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#3 指名依頼
#3ー3 特訓
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あれから、二週間が経った。
彼の特訓は続いた。彼の問題は、使える霊力の少なさだ。ここさえなんとかすれば、彼は自身のポテンシャルを百パーセント発揮できる。この特訓は、それを補う為の物だ。
先ず、毎日の瞑想。俺がやっていたのと同じだ。この瞑想は、自身が潜在的に所持している霊力を操れるようになる為の物。霊力切れを起こした際のリスクは高くなるが、その分のリターンはある。次に、霊力を錬る為のイメージトレーニング。霊力の効率を上げれば、その分長く活動できる。霊力を錬る事で、霊力が霧散しにくくなる為、霊力の燃費が良くなる。どちらも、俺がやっていた特訓と同じ内容だ。彼は元があるから、一か月で合格ラインまで行ける筈。
「あの……これっていつまで続ければ?」
「ずっと」
彼に付き合い、俺も久々に瞑想する事にした。自らを落ち着かせることで、若干集中力が上がった気がする。
彼自身も、術式を使える時間の変化に驚いているらしい。その変化は微々たる物だが、その変化だけで、彼は劇的に強くなれる。元々強い術式だからか、たったの二週間で金級レベルまで強くなった。
「あの……僕、白金級になれますか?」
「この特訓にも限界はある。君の才能次第ということだ」
彼はこの事務所に泊まってもらい、訓練と俺の手伝いをやる事になった。勿論、彼の母親に許可は取った。条件として、怪我はさせない事、キッチリ監視する事、ついでに先生に手を出させない事と言われた。最後のは……まあパワーバランスや世間体の話だろう。先生は強いし、彼も真面目だから心配は無いだろうよ……
「これはどこに……」
「ああ、それはそこに置いといてくれ」
やはり使える人間が一人増えるだけで全然違う。家事が得意という訳でもないらしいが、手先が器用だったり、聞き分けが良かったりするから便利だ。いっそウチに住んでくれないかなと思う事もある。
先生は相変わらずだが、俺が飯を作る事が前より減ったからか、不機嫌になる事がある。まあ、我慢を強いる事もあるから、少し申し訳無いが、彼の実家から金が入るのだから、耐えてくれ……
それからさらに二週間と少し。彼は白金級昇格試験に、もう一度挑戦する事になった。
彼は終始不安気だった。やっぱり前のやつでイジメ過ぎたかな?
「あの……僕、大丈夫ですかね?」
「大丈夫。君はこの一か月、毎日欠かさず特訓を続けていたじゃないか。それに、今回の試験官は俺じゃない。そいつの見立て次第だな」
そう。今回の試験官は俺じゃない。知り合いに頼んで、やってもらう事にしたのだ。そもそも白金級昇格試験の試験官に、金剛級の俺があてがわれる事が異常だった話。今回はちゃんと白金級の人間を選んだ。
前回と同じ会場に進むと、そこには……まあ……何だ。オネエが居た。
「あ~ら!貴方が今回のチャレンジャーね!?言っとくけど、手加減はお互いナシよ!」
彼女は佐々木浩太。ベテランの退魔師で、白金級の中でも上位に位置する人間だ。俺と彼女は付き合いが長く、この教会に入ったばかりの頃は世話になった物だ。何を隠そう、彼女は金剛級のメンツの殆どとタメ口で話せる程仲が良い。いや、コミュ強はとんでもねえなホントに。
今回の件は、彼女は「丁度暇してたから良いわよ」と言って、快く引き受けてくれた。本当に環境と人に恵まれたよ俺は。
因みに彼には、彼女と俺が知り合いだという事を隠している。この件は、彼の心の傷を消すのも目的だ。仮に合格しても、彼の自信に結び付かねば意味が無い。
「じゃあ、合図は俺がやる。良いな?」
「ええ」
「勿論」
俺は、近くにあった石を、適当に掴んで、放り投げた。
お互い、合図を待っている。睨み合い、相手の初動を見逃すまいと、お互いの動きを観察している。
石が、地面に触れた。小さく音がした。しかし、合図には十分だった。
先に動いたのは、浩太さんだった。しかし、彼もそれを見逃さなかった。彼女の拳を避け、地面に触れる。地面から複数の棘が飛び出た。彼女も、それに当たる程のろくはない。棘を避け、避けられない物は砕いた。
彼女は少し飛び退き、再び構えた。
「凄いわね。大体の奴は今のでダウンするのに。術式は触れた物を操る感じかしら?」
彼は黙っている。手の内を簡単に明かさないのも重要だ。言えば対策されるし、手の内を晒し過ぎれば、簡単に避けられる。
「ま、言う訳無いわね。こっからは、私も術式を使って行くわよ」
彼女は少し構えを変えた。同時に、彼女の腕にはガントレットが現れた。あれが彼女の術式。彼女は、自身が望む武具を自在に作り出す事ができる。まあ、作れる物は武具に限られるし、長持ちさせる事もできない、複雑な造りの物は作れないが、彼女自身の身体能力もバカ高いので、彼女は強い。俺も、彼女と正面からの殴り合いは避けたい。
彼も、自身の周りに無数の棘を出現させ、迎撃の体制を取る。彼女が少しでも動こうとすると、彼は彼女を攻撃した。彼女もそれを弾く、いなす、砕く。お互い決定打を出せないが、持久戦になっては彼の方が不利だ。どこかで仕掛けなければ、彼に勝ち目は無い。
一瞬、彼の攻撃が僅か、ほんの僅かに緩んだ。その隙を、彼女は逃さない。
彼女は彼の棘を避け、彼に近づく。彼も棘で迎撃するが、彼女には当たらない。
彼の懐に、彼女の拳がめり込む。
鈍い音が会場に響いた。
彼の特訓は続いた。彼の問題は、使える霊力の少なさだ。ここさえなんとかすれば、彼は自身のポテンシャルを百パーセント発揮できる。この特訓は、それを補う為の物だ。
先ず、毎日の瞑想。俺がやっていたのと同じだ。この瞑想は、自身が潜在的に所持している霊力を操れるようになる為の物。霊力切れを起こした際のリスクは高くなるが、その分のリターンはある。次に、霊力を錬る為のイメージトレーニング。霊力の効率を上げれば、その分長く活動できる。霊力を錬る事で、霊力が霧散しにくくなる為、霊力の燃費が良くなる。どちらも、俺がやっていた特訓と同じ内容だ。彼は元があるから、一か月で合格ラインまで行ける筈。
「あの……これっていつまで続ければ?」
「ずっと」
彼に付き合い、俺も久々に瞑想する事にした。自らを落ち着かせることで、若干集中力が上がった気がする。
彼自身も、術式を使える時間の変化に驚いているらしい。その変化は微々たる物だが、その変化だけで、彼は劇的に強くなれる。元々強い術式だからか、たったの二週間で金級レベルまで強くなった。
「あの……僕、白金級になれますか?」
「この特訓にも限界はある。君の才能次第ということだ」
彼はこの事務所に泊まってもらい、訓練と俺の手伝いをやる事になった。勿論、彼の母親に許可は取った。条件として、怪我はさせない事、キッチリ監視する事、ついでに先生に手を出させない事と言われた。最後のは……まあパワーバランスや世間体の話だろう。先生は強いし、彼も真面目だから心配は無いだろうよ……
「これはどこに……」
「ああ、それはそこに置いといてくれ」
やはり使える人間が一人増えるだけで全然違う。家事が得意という訳でもないらしいが、手先が器用だったり、聞き分けが良かったりするから便利だ。いっそウチに住んでくれないかなと思う事もある。
先生は相変わらずだが、俺が飯を作る事が前より減ったからか、不機嫌になる事がある。まあ、我慢を強いる事もあるから、少し申し訳無いが、彼の実家から金が入るのだから、耐えてくれ……
それからさらに二週間と少し。彼は白金級昇格試験に、もう一度挑戦する事になった。
彼は終始不安気だった。やっぱり前のやつでイジメ過ぎたかな?
「あの……僕、大丈夫ですかね?」
「大丈夫。君はこの一か月、毎日欠かさず特訓を続けていたじゃないか。それに、今回の試験官は俺じゃない。そいつの見立て次第だな」
そう。今回の試験官は俺じゃない。知り合いに頼んで、やってもらう事にしたのだ。そもそも白金級昇格試験の試験官に、金剛級の俺があてがわれる事が異常だった話。今回はちゃんと白金級の人間を選んだ。
前回と同じ会場に進むと、そこには……まあ……何だ。オネエが居た。
「あ~ら!貴方が今回のチャレンジャーね!?言っとくけど、手加減はお互いナシよ!」
彼女は佐々木浩太。ベテランの退魔師で、白金級の中でも上位に位置する人間だ。俺と彼女は付き合いが長く、この教会に入ったばかりの頃は世話になった物だ。何を隠そう、彼女は金剛級のメンツの殆どとタメ口で話せる程仲が良い。いや、コミュ強はとんでもねえなホントに。
今回の件は、彼女は「丁度暇してたから良いわよ」と言って、快く引き受けてくれた。本当に環境と人に恵まれたよ俺は。
因みに彼には、彼女と俺が知り合いだという事を隠している。この件は、彼の心の傷を消すのも目的だ。仮に合格しても、彼の自信に結び付かねば意味が無い。
「じゃあ、合図は俺がやる。良いな?」
「ええ」
「勿論」
俺は、近くにあった石を、適当に掴んで、放り投げた。
お互い、合図を待っている。睨み合い、相手の初動を見逃すまいと、お互いの動きを観察している。
石が、地面に触れた。小さく音がした。しかし、合図には十分だった。
先に動いたのは、浩太さんだった。しかし、彼もそれを見逃さなかった。彼女の拳を避け、地面に触れる。地面から複数の棘が飛び出た。彼女も、それに当たる程のろくはない。棘を避け、避けられない物は砕いた。
彼女は少し飛び退き、再び構えた。
「凄いわね。大体の奴は今のでダウンするのに。術式は触れた物を操る感じかしら?」
彼は黙っている。手の内を簡単に明かさないのも重要だ。言えば対策されるし、手の内を晒し過ぎれば、簡単に避けられる。
「ま、言う訳無いわね。こっからは、私も術式を使って行くわよ」
彼女は少し構えを変えた。同時に、彼女の腕にはガントレットが現れた。あれが彼女の術式。彼女は、自身が望む武具を自在に作り出す事ができる。まあ、作れる物は武具に限られるし、長持ちさせる事もできない、複雑な造りの物は作れないが、彼女自身の身体能力もバカ高いので、彼女は強い。俺も、彼女と正面からの殴り合いは避けたい。
彼も、自身の周りに無数の棘を出現させ、迎撃の体制を取る。彼女が少しでも動こうとすると、彼は彼女を攻撃した。彼女もそれを弾く、いなす、砕く。お互い決定打を出せないが、持久戦になっては彼の方が不利だ。どこかで仕掛けなければ、彼に勝ち目は無い。
一瞬、彼の攻撃が僅か、ほんの僅かに緩んだ。その隙を、彼女は逃さない。
彼女は彼の棘を避け、彼に近づく。彼も棘で迎撃するが、彼女には当たらない。
彼の懐に、彼女の拳がめり込む。
鈍い音が会場に響いた。
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※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
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