24 / 75
第三章・戦士チームの旅立ち
巨石な幹の迷路
しおりを挟む
ユグドラシルの木は背後の巨石の壁面に張り付いて同化し、根も枝も幹も石化して岩肌にめり込み、下部の太い幹に蔓の絡み合った門の入り口がある。
「すげーな」
「驚くのはこれからよ」
チーネとソングが先頭になって門をくぐり抜け、ジェンダ王子が巨木を見上げてアリダリに質問する。
「岩山と一体化しているのか?」
「ああ、幹が空洞化して巨石の内部に洞窟の通路を張り巡らせ、地の底まで続いている。風化して崩れておるが、真の道は変わらぬ」
数歩進むと明かりが途絶えて洞窟の奥が見えなくなり、チーネが背を向けたまま手招くが、ソングは足を止めてアルダリが来るのをを待つ。
「こっちだ」
「チーネ。松明をつけるから待てよ」
「問題ない。夜目は利く」
チーネとエリアンが瞳を光らせて先に進み、「俺も見えるっす」とゴーグルをしたトーマも続く。(妖精のチーネは視聴能力が鋭敏であり、エリアンは猫の瞳をしている。トーマは岩穴を好むドワーフの血筋だ。)
しかしチーネが途中で足を止めて手を背後に向けて制し、エリアンも三角の耳を傾けて風の流れを聴き、猫の瞳で洞窟の奥に目を凝らす。
「何か変ね」
「風が不規則になった……」
「気のせいだろ?心配性すね~」
トーマは適当なことを言って、エリアンの背後に隠れ、アルダリのリュックから取り出した火種で松明に火を付けたソングとジェンダ王子が駆け寄る。
「どうした?早く行こうぜ」
「よせ。ソング」
制止するチーネの手をソングが払い除け、松明の明かりを前に出して踏み出した時、何かに触れて奥の暗闇から矢が数本飛んで来た。
「クォレルだ」
エリアンが素早く大きな盾をソングの前に出して二本の矢を防ぎ、もう一本の矢はチーネが背中の剣を抜いて叩き落とす。(クォレルとは古代のクロスボウであり、洞窟の奥の台の上に設置された三台のクォレルが入り口付近を狙っていた。)
「罠っすね。光を遮ると発射されるみたい」
ソングの足元を見ていたトーマがゴーグルのスイッチを切り替えて、赤外線が張り巡らせてあるのを見つけた。
「トーマ。見えるなら早く教えろって」
「わりい。このゴーグル、切り替えが鈍くてさ。まさか、こんな罠があるとは思わねーだろ」
ソングがエリアンの盾に刺さって矢を抜いてトーマに文句を言い、ジェンダ王子はセンサーに手を翳して、クォレルのスイッチが入る仕組みを確認した。
「もしかして、ヤズペルという商人の仕業ですか?」
「フム、人間界の技術かもしれぬ。この炎の錬金術師を恐れる者が、人間界にいるってことじゃな」
「いや、戦士の方だと思いますよ」
「スケベジジイを狙ったなら、セクハラの恨みだろ?」
「うん。たくさんいそうだ」
「と、年寄りを脅かすな。旅の楽しみが半減するわ」
「ねっ、もう大丈夫だと思うけど、警戒して進も。アルダリ、こっちでいいよね?」
「ああ、チーネ。今日も可愛いな」
チーネは親しみを込めてアルダリを呼び捨てにしたが、尻を触ろうとしたのでノールックで背中の剣を向けた。
「サンキュー、エリアン」
「き、気にすんな」
盾で矢を防いでくれたエリアンにソングが礼を言い、『親密になってる』とチーネが振り返る。
チーネは審議会を終えた通路で、ジェンダ王子がキューピッドの矢でエリアンに恋の魔法をかけたと疑い、それとなくエリアンに好きなタイプを聞くと、「俺はレズなので、キュートな女の子が好きなんだ」と教えられた。
『だったら、チーネじゃないか?』
「しかしこの盾、デカッ」
「まーな。いつでも守ってやる」
エリアンがソングにそう言って微笑みかけ、猫目で松明の炎を見たせいか、ソングの顔がボヤけて目がクリッとした可愛い女性に見え、慌てて目を瞬いて指で擦る。
「チーネ。エリアンが先頭で、戦士チーム全員の盾になる」
女戦士エリアンはソングの幻影を振り払い、チーネに追いつくとサーディン王の紋章の盾を前方に翳し、後続を引き連れて早足に突き進んだが、暫くすると洞窟の先は途絶えた。
「行き止まりだ」
広い岩室の中央でエリアンが盾を下ろし、閉ざされた三方の岩壁を茫然と眺め、隣で両腕を組むチーネに聞く。
「ここで間違いないのか?」
「うん。チーネはここまでしか来たことがないんだ。上に行けばアースガルズがあり、下にはミズガルズへの入り口があると聞いてる」
ソングが付近を松明で照らし、王子とトーマは岩壁に扉の痕跡がないか調べている。アルダリはリュックからビフレスト(虹の橋)と云われる、九つの国を円で結ぶ図柄の描かれた九角形のキーを取り出し、戦士チームを集めて見せる。
「この鍵で、下への扉が開く筈だ」
アリダリの指示でソングが岩壁の隅を松明で照らし出すと、ビフレストがピッタリ嵌る窪みがあり、アルダリがミズガルズの文字の位置に回して合わせると、ユグドラシルの幹の年輪が回転し、ギシギシと木材が軋る音が響いて石の扉が開き始めた。
「気をつけろ。螺旋階段が、腐りかけておるからな」
アルダリがそう言ったように、扉の前に立って下を覗くと、中心の柱に太い蔓が巻き付き、踏み板の螺旋階段が下へ続いていたが、老朽化して何箇所が崩れている。
