怪しい二人 夢見る文豪と文学少女

暇神

文字の大きさ
102 / 169
#7 人類保護連盟

#7ー22 奥の手

しおりを挟む
 物語は少し前、河崎修司が分断された、一分後に戻る。


 俺は敵を蹴散らしながら、最上階へ向かって駆け上がっている。皆もそこに向かっている筈だ。早めに合流した方が良い事は俺でも分かる。だが、ここで一人でも多くの敵を倒しておいた方が良い事も分かる。
 三階に上がった後直ぐ、俺はなんか、偉そうな奴と顔を合わせた。
「おやおやこれはこれは……協会の金剛術師ではありませんか」
「手前の事なんざ知らねえ。退け」
 俺はそう言ってソイツに殴り掛かったが、ギリギリの所で避けられた。術式の乗せていたのに避けるのか。速え。それも相当。焦っている様子もねえ。だが、コイツを見逃す理由もねえ。俺は目の前の敵に、できるだけ多く、拳を浴びせようとした。奴はそれをギリギリ躱し、俺に話を始めた。
「貴方は相当強いですね。我々の計画の邪魔になりそうです」
「そりゃどうも!反撃して来ねえのか!?」
 反撃をさせるつもりも無い。俺は奴が手を出そうとする度、その手を払い除け、足を引っ掛け、邪魔をする。いくら速くても、反撃できなきゃ勝ち目はねえ。このまま押し切ってやる!
 奴は突然、俺から離れた。俺は当然、奴に向かって跳ぶが、途中で足を止めた。奴が右腕を上げると同時に、俺に無数の銃口が向けられ、それらはほぼ同時に発砲された。
「伏兵かよ!」
 俺はギリギリの所で進行方向を上に曲げ、銃撃から逃れた。あの数は流石にキツイ。先にあの伏兵をどうにかしねえと。ああでもそうしたら奴に逃げられる。アイツは危険だ。野放しは不味い。だけどそしたら俺が蜂の巣だ。
 決めた!伏兵を速攻倒して、奴を追い掛けて、そのまま倒す。完璧だ。俺は早速、伏兵の方へ向かう。銃口が俺を追うように向けられ、俺に再び弾幕を向ける。だが俺も、まだ奥の手がある。
「プレゼントだ!受け取れえ!」
 俺は奴等に向かって、岩戸から事前に一枚拝借しておいた札を投げ付ける。勿論、爆発する札だ。伏兵は一網打尽にされ、俺は早速、奴の背を追う。
 しかし速い。術式で飛んでも追い付けない。落下するのと同じ速さで走るのかアイツは!
 奴は下に降りる階段を降りた。上に行きたいんだが……四の五の言ってられる状況じゃねえか。俺は構わず奴の背を追う。
 ようやく奴は、一つの部屋に入った。俺はその中に飛び込み、一旦着地する。
「追い付いたぞ!」
「よくできました。褒めてあげましょうか?」
 ムカつく奴だなあ。まあ、イライラする鬼ごっこももう終わりだ。俺は霊力で身体を強化して、奴に飛び掛かろうとする。だが奴は、冷静にお茶を飲みながら、俺を制止した。
「やめておいた方が良い。この部屋には爆弾と機関銃が仕込まれています。貴方がもし、その場から一センチでも前に踏み出したとしましょう。貴方の身体は焦げたレンコンのようになってしまうでしょうね」
 俺はその言葉に身体を止める。銃弾と爆弾がいくつも仕掛けられてたら、この閉所だと、流石に俺一人じゃキツイ。弾丸を耐えて、無理矢理押し通る事もできるが、今後また戦闘する事になるとしたら、相当キツイ事になるだろう。ここは我慢しなければ。
「さて、話をしましょう。貴方は河崎修司。名門の出ではないにも関わらず、協会で五本の指に入る実力者だそうじゃないか」
「ああ。それがどうした?」
「特段何も。確認ですよ。では本題に……貴方は神について、どれだけ知っていますか?」
 神。この世で見られる全ての存在の上位互換の存在。だが、その事を聞いて何になる?協会の人間なら、神についての概要はほぼほぼ把握している筈だ。まあ、俺はうろ覚えなんだけど。
「『世界の管理者であり、万物を見定める物』って書いてあったぞ」
「人が神になった事例については?」
「『現人神と呼ばれる、信仰を集め、徳を積み、人や妖怪が力を得た存在』ってのもあったな」
 俺がそう答えると、奴は満足そうい頷いた。一体何の質問なんだ?面接会場かよここは。
「何が言いたい?」
「私達の目的を知っているでしょう?」
 俺は頷いた。八神からの報告では、『連盟の目的は全ての神、妖怪、幽霊、怪異の抹殺、そして新たな神を誕生させる事』となっている。正直半信半疑だ。神殺しの武器があったとしても、神と武力で渡り合う事は基本はできない。神話の英雄や魔法使いを除いて、神と人には、絶対的な差がある。それだけ、神は強い存在らしい。
「八神蒼佑を新たな神とし、新世界を創造する……まあ、振られてしまいましたけど」
「じゃあさっさと諦めて投降しろよ。しつこい奴は女にモテないらしいぞ」
 そもそも、八神が神になるというのが無理な話だ。爺さんコンビの言う事には、八神は現人神になる条件を揃えていないらしい。信仰も神になれる実力も、神格さえも持っていない。神とは程遠い、ただの人間だ。
「諦めていないからですよ。我々は前提として、神という存在について無知なのです」
 奴は椅子から立ち上がり、一冊の本を取り出した。表紙には『神についての研究、及びその結果』と書かれている。どういう事だ?
「『神とは神秘学の観点から見ても超常的な存在であるが、その全てが常軌を逸した存在という訳でもない』」
「何が言いたい?」
「魚の養殖なんかのニュースを見た覚えはあるでしょう?それと同じですよ。神は人の手で作り出す事ができる」
 何を言っている?俺は確かにバカだが、目の前の男が話している事がおかしい事位は分かる。神を作り出す実験はされた事が無い。それはやらなくても分かる、『無理な事』だからだ。水が川を流れる事を避けられないように、木から落ちたリンゴを、また木に戻す事ができないように、当たり前な事だからだ。
「神と呼べる存在の定義は主に三つ。一つ、寿命が無い、或いは限り無く長い事。二つ、霊力が無限、或いは、限り無く多い事。三つ」

