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第四章 爆発
断章 「世界」
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遥か昔。
かつての世界で、生物が誕生するよりも、ずっとずっと前の話である。
世界には闇があった。
高きモノは光を創ったが、しかし闇を照らす光は、矮小なものであった。
高きモノは、小さな光の中に数多の、大いなる世界を創った。
世界は空と地に分けられた。
そして、高きモノは大いなる世界に幾多の命と、流れる時間を創った。
命が巡り、増え、世界が続くようにするためである。
やがて空は陸と海に分かち、高きモノの僕となった。
陸と海に分かたれた地にて、命はさらに増えた。
しかし、やがて増えた命は、同じもの達で争い、殺し合うようになった。
高きモノは、自らの創ったものを悔やんだ。
そこで高きモノは命を強いものと弱いものに細かく分け、命が正しく巡るようにした。
そして、中でも最も賢く、己に近いものに「人間」という名前をつけた。
しかし、それでも人間達は互いの賢さ故に争い、血を流した。
高きモノは、またもや後悔した。
弱い人間達は嘆いた。
彼らは自らの不幸を、報われない命に生まれたことを悔やんだ。
高きモノは嘆いた。
自らの生み出した似姿が、その生まれに悔いることをひどく悲しんだ。
弱い人間達は、高きモノの手によって新たなる命となり、報われることを願った。
そして高きモノは、それを承諾した。
極稀に、身に覚えのない記憶をもつ者が生まれることがある。
それは、高きモノによって生まれ直した、弱い人間の変わり身であった。
しかし高きモノは、それを最後に姿を消してしまった。
己の力を使い果たしてしまったためである。
中略。
やがて、世界は完成した。
多くの命を生み、また殺した世界は、長い時を経て高きモノを蘇らせる程の世界と成った。
目を覚ました高きモノは、完成したそれを「天国」と名付けた。
そこに生きる命の全ては、そこで永遠の頂を約束された。
しかし、高きモノが創造された数多の世界は、未だ成らずにいた。
永遠より弾かれし命は、またもや嘆いた。
自らの不運を、短命を、ひどく悲しんだ。
高きモノは彼らを見かねて、弱い人間達をそれぞれ違う、成っていない世界へと送り込んだ。
家族と家族は同じ世界へ、友人と友人は同じ世界へ。
共に、他の世界で頂を迎えることができるようにである。
今も数多の世界が頂へ向かっている。
しかし何処の世界も、それは遥か彼方である。
終末は訪れず、しかし命は増え、そして消えていく。
高きモノは、自らが創った世界を疑った。
そこで高きモノは、自らに人としての姿を与え、弱い人間の変わり身に聞くことにした。
自らの創った世界で、どのような人生を送ってきたのか。
何に嘆き、何に悲しみ、何を憂いたのか。
人としての高きモノは「クダリ」と名乗った。
高きところより下ったものだからである。
そしてクダリは、天に近い山に一人の青年を招いた。
目的は当然、それを知るためであった。
かつての世界で、生物が誕生するよりも、ずっとずっと前の話である。
世界には闇があった。
高きモノは光を創ったが、しかし闇を照らす光は、矮小なものであった。
高きモノは、小さな光の中に数多の、大いなる世界を創った。
世界は空と地に分けられた。
そして、高きモノは大いなる世界に幾多の命と、流れる時間を創った。
命が巡り、増え、世界が続くようにするためである。
やがて空は陸と海に分かち、高きモノの僕となった。
陸と海に分かたれた地にて、命はさらに増えた。
しかし、やがて増えた命は、同じもの達で争い、殺し合うようになった。
高きモノは、自らの創ったものを悔やんだ。
そこで高きモノは命を強いものと弱いものに細かく分け、命が正しく巡るようにした。
そして、中でも最も賢く、己に近いものに「人間」という名前をつけた。
しかし、それでも人間達は互いの賢さ故に争い、血を流した。
高きモノは、またもや後悔した。
弱い人間達は嘆いた。
彼らは自らの不幸を、報われない命に生まれたことを悔やんだ。
高きモノは嘆いた。
自らの生み出した似姿が、その生まれに悔いることをひどく悲しんだ。
弱い人間達は、高きモノの手によって新たなる命となり、報われることを願った。
そして高きモノは、それを承諾した。
極稀に、身に覚えのない記憶をもつ者が生まれることがある。
それは、高きモノによって生まれ直した、弱い人間の変わり身であった。
しかし高きモノは、それを最後に姿を消してしまった。
己の力を使い果たしてしまったためである。
中略。
やがて、世界は完成した。
多くの命を生み、また殺した世界は、長い時を経て高きモノを蘇らせる程の世界と成った。
目を覚ました高きモノは、完成したそれを「天国」と名付けた。
そこに生きる命の全ては、そこで永遠の頂を約束された。
しかし、高きモノが創造された数多の世界は、未だ成らずにいた。
永遠より弾かれし命は、またもや嘆いた。
自らの不運を、短命を、ひどく悲しんだ。
高きモノは彼らを見かねて、弱い人間達をそれぞれ違う、成っていない世界へと送り込んだ。
家族と家族は同じ世界へ、友人と友人は同じ世界へ。
共に、他の世界で頂を迎えることができるようにである。
今も数多の世界が頂へ向かっている。
しかし何処の世界も、それは遥か彼方である。
終末は訪れず、しかし命は増え、そして消えていく。
高きモノは、自らが創った世界を疑った。
そこで高きモノは、自らに人としての姿を与え、弱い人間の変わり身に聞くことにした。
自らの創った世界で、どのような人生を送ってきたのか。
何に嘆き、何に悲しみ、何を憂いたのか。
人としての高きモノは「クダリ」と名乗った。
高きところより下ったものだからである。
そしてクダリは、天に近い山に一人の青年を招いた。
目的は当然、それを知るためであった。
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