下出部町内漫遊記

月芝

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027 ただいまイベント開催中!

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 わたしが囮となって捕り方の注意を引きつけているうちに、ジンさんとカクさんが絵馬を回収する。
 いつのまにかそんな役割り分担となっていた。
 しょうがないので、わたしは必死に逃げまわる。
 なお今度は一枝さんもこっちについてきた。
 ナビ役となり空の上から周囲の様子をうかがっては、追っ手の接近を報せたり、進路の指示などをしてくれる。
 とはいえ容赦なく狭まる包囲網にて、じょじょに追い詰められていく。

「あっ、そっちはダメだよミユウ」

 一枝さんが注意する。
 わたしはあわてて引き返そうとするも、すでに手後れであった。
 甘味処の前でついに追っ手に前後を塞がれてしまい、万事休す。
 かとおもわれたのだが――

「おいおい、だいの男たちがよってたかって、若い娘さん相手にみっともないねえ」

 暖簾をくぐって店の奥からあらわれたのは牢人役のお兄さん。
 やさぐれた感じはなくて、何やら品がいい。じつは殿様の庶子とか、身分を隠してのお忍び町ぶらとか、そんな設定であろうか。

「窮鳥懐に入れば猟師も殺さず、儀を見てせざるは勇無きなりってな。こいつはちょいと見過ごせないねえ」

 ムズカシイ口上を述べたのちに、牢人のお兄さんが腰の刀を抜く。
 そして始まったのがチャンチャンバラバラ、捕り方連中との大立ち回り。
 閃く刃にて牢人役のお兄さんが、群がる敵をバッタバッタと薙ぎ倒す。
 さりとて血は流れない。服も破けない。
 でもって切られた方は「やられた~」と倒れるのみ。ゾンビは禁止。
 時代劇そのままの光景だ。
 これはいわゆる殺陣(たて)というヤツであろうか。
 本家本元の映画村でも、町中とかでいきなり斬り合いがはじまるイベントがあって、来場客たちを楽しませるという話を聞いたことがある。フラッシュモブみたいなパフォーマンスだ。これもそうなのかしらん?

 とりあえず邪魔にならないように、わたしは隅に縮こまっておく。
 そのうちに戦闘は終了した。
 結果は牢人役のお兄さんの圧勝である。ほんの五分ほどで全員倒してしまった。
 くるくる器用に刀を振り回してから、シャキンと鞘に納めた牢人役のお兄さん。

「ふぅ、これでもう大丈夫だ。安心をし」

 にこりと爽やかな笑みを浮かべて、お兄さんが手を差しのべてくる。
 だからついその手を取ろうとするも、その時のことであった。
 お兄さんがわたしに言った。

「ちなみに助太刀のお代は、絵馬でいいよ」

 味方かとおもったら、やっぱり敵だった!
 わたしは差し出された手をパシンとはたき、すぐさまその場から走り去る。

  〇

 旅のご隠居さんが「ふぉ、ふぉ、ふぉ」とほがらかに笑いながら「助さん、角さん、懲らしめてやりなさい」と言えば、お供ふたりがズイと前に出て、悪代官一派をバッタバッタと投げ飛ばす。

 四十七人の赤穂浪士たちが、吉良邸の門前にて「おのおのがた、討ち入りでござる」と号令をかければ、仲間らが「おうっ」と応じ、門を打ち壊しての突入を敢行。
 そこかしこにて敵味方が入り乱れての丁々発止が繰り広げられ、邸内はたちまち喧騒に包まれた。

 シュタシュタシュタタ……
 屋根から屋根と飛び移る、もしくは建物の陰から陰へと素早く走っては、無言のままに飛び交うは手裏剣。
 跳躍しては刃を結びキンキンカンカン、パッと離れてはシュタタタタ……
 赤錆色の衣装を身にまとった忍びの集団と、濃紺色の揃いの格好をした忍びの集団が激突している。
 甲賀と伊賀の忍びたちが争っているのか。

 またちがう所では――

「おうおうおう、この桜吹雪、散らせるもんなら散らしてみやがれ!」

 威勢のいい啖呵を切っていたのは、片肌を脱いでは艶やかな刺青(いれずみ)をさらしている遊び人風の男。
 粋でいなせな好漢が、母娘を庇いつつ痛快無比の大活躍、悪党どもを次々に打ちのめす。

 かとおもいきや、少し離れたところではふたりの剣客が向かい合っての真剣勝負の真っ最中。
 一方は野趣溢れる猛々しい荒武者にて舟の櫂を持ち、もう一方は眉目秀麗にて長剣を握っている。
 にらみ合う両雄、男前の方が邪魔な鞘を投げ捨てたところで、荒武者が叫んだ。

「小次郎、破れたり!」

 ……と、まぁ、どこかで見たことがあるような名場面の数々が、わたしの行く先々で待ち受けていた。ときには演者として渦中に巻き込まれることもある。
 合間合間にしっかり捕り方の手ものびてきて、わたしはとにかく忙しい。

 下出部映画村では、ただいまイベントを絶賛開催中!


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