怪しい二人 夢見る文豪と文学少女

暇神

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#7 人類保護連盟

#7ー25 必勝必殺

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 俺は目の前で繰り広げられている攻防を、ただ見つめているだけだ。ただ見つめているだけなのに、それでも自身の心臓が握られているような、嫌な危機感が俺の身体を這っている。
「八神!無事か!?」
「ああ……なんとかね」
 俺は修司君に引きずられて、神隠しの端まで行く。俺は適当な木に体重を預け、そこら中痛む身体を楽にする。
「俺は大丈夫だから、修司君は先生を頼む」
「いや、あっちは爺さん二人揃ってんだから心配要らねえだろ。それより、俺はお前の状態の方が心配だぜ」
 良い友達を持った物だな。なら俺はここで、観客に徹するとするかな。
 神殺しが何故神を殺せるか。それはよく分かっていない。ただ一つ言えるのは、神殺しによって付けられた傷を治すには、神であれば数十年、妖怪や人でも半年は必要になるとされている事だ。神に対して絶大な効力を発揮し、それ以外に対しても大きな効果をもたらす。神殺しとはそういう物だ。
 そのお陰で、あのデカブツの身体には、次々と傷が刻まれて行く。だが、化物は身体を変形させる事で、その傷を無理矢理塞いでいる。キリが無いのは変わっていが、間違い無く状況は好転している。
「八神、傷は治せそうか?」
「身体を治せるだけの霊力も残ってない。今の俺は何の役にも立たないな」
「なら尚更、俺もここで待機するしか無さそうだ」
 まあ、こうなってしまえばもう勝ちは濃厚だろう。あのデカブツは確かに脅威だが、あの化物に効果を発揮する武器を手に入れた今、あの二人にとって、巨体は大した問題ではないだろう。
 しかし、化物は自身の目の前の障壁を無視して、より簡単に崩せる部分を攻撃する事にしたようだ。化物は俺達の方に武器を構える。
「不味いな……八神!飛ぶぞ!」
「分かった。少し霊力を貸してくれるか?」
「応!」
 修司君は俺の胸に手を当て、少しだけ霊力を渡す。少ないが、俺には十分過ぎる量だ。俺は霊力で身体を強化し、修司君に持ち上げられる。
 間一髪の所で攻撃を避けた俺達は、待機する場所を移し、また休憩する。
「八神、霊力の回復は?」
「霊力飴が一つ。できれば使いたくないな」
「まあ、今の状況なら問題無いだろうな」
 しかし、俺の知らない所で何かが起きているようだ。会長と慎太郎さんは突如失速し、化物はそこを叩いた。修司君は素早くそれを受け止め、俺の所まで戻って来る。
「爺さん!大丈夫か!?」
「身体が痺れている……毒か」
「しくじったのう。複数の術式を操る敵相手に、毒を警戒していなかった」
 不味い。コレでは、先生を守る人が居ない。化物は先生の方を向いて、その腕を振り下ろす。
「八神君!儂ら二人の霊力を渡す!」
「もう準備はほぼ整っている筈!行けい!」
 会長と慎太郎さんは俺の背中を押すと同時に、大量の霊力を俺に渡した。俺は霊力を放出しながら、化物の方へ向かう。
「神様あ!足場あ!」
「合点招致!」
 俺は神様が作り出した足場を走りながら、最後の切り札を取り出す。
「人の手によって作り出されし、自然ならざる存在よ!我が力を以て、拘束する!」
 化物の胸の前に来た俺は、無数の原稿用紙を宙にばらまき、術式を使う。

「我が名は八神蒼佑!百の物語を紡ぐ者也!」

 原稿用紙は金色の鎖となり、怪物の身体を縛り付ける。封印ではなく拘束に重点を置いた術だ。少なくとも、さっきのように簡単に破られる事は無い筈だ。
「先生!お願いします!」
「任せろ!」
 先生の足元には、先生を中心に置き、何かの文で描かれた巨大な光の五芒星が存在している。俺は化物の身体から離れ、先生の技の邪魔にならないようにする。
 先生の術式は儀式だ。大量の時間と霊力を消耗する代わり、自身が認識している任意の存在に、自分が思い描く現象を作り出す事ができる。先生の足元の五芒星は一つの点に収束し、先生の掌に集まる。先生は勢い良く跳び上がり、化物の頭部に、その光の玉をぶつける。
「人の手によって作り出されし、不完全な存在よ!我が力を以て、消滅せん!」

「我が名は岩戸咲良!真実を探求する物也!」

 化物の身体は即座に光の粒子となり、宙へ舞う。しかしその中で、たった一つ残った肉片があった。神様っは俺のポケットから、この場に居る全ての人間に、この上無く簡単な指示を出す。
「アレがデカブツの本体で、唯一の神の部分だ!」
 再生はしていない。再生はガワの力だけだったようだ。これなら行ける。
「会長!慎太郎さん!」
「分かっとるわい!」「人使いが荒い後輩じゃ!」
 会長と慎太郎さんは、霊力で自身の身体を強化して、デカブツの本体に向かって跳ぶ。そして二人は、空中で刀を構え、そのまま本体に向かって、刀を振るう。肉塊は黄金の霊力の粒子となって消え去り、二度とその姿が現れる事は無かった。
 俺は取り敢えず、先生の方へ着地した。あんな大技を放ったのだから、先生も相当消耗している筈だ。確かめなければ。
「先生、大丈夫ですか?」
「ああ。でも大分疲れた。正直、今直ぐにでもフカフカのベッドで眠りたいよ」
 俺は足元が覚束ない先生の身体を支える。そうしたまま動けないでいると、会長と慎太郎さん、修司君が走って来ていた。
「会長、慎太郎さん、あのデカブツは?」
「本体を潰した。もう再生はせんじゃろう」
「久々に手応えのある敵じゃったな」
「おいおい岩戸、大丈夫かよ」
「疲れた……」
 兎に角、今は安心して良いだろう。あの怪物を殺せたのだ。ほんの少しだけ休んでも、誰も起こる事は無いだろう。

 この神隠しは、少しずつ崩壊を始めた。
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