「すげーな」
「驚くのはこれからよ」
チーネとソングが先頭になって門をくぐり抜け、ジェンダ王子が巨木を見上げてアリダリに質問する。
「岩山と一体化しているのか?」
「ああ、幹が空洞化して巨石の内部に洞窟の通路を張り巡らせ、地の底まで続いている。風化して崩れておるが、真の道は変わらぬ」
数歩進むと明かりが途絶えて洞窟の奥が見えなくなり、チーネが背を向けたまま手招くが、ソングは足を止めてアルダリが来るのをを待つ。
「こっちだ」
「チーネ。松明をつけるから待てよ」
「問題ない。夜目は利く」
チーネとエリアンが瞳を光らせて先に進み、「俺も見えるっす」とゴーグルをしたトーマも続く。(妖精のチーネは視聴能力が鋭敏であり、エリアンは猫の瞳をしている。トーマは岩穴を好むドワーフの血筋だ。)
しかしチーネが途中で足を止めて手を背後に向けて制し、エリアンも三角の耳を傾けて風の流れを聴き、猫の瞳で洞窟の奥に目を凝らす。
「何か変ね」
「風が不規則になった……」
「気のせいだろ?心配性すね~」
トーマは適当なことを言って、エリアンの背後に隠れ、アルダリのリュックから取り出した火種で松明に火を付けたソングとジェンダ王子が駆け寄る。
「どうした?早く行こうぜ」
「よせ。ソング」
制止するチーネの手をソングが払い除け、松明の明かりを前に出して踏み出した時、何かに触れて奥の暗闇から矢が数本飛んで来た。
「クォレルだ」
エリアンが素早く大きな盾をソングの前に出して二本の矢を防ぎ、もう一本の矢はチーネが背中の剣を抜いて叩き落とす。(クォレルとは古代のクロスボウであり、洞窟の奥の台の上に設置された三台のクォレルが入り口付近を狙っていた。)
「罠っすね。光を遮ると発射されるみたい」
ソングの足元を見ていたトーマがゴーグルのスイッチを切り替えて、赤外線が張り巡らせてあるのを見つけた。
「トーマ。見えるなら早く教えろって」
「わりい。このゴーグル、切り替えが鈍くてさ。まさか、こんな罠があるとは思わねーだろ」
ソングがエリアンの盾に刺さって矢を抜いてトーマに文句を言い、ジェンダ王子はセンサーに手を翳して、クォレルのスイッチが入る仕組みを確認した。
「もしかして、ヤズペルという商人の仕業ですか?」
「フム、人間界の技術かもしれぬ。この炎の錬金術師を恐れる者が、人間界にいるってことじゃな」
「いや、戦士の方だと思いますよ」
「スケベジジイを狙ったなら、セクハラの恨みだろ?」
「うん。たくさんいそうだ」
「と、年寄りを脅かすな。旅の楽しみが半減するわ」
「ねっ、もう大丈夫だと思うけど、警戒して進も。アルダリ、こっちでいいよね?」
「ああ、チーネ。今日も可愛いな」
チーネは親しみを込めてアルダリを呼び捨てにしたが、尻を触ろうとしたのでノールックで背中の剣を向けた。
「サンキュー、エリアン」
「き、気にすんな」
盾で矢を防いでくれたエリアンにソングが礼を言い、『親密になってる』とチーネが振り返る。
チーネは審議会を終えた通路で、ジェンダ王子がキューピッドの矢でエリアンに恋の魔法をかけたと疑い、それとなくエリアンに好きなタイプを聞くと、「俺はレズなので、キュートな女の子が好きなんだ」と教えられた。
『だったら、チーネじゃないか?』
「しかしこの盾、デカッ」
「まーな。いつでも守ってやる」
エリアンがソングにそう言って微笑みかけ、猫目で松明の炎を見たせいか、ソングの顔がボヤけて目がクリッとした可愛い女性に見え、慌てて目を瞬いて指で擦る。
「チーネ。エリアンが先頭で、戦士チーム全員の盾になる」
女戦士エリアンはソングの幻影を振り払い、チーネに追いつくとサーディン王の紋章の盾を前方に翳し、後続を引き連れて早足に突き進んだが、暫くすると洞窟の先は途絶えた。
「行き止まりだ」
広い岩室の中央でエリアンが盾を下ろし、閉ざされた三方の岩壁を茫然と眺め、隣で両腕を組むチーネに聞く。
「ここで間違いないのか?」
「うん。チーネはここまでしか来たことがないんだ。上に行けばアースガルズがあり、下にはミズガルズへの入り口があると聞いてる」
ソングが付近を松明で照らし、王子とトーマは岩壁に扉の痕跡がないか調べている。アルダリはリュックからビフレスト(虹の橋)と云われる、九つの国を円で結ぶ図柄の描かれた九角形のキーを取り出し、戦士チームを集めて見せる。
「この鍵で、下への扉が開く筈だ」
アリダリの指示でソングが岩壁の隅を松明で照らし出すと、ビフレストがピッタリ嵌る窪みがあり、アルダリがミズガルズの文字の位置に回して合わせると、ユグドラシルの幹の年輪が回転し、ギシギシと木材が軋る音が響いて石の扉が開き始めた。
「気をつけろ。螺旋階段が、腐りかけておるからな」
アルダリがそう言ったように、扉の前に立って下を覗くと、中心の柱に太い蔓が巻き付き、踏み板の螺旋階段が下へ続いていたが、老朽化して何箇所が崩れている。
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
事務仕事しかできない無能?いいえ、空間支配スキルです。~勇者パーティの事務員として整理整頓していたら、いつの間にか銅像が立っていました~
水月
恋愛
「在庫整理しかできない無能は不要だ」
第一王子から、晩餐会の場で婚約破棄と国外追放を告げられた公爵令嬢ユズハ。
彼女のギフト【在庫整理】は、荷物の整理しかできないハズレスキルだと蔑まれていた。
だが、彼女は知っていた。
その真価は、指定空間内のあらゆる物質の最適化であることを。
追放先で出会った要領の悪い勇者パーティに対し、ユズハは事務的に、かつ冷徹に最適化を開始する。
「勇者様、右腕の筋肉配置を効率化しました」
「魔王の心臓、少し左にずらしておきましたね」
戦場を、兵站を、さらには魔王の命までをも在庫として処理し続けた結果、彼女はいつしか魔王討伐勇者パーティの一人として、威圧感溢れる銅像にまでなってしまう。
効率を愛する事務屋令嬢は、自分を捨てた国を不良債権として切り捨て、再出発する。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
クラス転移したら種族が変化してたけどとりあえず生きる
アルカス
ファンタジー
16歳になったばかりの高校2年の主人公。
でも、主人公は昔から体が弱くなかなか学校に通えなかった。
でも学校には、行っても俺に声をかけてくれる親友はいた。
その日も体の調子が良くなり、親友と久しぶりの学校に行きHRが終わり先生が出ていったとき、クラスが眩しい光に包まれた。
そして僕は一人、違う場所に飛ばされいた。
断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜
深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。
処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。
なぜなら彼女は――
前世で“トップインフルエンサー”だったから。
処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。
空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。
タイトルは――
『断罪なう』。
王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。
すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、
国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。
そして宣言される、前代未聞のルール。
支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。
処刑台は舞台へ。
断罪はエンタメへ。
悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。
これは、
処刑されるはずだった悪役令嬢が、
“ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。
支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、
それとも――自由か。
五年後、元夫の後悔が遅すぎる。~娘が「パパ」と呼びそうで困ってます~
放浪人
恋愛
「君との婚姻は無効だ。実家へ帰るがいい」
大聖堂の冷たい石畳の上で、辺境伯ロルフから突然「婚姻は最初から無かった」と宣告された子爵家次女のエリシア。実家にも見放され、身重の体で王都の旧市街へ追放された彼女は、絶望のどん底で愛娘クララを出産する。
生き抜くために針と糸を握ったエリシアは、持ち前の技術で不思議な力を持つ「祝布(しゅくふ)」を織り上げる職人として立ち上がる。施しではなく「仕事」として正当な対価を払い、決して土足で踏み込んでこない救恤院の監督官リュシアンの温かい優しさに触れエリシアは少しずつ人間らしい心と笑顔を取り戻していった。
しかし五年後。辺境を襲った疫病を救うための緊急要請を通じ、エリシアは冷酷だった元夫ロルフと再会してしまう。しかも隣にいる娘の青い瞳は彼と瓜二つだった。
「すまない。私は父としての責任を果たす」
かつての合理主義の塊だった元夫は、自らの過ちを深く悔い、家の権益を捨ててでも母子を守る「強固な盾」になろうとする。娘のクララもまた、危機から救ってくれた彼を「パパ」と呼び始めてしまい……。
だが、どんなに後悔されても、どんなに身を挺して守られても、一度完全に壊された関係が元に戻ることは絶対にない。エリシアが真の伴侶として選ぶのは、凍えた心を溶かし、温かい日常を共に歩んでくれたリュシアンただ一人だった。
これは、全てを奪われた一人の女性が母として力強く成長し誰にも脅かされることのない「本物の家族」と「静かで確かな幸福」を自分の手で選び取るまでの物語。
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる