怪しい二人 夢見る文豪と文学少女

暇神

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#9 百鬼夜行

#9-18 全世界共通の敵

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 神隠しが不安定になって来ている。その理由は明白だが、同時に信じ難い物だった。俺の目の前に居るギエルの首は、一本の刀で貫かれているからだ。
「達也……お主何を?」
「金剛級退魔師の特権……忘れた訳ではあるまい」
 会長はその刀を引き抜き、刃に付いた血を落とす。ギエルの傷は再生していない。詰まりあの刀には、神を殺す能力が備わっているという事だ。
「なあ英祐。何が起こってるか、分かるか?」
「分からない。けど分かるのは、あの刀は神殺しじゃないって事だよ」
 あの刀が神殺しでないなら、この状況はおかしい。ギエルに対して有効な攻撃手段があるのなら、何故さっき使わなかった?そもそも、何故ギエルに対して有効な攻撃手段を持っている?今、その手段を使った目的は?
 いや待て。攻撃手段云々の話はさておいて、会長の行動についての説明なら、多少考えが作れた。俺は臨戦態勢に入りながら、会長に言葉を投げ掛ける。
「会長。アンタもしかして、『強い敵が欲しかった』なんて言わないよな?」
 俺の言葉に、会長は小さく笑いを零しながら、「流石は探偵。洞察力という物かのう?」と言った。答えは、それだけで十分だ。
「どれ程前から気付いておったんじゃ?」
「この考え自体は前からあった。アンタ、戦ってる最中ずっと笑ってただろ」
 修司君と同じだ。会長は戦う事自体を楽しんでいる。だけど修司君と違う所もある。ギエルと同じで、会長にとっての戦闘はあくまで手段でしかない。戦いを楽しむ割には前線に出ない。明らかにおかしいという程でもないが、十分な違和感だ。
「アンタは今、そこで喉を貫かれてる間抜けという、現状最大の強敵を失った。そして今後、コイツを超える敵が現れる事は、少なくともアンタが生きている間は無いだろう。だが、それはアンタが『人間であり続ける場合』だ」
 寿命。それは生命全てに科せられたタイムリミット。例え最強の退魔師と謳われようと、それから逃れる術は無い。
 だが、それから逃れられる存在があるとしたら、それは間違い無く神々だ。そして会長は、神になるという馬鹿げた、実現性など皆無だった筈の手段を取った男と、一度拳を交わしてしまった。全く面倒な事をしてくれる奴だ。

「アンタ、神になるつもりだな?」


「予言って何よ!」
 テントの中で、私は康生に問い掛ける。康生は青い顔をしながら、それに答える。
「連盟が協会に対して、イニシアチブを取れていた要因だ。原理は知らん。だがギエルは、それでいくつもの事を予言し、的中させた。今の所、的中率は脅威の百パーセント」
 そいつは物騒。ギエルの術式は、動きを止めるか何かの術式だった筈。術式は一人に一つの筈だけど……いや問題はそこじゃない。予言の中にあった、『悪しき者』の正体よね。
「ハッキリした事は言えないの!?」
「ギエル自身、そこはどうにもならないらしい。不明瞭な文章でしか予言はできないとか」
 悪しき者……順当に考えるなら、百鬼夜行で出現する悪霊や怪異の数々かしら。確かに金剛級相当や白金級相当の奴等は多いけど、それだけでここまで変な動きをするとは思えない。
「浩太さん!資料持って来ました!」
「ご苦労様!」
 悪霊が強力になる過程は分からない。一旦この可能性は除外して、怪異に関して調べよう。怪異も妖怪も、百鬼夜行が襲来している間は強力になるけど、怪異が強力になる条件は、やはり知名度。もし、今まで観測されていない都市伝説で、且つ知名度という点において右に出ない物があれば……
「だが、手当たり次第では駄目だ」
「分かってるわよ!今はこれしか方法が……」
 出現記録が無い怪異、またその元になった都市伝説は、やはり一朝一夕では見つからない。それでもどうにかして見つけなければ。ギエルの目的、その全貌を見るのに、必ず必要になる事。
「やはり、協会のデータベースだけ見ていては……」
「そうね。兎に角知ってる、それも有名な都市伝説を挙げていきましょう」
 しかし、有名な都市伝説は、その全てが怪異として出現している筈。『むらさきかがみ』に『口裂け女』、『テケテケ』……駄目だ。全部怪異として確認されている。
「やはり悪霊の線は?」
「悪霊は元が生命である以上、その強さも一生命が持ち得る物に限定される筈……考えたくないわね」
 しかし、ここまで思い当たらないと、本当にその線を考えるしか無いわね。私達がその線について真剣に考え始めたのは、テントの中が資料のタワーに占拠された頃だった。
「悪霊なら何かしら。日本最大怨霊は既に祓われてるし……」
「現代でそのレベルで怨念を持っていそうな故人……ふむ……」
 そもそも、平安とかあの辺りは、都を巨大で協力な結界が覆って、日々呪詛やら何やらが飛び交っていたからこそ、怨霊だとか妖怪だとかの力が強かったとされている。あの時代の怨霊と同レベルの強さとか、現代で作れる訳が無い。
「理屈としては不可能なのか……参ったな」
「可能は可能だけど、限り無く不可能に近いわ」
 その時、急にテントが開き、一人の呪術師がテントの中に入って来た。彼女はテントの中の状態に驚きながら、報告を始めた。
「あの、対悪霊の大規模呪術が発動可能ですが……いかがしますか?術の状態を維持できる制限時間があるんですけど……」
 ああ。そう言えば呪術班が何か言ってたっけ。だけど今はそんな事を考えている場合じゃない。ここは適当な白金級の人間に任せ……
 いや待て。時間?時間か。そうか。怪異は言霊の塊。が故に、出現する時間帯も、都市伝説の通りになる。だからこそ、退魔師はそこを狙って行動する。

 だがもしも、その『時間帯』が、年単位で指定されていたとしたら?

『記録
 二〇二ニ年 十二月二十一日 百鬼夜行

 神秘研究協会会長 西園寺達也

 十六時五十八分
 協会の退魔師複数名に対し、明確な敵意を向ける。以降、西園寺達也を永久に協会名簿から削除する。
 十六時五十九分
 正体不明の高エネルギー体が、西園寺達也と接触。後、融合。
 十七時零分
 西園寺達也の肉体が変化し始める。以降、西園寺達也を超金剛級神格所持怪異』

『『ノストラダムスの大予言』と呼称する。』
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