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#2 金剛級昇格試験
箸休め 彼女の実家
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私は岩戸咲良。岩戸探偵事務所の設立者であり、神秘研究協会が誇る金剛退魔師だ。
私は、相棒の八神蒼佑が事務所を開けるので、実家の岩戸家に帰り、彼が帰るのを待つ事になった。私は生活能力がとんでもなく低いので、基本事務所は八神くんが管理してくれている。まあ、雑用を押し付けたのは私なんだが……
電車で東京に向かった私は、少しの荷物を抱えて実家の屋敷を目指した。徒歩数分も道だが、少し寄り道しても誰も心配しないだろう。第一、あそこには私を心配する人間なんて片手で数えられる位しか居ない。
「ねえお嬢ちゃん、今一人?」
「俺達とお茶しない?」
やはり大都市東京。歩くだけでチンピラが寄ってくる。先ず、このナンパ衆をどうにかせねば。殴り飛ばす?いや警察が来る。付いて行く?こいつ等と一緒に歩くのは嫌だな。なら、選択肢はたった一つ!
「嫌だね!私とお茶がしたきゃ捕まえてみな!」
「あ!逃げた!」
私は、さっき歩いていた道を振り返り、全速力で走り出した。
私は五十メートル走六秒台の人間!更にこの人の濁流の中でも、そこそこの速さで走る事が出来る!今まで、私のナンパに成功した男は居なかった!
ただでさえ短い道のりなのに、走ってしまえば尚更早く着く。少し走っただけで、もう実家の近くまで着いてしまった。
それにしても、しつこいナンパ衆だ。実家の近くまで追って来るとは、今までナンパして来た奴らより全然根性が有る。協会の若者にも見習ってほしい物だ。
しかし、奴らも人の家なら入って来ないだろう。そう思っていた私は、実家の門の前に立っていた人物に目を疑った。なんと、そこには金剛退魔師の一角、神宮寺幸子が立っていた。
彼女は私に気が付くと、「お姉さま~!」と手を振って来た。いや、なんで君がここに居る。
「ん?お姉さまが痴漢に追われている?」
不味い。経験上、彼女がこういう時に取る行動は、男衆を蹴り飛ばすか殴り飛ばすの二択だ。
後ろの二人が危ないと思った私は、彼等に向かって警告した。
「おい!そこの二人!逃げろ!」
しかし、時すでに遅し。彼女は二人の懐に入り込むと、足を払い、体制を崩してから二人の腹にそれぞれ殴りと蹴りを入れた。ああ、結構ガタイの良い二人の男性が、たった一人の華奢な女性の攻撃で膝から崩れ落ちてしまった。せめて彼等のご冥福を祈ろう。南無阿弥陀仏。
「お姉さま!大丈夫ですか!?この汚らわしい男共がっ!」
「待て!やりすぎだ!大丈夫だから止めろ!」
私は二人の腹に更に蹴りを入れようとする彼女を止めて、なんとか岩戸家の屋敷に引きずり込んだ。
「なんであんな事をしたんだ!ていうか何でここに居る!?」
私は、男衆二人を叩きのめした彼女を問いただし、あわよくば追い出そうとしている。こいつが居ると碌な事が無い。安心できない。ついでに一般人に危害が及ぶ。
「でも、お姉さまが危ないと思うと、体が勝手に……」
「だとしても蹴るな!倒れ込んだ後でも蹴ろうとするな!」
他人を理由も無く蹴ってはいけません!ブーメラン?ナンノコトデスカシリマセンネ。
「じゃあなんでここに居る!?」
「そりゃ憎き八神が居ないんですから、今こそお姉さまとイケナイコトをと思いまして」
「止めろ!そんな曇り無き瞳でそんな下衆い事を言うのは止めてくれ!」
この子良家のお嬢様だよな!?こんな事を言うような、というかこんな事をやるような子に育てたヤツらを一回殴ってやりたい。「おかげで私は大迷惑だよ!」って言いながら。
取り敢えず、コイツは追い返し、私は再び町に繰り出す。よし、これで私は時間を潰す。これ以上犠牲者を増やしてたまるか!
「兎に角、君は帰れ。私は君に構うつもりは無い。折角来てくれて悪いが……」
「嫌ですわ!さあお姉さま、町に繰り出しましょう!」
聞け!話を!
しかし、彼女はこうなってしまえば、梃子でも動かない。私が犠牲者を出さないように気を付ければ良い。そうすれば、私は休暇を楽しむ事が出来る上、彼女が揉め事を起こす事は無くなるだろう。全員楽しく、平和になる。これが今の最適解。だと思う。
私は彼女に促されるまま外に出て、再び町に向かった。
しかし、この世は思うように行かない事など少なく無い。町で買い食いをしていると、いかにも怪しい男性達が話しかけて来た。
「ね~おねーさん達~」
「俺達と一緒に~イイコトしな~い?」
「またか!」
あ、思わず声が出た。だってこういう分かり易いのこれで二回目じゃないか!
そんな事より、彼女を宥めなければ!彼女はと言うと、私の横でブチギレていた。ああ、これは不味い。いかにも人殺しそうな目してる。やっぱりこの子を育てた奴等を問い正した方が良いらしい。こんど神宮司家に殴り込みに行こう。
私は、一先ず怒らせない程度に流し、彼女がこの人達に手を出す前にここを離れようと決めた。
「済まないが、今は友人と一緒にぶらぶらしているだけなんだ。また今度にしてもらおう」
「いやいや、ここは一緒に行きましょうよ~!」
「絶対後悔させないから!」
ああ不味い。諦めてくれない。ならば、いつも通り逃げるまで!
そう思い、彼女の手を引いて走り出そうとした瞬間、私は身の毛がよだつ感じがした。彼女がこれ以上無い程怒っている。
彼女、神宮寺幸子は、かつて『最強の退魔師』と呼ばれた神宮寺慎太郎の血筋であり、その強さも受け継がれている。本気を出した彼女と私が決闘したら、私もタダでは済まされないだろう。
そんな彼女が、一般人に手を出せば……
気付けば、私は彼女を連れたまま、実家の扉の前に着いていた。
「何するんですお姉さま!あの下衆共、拷問にかけて、苦しませてから殺して……いや、死んだ方がマシと思えるような目に遭わせてやる」
私の腕の中に居る彼女は、なんとか私を傷つけないように脱出しようと試みているようだ。
兎に角、暴れる彼女を抑えたまま、屋敷に入る。
自室に着いた私は、彼女を放し、大きく息を吐いた。すごく疲れた。多分今月で一番疲れた。
「お姉さま!早くあの不届き者共に鉄槌を……」
「一回黙ろうか」
彼女は黙った。良い子だ。
「おい!沙月!」
私がその名を叫ぶと、襖がスパアンと良い音を立てて開き、一人の女性が入って来た。
彼女は如月沙月。私が子供の頃からこの家に仕えている使用人で、私がこの世で二番目に心を許している人物だ。
「彼女を送ってやってくれ。どうやら疲れているらしい」
沙月は、暴れる彼女を抑えたまま部屋を出た。これで一安心。今日は疲れたので、少し昼寝しよう。
そう思い、ベッドに横たわろうとすると、襖がもう一度良い音を立てて開いた。
そこには、フリフリのレースが付いた服を持った沙月と彼女が居た。
ん?なんで二人がここに来たんだ?ていうかその服は何だ?なんて事を思っていると、沙月が話し始めた。
「お嬢様!どうやらこの方とは気が合うようです!」
「ということで!この服を着て頂きますわ!」
いや、気が合うって何だ?ということでじゃないよ。何でその流れでその服が出て来るんだ?まさかそれ、無理矢理着せようだなんて言わないよな?
「ちなみに、お嬢様に拒否権はありませんので、観念して下さい」
ふ~ん、そういう事しちゃうんだ。だったらこっちも全力で逃げるぞ。
私はすぐさま二人を押しのけ、廊下に出て、全力で外を目指した。只々直進にだけ集中すれば、あの二人も撒く事だって出来る筈だ。私は五十メートル走六秒台の人間。
やがて外に出ると、私は兎に角走った。全力で、振り返らず、只ひたすらに走った。
しかし、安心も束の間。なんと私の背中に、幸子がタックルして来た。
これこそ、彼女の術式。彼女は自分の運動エネルギーを蓄積し、それを放出する事で、高速移動だけで無く、普段の力とは比較にもならないパワーを出す事が出来る。しかしこんな力を、よりにもよってこんな事に使うとは思わなかった。これは彼女の体力だけで無く、彼女の霊力も激しく消耗する。ここで使うのはリターンが高い。
私はそのまま倒れ、彼女等に拘束された。後手を踏んだ。終わった。もはやここまで。南無阿弥陀仏。
そして、この二人の暴挙が終わるのは、なんと翌日、八神くんが帰って来てからだった。
私は、相棒の八神蒼佑が事務所を開けるので、実家の岩戸家に帰り、彼が帰るのを待つ事になった。私は生活能力がとんでもなく低いので、基本事務所は八神くんが管理してくれている。まあ、雑用を押し付けたのは私なんだが……
電車で東京に向かった私は、少しの荷物を抱えて実家の屋敷を目指した。徒歩数分も道だが、少し寄り道しても誰も心配しないだろう。第一、あそこには私を心配する人間なんて片手で数えられる位しか居ない。
「ねえお嬢ちゃん、今一人?」
「俺達とお茶しない?」
やはり大都市東京。歩くだけでチンピラが寄ってくる。先ず、このナンパ衆をどうにかせねば。殴り飛ばす?いや警察が来る。付いて行く?こいつ等と一緒に歩くのは嫌だな。なら、選択肢はたった一つ!
「嫌だね!私とお茶がしたきゃ捕まえてみな!」
「あ!逃げた!」
私は、さっき歩いていた道を振り返り、全速力で走り出した。
私は五十メートル走六秒台の人間!更にこの人の濁流の中でも、そこそこの速さで走る事が出来る!今まで、私のナンパに成功した男は居なかった!
ただでさえ短い道のりなのに、走ってしまえば尚更早く着く。少し走っただけで、もう実家の近くまで着いてしまった。
それにしても、しつこいナンパ衆だ。実家の近くまで追って来るとは、今までナンパして来た奴らより全然根性が有る。協会の若者にも見習ってほしい物だ。
しかし、奴らも人の家なら入って来ないだろう。そう思っていた私は、実家の門の前に立っていた人物に目を疑った。なんと、そこには金剛退魔師の一角、神宮寺幸子が立っていた。
彼女は私に気が付くと、「お姉さま~!」と手を振って来た。いや、なんで君がここに居る。
「ん?お姉さまが痴漢に追われている?」
不味い。経験上、彼女がこういう時に取る行動は、男衆を蹴り飛ばすか殴り飛ばすの二択だ。
後ろの二人が危ないと思った私は、彼等に向かって警告した。
「おい!そこの二人!逃げろ!」
しかし、時すでに遅し。彼女は二人の懐に入り込むと、足を払い、体制を崩してから二人の腹にそれぞれ殴りと蹴りを入れた。ああ、結構ガタイの良い二人の男性が、たった一人の華奢な女性の攻撃で膝から崩れ落ちてしまった。せめて彼等のご冥福を祈ろう。南無阿弥陀仏。
「お姉さま!大丈夫ですか!?この汚らわしい男共がっ!」
「待て!やりすぎだ!大丈夫だから止めろ!」
私は二人の腹に更に蹴りを入れようとする彼女を止めて、なんとか岩戸家の屋敷に引きずり込んだ。
「なんであんな事をしたんだ!ていうか何でここに居る!?」
私は、男衆二人を叩きのめした彼女を問いただし、あわよくば追い出そうとしている。こいつが居ると碌な事が無い。安心できない。ついでに一般人に危害が及ぶ。
「でも、お姉さまが危ないと思うと、体が勝手に……」
「だとしても蹴るな!倒れ込んだ後でも蹴ろうとするな!」
他人を理由も無く蹴ってはいけません!ブーメラン?ナンノコトデスカシリマセンネ。
「じゃあなんでここに居る!?」
「そりゃ憎き八神が居ないんですから、今こそお姉さまとイケナイコトをと思いまして」
「止めろ!そんな曇り無き瞳でそんな下衆い事を言うのは止めてくれ!」
この子良家のお嬢様だよな!?こんな事を言うような、というかこんな事をやるような子に育てたヤツらを一回殴ってやりたい。「おかげで私は大迷惑だよ!」って言いながら。
取り敢えず、コイツは追い返し、私は再び町に繰り出す。よし、これで私は時間を潰す。これ以上犠牲者を増やしてたまるか!
「兎に角、君は帰れ。私は君に構うつもりは無い。折角来てくれて悪いが……」
「嫌ですわ!さあお姉さま、町に繰り出しましょう!」
聞け!話を!
