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#10 ノストラダムスの大予言
#10-1 破滅の大魔王
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何が起こった?理解できない。理解のしようが無い。だがそれでも、何かが起こっているのだけは確かだ。突然、霊力が魔力か、はたまた神通力か何か分からないが、兎に角強大な力の塊が、西園寺達也の体の中に入って行った。と同時に、ギエルの神隠しが破壊された。この全ての出来事が、瞬き一つの間に行われた。
信じられない。それはこの場に居る全員が共有した考えだ。そしてその一瞬を逃す程、最強の退魔師は甘くなかった。慎太郎さんと幸子さんの四肢は瞬時に切り落とされ、二人の胴体は、ただ地面に転がるだけになった。
「なっ……!」
「よそ見をしている場合じゃなかろう?」
その声が聞こえると同時に、俺は防御を展開しようとしたが、間に合わなかった。俺は右腕を切り落とされ、英祐も人形の胴体を真っ二つにされた。
いや、驚くべきはそこじゃない。西園寺達也の声が、肉体が、若返っている。信じられない!なんだあの力は!神とはここまで理不尽な存在だったのか!英祐の『遊び』では計り知れなかった、その力の奥底。それすらもまだ見えない!
「ぐっ……があぁ……」
「ふむ。少々、強過ぎた……かの?」
出鱈目だ。この男は、いやこの化物は、まだその全力の半分も出してはいないだろう。ああどうする?先程のギエルに叩き込んだ一撃で、俺が神に対して使える手札は、一枚しか残っていない。心臓を直に潰せば殺せるだろうが、そんな好きは、少なくとも今のコイツには無い。
慎太郎さんが反応もできずにやられた。今のコイツを倒せる退魔師なんて居るのか?まだ人間だった頃でも協会の頂点に立っていた男が、今は再生に加え、無限とも呼べる量の霊力もある。そして恐らく、肉体はその全盛まで戻っている。経験と力を持ち、慢心も油断もしない。この化物に勝てる者なんて……
いや勝つしか無いだろうが!ここで食い止めなければ!例え俺が殺せずとも、ここに集まって来るであろう退魔師達、その内の誰かの刃がコイツに届くまでの時間を稼げ!ここで俺がすべきは、コイツを足止めする事だ!
「ほう。まだ立つか」
「ああ。これが終わったら、先生と旅行に行く予定があるんでな」
左足が切り落とされる。俺は立っていられなくなり、地面に伏せる。化物は俺の頭を掴むと、無理矢理に俺に顔を上げさせ、自分の目と俺の目を合わせる。
「八神君。儂は君に期待しておった。初めて会った時からのう」
「へえ……そいつぁ光栄だ」
「初めて君を見た時、儂は確信した。『コイツは将来、人の枠には収まらない怪物になる』とな。だがどうだ現実は!君は岩戸の小娘に誑かされ、本来辿り着ける筈の高みから目をそらしておる!」
馬鹿な事を言ってくれる。ああでも、そうかも知れない。こんな時になっても、俺はこの化物に勝つイメージを諦めていない。これを怪物と言わず何と呼ぼうか。
それに、初めて隙を見せてくれた。俺は霊力を込める間も無く、空いていた左手を、西園寺達也の腹に抉り込む。嫌な感触がした後に、西園寺達也は俺を投げ飛ばした。近くの木々を薙ぎ倒し、ようやく止まった俺の体は、崖に叩き付けられている。
「儂の勘はよく当たるんだよ。君、まだ手札は残っておるだろう?恐らく、この場に居る中で唯一、儂を殺す手段を持っておるのは、君だ。それに、儂には君を殺す理由がある」
最強の退魔師、いや、最強の怪異は、その腰に納められていた刀を抜き、天高くそれを振り上げる。恐らく術式で強化したのだろう。その薄い鉄の板は、まるで自身が発光体であるかのような光を放ち、自身の殺傷能力を誇示する。
「君には失望した」
その刀は振り下ろされた。だが、その刃が俺に届く事は無かった。その理由は明白だ。俺の目の前に立っている人の背を見れば、の話だが。
「八神君。よく時間を稼いでくれたね」
その人は空を閉じ込めたような青色の目を輝かせ、俺の方を振り向く。その表情は、この世の何より頼もしい感情に彩られていた。
「少し、良い男になったかな?」
「冗談は止めてくださいよ」
協会の最高戦力。その一角。岩戸が誇る天才。岩戸咲良が、俺の目の前に立っている。
「本気か!?ノストラダムスの大予言は二千年の筈だろ!?」
「あれは正確ではなかった可能性がある!有名な話は確かにそうだけど、アレはあくまで、元になった文章を解読した結果、『二千年だ』と言った奴が居たからで、ソイツが間違っていた可能性だってある!」
て言うか、アレ自体当時は騒ぎになったらしい。あれだけ広まった都市伝説が何も無しでは、不安がるのも自然な事だろう。しかし、時の流れと共に騒ぎも下火になり、調査も碌に行われなくなった。それが今になって……
ええい。ここで悩んでいても仕方が無い。もし仮に、ノストラダムスの大予言が現実になるとして、何故協会を潰す必要がある?ノストラダムスの大予言に、生身の人間が関わる事なんて有り得るのか?
「破滅の大魔王……何だと思う?」
「順当に考えれば悪魔だろうな。魔王だし。ただ、どのレベルの奴が来るのか……」
「もう神の域に達してると思うわ。そうでなきゃ、連盟はわざわざ、出来損ないの神なんか創らな……」
待て。神。神か。そうか神なら、地上に居るのはおかしい。神格を持った妖怪ならまだしも、本物の神が地上に立ったなんて事例は、一部の特殊な地域を除けば、それこそ紀元前とかにしか無かった筈だ。そんなのが地上に、生身で降り立つなんて可能なのか?
神は地上から姿を消している。現代の神々は、自分が祀られている神社の中、特殊な空間に展開されている神域にのみ存在している。その理由は明らかになっていないが、確かなのは、現代の空間に、直に神が存在する事は不可能だという事だ。
だがもし、神が自身の精神を受け止める『器』として、生身の人間を選べるとしたら……その限りではないだろう。
「ねえ。もし君が神様で、現代の空間に存在する為に、生きている誰かを器に選ぶとしたら、誰を選ぶ?」
「え?そうだな……西園寺達也か神宮寺慎太郎……後は金剛級退魔師か金剛級相当の魔術師の内の誰かだな」
やはり、ギエルの目的は協会の破壊ではなく、破滅の大魔王が地上に存在し得る可能性を潰す事だ。詰まり、今この瞬間にも……
そこから、『西園寺達也が、怪異『ノストラダムスの大予言』として地上に降り立った』という報告を聞くまでは、精々が十分程度しか空いていなかったと思う。
信じられない。それはこの場に居る全員が共有した考えだ。そしてその一瞬を逃す程、最強の退魔師は甘くなかった。慎太郎さんと幸子さんの四肢は瞬時に切り落とされ、二人の胴体は、ただ地面に転がるだけになった。
「なっ……!」
「よそ見をしている場合じゃなかろう?」
その声が聞こえると同時に、俺は防御を展開しようとしたが、間に合わなかった。俺は右腕を切り落とされ、英祐も人形の胴体を真っ二つにされた。
いや、驚くべきはそこじゃない。西園寺達也の声が、肉体が、若返っている。信じられない!なんだあの力は!神とはここまで理不尽な存在だったのか!英祐の『遊び』では計り知れなかった、その力の奥底。それすらもまだ見えない!
「ぐっ……があぁ……」
「ふむ。少々、強過ぎた……かの?」
出鱈目だ。この男は、いやこの化物は、まだその全力の半分も出してはいないだろう。ああどうする?先程のギエルに叩き込んだ一撃で、俺が神に対して使える手札は、一枚しか残っていない。心臓を直に潰せば殺せるだろうが、そんな好きは、少なくとも今のコイツには無い。
慎太郎さんが反応もできずにやられた。今のコイツを倒せる退魔師なんて居るのか?まだ人間だった頃でも協会の頂点に立っていた男が、今は再生に加え、無限とも呼べる量の霊力もある。そして恐らく、肉体はその全盛まで戻っている。経験と力を持ち、慢心も油断もしない。この化物に勝てる者なんて……
いや勝つしか無いだろうが!ここで食い止めなければ!例え俺が殺せずとも、ここに集まって来るであろう退魔師達、その内の誰かの刃がコイツに届くまでの時間を稼げ!ここで俺がすべきは、コイツを足止めする事だ!
「ほう。まだ立つか」
「ああ。これが終わったら、先生と旅行に行く予定があるんでな」
左足が切り落とされる。俺は立っていられなくなり、地面に伏せる。化物は俺の頭を掴むと、無理矢理に俺に顔を上げさせ、自分の目と俺の目を合わせる。
「八神君。儂は君に期待しておった。初めて会った時からのう」
「へえ……そいつぁ光栄だ」
「初めて君を見た時、儂は確信した。『コイツは将来、人の枠には収まらない怪物になる』とな。だがどうだ現実は!君は岩戸の小娘に誑かされ、本来辿り着ける筈の高みから目をそらしておる!」
馬鹿な事を言ってくれる。ああでも、そうかも知れない。こんな時になっても、俺はこの化物に勝つイメージを諦めていない。これを怪物と言わず何と呼ぼうか。
それに、初めて隙を見せてくれた。俺は霊力を込める間も無く、空いていた左手を、西園寺達也の腹に抉り込む。嫌な感触がした後に、西園寺達也は俺を投げ飛ばした。近くの木々を薙ぎ倒し、ようやく止まった俺の体は、崖に叩き付けられている。
「儂の勘はよく当たるんだよ。君、まだ手札は残っておるだろう?恐らく、この場に居る中で唯一、儂を殺す手段を持っておるのは、君だ。それに、儂には君を殺す理由がある」
最強の退魔師、いや、最強の怪異は、その腰に納められていた刀を抜き、天高くそれを振り上げる。恐らく術式で強化したのだろう。その薄い鉄の板は、まるで自身が発光体であるかのような光を放ち、自身の殺傷能力を誇示する。
「君には失望した」
その刀は振り下ろされた。だが、その刃が俺に届く事は無かった。その理由は明白だ。俺の目の前に立っている人の背を見れば、の話だが。
「八神君。よく時間を稼いでくれたね」
その人は空を閉じ込めたような青色の目を輝かせ、俺の方を振り向く。その表情は、この世の何より頼もしい感情に彩られていた。
「少し、良い男になったかな?」
「冗談は止めてくださいよ」
協会の最高戦力。その一角。岩戸が誇る天才。岩戸咲良が、俺の目の前に立っている。
「本気か!?ノストラダムスの大予言は二千年の筈だろ!?」
「あれは正確ではなかった可能性がある!有名な話は確かにそうだけど、アレはあくまで、元になった文章を解読した結果、『二千年だ』と言った奴が居たからで、ソイツが間違っていた可能性だってある!」
て言うか、アレ自体当時は騒ぎになったらしい。あれだけ広まった都市伝説が何も無しでは、不安がるのも自然な事だろう。しかし、時の流れと共に騒ぎも下火になり、調査も碌に行われなくなった。それが今になって……
ええい。ここで悩んでいても仕方が無い。もし仮に、ノストラダムスの大予言が現実になるとして、何故協会を潰す必要がある?ノストラダムスの大予言に、生身の人間が関わる事なんて有り得るのか?
「破滅の大魔王……何だと思う?」
「順当に考えれば悪魔だろうな。魔王だし。ただ、どのレベルの奴が来るのか……」
「もう神の域に達してると思うわ。そうでなきゃ、連盟はわざわざ、出来損ないの神なんか創らな……」
待て。神。神か。そうか神なら、地上に居るのはおかしい。神格を持った妖怪ならまだしも、本物の神が地上に立ったなんて事例は、一部の特殊な地域を除けば、それこそ紀元前とかにしか無かった筈だ。そんなのが地上に、生身で降り立つなんて可能なのか?
神は地上から姿を消している。現代の神々は、自分が祀られている神社の中、特殊な空間に展開されている神域にのみ存在している。その理由は明らかになっていないが、確かなのは、現代の空間に、直に神が存在する事は不可能だという事だ。
だがもし、神が自身の精神を受け止める『器』として、生身の人間を選べるとしたら……その限りではないだろう。
「ねえ。もし君が神様で、現代の空間に存在する為に、生きている誰かを器に選ぶとしたら、誰を選ぶ?」
「え?そうだな……西園寺達也か神宮寺慎太郎……後は金剛級退魔師か金剛級相当の魔術師の内の誰かだな」
やはり、ギエルの目的は協会の破壊ではなく、破滅の大魔王が地上に存在し得る可能性を潰す事だ。詰まり、今この瞬間にも……
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※こちらの作品は、小説家になろう、カクヨム、アルファポリスで同時に掲載しています。
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