怪しい二人 夢見る文豪と文学少女

暇神

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#7 人類保護連盟

#7ー10 実行

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 冬の寒さも和らいで来た頃。俺達が百鬼夜行の事を会長から知らされてから丁度一年の日に、計画は実行される事となった。
 俺は今、春日部家の正門の前に居る。あまり目立っても困るし、さっさと中に入らせてもらおう。俺は春日部さんから事前に渡されていた札を使う事で、この家に張られた結界を素通りした。
 今頃向こうは、新郎新婦の挨拶みたいなのしてんのかな。ちょっと羨ましいな。土産を持って来るよう約束してもらえば良かったな。
 そんな事を考えながら、俺は昨晩の内に頭に入れておいた、この家の間取りを頼りに、家の奥へと進んで行く。先ず倉庫。ここには、大量の武器と、壺や掛け軸、置物なんかの骨董品が陳列されていた。先生が大喜びしそうなラインナップだ。
 次に春日部家当主の書斎。部屋中探したが、目ぼしい物は見つからず。あったのは、金持ちらしい豪華な装飾品や家具、そして大量の本だけだった。
 最後に地下室。ここには、必要無くなった道具が大量に置かれているらしく、埃まみれで、最近動かした形跡のある物は無かった。地面に触れないように移動したので、足跡が残らない事を祈るばかりだ。
 春日部さんが普段入れないと言っていた、この三つの部屋に無かったという事は、どこか他に、隠し場所があるのだ。それも、ごく一部の人間しか知らないような。
「そろそろ僕の出番だね?」
「ああ。頼むぞ」
 俺は床に手を置き、首に掛けた勾玉に霊力を流す。怪しい動きを見せ始めたのはおおよそ五か月前。ならば、少し遡って、六か月前の情報から見はじめよう。
 神サマの補助に依って、俺の霊力の波長は、俺ではない何者かの霊力の波長になる。こうする事で、霊力から侵入したのが俺であるとバレる心配も無くなる。勿論効率は悪くなるが、幸い時間はある。問題と言う程でもないだろう。
 六か月前。連盟の奴等であるとまでは確認できないが、最初に俺の前に姿を現した奴と似たフードを被った奴が、この家に出入りした記録がある。これは想定内。だが、問題はコイツが何者かというのと、隠されているであろう部屋の場所だ。
 五か月前。ここで取引が始まったらしい。やはり、あのフードを被った奴に火器を渡している。どこに運んだかは分からないが、やはり怪しい取引があったのは間違い無いようだ。
 そして春日部家の人間は、火器を渡した後に、何か包みを受け取っている。これはどこに置いたんだ?恐らく、コレと同じ場所に、本物の帳簿がある筈だ。まあ、そんな物があるかも怪しくなってきた訳だが。
 まあ、ここまで分かれば後は簡単だ。コレを、どこに運んだかを調べれば済む。包みは春日部家当主の手に依って運ばれて行く。当主は書斎の机の裏に隠されていたボタンを押した。すると、家のどこかで重い物が動くような音が聞こえた。当主はそれを確認すると、包みを倉庫へ運んで行く。倉庫には、壁の向こうにあったのであろう隠し扉が姿を現しており、当主はそこに降りて、包みを運んで行く。
 そこから先には特殊な結界でもあるのか、何も見えなかった。しかし、ここまで分かれば良い。俺はそこで、術式を使うのを止めた。やはり少し疲れる。俺は溜息を吐いてから立ち上がる。
「お兄ちゃん、大丈夫?」
「ああ。問題無い。それより、早く行くぞ」
 俺は早速、当主の書斎へ向かう。先程見た映像と同じ動きでボタンを押し、音が聞こえてから倉庫へ向かう。そこには隠し扉が現れている。問題はこの先だ。俺の術式で見えなかったという事は、少し特殊な仕掛けがあるに違い無い。慎重に進まなければ。
 しかし、俺は少し拍子抜けした。なんと、人の侵入を拒むような効果が、結界には付与されていなかったのだ。確かに、仕掛けがあるのだから、わざわざ人を拒む理由も無いか。それなら、人の侵入を拒む効果を無くす代わりに、ここの情報を遮断する効果を強める方が合理的だ。
 まあ、何にせよ楽なのだし良いか。俺は隠し扉の向こうにあった階段を降りて行く。どうでも良い事だが、これ絶対違法建築だろ。後で告発するのは確定かな。
「お兄ちゃん、この先、ちょっと嫌な感じがする」
「はあ?どんな?」
「何て言ったら良いのかな……なんか……何となく危険だと分かる感じ」
 ふむ。神サマがそう言うなら、多少は警戒して損は無いだろう。神とは神秘そのものと言えるのだし、神秘に関する物事であれば、人間の俺より遥かに敏感だろう。
 三十段程の階段を降りて行くと、そこには狭い地下室があった。そして、大量の包みが置いてある。そしてその全てが、何か妙な霊力を帯びている。なんだコレはと思い、手袋を付けてから包みを捲ると、それは刀のようだった。なんでこんな物がここに?
「お兄ちゃん、コレ多分、神殺しの武器だ」
「は?コレ全部?」
「多分」
 いやいやおかしいだろ。神殺しは、神を殺す事が可能な武器、生物、事象を指す言葉だ。そしてそれらは、現段階では殆どが見つかっていない状態だ。伝承ではあるとされている物が、殆ど見つかっていないのだ。それらは今もこの世のどこかで眠っているとされているが、その中の一部が、こんな所で保管されていたという事なのか?
 しかし、これでかなり怪しさが増した。連盟の奴等は神殺しを所持している。恐らく、これも奴等から受け取った物だろう。後は、決定的な証拠を見つければ良い。
 そう考えた瞬間、点けないでいた階段の電気が点灯した。成程。こちらの情報は、向こうにバレていたらしい。
「どうするのお兄ちゃん!?」
「慌てるな。先ずは話し合いからかな?」
 まあ、問題があるとすればここからだ。先生は大丈夫かな。まあ今は良いか。取り敢えず、俺は今の敵を見つめよう。俺は、階段の方向を睨み付ける。そして、数人の人間の足音が聞こえて来る。

 少しして、ライフルを装備した数人の男と共に降りて来たのは、春日部家現当主、春日部憲明かすかべのりあきだった。
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