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011 転がるドクロと女の幽霊
しおりを挟む二階廊下での変則だるまさんがころんだ対決。
小銭のトラップに引っかかって、まずジンさんが脱落した。当然ながら拾った百円玉も没収される。
続いて脱落したのはカクさんだが、これがまた酷かった。
カクさんってば「武士たるもの、あわてず騒がず」とか言いながら、余裕をかましてゆったりと振る舞っていたもので、ついに金次郎像に追いつかれてしまう。
で、いきなりパッカーン!
後頭部をぶん殴られた。
倒れたひょうしに全身の骨がバラバラになって、廊下中にカランコロンと散らばった。
「おのれ~、背後からとは卑怯なり~~」
文句を言いながら、カクさんのドクロは闇の向こうに転がり消えた。
わたしはこのショッキングな場面を目撃し、危うく悲鳴をあげそうになるも、どうにかガマンする。
(えぇーっ! ちょっと待ってよ。タッチってそんなに過激なの!)
なんか想像していたのとちがう。
金次郎像に追いつかれるのだけは、絶対にナシだ。
というわけでここから先は、わたしもちょっと大胆に攻めることにする。
最悪、アウトになっても殴られるよりかはマシだもの。
掛け声、五巡目。
こまめに金次郎像との距離を確認しつつ、前へ前へと。
ジンさんとカクさんが抜けた穴は……さして大きくない。
というか、あのふたり――本当に必要なのだろうか? わたしはいまさらながらに疑問を抱かずにはいられない。
でもそんな失礼なことを考えていた罰が当たったのかもしれない。
そろそろ六巡目が始まろうかというタイミングで、いきなり目の前にバサっと。
暗い天井から「べろべろばぁ~」
逆さに垂れさがってきたのは、死装束を着た濡れ髪の女の人の幽霊。
登場の仕方もさることながら、だらりとのびた舌と剥いた白目が怖すぎる。
「ぎゃあぁぁぁぁあぁぁぁぁぁぁーっ!」
うん、これは初見ではムリ。とてもではないが耐えられない。
わたしは金切り声をあげた。
絹を切り裂くような悲鳴が廊下に響き渡り、『はい、アウト~』という無情な宣告が聞こえてきたとおもったら「あっ」
不意に支えを失い、わたしの体はすとんと黒い穴に呑み込まれてしまった。
というわけで、またしてもふりだしに戻る。
トホホ……
〇
もう何度目の『ふりだしに戻る』になるだろうか。
途中から面倒になって数えるのをヤメてしまった。
それから、さっきは役立たずとかおもっちゃってゴメンなさい。
わたしは心のなかでジンさんとカクさんに謝っておく。
けっして役立たずなんかじゃない。
このふたりがいるからこそ、まだ心が折れずにすんでいる。そのことにわたしは気づいた。
彼らの掛け合いや、いろいろボケてくれることにより、わたしはツッコミ役として正気を保っていられる。肩にとまっているだけの一枝さんは……まぁ、ここぞという時にピリリと辛い山椒のスパイスみたいな感じで。
ふたたび二階の廊下手前まで舞い戻ったところで、一行はいったん立ち止まり、これまでに得た情報を整理することにした。情報の共有は大事である。
二階の廊下での『だるまさんがころんだ』について。
これまでに判明している仕掛けというか嫌がらせの数々。
・背後からの二宮金次郎像によるプレッシャー、および激烈グータッチ。
・ちゃりんと小銭の罠。
・天井からぶら下がっては、おどかしてくる女の逆さ幽霊。
遊戯について説明されていた文章を思い返してみる。
たしかホワイトボードには『だるまさんがころんだ。七つの試練を越えて、向こうの壁にタッチせよ』と書かれてあった。
ということはあと四つ、なにかを仕掛けてくるはず。
「あわてず、騒がず、泰然自若(たいぜんじじゃく)とすることだ」
泰然自若――ものごとに動じず、自分を見失わないこと。
カクさんの含蓄ある言葉に一同うなづく。
「あとそれから、女の子の掛け声にも気をつけて」
わたしからも注意事項を付け加えておく。
そうなのだ。
あの『だるまさんがころんだ』の掛け声。
ちょいちょい変化をつけては、間延びしたり早口になったりして、こちらの調子を狂わせようとしてくるのである。
あの千歌とかいうおかっぱ頭の女の子、相当にひねくれている。
わたしたちは円陣を組み「がんるぞ、えい、えい、おーっ!」との声出し。
団結力を高め、気合いを入れ直す。
こうしてミーティングを終えたわたしたちは、いざ二階の廊下へと進んだ。
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