134 / 177
第九章 在るべき姿の世界
第百二十四話 秘薬
しおりを挟む
翌日。
メイラークム先生が作ったオリジナルの、いわゆる元気が出る魔法薬……もとい栄養剤的なソレが身体に合うのか否かをテストすべく、俺達はそれを少し摂取して様子を見ることにした。
「……ほほう、これが例の魔法薬、でこざいますかな」
「やっぱり過酷な場所での冒険には、こういう道中をサポートしてくれるものが必須よね~」
「何で今まで準備してこなかったんだ、とでもいいたげな口調じゃあねェか、ケーリッジ先生よォ?」
「そりゃあそうよ!……でも、メイラークム先生やムーア先生もいるのにこうなってるってことは……多分、何か現行の薬には問題があったんでしょ?」
「ええ。他のどの薬も、過度な発熱とか、効き目が切れた後に反動で体力を急激に消耗するとか……そういう、特に戦闘が控えているかもしれない旅には、重すぎる副作用が多くて。私の作った……『ホット・バニーズ』とでも名前をつけておきましょ、合う人と合わない人がいるこの薬でも、まだマシな方なのよ」
「全員、合えば良い。でも、合わなかったら……いろいろ寒いところでの過ごし方、考えなきゃ」
「そうだな。だが安心しろ、ファーリちゃんは命にかえても私が温めてやろう」
「ん。……ん?よ、よろしく……?」
マーズさんの目が妙に輝いていた気がしたが……ツッコんで話を広げるべきではないと判断し、俺はスルーを決め込むことにした。
「マ、とりあえず試してみまショ!アタァシのムキムキなカラダでも、この寒さはキツいワ!おハダが荒れちゃう」
「じゃあアドラさんの肌のためにも、まずは試してみましょうか。俺はすり抜けるかも知れませんけど」
そして、いよいよ例の秘薬もとい「ホット・バニーズ」を半分に割って飲むことにした。
もし元気が出なくなる副作用が出ても、元々少しここで休憩するつもりなのだ。
その副作用で受ける旅での不都合は少ないと考えて良いだろう。
それから十数分後。
効果が聞き始める瞬間を今か今かと楽しみに待っていた面々は、温まる体に顔を緩める者と、脱力感に顔をしかめる者の二つに分かれた。
例の魔法薬、「ホット・バニーズ」の副作用が出なかった俺、ガラテヤ様、ファーリちゃん、ムーア先生、ケーリッジ先生、そして当然のメイラークム先生は、効き目の通り、身体が温まる感覚をおぼえた。
しかし、マーズさん、バグラディ、アドラさんの三人はどうやら身体に合わなかったらしく、「何で自分に限ってこんなことに」とでも言いたげな目をしながら、地面に寝そべるばかりであった。
また、俺の胴体を薬がすり抜けるという現象には見舞われず、特に誰かや何かしらの物との接触ができなくなることは無かった。
アロザラ町ではちょくちょく出たり出なかったりしていた謎のすり抜け現状だが、逆にあの町よりも北に位置するここでは、まだ一度も出ていない。
一概に、北に行けば行くほど俺がすり抜けやすくなるということでは無いらしい。
何か霊脈のような、魔力や魔物が発生する場所に関係したりしなかったりするのだろうか。
その後、メイラークム先生は身体に合う人のみに秘薬を配り、副作用が出てしまった三人の回復を待つため、もう一晩を丘の上で過ごすことになった。
いつになく元気が無いアドラさんの顔は、今までのエネルギッシュな彼のイメージを覆すものであり、これは当分忘れられないと、そう密かに思うのであった。
メイラークム先生が作ったオリジナルの、いわゆる元気が出る魔法薬……もとい栄養剤的なソレが身体に合うのか否かをテストすべく、俺達はそれを少し摂取して様子を見ることにした。
「……ほほう、これが例の魔法薬、でこざいますかな」
「やっぱり過酷な場所での冒険には、こういう道中をサポートしてくれるものが必須よね~」
「何で今まで準備してこなかったんだ、とでもいいたげな口調じゃあねェか、ケーリッジ先生よォ?」
「そりゃあそうよ!……でも、メイラークム先生やムーア先生もいるのにこうなってるってことは……多分、何か現行の薬には問題があったんでしょ?」
「ええ。他のどの薬も、過度な発熱とか、効き目が切れた後に反動で体力を急激に消耗するとか……そういう、特に戦闘が控えているかもしれない旅には、重すぎる副作用が多くて。私の作った……『ホット・バニーズ』とでも名前をつけておきましょ、合う人と合わない人がいるこの薬でも、まだマシな方なのよ」
「全員、合えば良い。でも、合わなかったら……いろいろ寒いところでの過ごし方、考えなきゃ」
「そうだな。だが安心しろ、ファーリちゃんは命にかえても私が温めてやろう」
「ん。……ん?よ、よろしく……?」
マーズさんの目が妙に輝いていた気がしたが……ツッコんで話を広げるべきではないと判断し、俺はスルーを決め込むことにした。
「マ、とりあえず試してみまショ!アタァシのムキムキなカラダでも、この寒さはキツいワ!おハダが荒れちゃう」
「じゃあアドラさんの肌のためにも、まずは試してみましょうか。俺はすり抜けるかも知れませんけど」
そして、いよいよ例の秘薬もとい「ホット・バニーズ」を半分に割って飲むことにした。
もし元気が出なくなる副作用が出ても、元々少しここで休憩するつもりなのだ。
その副作用で受ける旅での不都合は少ないと考えて良いだろう。
それから十数分後。
効果が聞き始める瞬間を今か今かと楽しみに待っていた面々は、温まる体に顔を緩める者と、脱力感に顔をしかめる者の二つに分かれた。
例の魔法薬、「ホット・バニーズ」の副作用が出なかった俺、ガラテヤ様、ファーリちゃん、ムーア先生、ケーリッジ先生、そして当然のメイラークム先生は、効き目の通り、身体が温まる感覚をおぼえた。
しかし、マーズさん、バグラディ、アドラさんの三人はどうやら身体に合わなかったらしく、「何で自分に限ってこんなことに」とでも言いたげな目をしながら、地面に寝そべるばかりであった。
また、俺の胴体を薬がすり抜けるという現象には見舞われず、特に誰かや何かしらの物との接触ができなくなることは無かった。
アロザラ町ではちょくちょく出たり出なかったりしていた謎のすり抜け現状だが、逆にあの町よりも北に位置するここでは、まだ一度も出ていない。
一概に、北に行けば行くほど俺がすり抜けやすくなるということでは無いらしい。
何か霊脈のような、魔力や魔物が発生する場所に関係したりしなかったりするのだろうか。
その後、メイラークム先生は身体に合う人のみに秘薬を配り、副作用が出てしまった三人の回復を待つため、もう一晩を丘の上で過ごすことになった。
いつになく元気が無いアドラさんの顔は、今までのエネルギッシュな彼のイメージを覆すものであり、これは当分忘れられないと、そう密かに思うのであった。
0
あなたにおすすめの小説
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件
美鈴
ファンタジー
転生したのは男性が少ない世界!?貴族に生まれたのはいいけど、どういう風に生きていこう…?
最新章の第五章も夕方18時に更新予定です!
☆の話は苦手な人は飛ばしても問題無い様に物語を紡いでおります。
※ホットランキング1位、ファンタジーランキング3位ありがとうございます!
※カクヨム様にも投稿しております。内容が大幅に異なり改稿しております。
※各種ランキング1位を頂いた事がある作品です!
落ちこぼれの貴族、現地の人達を味方に付けて頑張ります!
ユーリ
ファンタジー
気がつくと、見知らぬ部屋のベッドの上で、状況が理解できず混乱していた僕は、鏡の前に立って、あることを思い出した。
ここはリュカとして生きてきた異世界で、僕は“落ちこぼれ貴族の息子”だった。しかも最悪なことに、さっき行われた絶対失敗出来ない召喚の儀で、僕だけが失敗した。
そのせいで、貴族としての評価は確実に地に落ちる。けれど、両親は超が付くほど過保護だから、家から追い出される心配は……たぶん無い。
問題は一つ。
兄様との関係が、どうしようもなく悪い。
僕は両親に甘やかされ、勉強もサボり放題。その積み重ねのせいで、兄様との距離は遠く、話しかけるだけで気まずい空気に。
このまま兄様が家督を継いだら、屋敷から追い出されるかもしれない!
追い出されないように兄様との関係を改善し、いざ追い出されても生きていけるように勉強して強くなる!……のはずが、勉強をサボっていたせいで、一般常識すら分からないところからのスタートだった。
それでも、兄様との距離を縮めようと努力しているのに、なかなか縮まらない! むしろ避けられてる気さえする!!
それでもめげずに、今日も兄様との関係修復、頑張ります!
5/9から小説になろうでも掲載中
【改訂版】槍使いのドラゴンテイマー ~邪竜をテイムしたのでついでに魔王も倒しておこうと思う~
こげ丸
ファンタジー
『偶然テイムしたドラゴンは神をも凌駕する邪竜だった』
公開サイト累計1000万pv突破の人気作が改訂版として全編リニューアル!
書籍化作業なみにすべての文章を見直したうえで大幅加筆。
旧版をお読み頂いた方もぜひ改訂版をお楽しみください!
===あらすじ===
異世界にて前世の記憶を取り戻した主人公は、今まで誰も手にしたことのない【ギフト:竜を従えし者】を授かった。
しかしドラゴンをテイムし従えるのは簡単ではなく、たゆまぬ鍛錬を続けていたにもかかわらず、その命を失いかける。
だが……九死に一生を得たそのすぐあと、偶然が重なり、念願のドラゴンテイマーに!
神をも凌駕する力を持つ最強で最凶のドラゴンに、
双子の猫耳獣人や常識を知らないハイエルフの美幼女。
トラブルメーカーの美少女受付嬢までもが加わって、主人公の波乱万丈の物語が始まる!
※以前公開していた旧版とは一部設定や物語の展開などが異なっておりますので改訂版の続きは更新をお待ち下さい
※改訂版の公開方法、ファンタジーカップのエントリーについては運営様に確認し、問題ないであろう方法で公開しております
※小説家になろう様とカクヨム様でも公開しております
レベルアップは異世界がおすすめ!
まったりー
ファンタジー
レベルの上がらない世界にダンジョンが出現し、誰もが装備や技術を鍛えて攻略していました。
そんな中、異世界ではレベルが上がることを記憶で知っていた主人公は、手芸スキルと言う生産スキルで異世界に行ける手段を作り、自分たちだけレベルを上げてダンジョンに挑むお話です。
DIYと異世界建築生活〜ギャル娘たちとパパの腰袋チート
みーくん
ファンタジー
気づいたら異世界に飛ばされていた、おっさん大工。
唯一の武器は、腰につけた工具袋——
…って、これ中身無限!?釘も木材もコンクリも出てくるんだけど!?
戸惑いながらも、拾った(?)ギャル魔法少女や謎の娘たちと家づくりを始めたおっさん。
土木工事からリゾート開発、果てはダンジョン探索まで!?
「異世界に家がないなら、建てればいいじゃない」
今日もおっさんはハンマー片手に、愛とユーモアと魔法で暮らしをDIY!
建築×育児×チート×ギャル
“腰袋チート”で異世界を住みよく変える、大人の冒険がここに始まる!
腰活(こしかつっ!)よろしくお願いします
高校生の俺、異世界転移していきなり追放されるが、じつは最強魔法使い。可愛い看板娘がいる宿屋に拾われたのでもう戻りません
下昴しん
ファンタジー
高校生のタクトは部活帰りに突然異世界へ転移してしまう。
横柄な態度の王から、魔法使いはいらんわ、城から出ていけと言われ、いきなり無職になったタクト。
偶然会った宿屋の店長トロに仕事をもらい、看板娘のマロンと一緒に宿と食堂を手伝うことに。
すると突然、客の兵士が暴れだし宿はメチャクチャになる。
兵士に殴り飛ばされるトロとマロン。
この世界の魔法は、生活で利用する程度の威力しかなく、とても弱い。
しかし──タクトの魔法は人並み外れて、無法者も脳筋男もひれ伏すほど強かった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる