下出部町内漫遊記

月芝

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012 セカンドチャレンジ

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 二回目の『だるまさんころんだ』が始まった。
 開始すぐに、わたしは自分が考えちがいをしていたことを知る。
 カクさんが、ゆったり動いていたように見えていたのは、独特の走法のせい。
 右手と右脚、左手と左脚を同時に出す『ナンバ走り』というそうで、昔の武士はみんなこんな風にして、地面の上をサササと滑るように、歩いたり駆けたりしていたそうな。
 大きく腕を前後に振ったり、足を持ち上げたりしないから、リアクションが乏しく見えていたようである。
 どうやら自称なだけでなく、カクさんは本当に生前は武士だったのかもしれない。

 まぁ、それはさておき。
 タネさえバレていれば、姑息な罠になんて引っかからない。
 チャリンと転がる百円玉にはそっぽを向き、天井から「ばぁ」とおどしてくる女の幽霊を逆にキッとねめつける。

 三人と一羽はチラと目配せしては、コクンと小さくうなづく。
 ここまでは順調だ。
 でもこの先は未知の領域となる。
 事前の取り決めにて、最低でもひとり一殺を目指す。
 なにが飛び出すかわからない、ビックリ箱のような暗い廊下。
 どれだけ覚悟をしていようとも、こらえきれないだろう。
 ならば、せめて次へと繋がる糧とする。カクさん風に言えば「相討ち覚悟でござる」だ。
 各々がひとつずつ試練の餌食になれば、ファーストアタックのときの分と合わせて六つの内容が明らかとなり、残る試練はひとつのみ。ちなみに一枝さんは計算に入れてない。
 いっきにゴールが近づく。なんならそのままの勢いでイケちゃうかもしれない。

 掛け声、七巡目。
 廊下の手洗い場が近づいてきた。距離的に、次はあの辺りに止まることになるだろう。
 などとわたしが考えていたら背後で「くっ、不覚!」との声があがって、『はい、そこのホネホネ、アウト~』
 足下にあらわれた穴に落ちていくカクさん。

「無念なり~」

 消えゆくカクさんが懸命に言い残したのは「外側の窓に気をつけろ」であった。

 外へ面した窓の向こうは真っ暗だ。
 何も見えやしない。ガラスに映るのはせいぜい自分の薄ぼんやりした姿ぐらい。
 カクさんはいったい何を伝えようとしたのか?
 どうにも気になったわたしは、最寄りの窓を横目で確認する。

 ――っ!

 口から心臓が飛び出すかとおもった。
 ガマンできたのはたまたま口を閉じていたから。わずかにでも開いていたら、きっと声をあげていただろう。

 暗い窓ガラス――
 そこに映っていたのは自分ではなくて、昆虫人間であった。
 首から上には大きなクモがのっており、ドレッドヘアーのような八本足がカサカサカサ。
 おもわず卒倒しそうなビジュアルに、わたしは「ひっ」とのけ反りそうになるも、そこで八巡目の掛け声が始まったもので運よく助かった。

 四つ目の試練は、窓ガラスの幻惑。

 たぶん各々で見える姿がちがうのだろうけど、これは心臓に悪い。ドキドキがちっともおさまらない。

 動悸が乱れたままで挑むことになった八巡目は、おもうように足が動かせなかった。
 せっかく引き離していた金次郎像との距離も縮まってしまう。
 それでもどうにか手洗い場の近くまではこれたのだけれども、ここで第五の試練が発動する。

 プシャアァァァァァーッ!

 ゾウの鼻のように並んでいる蛇口たち。
 そのうちのひとつが上向きになっており、いきなり水が勢いよく噴き出す。
 男子たちが水場でよくやっているイタズラだ。

 五つ目の試練は、まさかの水攻め!

 ここでソレをやられるとはおもわなかった。
 いきなり水をかけられたもので、わたしはとっさに両腕をかざし、庇う仕草をとってしまって「あっ」
 肩にとまっていた一枝さんもプルルと羽根を振り、ついた水滴を払う。

『はい、ミユウちゃん、イチエ、アウト~』

 びしょ濡れにされたあげくに失格となった。踏んだり蹴ったりである。
 さすがにわたしもカチンときた。
 だから文句のひとつでも言ってやろうとしたんだけど……

「ちょっと! いくらなんでもコレはひどいんじゃ……って、あぁーっ」

 文句の途中で、シュポンと奈落に吸い込まれてしまった。
 海夕と一枝はここで脱落。
 頼みの綱はジンさんのみ。


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