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077 必殺の右・絶技
しおりを挟むほんのわずかに腰をひねり、右足を持ちあげる。
たったそれだけの動作で、股間を守る防壁を形成。
破られた幻の左・改。
一度見た技は二度通用しないとでも言うのか。これが神聖ユモ国の武仙の名を冠する者のチカラなのか。
勝ち誇るキノコ人間フェンホアが顔を歪めいやらしい笑みを浮かべる。そのひょうしに額から新しいキノコがにょきっと一本生えた。
でもまだだ! まだ終わらないよっ!
弾力ある筋肉の鎧におおわれた太もも。そこから拳を撤退させたわたしは、フェンホアの左足首に手をかけると、これを軸にしてぐりんと高速旋回。
すっかり油断していたフェンホアの背後をとる。
そこから天へと向けてくり出すは、右の手刀。
持ち上げていた右足を降ろしたことによって、無防備な姿をさらすことになったフェンホアの門。
けれどもこちらの意図に気がついたヤツは余裕顔。
「ムダだ。忘れたのかね。わたしには『硬化』の才芽があることを」
そんなことは百も承知、フェンホアに言われるまでもない。
だが、そんなの知ったこっちゃねぇーっ!
なぜなら才芽はあくまで身に宿った可能性のひとつにすぎないからだ。
たゆまぬ努力が、ひたむきな情熱が、あくなき挑戦が……。
ときには天賦の才を凌駕し大輪の華を咲かせることを、わたしは知っている。数多の偉大な先人たちが、いまの世に生きる多くの者たちが、それを実践し証明している。
だったらわたしは、わたしを導きここまで育ててくれたポポの里のみんなを、愛すべき辺境の大地を信じる!
固く閉じられた門。
ただでさえ頑強なところに加えてインチキ臭い硬化処理が施され、それはまさに難攻不落の様相をていする。
これをこじ開けんとちんまい小娘が、たった一人で立ち向かう。
敵はあまりにも強大無比。
対するこちらの武器はとても貧弱に見えた。
けれどもわたしは怯まない。
無垢な魂に、短い手足が生えたような愛くるしい幼女時代。
祖父の「道具がなければ手で掘れ」という言葉を信じて、雨の日も風の日も雪の日も大地が凍える日も、一心不乱に畑を素手で掘り続けた。
見かねた両親より、自分専用の赤いスコップを与えられたときは、本当にうれしかった。あんまりにもうれしかったもので、なんだか使うのがもったいなくって、けっこう長いことそのまま大事にとっておいて、あいかわらず手で掘っていたっけか。
残念ながら、あの子は嫉妬に狂った白銀のスコップの手により逝ってしまったけれども。
それらもろもろ、胸の奥にある万感の思いをも、まるっと己の右手に込める。
ミヤビに乗ってビューンとしているうちに鍛えられた体幹と下半身。
その恩恵にて幻の左が飛躍的に進化したように、なんとなく右の手刀もそれなりに強化されている自覚はあった。ただ、こうして実践で試すのは初めてのこと。
それはわたしの想像を遥かに超えた変貌を遂げていた。
かわいらしい右の手刀が、園芸用のスコップとなった。
かと思えば、すぐに土木作業用のシャベルとなり、さらには井戸なんかを掘るとき用のより大きく凶悪なモノとなる。それでも成長は止まらない。さらにさらにぐんぐん大きくなっていく。
ついには城門や城壁を破壊し突破する、大型攻城兵器「破城槌(はじょうつい)」となった。
ミシリという不穏な音がした。
門にヒビが入り小さな穴を穿つ。
「なっ、私の『硬化』が破られただと? そんなバカなっ!」
予想外の展開にうろたえるフェンホア。
あわてて手にした槍にてわたしを打ちすえようとするも、少々遅きに失す。
門を突破した勢いのままに、わたしは突撃。内部を情け容赦なく蹂躙した。
ここに「必殺の右・絶技」が炸裂!
あえて詳細は語るまいが、だいたい右の肘近くまでグッサリいったね。
グッサリ貫かれたひょうしに槍を手放したフェンホア。そのキノコ人間ぶりがここにきていっきに加速。緊張の糸が切れたのか、はたまた意思のチカラが限界を迎えたのか。
ポンポコポコポコ、キノコ生えまくりにて、ついに全身がキノコまみれとなる。
耐えきれなくなり彼はガクンと両の膝を屈し、ゆっくりと倒れ伏す。
「この私が、こんなところで? こんな……小娘……に……」
ウゴウゴしているキノコの人間苗床を見下ろし、わたしは言った。
「ねえ、知ってる? 真冬の辺境の土ってね、ものすごーくカチンコチンなの。それこそ鉄みたいになるんだよ」
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