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021 下出部映画村
しおりを挟む七葉がひとり、クマネズミの千歌が仕掛けた学校迷宮をクリアした。
肩に一枝さんを乗せたわたしは、校門から学校の敷地の外へと出る。
それにシレっとついてきたのはジンさんとカクさんだ。
てっきりパーティーは解散するのかとおもいきや、さにあらず。
「心配せずとも、最後までちゃんと付き合ってやるから安心しろ」
と、ジンさん。
「おうともよ。群がる敵あらば、それがしがバッタバッタと薙ぎ倒してしんぜよう」
とは、カクさん。
ぶっちゃけひとりだと心細いので、ありがたい申し出ではある。
だがしかし――
「さすがにその姿で表をうろつくのって、マズくない?」
白昼堂々、町中をテクテク歩く人体模型と骨格標本。
わたしはすっかり慣れてしまったけれども、他の人はそうじゃない。
悪目立ちどころか、いま時だとスマートフォンで撮影をされて、すぐさまネットに画像やら動画がアップされて、あっという間に情報が拡散されて大騒ぎになりそう……
そうしたら「チチチ」と一枝さんがさえずった。
「心配いらないよミユウ。ほら、周りを見てごらん、誰もあんたたちのことなんて気にしちゃいないだろう」
言われてみれば、たしかにその通りにて。
すれ違う人たちはみな、ジンさんとカクさんをスルーしている。
さりとて見えていないのではなくて、ちゃんと認識したうえで、それはそういうものとして受け入れているっぽい?
だが、おかしな点はそれだけじゃなくって……
「えっ、何あれ? みんな頭にヘンなものをつけてる。服装もなんだかおかしいんだけど」
道行く誰もが、頭から猫耳を生やしていた。
いや、より正確には猫耳のカチューシャをつけている。
しかも服装がみんな着物だし、いつのまにやら周囲の景色までもが和テイストなものに様変わりしているではないか!
背の高いコンクリートの建物は失せて、あるのは瓦屋根の木造の建屋ばかり。
あれほど町中に乱立していた電柱や張り巡らされている電線も無くなっており、アスファルトも消えて地面の土が剥き出しだ。そのせいか、ひゅるりと吹く風がちょっとほこりっぽい。
まるで時代劇のセットのような町並み。
通い慣れた道を歩いていたはずなのに、そんな場所に迷い込んでいたもので、わたしはあんぐり。
キョロキョロしながら進む。
じきに見えてきたのは…………木で組まれた関所?
一枝さんが「おや、懐かしい。あれは木戸だよ」と教えてくれた。
木戸とはかつて江戸とか各地の城下町に設けられており、夜間には閉じられていたという関所のこと。盗賊や不審者の行き来を防ぐためのもので、ようは昔の防犯対策である。
そんな木戸には「番太郎」または「番太」と呼ばれる木戸番がふたり体制で配置されており、木戸の開け閉めやら、夜間の見回りなどを担当していたんだとか。
いまでいうところの交番みたいなものかしらん。
木戸のところにまでやってきた。
出入り口の上部、見上げた先にはタタミを二枚、縦に繋いだほどもある大きな看板が掲げられている。
『下出部映画村』
と書いてあった。
下出部はわたしが住む地域の名前だ。『しもいずえ』と読む
どうやらここが次の試練の儀が実施される会場のようである。
見たところ、番太郎の姿ははない。
だからわたしたちは勝手に木戸をくぐった。
にわかに町が活気づく。
「カツオ~、初カツオはいらんかねえ」
とは天秤棒を担いだボテ振り。
「えっさ、ほいさ」
威勢よく駆けるのは駕籠屋だ。乗っているのは、どこぞのご隠居である。
「てえへんだ、てえへんだ」
あわてているのは十手を手にした岡っ引き。
陽気におしゃべりしながら連れ歩く妙齢の女たちは、各々着飾っており華やか。
腰に刀を差している武士の姿もある。ちょっとやさぐれた風なのは牢人か。
お供を連れて歩く恰幅のいいご婦人は、どこぞのお店の女房。
頭巾姿の女性もいるし、お坊さんの格好の人もいれば、粋な芸者や渋い虚無僧もいる。
米俵が山積みにされた大八車をガラガラと引いている姿もある。
右を向いても左を見ても、ちょんまげだらけ!
まるで江戸時代にタイムスリップしたかのような光景だ。
ただ惜しむらくは、全員が猫耳のカチューシャをつけていること。
どうにも奇天烈な状況に、わたしたちはしばし呆然と立ち尽くす。
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