怪しい二人 夢見る文豪と文学少女

暇神

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#7 人類保護連盟

#7ー3 尋問

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 浩一郎は、今は裏切者として、地下の牢屋に閉じ込められている。神秘を扱う物が犯罪を犯した時なんかは、協会がその者の身柄を預かる事になるらしい。
 俺は今、浩一郎と向き合って話している。
「何故裏切った?」
「金払いが良かったから」
「奴等は何だ?」
「知らねえよ。金をくれるって言うから手伝っただけだ」
「何を頼まれた?」
「お前が来たら知らせろって、昨日の夜にな」
「どれ位前から繋がってた?」
「五か月」
 コイツは、基本すんなり答えた。金が貰えるというだけで繋がっていたという事の裏付けとも言える。だがまあ、念には念を入れるべきだろう。俺は立ち上がって、牢の扉を開けた。
「もう良いだろ?言える事は全部言った。さっさと俺を……」
 俺は霊力をお札に流し、呪文を唱え始める。
「ノコ、グリオノニラミ、ブトワ……」
「オイ、何をしてる」
 俺は札に霊力を流して、浩一郎の額に貼り付ける。すると、奴は悶え苦しみ始めた。
「アああああアアああアあアアアア!」
「もう一度聞く。奴等について知ってる事を話せ」
 浩一郎は首を横に振りながら、首を掻き毟っている。どうやら、本当に何も知らないらしい。俺は札を額の札を取って、呪いの効果を無くす為に、札を霊力を込めて切り裂いた。奴は途端に落ち着き、息を荒くしながらも、椅子に座った。俺は牢屋を出て、鍵を再び閉めてから、外に出る。
 忠誠とかじゃなく、ただ単に金で裏切ったのか。アイツはそういう奴だったが、まさかここまで何も知らないとは。コイツが何かしら知っていれば、少しは状況も進展しただろうに。
「尋問に呪いを使いましたね?」
「春日部さん」
 本部の出入り口付近で、春日部日向が話し掛けて来た。何の用だろう。
「何か用ですか?」
「ええ。大きなね」
 春日部さんは俺に、数枚の紙が入ったファイルを投げ付けた。俺はそれを受け止め、中に入っていた物を読み始める。
「貴方、こんな貧層な経歴だったのですね」
「同僚に向かって酷い言い草ですね。一応、俺も春日部さんと同じ金剛級退魔師なんですが」
 そう言った俺が見ているのは、俺の個人情報だった。生まれから今日に至るまでの情報が、事細かに書かれている。よくここまで調べた物だ。ここまで知っているのは、先生と岩戸家現当主サマだけなのに。
「ここまで調べてくれるなんて光栄ですよ」
「その減らない口、貴方がここに連れて来られた時から嫌いでしたよ」
 そう言いながら、春日部さんは俺に歩み寄って来る。触れる一歩手前まで来た所で、春日部さんは俺を下から睨み付けて来た。
「貴方がここに居られるのは、岩戸家がバックに居るからだという事は忘れない事ですね」
「そういう事は決闘で勝ってから言ってください。俺に勝てる人を数えるのなんて、この右手だけあれば十分ですよ」
 俺の返しが余程癪に障ったのだろう。春日部さんは舌打ちをしてから、俺の横を通り過ぎて行った。
 ああいう人は苦手だ。同じ事を繰り返すばっかりで、話しても何も変わらない。関わりを絶つのが一番楽なんだろうが、向こうから突っ掛かって来るんじゃどうしようもない。面倒な人に目を付けられた物だよ。
 俺は憂鬱な気持ちのまま、事務所へ向かった。

 俺は事務所のダイニングテーブルの上に置かれた、一枚の紙を見ながら、溜息を吐いている。
『七海と買い物して来る。昼食は済ませて来るからお構い無く。 咲良』
 あの人はコレだから……どうせまた骨董品とか買って来るんだ。同じ物は二つとして無いという事は理解できる。せめて自分の小遣いから出してくれ。
 一人の事務所はかなり寂しく感じた。いつもの騒がしい二人が居ないのだから当たり前だが。俺は黙々と、いつもの作業を続けた。寂しいは寂しいが、静かな環境は作業には最適だ。俺は普段よりも少し早く作業を終える事ができた。
 そうなるといよいよ暇だ。この事務所にある小説は全て読んだし、先生が何を買って来るか分からない以上、ここを離れる訳にも行かない。昼食も俺には不要だし、何をしようか。
「お兄ちゃん、何かしないの?」
「何かっつってもなあ……投稿する分の小説は書いたブログも更新した家事もやった。これじゃ何もできねえよ」
 ソファに横になって不貞寝でもしようかとした俺に、人形が乗っかって来た。何故か少し暖かい。
「それなら、僕が霊力の操作教えるよ」
「マジでか。感覚の話か?」
「うん」
 やったぜ。まさか神様が教えてくれるとは。権能が無しでもできるという事は、多分俺でも真似できるのだろう。今後の戦闘や、一年後の百鬼夜行に備える意味でも大事だ。
 最近思ったのだが、俺はそこそこ弱い。会長に先生、修司君、慎太郎さん。数えてみると、俺が勝てる退魔師は、片手でギリギリ数えられる程度だ。手札が無い状態なら、他の金剛級に勝てる保証すら無い。せめて修司君と並ぶ位にはなりたい。
「じゃ、頼もうかな」
「分かったよ。じゃあ外に出ようか」
 俺達は事務所の外に出て、訓練を始める事にした。かなり感覚的な話にはなったし、十分の一も理解はできなかったが、それでも多分、マシな方だと思う。
 神サマの訓練は、先生達が帰って来るまで続いた。その頃には、俺は神サマの見せる幻に対応し続けた結果として、最近買ったばかりの冬服がボロボロになってしまった。
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