怪しい二人 夢見る文豪と文学少女

暇神

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#7 人類保護連盟

#7ー1 調査

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 俺の誕生日会の翌日。俺は再び、協会本部に来ていた。俺は早速、昨日捕まえた奴の情報を聞きに来ていた。
「八神様。お待ちしておりました」
「ありがとう。昨日のはどうなった?」
「それが……」
 俺は彼に案内されるまま、部屋の奥へ進んだ。そこには、複数の医療班だけでなく、呪術班と思われる人間、見覚えのある退魔師も多く来ていた。
 俺はその人達を退かしながら、昨日の奴を見に行く。すると、とんでもない物が目に写った。
「これは……どうなっている?」
「呪いかと思っていたのですが……それとは根本的に異なる力のようです」
 奴は、既に体が溶けて、半分液体のようになっていた。確かに霊力のような物は感じるが、退魔の術にしては都合が良いし、呪いでもないらしい。魔術や魔法の類の可能性もあるが、それを確かめる術も無い。もし魔術や魔法なら、敵は相当大きな組織という事になる。
 霊力と魔力は、根本的に異なる。どちらかで不可能な事でも、もう片方なら可能になる事がある。錬金術とか呪術とか、その最たる例だ。異国の術師の協力を仰ぐ事も考えないとな。
「魔術とかの可能性は?」
「それもありますが、日本には現在、魔術を扱える人間が滞在していないんです。暫く、その方向の調査はできません」
 成程。今は何もできないか。退魔師も呪術師も居て、医療班でも分からないとなると、俺には無理だな。知識とか経験で言うなら、俺より彼等の方がよっぽどあるだろう。
 しかし、本当に謎だ。神器に、この技術、更に『人でありながら神でもある存在』の創造まで来た。謎としか言い様が無い。協会に所属していない退魔師も、今となっては少ない。更に徒党を組んでいるとなれば尚更だ。
 まあ彼曰く、会長も調べてくれているらしい。俺にやれる事は、元々少ないのだ。暫く任せて、俺にできる事ができたら動こう。

 俺は事務所に戻り、少し休もうとした。しかし、それより前に解決すべき事ができてしまったのだった。
「お姉様!次はこちらを……」
「いえこちらをお嬢様!」
「待て待て待て待て!」
「お二人さん!こっちも良いですよ!」
 うん。既視感。まあ、危害を加える訳でも無いだろうし、スルーしてちょっと休もう。七海さんは七海さんでなんで一緒になってやってるんだ
「八神くん!助けてくれ!」
 うん。今はあの二人を抑える手札が無い。一旦部屋に戻る必要がある。今は何もできないのだ。南無阿弥陀仏南無阿弥陀仏。秘蔵の盗撮写真を取って来るまで待っていてくれ。俺は部屋の金庫を開けて、六枚程写真を取り出して、元の部屋に戻る。
「三人共止めろよ。何だって今やってるんだよ」
「昨日できなかったからですわ!」
「最近お嬢様成分が不足しておりましたので!」
「なんか楽しそうだったから!」
 うん、ここまで来ると最早清々しいな。だがもうお開きだ。さっさと解散してもらおう。俺は三人を散らして、それぞれに二枚ずつ写真を渡してから、先生を先生の部屋に連れて行った。
「うう……何なんだよあいつら……」
「先生の事が好きなんですよ。良い事じゃないですか」
 まあ、こればっかりは止めようが無いだろうな。多分、今どうこうした所で無駄だろう。また同じ事の繰り返しだ。仕方が無いとまでは言わないが、正直俺に何かできるとも思えない。
 まあ、あの三人への詫びの品は渡した。二枚だけだし、少なく見積もって、一か月しか持たないが、まあ無いよりはマシだろう。
「一回素通りしたのを……私は忘れないからな……」
「あの二人に対抗する術が、あの時は無かったんですよ。その後助けたんでチャラでお願いします」
 そうだ。協会で貰った情報を、先生にも共有しておこう。先生に危害が及ぶ可能性だってあるのだ。用心に越した事は無い。俺は着替えている先生に、昨日あった事と、今日貰った情報について話した。
「昨日言わなかったのは一旦置いておいて、協会に所属していない退魔師の組織……しかもかなり力を持っているか……」
「俺の副業でも触れた事が無い組織です。謎の組織としか言い様がありません。気を付けてくださいね」
 俺はそれだけ言って、部屋を出た。やはり、幸子と沙月さんは、少し不満気だった。
「これは貰っておきますわ。でも、私達の邪魔をした事は忘れませんからね」
「次こそは、お嬢様にこの服を着せてみせます」
「その執念を別の所に伸ばした方が良いと思いますよ俺は」
 取り敢えず、今日の所は帰ってくれるようだ。俺は二人を少し見送ってから、いつものように家事を始めた。

 それから二、三日すると、協会から連絡が来た。どうやら、魔術を扱う人間を呼んだらしい。俺は挨拶をする為に、協会本部へ向かった。
 その人物は受付に居た。金髪に、そこそこ目立つ服を着た、外人だった。俺はその人物の前に立ち、挨拶する。
「初めまして。八神蒼佑と言います。よろしく」
「Nice to meet you、ヤガミ。I'm Bob。コチラコソヨロシク」
 外人だけあって、英語の発音が流暢だ。慣れてないし、ちょっと聞き取りにくいな。日本語も片言だし。とは言え、普通に会話できる程度だ。問題無い。
「こちらです。どうぞ」
 俺が案内した先の部屋にあった、あの溶けた妖怪を見た彼は、気分が悪そうに口元を押さえた。
「Oh……カレ二ナニガオコッタンデスカ?」
「分かりません。昨日にはもうこうなっていました。魔術の類ですか?」
 そう聞くと、彼は首を横に振った。
「マジュツハソンナベンリジャアリマセン。コンナコト、ヤレルヒトスクナイデス」
「そうですか……」
 そうなると、本当に分からなくなって来た。退魔の術でも呪術でも、更には魔術でもないと来た。こんな事、前代未聞だ。そうなるともう、魔法とか仙術とか、神の領域に近い術しか無いな。しかし、そんな物が使える人間は、今この地上に居ない筈だ。
 いや、奴等は『神でありながら人である存在』と言った。もしかしたら、既に神に近い存在は作れているのではないか。もしコレがその存在の仕業なら、相当面倒な事になるな。少なくとも、捕まえた奴から情報は引き出せない。

 奴等は一体、何者なんだ?
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