3 / 106
003 かごめかごめ
しおりを挟む延々と、どこまでも続く長い廊下。
果てがない。
まるで合わせ鏡のなかのような光景だ。
――学校がおかしなことになっている!
びっくりして、わたしはすぐに教室へと引っ込む。
ピシャリと戸を閉めては、スゥハァ深呼吸をくり返す。
「もしかしたら何かの見まちがいなのかも。だからいったん落ちつこう」
で、気を鎮めてからゆっくり戸を開け、おそるおそる廊下の様子をのぞいてみれば……
おっふ、やはり見まちがいなんかじゃなかった。
廊下がとめどもなくのびている。どれだけ目を凝らしても、先がわからないほどにまで続いている。
「こんなのありえない!」
試しに自分のほっぺたをつねってみた。
――うん、イタい。
残念なことに夢という線はこれで消えた。
先ほどのナゾの声のこともある。
こうなればもう潔く認めるしかないだろう。
どうやら自分はいま、不可解な現象に巻き込まれているらしい。
さりとてここでへたり込んで、わんわん泣きじゃくるほどわたしは弱くない。車に撥ねられたのは伊達じゃないのだ。死線をひょいと乗り越え、黒歴史をも体験し、わたしはひと皮むけたのである。
というわけで……
「ふふん、廊下がダメならこっちがあるじゃない」
廊下の異変はひとまず脇へと置いておく。
教室内を横断して向かったのは外側の窓のところ。
ここは四階だ。あいにくとうちの小学校にはベランダのような外通路はない。
よって直接外へは出られないけど、助けは求められるはず。
カーテンをシャーッと勢いよくめくる。
とたんに教室内が明るくなって、わたしは勢いづく。
窓ガラス越しに外を眺めれば、ふつうに通行人や車が走っている。
――よし! この怪現象は校内限定だ。
ならばと、さっそく窓の鍵に指をかけたのだけれども……
「ふんぎぃぃぃぃ、か、硬い。なによこれ? ビクともしないんだけど」
鍵が開かない。
まるで溶接でもされたかのごとく固まっている。
「くっ、いいわよ。そっちがそのつもりなら、こっちだってもう遠慮はしないんだから!」
わたしは近くにあったイスを持ち上げては、野球のバットのようにぶん回して「えいや」
窓ガラスへとおもいきりぶつけた。
だがしかし――
「ウソでしょう……」
跳ね返されて床に転がるイス。
ガラスにはヒビひとつ入っていない。
もう一度やってみたけれど、結果は同じであった。
ガラス一枚を隔てた向こうには変わらぬ日常がある。
ダンダンと窓を叩き、わたしは懸命に助けを求めるも、誰も気づいてくれない。
いまさらながらこの状況にゾッとした。
言いようのない不安と孤独に襲われる。
たちまち意気地はしぼみ、わたしはガックリうな垂れた。
〇
「はっ!」
我に返ったとき、わたしは自分の席に座っていた。
いったいどれぐらいぼんやりしていたのだろうか?
黒板の上にある掛け時計に目をやるも、針は止まっていた。
教室の窓は開かない。
このままじっとしていたら、空知先生が助けにきてくれるかも。
いや、さすがにそれは期待できないだろう。
となれば、自分でどうにかするしかない。あの廊下へと向かうしかない。
それはわかっている、わかっているのだけれども。
「うぅ、どうしよう」
わたしはなかなか踏ん切りがつかない。
でも、そのときのことであった。
タタタタタタ……
聞こえてきたのは、廊下を小走りする音。
こっちに近づいてきたとおもったら、あっという間に教室の前を通り過ぎていく。
半開きになっている扉の隙間からチラッと見えたのは、小さな女の子の姿。たぶん二年生ぐらいだろう。
わたしは「えっ」
この不可解な現象に巻き込まれたのは、てっきり自分だけかと思い込んでいたからである。
あわてて席を立ち、「ねえ、ちょっと待って!」とわたしは廊下に飛び出た。
呼びかけに応じて女の子が立ち止まってくれた。
ゆっくりとこちらをふり返る。
白桃のようなほっぺをした、かわいらしい子だ。
でも服装がいささかおかしい。
着物姿におかっぱ頭、足は裸足にて。
まるで昔話に登場する座敷童のよう。
そんな女の子がにっこり微笑む。
「かごめかごめ、おねえちゃんはかごのとりなの。もうおそとにはでられないよ」
21
あなたにおすすめの小説
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる