、突然に船が沈没し、暗い海の底へと沈んでしまう。
一七年後。異世界への転生を果たした厚使は、クラネス・カーターという名の青年として生きていた。《音声使い》の《力》を得ていたが、危険な仕事から遠ざかるように、ラオンという国で隊商を率いていた。自身も厨房馬車(キッチンカー)で屋台染みた商売をしていたが、とある村でアリオナという少女と出会う。クラネスは家族から蔑まれていたアリオナが、妙に気になってしまい――。異世界転生チート物、ボーイミーツガール風味でお届けします。よろしくお願い致します!
大賞が終わるまでは、後書きなしでアップします。
異世界転生、防御特化能力で彼女たちを英雄にしようと思ったが、そんな彼女たちには俺が英雄のようだ。
Mです。
ファンタジー
異世界学園バトル。
現世で惨めなサラリーマンをしていた……
そんな会社からの帰り道、「転生屋」という見慣れない怪しげな店を見つける。
その転生屋で新たな世界で生きる為の能力を受け取る。
それを自由イメージして良いと言われた為、せめて、新しい世界では苦しまないようにと防御に突出した能力をイメージする。
目を覚ますと見知らぬ世界に居て……学生くらいの年齢に若返っていて……
現実か夢かわからなくて……そんな世界で出会うヒロイン達に……
特殊な能力が当然のように存在するその世界で……
自分の存在も、手に入れた能力も……異世界に来たって俺の人生はそんなもん。
俺は俺の出来ること……
彼女たちを守り……そして俺はその能力を駆使して彼女たちを英雄にする。
だけど、そんな彼女たちにとっては俺が英雄のようだ……。
※※多少意識はしていますが、主人公最強で無双はなく、普通に苦戦します……流行ではないのは承知ですが、登場人物の個性を持たせるためそのキャラの物語(エピソード)や回想のような場面が多いです……後一応理由はありますが、主人公の年上に対する態度がなってません……、後、私(さくしゃ)の変な癖で「……」が凄く多いです。その変ご了承の上で楽しんで頂けると……Mです。の本望です(どうでもいいですよね…)※※
※※楽しかった……続きが気になると思って頂けた場合、お気に入り登録……このエピソード好みだなとか思ったらコメントを貰えたりすると軽い絶頂を覚えるくらいには喜びます……メンタル弱めなので、誹謗中傷てきなものには怯えていますが、気軽に頂けると嬉しいです。※※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる