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歪な関係(Side.アイザック)
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我が国には正妃と側妃が二人……合わせて三人の妃がいる。
その中でも『妖精姫』と謳われるディアナの美貌に魅せられた国王が、ずいぶんと彼女を寵愛していたのは有名な話であった。
「そんな……まさか!」
驚きのあまりそれ以上何も言えなくなった俺に、オーレリアは過去の事情を語り始める。
「十年前、わたくしとサミュエル様の婚約が整ってすぐの頃、サザライ病が王都に蔓延しました。ディアナ妃もその病に罹り、それ以来ずっと体調を崩して公の場に出ていないことは知っておられますか?」
「ああ。噂には聞いている」
サザライ病は数十年に一度の間隔で爆発的な流行をみせる感染症だ。
高熱とともに体の至るところに発疹が現れるのが特徴で、罹ったのが幼い子供であれば成長とともに発疹の痕は薄くなるが、大人が罹ると重症化しやすく目立つ痕が残る者も多いと聞く。
オーレリアによると、ディアナは肌を全て覆う長袖のドレスを纏い、その顔はベールによって隠されているそうだ。
おそらくディアナにも発疹の痕が残り、そのせいで姿を見せなくなったのだろう……という話は、我が国では公然の秘密となっている。
「当時、自身の美貌が病によって損なわれてしまったことにディアナ妃は絶望し、ずいぶんと荒れていたそうです。そして、歪んだ美への執着がサミュエル様へと向かいました」
「どういうことだ?」
発疹の痕を他人に見られたくない気持ちはわからなくもないが、それがどうしてサミュエルへの執着に繋がるのかが理解できない。
「わたくしもあの方の気持ちが全てわかるわけではありません。おそらく、失った自身の美しさをサミュエル様を使って再現されようとしたのではないかと……」
「再現……?」
オーレリアがいくつもの例えを出して説明をし、ようやく俺なりにその言葉の意味を呑み込む。
「つまり、ディアナ妃はサミュエルに自己投影……いや、サミュエルと同化したってことか?」
「ええ。サミュエル様の顔立ちはディアナ妃によく似ておられますから」
ディアナは自分に似たサミュエルを、自分自身だと思い込むようになったのだと俺は解釈をする。
まあ、解釈をしたところで理解はできないが……。
「それからは、サミュエル様の生活が『美しさ』を最優先させるものへと一変しました。筋肉の付き方が偏るからと剣術の稽古は禁止され、魔法の訓練中に軽い火傷を負うとそれすらも禁止となり、食事も美しさを保つためのメニューが用意され、菓子類は肌や体型に影響が出るからと一切食べることを許されなかったのです」
「それは………」
あまりにも極端な内容に驚き、うまく言葉が出てこない。
「毎日毎日、身体の隅々まで何度も計測やチェックをされ、ディアナ妃の理想から外れることは許されなかった……。吹き出物が一つでも見つかれば何時間も罵倒され、そこで泣こうものなら、目が腫れるという理由でさらに詰られたそうです」
「…………」
まさか、そこまでひどい仕打ちを受けていたとは思いもしなかった……。
それと同時に一つの疑問が浮かび上がる。
「でも、サミュエルは自分の容姿に自信を持っているだろ? おかしくないか?」
そのような扱いをされれば、反発や拒絶をするのが当たり前だと俺は思ったのだが……。
「ええ。そこが問題なのです」
オーレリアは自身の手をぎゅっと握りしめた。
「ディアナ妃はサミュエル様に対して『容姿しか取り柄がない』『唯一の才能を伸ばしてあげている』と、そう言い続けていました。恐ろしいのは、そんな環境にサミュエル様も周りも順応してしまったこと……」
その言葉の意味を理解し、背筋に冷たいものが走る。
(たしかにこれは虐待……いや、洗脳じゃないか?)
