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023 立て札と三つのナゾナゾ
しおりを挟む「それじゃあ、いってらっしゃい。せいぜいお気張りなすって。
あと、あっしは走り回る元気はないんで、のんびり見物させていただきやす。ではでは」
ひらひら手を振る尾白。
それを合図に黒子たちにグイグイ押されて、わたしたちは茶屋の外へと。
見るからに怪しい格好で、白昼の往来に放り出された!
が――通行人役のエキストラたちはとくに反応せず。
この様子にジンさんが「ふむ。どうやら全員が敵となり、一斉に向かってくるというわけではなさそうだ、助かったな」と独りごちる。
「ほぅ……となれば、用心すべきは捕り方の格好をした者どもとなるのか」
カクさんが周囲を警戒している。
ふたりともキリリと台詞を口にしているが、いかんせん服装が似合っていない。
なにせ人体模型と骨格標本なもので。
違和感がひどい。
まぁ、そんなことはさておき。
「えーと……捕り方ってのは、岡っ引きみたいな人たちのことだよねえ。あとなんちゃら同心とか」
時代劇ではお馴染みの十手持ち。昔のお巡りさんみたいなもの。
わたしがおぼろげながら知っているのは、奉行所の役人である同心がいて、その配下にいるのが岡っ引き、その手下の人たちぐらい。
同心は揃いの黒羽織を着ており、刀も持っているからひと目でわかる。
岡っ引きはまんま町人の格好をしている。ふつうの町人とちがうところは十手という道具を持っているかどうか。
「じつは時代劇で岡っ引きたちがいつも十手を持ち歩いているけど、あれは間違いなんだよ。演出というやつさね。本当のところは必要に応じて、その都度貸し出されていたのさ。
もし持ち歩くにしたって、あからさまに見せびらかしたりはしないよ。
だって、そんなことをしたら危ないもの。悪党どもにバレちゃうからねえ」
豆知識を教えてくれたのは一枝さんである。
「へー、そうなんだぁ」
わたしは感心しつつ、あることに気がついてしまった。
それは同心はともかくとして、岡っ引きやその手下だと十手を隠されたら、町人との見分けがまったくつかないこと。
とたんに疑心暗鬼に陥り、周囲のすべてが怪しく見えてきたもので、わたしはビクビクする。
そうしたらカクさんが「なぁに、そう怯えずともよかろう。カカカ」と笑った。
「相手の目をよく見ることだ。そういった職についておる者は、総じて目つきが鋭く、抜け目なく周囲を観察しているものだ」
素人目にもわかるほどに、一般人とは雰囲気がちがうらしい。
カクさんに言われて、あらためて自分の周辺を眺めてみる。
さいわいなことに、それっぽいのは近くにいない。
安堵したところで次に気になったのは……
「三枚の絵馬を探せっていわれても、どこにあるのかしらん。大きさなんてせいぜい手の平ぐらいでしょう? それをヒントもなしに、この映画村のなかから探し出すのなんて、いくらなんでもムリゲーだよ」
あんなもの、その気になったらどこにだって隠せちゃう。
闇雲に動いたとて、見つけることはまず不可能。
はてさて、どう動いたらいいのやら。
わたしとジンさんとカクさんが、揃って「う~ん」と考えていたら、いつのまにやら肩から離れていた一枝さんが「チチチ、あっちに何やら人だかりがあるよ」とパタパタ。
道行く人たちが立ち止まっては、囲んでガヤガヤと眺めていたのは――立て札。
「ちょ、ちょっとごめんなさい」
人垣に分け入り、わたしは最前列へと向かう。
ジンさんとカクさんもそれに続く。
どうにか立て札が拝めるところにまでやってきた。
見上げれば、そこには三つのナゾナゾが書かれた紙が貼ってあった。
『いたちとたぬき、たすといくつ?』
『三人四脚、一日中走っているのに汗をかかないものは何?』
『かならず『ら』を添える料理はな~んだ?』
解いたら良い物が手に入るとの一文もあり、ご丁寧に尾白の署名も添えられている。
これは開催側からの告知だ。
「どうやらこのナゾナゾが絵馬の隠し場所のヒントみたいだね」
「だな。どれ、ちょいと拝借」
言うなり、立て札に貼られていた紙をベリっ。
ジンさんが引っぺがす。
「えぇーっ、ちょっと、そんなことしていいの? あとで怒られない?」
あわてるわたしに、ジンさんは「気にするな」と紙を素早く折りたたんでは懐に入れてしまう。
それを横目にカクさんが「ほ~ら、おいでなすったぞ。ぼやぼやしていたらすぐに捕まってしまう。行くぞ」と駆け出した。
言葉の通りにて、向こうから「コラーっ」と怒りながらこちらに駆けてくる岡っ引きの姿があった。ふたり手下を連れている。
わたしとジンさんもすぐにカクさんに続いて、立て札の前から離れた。
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