怪しい二人 夢見る文豪と文学少女

暇神

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#7 人類保護連盟

#7ー27 式神契約

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 契約とは、神秘における重要な要素の一つであり、相手の行動を制限したり、自分に有利な関係を作るのによく使われる。
 そしてその中の一つが『式神契約』であり、自身が召喚した存在、または妖怪や文字通り神と契約を結ぶ事で、結んだ相手との繋がりが強くなり、それらの力を行使する事ができるようになる。
 リスクはある。相手と自分の力の差によっては、自身に多大な負担が掛かる事もあるそうだ。複数の式神を従える神秘学者程、自身は動こうとしないのは、それが原因らしい。
「俺式神契約の手順とか知らないぞ?」
「そこは大丈夫。僕は知ってるから」
 そう言って神様は、近くにあった適当な裏紙に、鉛筆で文字を書き始めた。冷静に見ると、人形が鉛筆を持って紙に文字を書いてるこの光景って、結構ファンシーなんじゃないか?ファンタジーなのは今更だけど。
「これが、式神契約の陣。ここにそれぞれが持つ力を流す事で、式神契約が始まるよ」
「お互いに掛かる負担は?」
「無いと思うよ。僕は神だけど、今は権能も使えないし、何より霊力とか神通力の総量が少ないから」
「分かった。じゃあやるか」
 俺と神様は、紙に書かれた陣に手を当て、霊力を流し始める。陣は淡く光を放ち、俺と神様の間に、細い光の糸を作り出す。
「この契約の主導権はお兄ちゃんにあるよ。僕に名前を頂戴」
「名前か……」
 名前。呼び易くて覚え易い、それでいて誰かと呼び名が被らない名前……そうだ、一個あったな。
「じゃあ、お前の名前は今から英祐えいすけだ」
 俺がその名前を口にした瞬間、陣が放つ光は微かに強くなり、俺と英祐の間にある糸が、より確かな物となった。どうやら、契約する者同士を、陣がよりはっきりと認識したらしい。
「良い名前だね」
「俺の弟の名前なんだ」
「そりゃ良いや」
 式神契約の儀式を終えるには、事前に英祐が言っていた、呪文を唱える必要があるそうだ。俺達は互いに目を合わせ、タイミングを合わせて呪文を唱え始める。
「「我等人と人ならざる者なれど、其処に在るは人を超えた繋がり也。此処に契約を結び、我等二位一体の存在と成らん」」

「「我等ここに式神の契約を結ばん」」

 その瞬間、陣の光は一層強い物となり、俺達の体を包む。それが晴れた時、俺は神様と自分の間にある、確かな繋がりを感じた。
「契約は結べたって事で良いかな?」
「うん。お互いにこれといったデメリットも無い、極めて理想的な形でね」
 俺達は契約が終わった後、色々試すのは明日にして、今日は早く寝て英気を養おうという事になった。俺は布団に潜り込み、直ぐに眠りに就いた。

 その日の悪夢は、いつもよりかはマシだった。

 翌日。俺と英祐はとある事を調べる為、久し振りに義明君の所を訪ねた。義明君の実家の渡辺家は、平安より続く由緒ある家柄だそうなので、調べ物をする時には、協会よりも便利なのだ。
 義明君には事前に連絡を入れていた。どうやら色々用意して待ってくれているらしいので、待たせない為にも、早めに事務所を出る事にした。
「式神になったと言っても、直接霊力量が増えたりとかは無いんだな」
「そりゃあね。式神の最大のメリットは、自分の霊力を消費せずに術を使える事なんだから」
 渡辺家に着いた俺達は、早速呼び鈴を鳴らした。すると直ぐに、義明君が俺達を出迎えてくれた。
「お久し振りです師匠!」
「久し振り。悪いな。少ない休暇に押し掛けて」
「いえいえ!師匠の頼みでしたら問題ありません!」
 相変わらず元気な子だ。俺は早速屋敷に入り、中の防犯体制を見た。春日部家よりもしっかりしてる。いくつも結界が張られている。この中なら、並の退魔師は普段の五分の一の力も出せないだろうな。おお怖い怖い。
「最近はどう?上手くやれてるか?」
「そうですね。時々浩太さんに手合わせしてもらってるんです。毎回ボコボコにされてますけど」
「そりゃそうだろうな。浩太と殴り合って勝てる退魔師なんて、協会の中じゃ片手で数え切れる」
 だが、強くなってはいるようだ。見た感じ、前よりも身体に筋肉がある。恐らく、浩太との戦闘で自然に鍛えられたんだろう。良いな。俺は筋肉とか付かないしな。細すぎると思うんだ俺。
「ここが資料室です。家の人間には言っておきますので、好きに見てってください」
「分かった。ありがとうな」
 義明君は俺を資料室の前まで案内した後、廊下を歩いてどこかに行ってしまった。もう義明君は、特別行動班でもない、普通の白金級退魔師だ。色々やる事があるんだろう。先生にも見習ってほしいよ。
 気持ちを切り替えよう。問題はこの中に、神に関する記述がどれだけあるかだ。それにその中に、俺が見たい物が無い可能性もあるのだ。むしろその確率の方が高い。
「どうやって探すの?」
「ここで術式使う訳にも行かんし、二人で地道に探すか」
「げえ。面倒臭い」
「俺だって同じ感想だよ。でもそれしか無いんだ。我慢してくれ」
 俺達は壁中に敷き詰められた本の背表紙を、一個一個読んでいく。神に関する記述がどれだけあるだろうか。無かったら無かったで、次は岩戸家の方に行くだけだけど。
 かなり時間が過ぎた頃、英祐が「この辺りじゃない?」と言って、俺を呼んだ。
「ほらこの辺り」
「そうだな。後は片っ端から読んで行くか」
「またか~」
「我慢だ我慢。先端技術に頼りたい気持ちを抑えるんだ」
 その本棚の本を読み始めた俺達だったが、知りたい事は書いていなかった。神になる方法、または条件が書かれている本は、一冊も無かったのだ。俺達は脱力して、床に座った。
「だ~クソ。一冊も無いのかよ」
「皆、今までに存在が確認された神々の名称、特徴しか書いてないね。どうする?」
「もっかい読む……気力も無いか」
「そうだね。肉体が疲れる事は僕らには無いけど、精神面はね」
 一日中読みたい訳でもない本を、読みたい本を探す為だけに読み続けるのがこんなに苦痛だとは思いもしなかった。体は問題無く動くのに、動かしたくない。変な気分だ。
 ただまあ、何も無かった訳でもない。少なくとも、連盟の本拠地に居たあの神は、あの時に至るまで確認されていなかったという事は分かった。やはりあの神は、連盟が独自に発見した、または生み出した神らしい。
 そして一つ、合点がいった事がある。神という存在の、三つの定義の中には、『神を殺す事ができる』という物があるそうだ。あの無数の神殺しは、恐らく『神を殺す』という神々の特性を研究する為のサンプルだったのだろう。
 そしてアレらは、今協会がデータベースと照合し、過去に発見された事のある物かを確認しているそうだが、果たして何が出て来るのだろう。
 俺達は『次はどうしよう』と悩みながら、義明君に見送られて、渡辺家を出た。
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