サミュエルはディアナの教育によって、自身の容姿を磨くことこそが至上であると、思い込まされてしまったのだ。
「サミュエル様は天才ではありません。二人の兄殿下のように才能に恵まれたわけでもなかった。ただ、彼には『努力をする意志』がきちんとありました。それなのに、偏った思想を植え付けられ、良き王族になるべく努力をすることすら許されなかった……」
幼い頃のサミュエルは異母兄たちを尊敬し、追い付こうと必死に頑張っていたという。
「一体、自分の子供を何だと思っているんだ!」
気づけば声を荒げていた。
俺が言ったところで、どうしようもないことはわかっている。
それでも、サミュエルの人生が踏みにじられた事実に、それが実の母親の仕業であったことに、ふつふつと怒りが湧き上がる。
その時、そんなサミュエルへの仕打ちを唯一止められる存在に気がついた。
「そうだ……陛下は? 陛下なら……」
「陛下も同罪ですわ」
しかし、オーレリアの声がさらに冷たく響く。
「ディアナ妃のヒステリーを落ち着かせるために手を尽くしたようですが……結局、サミュエル様を好きにさせておくのが一番だと気づいたのでしょう。ディアナ妃の感情を受け止めることのできなかった陛下は、お気に入りのお人形を与えて逃げたのです」
ちょうどその頃はノフトガルド帝国との関係が悪化し、あわや戦争に発展するのではと危惧されていた。
そのような状況で、側妃のヒステリーに付き合っている場合ではなかったのだろう。
ならば、ディアナを生家に戻して静養させることもできたはずだが、このタイミングでそのような行動を取れば、発疹の痕を理由にディアナを遠ざけたのだと噂されてしまうかもしれない。
外聞が悪くなることを国王は恐れたのだろう……と、オーレリアは続けた。
「それで放置をしたっていうのか?」
そのせいで、ディアナとサミュエルが住まう宮殿は孤立してしまい、二人の歪な親子関係が出来上がってしまった……。
なんて胸糞の悪い話だと、俺は額に手を当てて深い溜息を吐く。
「父が何度も提言をしたのですが、陛下には取り合ってもらえず……。むしろ、わたくしにサミュエル様の更生を一任するような態度で……。いつか大事になるのではと、ずっと悩んでおりました」
国王が黙認していたのならば、他の者が口出しをできるわけもなく……。
「それで、予想通りに卒業パーティーでの婚約破棄事件が起きたってわけか」
「ええ………」
実は、サミュエルが婚約破棄を企んでいたことをオーレリアは事前に気づいていたそうだ。
そして、その婚約破棄を阻止せずに利用して、サミュエルをディアナの支配から抜け出させることを考えついたのだという。
あれだけの事件を起こしたのだから、サミュエルの王位継承権の剥奪と王都からの追放をキャクストン侯爵家が求めるのは不自然ではない。
そうして、物理的にディアナから引き離すことでサミュエルを救おうとしたのだ。
(キャクストン侯爵としても、洗脳を施された王子と娘の婚姻は避けたかったのだろうな……)
ようやくキャクストン侯爵家から届いた手紙の意味と思惑を理解する。
そして、俺は大きく息を吐くと、最後の質問をオーレリアに投げかけた。
「どうしてそこまでサミュエルのことを……?」
いくらサミュエルの事情を知っていたとはいえ、公の場で婚約破棄を企むような相手にここまで情けをかけた理由を知りたかった。
これまで無言だったシリルも、ちらりとオーレリアへ視線を向けている。
「そうですね……。サミュエル様の境遇を知っておきながら、自分だけ幸せになることが後ろめたかったのかもしれません。結局は、自分の気持ちを軽くするためにサミュエル様を助けたようなものです」
そう言って、オーレリアは目を伏せる。
彼女の言葉に嘘はないのだろう。
それでも、サミュエルを最後まで見捨てずに救い出してくれたオーレリアに、嫌悪を抱いだくことはなかった。
「このようなことにアイザック様やオールディス辺境伯家を巻き込んでしまったことは申し訳なく思っております」
頭を下げようとしたオーレリアに、俺は待ったをかける。
「たしかに、最初は厄介者を押し付けられたと思っていたが……今ではオーレリア嬢に感謝しているんだ」
「感謝……ですか?」
「ああ、おかげでサミュエルに出会えたんだからな」
すると、オーレリアは驚いたように目を見開いた。
「あの、もしかしてお二人の関係は……?」
「まだ口説いてる途中」
あえて冗談めかして答えると、彼女は表情を緩めてクスクスと笑った。
「サミュエル様があのように生き生きとしていらしたのは、アイザック様が側にいらっしゃるからですわね」
「さあ? だったら俺は嬉しいけどな」
互いに目を合わせて笑い合うと、シリルから睨まれてしまう。
どれだけ嫉妬深いんだと内心呆れていると、オーレリアが少し眉根を寄せた表情で口を開く。
「このままディアナ妃が引き下がってくれれば良いのですが……。それに、レディング侯爵子息が留学先から帰国したとの報せがありましたので……」
「たしかサミュエルの従兄だったな」
サミュエルが嬉しそうに「ダリル兄様」と呼んでいた人物。
「ええ。あの方にはお気をつけください。レディング侯爵子息の影響をサミュエル様は多大に受けております」
「なるほどな……。助言に感謝する」
それは悪い意味での影響なのだろう。
どうやら王都は厄介者が集まる魔窟のような場所らしい。
(スキンケアグッズの広告にサミュエルの名前を出す案もあったが……あれは却下だな)
下手に目立って、王都にサミュエルの名前が届くような真似は避けたほうがよさそうだ。
「サミュエル様がこの地で平和に暮らせますことを心より願っております」
もちろん、サミュエルを無碍に扱う輩のもとへ帰すつもりはない。
あとは任せてほしいという意味を込めて、俺はゆっくりとオーレリアへ頷く。
(サミュエルは俺の手で幸せにしてやればいい)
その中でも『妖精姫』と謳われるディアナの美貌に魅せられた国王が、ずいぶんと彼女を寵愛していたのは有名な話であった。
「そんな……まさか!」
驚きのあまりそれ以上何も言えなくなった俺に、オーレリアは過去の事情を語り始める。
「十年前、わたくしとサミュエル様の婚約が整ってすぐの頃、サザライ病が王都に蔓延しました。ディアナ妃もその病に罹り、それ以来ずっと体調を崩して公の場に出ていないことは知っておられますか?」
「ああ。噂には聞いている」
サザライ病は数十年に一度の間隔で爆発的な流行をみせる感染症だ。
高熱とともに体の至るところに発疹が現れるのが特徴で、罹ったのが幼い子供であれば成長とともに発疹の痕は薄くなるが、大人が罹ると重症化しやすく目立つ痕が残る者も多いと聞く。
オーレリアによると、ディアナは肌を全て覆う長袖のドレスを纏い、その顔はベールによって隠されているそうだ。
おそらくディアナにも発疹の痕が残り、そのせいで姿を見せなくなったのだろう……という話は、我が国では公然の秘密となっている。
「当時、自身の美貌が病によって損なわれてしまったことにディアナ妃は絶望し、ずいぶんと荒れていたそうです。そして、歪んだ美への執着がサミュエル様へと向かいました」
「どういうことだ?」
発疹の痕を他人に見られたくない気持ちはわからなくもないが、それがどうしてサミュエルへの執着に繋がるのかが理解できない。
「わたくしもあの方の気持ちが全てわかるわけではありません。おそらく、失った自身の美しさをサミュエル様を使って再現されようとしたのではないかと……」
「再現……?」
オーレリアがいくつもの例えを出して説明をし、ようやく俺なりにその言葉の意味を呑み込む。
「つまり、ディアナ妃はサミュエルに自己投影……いや、サミュエルと同化したってことか?」
「ええ。サミュエル様の顔立ちはディアナ妃によく似ておられますから」
ディアナは自分に似たサミュエルを、自分自身だと思い込むようになったのだと俺は解釈をする。
まあ、解釈をしたところで理解はできないが……。
「それからは、サミュエル様の生活が『美しさ』を最優先させるものへと一変しました。筋肉の付き方が偏るからと剣術の稽古は禁止され、魔法の訓練中に軽い火傷を負うとそれすらも禁止となり、食事も美しさを保つためのメニューが用意され、菓子類は肌や体型に影響が出るからと一切食べることを許されなかったのです」
「それは………」
あまりにも極端な内容に驚き、うまく言葉が出てこない。
「毎日毎日、身体の隅々まで何度も計測やチェックをされ、ディアナ妃の理想から外れることは許されなかった……。吹き出物が一つでも見つかれば何時間も罵倒され、そこで泣こうものなら、目が腫れるという理由でさらに詰られたそうです」
「…………」
まさか、そこまでひどい仕打ちを受けていたとは思いもしなかった……。
それと同時に一つの疑問が浮かび上がる。
「でも、サミュエルは自分の容姿に自信を持っているだろ? おかしくないか?」
そのような扱いをされれば、反発や拒絶をするのが当たり前だと俺は思ったのだが……。
「ええ。そこが問題なのです」
オーレリアは自身の手をぎゅっと握りしめた。
「ディアナ妃はサミュエル様に対して『容姿しか取り柄がない』『唯一の才能を伸ばしてあげている』と、そう言い続けていました。恐ろしいのは、そんな環境にサミュエル様も周りも順応してしまったこと……」
その言葉の意味を理解し、背筋に冷たいものが走る。
(たしかにこれは虐待……いや、洗脳じゃないか?)
サミュエルはディアナの教育によって、自身の容姿を磨くことこそが至上であると、思い込まされてしまったのだ。
「サミュエル様は天才ではありません。二人の兄殿下のように才能に恵まれたわけでもなかった。ただ、彼には『努力をする意志』がきちんとありました。それなのに、偏った思想を植え付けられ、良き王族になるべく努力をすることすら許されなかった……」
幼い頃のサミュエルは異母兄たちを尊敬し、追い付こうと必死に頑張っていたという。
「一体、自分の子供を何だと思っているんだ!」
気づけば声を荒げていた。
俺が言ったところで、どうしようもないことはわかっている。
それでも、サミュエルの人生が踏みにじられた事実に、それが実の母親の仕業であったことに、ふつふつと怒りが湧き上がる。
その時、そんなサミュエルへの仕打ちを唯一止められる存在に気がついた。
「そうだ……陛下は? 陛下なら……」
「陛下も同罪ですわ」
しかし、オーレリアの声がさらに冷たく響く。
「ディアナ妃のヒステリーを落ち着かせるために手を尽くしたようですが……結局、サミュエル様を好きにさせておくのが一番だと気づいたのでしょう。ディアナ妃の感情を受け止めることのできなかった陛下は、お気に入りのお人形を与えて逃げたのです」
ちょうどその頃はノフトガルド帝国との関係が悪化し、あわや戦争に発展するのではと危惧されていた。
そのような状況で、側妃のヒステリーに付き合っている場合ではなかったのだろう。
ならば、ディアナを生家に戻して静養させることもできたはずだが、このタイミングでそのような行動を取れば、発疹の痕を理由にディアナを遠ざけたのだと噂されてしまうかもしれない。
外聞が悪くなることを国王は恐れたのだろう……と、オーレリアは続けた。
「それで放置をしたっていうのか?」
そのせいで、ディアナとサミュエルが住まう宮殿は孤立してしまい、二人の歪な親子関係が出来上がってしまった……。
なんて胸糞の悪い話だと、俺は額に手を当てて深い溜息を吐く。
「父が何度も提言をしたのですが、陛下には取り合ってもらえず……。むしろ、わたくしにサミュエル様の更生を一任するような態度で……。いつか大事になるのではと、ずっと悩んでおりました」
国王が黙認していたのならば、他の者が口出しをできるわけもなく……。
「それで、予想通りに卒業パーティーでの婚約破棄事件が起きたってわけか」
「ええ………」
実は、サミュエルが婚約破棄を企んでいたことをオーレリアは事前に気づいていたそうだ。
そして、その婚約破棄を阻止せずに利用して、サミュエルをディアナの支配から抜け出させることを考えついたのだという。
あれだけの事件を起こしたのだから、サミュエルの王位継承権の剥奪と王都からの追放をキャクストン侯爵家が求めるのは不自然ではない。
そうして、物理的にディアナから引き離すことでサミュエルを救おうとしたのだ。
(キャクストン侯爵としても、洗脳を施された王子と娘の婚姻は避けたかったのだろうな……)
ようやくキャクストン侯爵家から届いた手紙の意味と思惑を理解する。
そして、俺は大きく息を吐くと、最後の質問をオーレリアに投げかけた。
「どうしてそこまでサミュエルのことを……?」
いくらサミュエルの事情を知っていたとはいえ、公の場で婚約破棄を企むような相手にここまで情けをかけた理由を知りたかった。
これまで無言だったシリルも、ちらりとオーレリアへ視線を向けている。
「そうですね……。サミュエル様の境遇を知っておきながら、自分だけ幸せになることが後ろめたかったのかもしれません。結局は、自分の気持ちを軽くするためにサミュエル様を助けたようなものです」
そう言って、オーレリアは目を伏せる。
彼女の言葉に嘘はないのだろう。
それでも、サミュエルを最後まで見捨てずに救い出してくれたオーレリアに、嫌悪を抱いだくことはなかった。
「このようなことにアイザック様やオールディス辺境伯家を巻き込んでしまったことは申し訳なく思っております」
頭を下げようとしたオーレリアに、俺は待ったをかける。
「たしかに、最初は厄介者を押し付けられたと思っていたが……今ではオーレリア嬢に感謝しているんだ」
「感謝……ですか?」
「ああ、おかげでサミュエルに出会えたんだからな」
すると、オーレリアは驚いたように目を見開いた。
「あの、もしかしてお二人の関係は……?」
「まだ口説いてる途中」
あえて冗談めかして答えると、彼女は表情を緩めてクスクスと笑った。
「サミュエル様があのように生き生きとしていらしたのは、アイザック様が側にいらっしゃるからですわね」
「さあ? だったら俺は嬉しいけどな」
互いに目を合わせて笑い合うと、シリルから睨まれてしまう。
どれだけ嫉妬深いんだと内心呆れていると、オーレリアが少し眉根を寄せた表情で口を開く。
「このままディアナ妃が引き下がってくれれば良いのですが……。それに、レディング侯爵子息が留学先から帰国したとの報せがありましたので……」
「たしかサミュエルの従兄だったな」
サミュエルが嬉しそうに「ダリル兄様」と呼んでいた人物。
「ええ。あの方にはお気をつけください。レディング侯爵子息の影響をサミュエル様は多大に受けております」
「なるほどな……。助言に感謝する」
それは悪い意味での影響なのだろう。
どうやら王都は厄介者が集まる魔窟のような場所らしい。
(スキンケアグッズの広告にサミュエルの名前を出す案もあったが……あれは却下だな)
下手に目立って、王都にサミュエルの名前が届くような真似は避けたほうがよさそうだ。
「サミュエル様がこの地で平和に暮らせますことを心より願っております」
もちろん、サミュエルを無碍に扱う輩のもとへ帰すつもりはない。
あとは任せてほしいという意味を込めて、俺はゆっくりとオーレリアへ頷く。
(サミュエルは俺の手で幸せにしてやればいい)
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