下出部町内漫遊記

月芝

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044 隻眼の死神

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 強敵襲来!

 ウエスタンストリート中が緊迫した空気に包まれた。
 屋内外のそこかしこで行われていた銃撃戦が、乱入した牙寿郎によって次々に潰されていく。余裕のあらわれか、あるいは片目ゆえか、彼はゴーグルをしていない。
 あまりの猛攻、一方的な蹂躙にあわてて逃げようとする者もいたが、容赦なく背中に銃弾を撃ち込まれては仕留められる。
 この脅威を前にして、急遽手を組んで対処しようとする者らもいたが、みなたちまち返り討ちにされてしまった。
 百発百中の隻眼の死神は我が道を征く。
 彼が歩いたあとには死屍累々にて。

「けっ、しゃらくせぇ!」

 この状況で吠えたのは不良シスターだ。
 鐘塔の外壁をロープを使って軽快に降りたとおもったら、教会の屋根の上をひと息に突っ切る。通りを見下ろせるところまで素早く移動し、悠然と向かってくる牙寿郎へと向けてガトリングをぶっ放した。
 距離を詰めての掃射――

 ダダダダダダダダ!

 ばら撒かれる大量のスポンジ弾。
 降り注ぐ弾の豪雨、その下ではさしもの牙寿郎ものんびりとは歩けないようで、彼は初撃をかわすべく大きく右へサイドステップ――からの猛ダッシュ。
 速い! 土煙をあげて走る姿は、まるでオオカミが疾駆しているかのよう。

 でもいかに足が速かろうとも正面から突っ込んでは、いい的にしかならない。
 不良シスターがここぞとばかりに照準を合わせ、引き金をひくも「なっ!」
 驚愕にて大きく目を見開くシスター。その視線は自分の手元に注がれていた。
 弾倉ベルトが詰まっており、次弾が装填されない。
 弾詰まり――いわゆるジャムるという現象。
 もちろんたまたまなんかじゃない。やったのは牙寿郎だ。駆け寄りながら放った一発の銃弾が、ベルトに命中し挟まったことにより起きたのである。

「ちぃっ」

 不良シスターは舌打ちにて使い物にならなくなったガトリングを捨て、腰から別の銃を抜く。
 向かってくる牙寿郎と、迎え討つ不良シスターと。
 ふたりはほぼ同時に銃弾を放った。

「くそっ……たれめ」

 胸元にパッとピンクの粉が花咲く。
 うめいて不良シスターが屋根から転げ落ちる。
 対して牙寿郎は健在にて。
 そのまま駆け続けては勢いのままに教会内へと突入し、バンバンと残敵の掃討を始めた。

  〇

 わたしの快進撃なんぞは比べものにならない牙寿郎の無双っぷり。
 一連の戦いの様子を隠れて見ていたわたしたちは、「なによ、あれ?」「いくらなんでも強すぎる」「これはまともにやっても勝てそうにないのう」と頭を抱えた。
 無事だったジンさんカクさんと合流し、持ち寄ったコインの合計は36枚になったものの、このまま逃げ切ったとて勝てるか微妙なところだ。

 ここにきて牙寿郎がぐんぐん追い上げてきている。
 じきに教会勢もひとり残らず駆逐するだろう。不良シスターたちがどれぐらいコインを貯め込んでいたのかにもよるが、けっして少なくないことだけはたしか。
 同数、もしくはすでに逆転されているかも。
 確実に勝つには50枚以上、手に入れる必要がある。
 より確実なのは牙寿郎を倒すことだけど、さすがにそれは厳しそうだ。

「あれと戦うのはいささか無謀か……。とりあえず残っている連中を倒してコインを稼ぎつつ、充分な枚数が確保できたら、どこかに隠れるのが無難かのぅ」

 カクさんの意見にわたしとジンさんもうなづく。
 なお一枝さんはこの場にいない、ただいま自主避難中である。なにせ彼女はか弱い小鳥さんであるからして。うっかり流れ弾に当たって翼とか痛めたらたいへんだもの。

 極力、隻眼の死神との抗戦は避けてコインをこつこつ集めるべし。
 今後の方針を決めたわたしたちは、すぐに行動を開始する。
 それに前後して教会の方も静かになった。
 生き残りもずいぶんと少なくなった。終了までの時間もわずかとなり、ゲームはいよいよ佳境を迎えようとしている。


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