しかし、彼女はこうなってしまえば、梃子でも動かない。私が犠牲者を出さないように気を付ければ良い。そうすれば、私は休暇を楽しむ事が出来る上、彼女が揉め事を起こす事は無くなるだろう。全員楽しく、平和になる。これが今の最適解。だと思う。
私は彼女に促されるまま外に出て、再び町に向かった。
しかし、この世は思うように行かない事など少なく無い。町で買い食いをしていると、いかにも怪しい男性達が話しかけて来た。
「ね~おねーさん達~」
「俺達と一緒に~イイコトしな~い?」
「またか!」
あ、思わず声が出た。だってこういう分かり易いのこれで二回目じゃないか!
そんな事より、彼女を宥めなければ!彼女はと言うと、私の横でブチギレていた。ああ、これは不味い。いかにも人殺しそうな目してる。やっぱりこの子を育てた奴等を問い正した方が良いらしい。こんど神宮司家に殴り込みに行こう。
私は、一先ず怒らせない程度に流し、彼女がこの人達に手を出す前にここを離れようと決めた。
「済まないが、今は友人と一緒にぶらぶらしているだけなんだ。また今度にしてもらおう」
「いやいや、ここは一緒に行きましょうよ~!」
「絶対後悔させないから!」
ああ不味い。諦めてくれない。ならば、いつも通り逃げるまで!
そう思い、彼女の手を引いて走り出そうとした瞬間、私は身の毛がよだつ感じがした。彼女がこれ以上無い程怒っている。
彼女、神宮寺幸子は、かつて『最強の退魔師』と呼ばれた神宮寺慎太郎の血筋であり、その強さも受け継がれている。本気を出した彼女と私が決闘したら、私もタダでは済まされないだろう。
そんな彼女が、一般人に手を出せば……
気付けば、私は彼女を連れたまま、実家の扉の前に着いていた。
「何するんですお姉さま!あの下衆共、拷問にかけて、苦しませてから殺して……いや、死んだ方がマシと思えるような目に遭わせてやる」
私の腕の中に居る彼女は、なんとか私を傷つけないように脱出しようと試みているようだ。
兎に角、暴れる彼女を抑えたまま、屋敷に入る。
自室に着いた私は、彼女を放し、大きく息を吐いた。すごく疲れた。多分今月で一番疲れた。
「お姉さま!早くあの不届き者共に鉄槌を……」
「一回黙ろうか」
彼女は黙った。良い子だ。
「おい!沙月!」
私がその名を叫ぶと、襖がスパアンと良い音を立てて開き、一人の女性が入って来た。
彼女は如月沙月。私が子供の頃からこの家に仕えている使用人で、私がこの世で二番目に心を許している人物だ。
「彼女を送ってやってくれ。どうやら疲れているらしい」
沙月は、暴れる彼女を抑えたまま部屋を出た。これで一安心。今日は疲れたので、少し昼寝しよう。
そう思い、ベッドに横たわろうとすると、襖がもう一度良い音を立てて開いた。
そこには、フリフリのレースが付いた服を持った沙月と彼女が居た。
ん?なんで二人がここに来たんだ?ていうかその服は何だ?なんて事を思っていると、沙月が話し始めた。
「お嬢様!どうやらこの方とは気が合うようです!」
「ということで!この服を着て頂きますわ!」
いや、気が合うって何だ?ということでじゃないよ。何でその流れでその服が出て来るんだ?まさかそれ、無理矢理着せようだなんて言わないよな?
「ちなみに、お嬢様に拒否権はありませんので、観念して下さい」
ふ~ん、そういう事しちゃうんだ。だったらこっちも全力で逃げるぞ。
私はすぐさま二人を押しのけ、廊下に出て、全力で外を目指した。只々直進にだけ集中すれば、あの二人も撒く事だって出来る筈だ。私は五十メートル走六秒台の人間。
やがて外に出ると、私は兎に角走った。全力で、振り返らず、只ひたすらに走った。
しかし、安心も束の間。なんと私の背中に、幸子がタックルして来た。
これこそ、彼女の術式。彼女は自分の運動エネルギーを蓄積し、それを放出する事で、高速移動だけで無く、普段の力とは比較にもならないパワーを出す事が出来る。しかしこんな力を、よりにもよってこんな事に使うとは思わなかった。これは彼女の体力だけで無く、彼女の霊力も激しく消耗する。ここで使うのはリターンが高い。
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※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
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