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#7 人類保護連盟
#7ー4 聞き込み調査
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翌日。俺は協会に登録されていない、別の神隠しに来ていた。理由は勿論、人類保護連盟の調査だ。
俺は副業の関係で、こういう場所を沢山知っている。勿論、危ない知り合いも多く居る。霊力飴も、そういう人から安く買い叩いた代物だ。因みに、先生は知らない。
「いらっしゃいませ。何をお望みで?」
「温かい硬貨と冷たい手を」
合言葉を言った俺は、店の奥へ案内された。変な合言葉だとは思う。ただ、こういうのは知っておくと便利だ。こういう所を利用する時、身分証明代わりになる。
奥には、お洒落なバーみたいな席が用意されている。俺はその一番右の席に座り、待ち合わせの相手を待つ。相手は存外、直ぐに来てくれた。
「待たせたね」
「時間ピッタリですよ。俺が早く来ただけです」
相手は俺に名刺を差し出して来た。そこには、『八神康生』と書かれている。
「俺の苗字使ってるんですか」
「成り行きさ。目くじらを立てないでくれ」
彼は以前、七海さんの特別行動班加入試験を担当した男だ。背格好が違うのは、まあいつもの事だ。
彼は俺以上に、裏社会の住人だったり、怪しい奴等の噂について詳しい。ここには、協会本部で会う事はほぼ無いので、自分から会いに来た次第だ。
「君が聞きたいのは、最近話題の人類保護連盟についてだろう?」
「はい。知ってる事教えてください」
俺は少しばかりの金を渡しながら、彼に聞く。彼はそれを懐に仕舞いながら、俺の質問に答えた。
「大量の火器に人員、更には金、更には神殺しの所持もしている団体……バックには凄くデカい退魔師一族が居るって噂だが、基本的にはその正体は掴めていない奴ばかりだ。だが、気になる話ならある」
少し勿体ぶってから、彼はその話を始めた。それは、その『バックに居る退魔師一族』の話だった。
「五か月前、春日部家が怪しい動きをし始めた。どこへ行くのかも分からない使者だったり、それまでと比べて明らかに多い火器を仕入れたりしているらしい」
春日部家。昨日突っ掛かって来た、春日部日向の実家だ。あの人は品行方正だとばかり思っていたが、そうでもないのか?いや、あの人が関わっているにしては、俺の情報がボンヤリしていた。あの春日部さんが俺を調べた方法が人類保護連盟なら、あの詳しい調査結果は納得できるが、一方で連盟の奴等の俺に対する評価が納得できない。更に詳しく調べる必要がありそうだ。
「他には?」
「妖怪を無差別に殺害する計画を立てているとか、大量の妖怪を実験に利用してるとかいう話はあるが、どれも噂の域を出ない。信じない方が良いな」
成程。これ以上ここに居ても無駄なようだ。俺はその場を離れ、事務所に戻る事にした。
帰ると、先生と七海さんが取っ組み合っていた。
「これは私のだ!」
「こればっかりは譲れない!」
どうやら何かを取り合っているようだが、その肝心の『何か』が、七海さんの背中に隠れて見えない。俺は足音を消して近付いて、二人に話し掛けた。
「何やってるんですか?」
「「わあっ!?」」
二人は少し大袈裟に驚いて、床に倒れる。そして取り合っていた物を持っていた先生は、咄嗟にそれを、背中に隠した。
「八神君!?早かったね!?」
「少し人と会ってただけですからね。それより、何やってたんですか?」
オイ二人共。思いっ切り目が泳いでるぞ。何か隠すにしてももうちょっと上手くやれよ。
答えてもらうのを諦めた俺は、霊力で身体能力を強化して、先生の後ろに回り込む。そして持っていた、一枚の写真を取り上げた。先生と七海さんが揃って「あっ」と間抜けな声を出している間に、俺はその写真を見て、顔をしかめた。
どうやら、二人が取り合っていたのは、俺の寝顔を盗撮した写真らしかった。いつの間にこんな……ああでも、心当たりがあるぞ。少し前に、俺が一週間寝込んだ時のだな。
「ち、違うんだよ八神君!お姉ちゃん達、ちょっと魔が差しただけって言うか……」
「目が泳いでますよ。それに、何が違うって言うんですかこんなの」
うん。慌てに慌ててるな。もうちょっと頑張ろうよ。せめてもうちょっと上手い弁解しようよ。
まあ、これが撮られただけなら、俺も起こる訳じゃない。これだけならね。
「二人共。隠してるのありますよね」
「「う……」」
「見せてくれますね?」
「「……はい」」
素直でよろしい。俺は二人に案内されるままに、先生の部屋に来た。先生はクローゼットに仕舞ってあった箱を取り出して、その中から十数枚の写真を取り出した。
「これだけですか?」
「はい……」
ふむ。どれも普段着ばかりだし、撮られて困る場面は無さそうだ。これなら問題無い。俺はそれらを先生に返す。
「あれ?怒ってないのかい?」
「はい。撮られて困る物さえ無ければ。まあ勝手にしてください」
二人は手を合わせて「やった!」と喜んだ。どうやら余程嬉しかったようで、軽く跳ねている。俺は台所に行き、昼食を作り始める。
連盟の奴等の資金源、日下部家の噂、これらは結び付ける事はできるが、まだ信じるには早い。身内で切り合わせて、協会を疲弊させる為に流されたという事も考えられる。それに、日下部さん個人で見るなら、それは無いようにも見える。可能性はできるだけ考えて調査しないといけない。時間は掛かるが、それでも確実な手を取る必要がある。
