下出部町内漫遊記

月芝

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042 分断、籠城、起死回生

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 墓地での銃撃戦では不良シスターがド派手に大暴れ。
 ばかりかこの騒ぎを聞きつけて、新たな敵勢までもがワラワラ集まってきたものだから、現場はますます大混戦となる。
 上から横から、スポンジ弾が激しく飛び交う。
 敵味方が入り乱れての撃ち合い。

 ――まさにカオス!

 さなか非力なわたしにできることといったら、せいぜいワーキャア逃げ惑うのみ。だってしょうがないじゃない、相棒が頼りにならないトイガンなんだもの。

 パニックになってあちこち逃げ回っているうちに、いつのまにやら仲間たちとはぐれてしまった。
 一枝さんの姿もない。
 我に返ったとき、わたしはひとりきりにて、とある建屋内の廊下にへたり込んでいた。

「……え~と、ここどこ?」

 確認すべく周囲をキョロキョロ。
 長めの廊下だ。うしろには階段ある。正面から向かって左側にはドアが等間隔で並んでおり、右側には手すりがあって、吹き抜けの天井になっている。
 わたしはソロリソロリ手すりへと這い寄る。
 こわごわ階下をのぞき込むなり、ギョッ!
 下は酒場にて、いかにも賞金首といった風体の男の二人組がいた。
 周囲には八人倒れている。全員粉まみれにて、たぶん負けちゃった人たちなのだろう。ピクリともせずにマジメに死体役に徹している。
 そうなのである。
 負けたら負けたでアレをやらねばならないのも、たいへんなのだ。
 もしも外でやられたらこの炎天下、ゲームが終了するまでじっとしていなくちゃならないのだろうか。うぅ、紫外線はお肌の大敵なのに……

 自分がいる場所は把握した。
 ここは酒場兼ホテルの二階だ。
 わたしはうっかり迷い込んだところで、思いがけずやっかいな連中と遭遇してしまったらしい。
 たったふたりで八人を仕留めるような凄腕ガンマンども。
 まともに戦ったらまず勝ち目はない、はやく逃げないと……
 あせったわたしはすぐにその場を離れようと腰を浮かす。
 でもそのせいで――

 ギシリ。

 うっかり床板を踏み鳴らしてしまった。
 音に気がついた男たちがグリンと首を回してこっちを向いた。
 ばっちり目が合う。
 男たちはにちゃり、新たな獲物を見つけたとばかりに厭らしい笑みにて舌なめずり。
 わたしは「うっ」とあとずさりしてから、きびすを返す。

(まずい、まずい、まずい、まずい)

 とりあえず身を守らなければならない。
 最寄りの扉に駆け寄りドアノブを回すも――

「あ、開かない! ウソでしょう、カギがかかっているの!?」

 しょうがないので隣の部屋へと向かう。
 でも、こっちもダメであった。
 そこでさらに隣を調べるが、いくらガチャガチャしてもドアはやはり開かなかった。
 こうしている間にも、男たちは階段をのぼって近づいてくる。
 わたしは祈りながら、次の扉へと手をかけた。
 そうしたら「あっ」
 あっさり開いたもので、わたしは室内へと飛び込む。すぐさまドアを閉めてカギをかけた。

 六畳ほどの広さしかない個室。
 ベッドと小さな机とイスがあって、壁際にはクローゼットもある。
 窓からは……逃げられそうにない。そもそもここは二階だし、防犯のためか鉄格子がはめられている。
 とりあえず机を動かし、扉の前に置いて入り口を塞いでおく。バリケードだ。気休め程度だがないよりかはマシだろう。
 ついでに机の引き出しを漁ってみたら、弾丸の入った小箱があった。
 次にわたしは床に伏せて、ベッドの下をのぞき込む。
 が、こちらにあったのは埃だけ。狭くて身を隠せそうにもない。ベッドのシーツもめくってみたけど、ここもハズレ。
 あと室内で調べていないのはクローゼットのみ……

  〇

 わたしがクローゼットのなかに潜り込むのに前後して。

 ドンドンドン。

 部屋の扉が乱雑にノックされた。
 追ってきた男たちの仕業だ。
 当然、カギがかかっているので開かない。
 すると叩く音はおさまるどころか、より激しく強くなった。

 ダンッ! ダンッ! ダンッ!

 男たちが体当たりにて、扉を強引に開けようとしている。
 衝突音が響く度に部屋全体までもがビリビリ震える。
 大の男がふたりがかり。その圧力を撥ね返すほどの防御力はない。
 じきにカギは壊されドアを突破されてしまうまでに、さして時間はかからなかった。

 邪魔な机をどけて、室内へと押し入ってくる男たち。
 室内をざっと見渡してから、クローゼットの前に立つ。

「ひひひ、みぃ~つけたぁ~」
「おやおや、もうかくれんぼはおしまいかい?」

 言うなり男のひとりがクローゼットを蹴破り、もうひとりが「ぎゃはは」と笑いながらスポンジガンをバンバンぶっ放す。
 だがしかし――男たちの目が点になった。
 なぜならそこにいたのはオオカミに怯える子ヒツジではなくて、一面の白い布であったから。
 その正体はベッドのシーツ。急遽吊り下げたもの。
 スポンジ弾を何発も受けて粉まみれとなった布がバサリと落ちる。
 裏からあらわれたのはわたし、手にはトイガンが握られていた。
 ただし、形状がこれまでとはいささか変化しており、銃身の先端に四角いカートリッジが装着されている。
 このカートリッジはトイガン用の拡張パーツ。たまさか逃げ込んだクローゼットの奥で発見した大きな宝箱に入っていたモノ。
 カートリッジは弾倉にて、これを装着することにより単発式だったトイガンは連発可能な自動小銃へとパワーアップする。

 引き金をひくなり、ダダダダダッ!

 逃げ場のない室内に張られた弾幕、至近距離にて多数のスポンジ弾が射出されては、いかに凄腕のガンマンとて成す術なし。
 かくして幸運と機転により逆転勝利をおさめたわたしは、倒した男たちから戦利品として計十枚ものコインと一枚のカードをゲットした。

『決闘カード』

 これを提示されたものは、一対一の決闘に応じなければならない。何度でも使用可能にて、なんぴとも決闘を邪魔することは許されない――と書かれている。
 なるほど、どうやらこれはお役立ちアイテムとやらのひとつにて、カードを上手く使うことでふたりは数の劣勢を覆し、敵勢を各個撃破していたとおもわれる。
 たしかに使い方次第では窮地を打開できるカード。
 わたしは革ジャケットの内ポケットにコインともどもねじ込んだ。


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