「神を殺せる事」

 その言葉と同時に、連盟の建物が大きく揺れ、大きな叫び声のような音が聞こえた。奴はお札を使い、転移を始める。光に包まれる奴は、その全てが金の光に覆われる直前、俺に言葉を発した。
「生きていれば八神蒼佑にお伝えください。我々はいつでも、貴方を迎え入れる準備はできていると」
 俺は奴が居なくなるのを確認してから、皆が居るであろう最上階に向かった。何が起こっているのか確認しなければ!いや、それ以前に合流しなければ!
 俺は天井を突き破りながら、一直線に最上階へ向かう。俺は最上階の部屋の床を突き破り、皆と合流する。
「修司君!」
「緊急事態だ!何が起こっているのかは分からんが、脱出した方が……」
 そう俺が言い終わるより先に、建物が全て崩れた。いや、何かによって崩された。俺達は窓から外に飛び出し、その原因を目の当たりにした。

 俺達の目の前には、巨大な人の形をした、赤黒い肉の塊が居た。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

母の下着 タンスと洗濯籠の秘密

MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。 颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。 物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。 しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。 センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。 これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。 どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。

裏切りの代償

中岡 始
キャラ文芸
かつて夫と共に立ち上げたベンチャー企業「ネクサスラボ」。奏は結婚を機に経営の第一線を退き、専業主婦として家庭を支えてきた。しかし、平穏だった生活は夫・尚紀の裏切りによって一変する。彼の部下であり不倫相手の優美が、会社を混乱に陥れつつあったのだ。 尚紀の冷たい態度と優美の挑発に苦しむ中、奏は再び経営者としての力を取り戻す決意をする。裏切りの証拠を集め、かつての仲間や信頼できる協力者たちと連携しながら、会社を立て直すための計画を進める奏。だが、それは尚紀と優美の野望を徹底的に打ち砕く覚悟でもあった。 取締役会での対決、揺れる社内外の信頼、そして壊れた夫婦の絆の果てに待つのは――。 自分の誇りと未来を取り戻すため、すべてを賭けて挑む奏の闘い。復讐の果てに見える新たな希望と、繊細な人間ドラマが交錯する物語がここに。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

それなりに怖い話。

只野誠
ホラー
これは創作です。 実際に起きた出来事はございません。創作です。事実ではございません。創作です創作です創作です。 本当に、実際に起きた話ではございません。 なので、安心して読むことができます。 オムニバス形式なので、どの章から読んでも問題ありません。 不定期に章を追加していきます。 2026/2/25:『くもりのゆうがた』の章を追加。2026/3/4の朝頃より公開開始予定。 2026/2/24:『ぬかるみ』の章を追加。2026/3/3の朝頃より公開開始予定。 2026/2/23:『かぜ』の章を追加。2026/3/2の朝頃より公開開始予定。 2026/2/22:『まどのそと』の章を追加。2026/3/1の朝頃より公開開始予定。 2026/2/21:『おとどけもの』の章を追加。2026/2/28の朝頃より公開開始予定。 2026/2/20:『くりかえし』の章を追加。2026/2/27の朝頃より公開開始予定。 2026/2/19:『おとしもの』の章を追加。2026/2/26の朝頃より公開開始予定。 ※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。

処理中です...