俺は副業の関係で、こういう場所を沢山知っている。勿論、危ない知り合いも多く居る。霊力飴も、そういう人から安く買い叩いた代物だ。因みに、先生は知らない。
「いらっしゃいませ。何をお望みで?」
「温かい硬貨と冷たい手を」
合言葉を言った俺は、店の奥へ案内された。変な合言葉だとは思う。ただ、こういうのは知っておくと便利だ。こういう所を利用する時、身分証明代わりになる。
奥には、お洒落なバーみたいな席が用意されている。俺はその一番右の席に座り、待ち合わせの相手を待つ。相手は存外、直ぐに来てくれた。
「待たせたね」
「時間ピッタリですよ。俺が早く来ただけです」
相手は俺に名刺を差し出して来た。そこには、『八神康生』と書かれている。
「俺の苗字使ってるんですか」
「成り行きさ。目くじらを立てないでくれ」
彼は以前、七海さんの特別行動班加入試験を担当した男だ。背格好が違うのは、まあいつもの事だ。
彼は俺以上に、裏社会の住人だったり、怪しい奴等の噂について詳しい。ここには、協会本部で会う事はほぼ無いので、自分から会いに来た次第だ。
「君が聞きたいのは、最近話題の人類保護連盟についてだろう?」
「はい。知ってる事教えてください」
俺は少しばかりの金を渡しながら、彼に聞く。彼はそれを懐に仕舞いながら、俺の質問に答えた。
「大量の火器に人員、更には金、更には神殺しの所持もしている団体……バックには凄くデカい退魔師一族が居るって噂だが、基本的にはその正体は掴めていない奴ばかりだ。だが、気になる話ならある」
少し勿体ぶってから、彼はその話を始めた。それは、その『バックに居る退魔師一族』の話だった。
「五か月前、春日部家が怪しい動きをし始めた。どこへ行くのかも分からない使者だったり、それまでと比べて明らかに多い火器を仕入れたりしているらしい」
春日部家。昨日突っ掛かって来た、春日部日向の実家だ。あの人は品行方正だとばかり思っていたが、そうでもないのか?いや、あの人が関わっているにしては、俺の情報がボンヤリしていた。あの春日部さんが俺を調べた方法が人類保護連盟なら、あの詳しい調査結果は納得できるが、一方で連盟の奴等の俺に対する評価が納得できない。更に詳しく調べる必要がありそうだ。
「他には?」
「妖怪を無差別に殺害する計画を立てているとか、大量の妖怪を実験に利用してるとかいう話はあるが、どれも噂の域を出ない。信じない方が良いな」
成程。これ以上ここに居ても無駄なようだ。俺はその場を離れ、事務所に戻る事にした。
帰ると、先生と七海さんが取っ組み合っていた。
「これは私のだ!」
「こればっかりは譲れない!」
どうやら何かを取り合っているようだが、その肝心の『何か』が、七海さんの背中に隠れて見えない。俺は足音を消して近付いて、二人に話し掛けた。
「何やってるんですか?」
「「わあっ!?」」
二人は少し大袈裟に驚いて、床に倒れる。そして取り合っていた物を持っていた先生は、咄嗟にそれを、背中に隠した。
「八神君!?早かったね!?」
「少し人と会ってただけですからね。それより、何やってたんですか?」
オイ二人共。思いっ切り目が泳いでるぞ。何か隠すにしてももうちょっと上手くやれよ。
答えてもらうのを諦めた俺は、霊力で身体能力を強化して、先生の後ろに回り込む。そして持っていた、一枚の写真を取り上げた。先生と七海さんが揃って「あっ」と間抜けな声を出している間に、俺はその写真を見て、顔をしかめた。
どうやら、二人が取り合っていたのは、俺の寝顔を盗撮した写真らしかった。いつの間にこんな……ああでも、心当たりがあるぞ。少し前に、俺が一週間寝込んだ時のだな。
「ち、違うんだよ八神君!お姉ちゃん達、ちょっと魔が差しただけって言うか……」
「目が泳いでますよ。それに、何が違うって言うんですかこんなの」
うん。慌てに慌ててるな。もうちょっと頑張ろうよ。せめてもうちょっと上手い弁解しようよ。
まあ、これが撮られただけなら、俺も起こる訳じゃない。これだけならね。
「二人共。隠してるのありますよね」
「「う……」」
「見せてくれますね?」
「「……はい」」
素直でよろしい。俺は二人に案内されるままに、先生の部屋に来た。先生はクローゼットに仕舞ってあった箱を取り出して、その中から十数枚の写真を取り出した。
「これだけですか?」
「はい……」
ふむ。どれも普段着ばかりだし、撮られて困る場面は無さそうだ。これなら問題無い。俺はそれらを先生に返す。
「あれ?怒ってないのかい?」
「はい。撮られて困る物さえ無ければ。まあ勝手にしてください」
二人は手を合わせて「やった!」と喜んだ。どうやら余程嬉しかったようで、軽く跳ねている。俺は台所に行き、昼食を作り始める。
連盟の奴等の資金源、日下部家の噂、これらは結び付ける事はできるが、まだ信じるには早い。身内で切り合わせて、協会を疲弊させる為に流されたという事も考えられる。それに、日下部さん個人で見るなら、それは無いようにも見える。可能性はできるだけ考えて調査しないといけない。時間は掛かるが、それでも確実な手を取る必要がある。
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