剣の母は十一歳。求む英傑。うちの子(剣)いりませんか?ただいまお相手募集中です!

月芝

文字の大きさ
5 / 81

005 禍獣

しおりを挟む
 
 色白のムチっとした女性の下半身。
 っぽい形をしている白い根菜モンゲエ。
 先っぽの二股が艶めかしく絡み合い、足を組んでいるように見えるのが良質だとされている。
 主に輪切りにして煮て食べるが、みずみずしい身をすりおろすと辛味が強まり、薬味としても重宝する。焼き魚との相性がすこぶるよろしい。絞り汁は二日酔いとお通じに効くとされている。

 一面のモンゲエ畑。
 青々とした葉っぱの部分をつかみ、腰にチカラを込めて引っこ抜く。「うんとこどっこいしょ」
 とたんに響くのは「もんげー!」という絶叫。
 この野菜、元は植物系の禍獣(かじゅう)だったのを食用に品種改良したモノ。
 ちなみに禍獣とは、大地の気を受けて自然発生する獣や植物の亜種のこと。
 カラダが大型化したり、知能が発達したり、頭に角が生えたり、特殊能力に目覚めたり、体内に魔晶石を宿したり……。
 人間や地域の環境と共生しているものから、バリバリに敵対しているものまで、強さも性質もじつにさまざま。
 なおモンゲエは、あえて人間のそばに身を置くことで、厳しい生存競争を生き残ったと言われている。
 事実、各地にて広く栽培されており、土地や気候にて多様な変化をみせている。
 それすなわち適応力の高さを意味しており、確実に数を増やし子孫を残しているので、種としての優良性をも示している。 
 たぶん国が滅ぼうが人間が死に絶えようが、モンゲエはぬくぬく生き延びることであろう。

「ムチムチ加減がいいほどに、美味しいって言われてるんだよ」

 収穫ほやほや、まだジタバタしているモンゲエ。
 これを掲げながらわたしが教えると、ミヤビは「ヘー」と感心。

「樽に漬け込んで発酵させたら、またちがった風になるんだ。コリコリしてクセになる味わい。でもシワシワのバアちゃんの垂れ乳みたいになるのが、ちょっとねえ」

 モンゲエが動きを止めたところで、背負いカゴの中に放り込む。
 今夜のオカズはモンゲエの煮物。母がそう言ったので、わたしはお手伝い中。

「晩御飯の分はこれでよしっと。でもついでにもう二本ばかし採っておこうかな。そろそろ甘酢漬けが無くなりそうなんだよねえ」

 モンゲエを薄く切ったものを、甘酸っぱい汁に漬けたモノ。
 お茶請けとして人気にて、妹カノンの大好物でもある。
 カノンがちょいちょい摘まみ食いをするので、こまめに補充をしておかないと、すぐに壺が空になってしまうのだ。
 薄く切ると聞いて、ミヤビが「ぜひともわたくしにお任せて下さい」と俄然やる気を見せた。
 勇者のつるぎミヤビ。
 自我を持ち自在に飛び回る白銀の大剣。切れ味は伝説級にて、丸太どころか岩をも一刀両断。
 しかし牧歌的な里の暮らしにおいて、実力が活かされる場面はかなり限られる。
 家の前の芝刈りとか、薪割りとか。布地の裁断とか。
 わたしにしたって、ブイブイ乗り回すか、彼女が変じた園芸用のスコップを使う機会の方が断然多い。包丁やナイフとかに変身できたら、ちがったのだろうけれども、小さなスコップ以外にはムリ。いかに勇者のつるぎとて、なんでもかんでもとはいかない。
 米や麦の収穫期になればきっと大活躍してくれるのだろうが、それはまだ先のこと。
 日常生活において、いまいち必要とされていない。
 このことに忸怩たる思いを抱いていたミヤビ。
 我が子がお手伝いにやる気を出しているのならば、温かい目で見守るのが剣の母の役目。
 ゆえにモンゲエの薄切りはミヤビにお願いすることにした。

  ◇

 きれいに洗ってドロを落としたモンゲエ。
 白くツヤツヤ。滴る雫がちょっと色っぽい。
 ふつうはまな板にてトントン切るのだが、まな板のみならず下の調理台まで真っ二つになりそうな予感がしたので、ここは用心し屋外にて吊るし切りを選択。
 洗濯用の物干しに、収穫したモンゲエをロープでぶら下げ、ミヤビちゃん、いざ参る!
 白刃がきらめき、しゃらんとひとふり。
 たったそれだけでモンゲエは極薄の束となる。
 神速の剣技、炸裂!
 白い根菜を切るのに本気を出す勇者のつるぎ。
 恐るべき切れ味。見事なまでにツルツルの断面。向こう側が透けるほどの薄さ。
 なんてこったい。里長のモゾさんの頭の不毛地帯よりも薄く、あまりの儚さに感動すら覚えるほど。
 かくしてミヤビの張りきりもあって、極薄の甘酢漬けを仕込むことに成功するも、味やいかに。
 後日、続報をまて!


しおりを挟む
感想 71

あなたにおすすめの小説

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

お兄様、冷血貴公子じゃなかったんですか?~7歳から始める第二の聖女人生~

みつまめ つぼみ
ファンタジー
 17歳で偽りの聖女として処刑された記憶を持つ7歳の女の子が、今度こそ世界を救うためにエルメーテ公爵家に引き取られて人生をやり直します。  記憶では冷血貴公子と呼ばれていた公爵令息は、義妹である主人公一筋。  そんな義兄に戸惑いながらも甘える日々。 「お兄様? シスコンもほどほどにしてくださいね?」  恋愛ポンコツと冷血貴公子の、コミカルでシリアスな救世物語開幕!

【長編・完結】私、12歳で死んだ。赤ちゃん還り?水魔法で救済じゃなくて、給水しますよー。

BBやっこ
ファンタジー
死因の毒殺は、意外とは言い切れない。だって貴族の後継者扱いだったから。けど、私はこの家の子ではないかもしれない。そこをつけいられて、親族と名乗る人達に好き勝手されていた。 辺境の地で魔物からの脅威に領地を守りながら、過ごした12年間。その生が終わった筈だったけど…雨。その日に辺境伯が連れて来た赤ん坊。「セリュートとでも名付けておけ」暫定後継者になった瞬間にいた、私は赤ちゃん?? 私が、もう一度自分の人生を歩み始める物語。給水係と呼ばれる水魔法でお悩み解決?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

召喚とか聖女とか、どうでもいいけど人の都合考えたことある?

浅海 景
恋愛
水谷 瑛莉桂(みずたに えりか)の目標は堅実な人生を送ること。その一歩となる社会人生活を踏み出した途端に異世界に召喚されてしまう。召喚成功に湧く周囲をよそに瑛莉桂は思った。 「聖女とか絶対ブラックだろう!断固拒否させてもらうから!」 ナルシストな王太子や欲深い神官長、腹黒騎士などを相手に主人公が幸せを勝ち取るため奮闘する物語です。

【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ

O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。 それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。 ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。 彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。 剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。 そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……

処理中です...