下出部町内漫遊記

月芝

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055 接戦!混戦!乱闘?

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 現時点での順位は以下のとおり――
 首位はポメラニアンチームだが、卵機雷のダメージでけっこうボロボロ、飛翔から着水時の影響もあるとおもわれる。
 二位はオオカミさんチームだ。出すものを出してスッキリしたのか、小憎らしいことに足取りは軽快である。
 これを左サイドから猛追するのが阿蓮とウマさんチーム、ぐんぐん先頭集団へと迫っている。
 少し遅れて岸辺寄りのコースを進むのはわたしたち、転覆こそはまぬがれたものの寄せては返す横波に苦しめられる。完全に出鼻をくじかれてしまった。
 で、最後尾はゴリラチーム。卵機雷により生じた波に押されて、まさかのスタート地点に逆戻り。だが自慢のパワー、足漕ぎとオールという二刀流により、ガンガン追い上げており、はやくもわたしたちに肉迫しつつある。

「いち、に、いち、に」

 カクさんの掛け声に合わせてわたしたちは足を動かす。漕ぐタイミングを合わせることで足にかかる負担がいい感じに軽減されており、まずまずの推進力も得ている。いい調子!
 いまは向かい風ということもあり、やや先頭集団から引き離されてしまったけれども、まだまだ挽回可能、だからあせることはない。
 とはジンさんの見たてだ。

 オオカミさんチームのやらかしにより、スタート直後こそは混乱したものの、その後は各チームともに立て直し順調に進んでいる。
 このレース会場はとくに障害となるモノがないひらけた場所。海や川とはちがって閉じた世界ゆえに、自然に発生する波の高さはさほどではない。暗礁する心配もない。
 よって競争相手たちを別にしたら、一番の敵は風といっても過言ではないだろう。
 そして一番の味方となるのもまた風だ。

 折り返し地点の赤いブイを抜ければ、状況は一変する。
 とたんに向かい風は追い風となり、ボートを後押しする。
 いちはやくこれを味方にできるかどうか。
 それが勝敗のカギを握るはず……
 とは、これまたジンさんの予想であった。

 コースの全長は約1キロメートル。
 折り返し地点はその半分だから500メートルのところ。
 各艇、目印となる赤いブイを目指して、一心不乱にペダルを漕ぐ。
 そのかいあって遠くで豆粒みたいに映っていたブイが、じょじょに輪郭をあらわにしていく。ブイはちょっとつぶれたソフトクリームみたいな形をしている。

 スタート地点より300メートルほど進んだところで、ついに先行していたトップ集団に阿蓮とウマさんチームが追いついた。
 他チームはどこも複数なのに、阿蓮はたったひとりでの参加にもかかわらずに。
 それを可能にしたのは彼女の見事な漕ぎっぷりもさることながら、巧みな操船技術と、ライン読み、コース取りがあったればこそ。
 波と波との間を、彼女が駆るマガモボートは縫うように泳いでいく。
 オオカミさんチームがハクチョウボートの船体性能に頼りきりであったのに対して、阿蓮はちゃんと水面の状況を読み切っては、自信を持って機首を向けペダルを漕いでいる。
 すべては阿蓮の実力、つねに最適解を選び続けているからこその快挙。

 そしてそんな彼女のあとをひたすらついていくという、コバンザメ作戦により上位勢に食い込んでいたのがウマさんチームだ。ちゃっかりしている!

 先頭集団は四チームが入り乱れて、抜きつ抜かれつのデッドヒート。
 比べて、50メートルほど引き離されてしまっているわたしたち第二集団もまた、激しい攻防の真っ最中にて――

「あっ、コラ、危ない、やめないか」
「きゃあきゃあきゃあ」
「おのれ、そちらがそのつもりならばこちらも容赦はせぬぞ」

 現在、わたしたちは攻撃を受けている。
 やっているのはゴリラチームだ。
 わたしたちよりもさらに遅れて、最後尾にいたカヤック型のボートであったが、持ち前のパワー全開にてグングン追い上げてきた。
 と、おもったらこちらに横づけし、ブンブン振るってきたのはオールである。
 手漕ぎのための道具を打撃武器へと変えては、ビシバシビシバシ。
 よもやの乱闘を仕掛けてきた。
 こっちも足での応戦を試みるも、いかんせんリーチがちがう。せいぜいオールの一撃を蹴り返すのが関の山にて、それすらも空振りばかり。
 それにしたって理解に苦しむ。
 ビリッケツの座を巡って醜い争いなんぞをして、どうなるというのか?

「いったい何を考えてるのよぉ、もうっ!」

 わたしが頭を庇いながらプリプリ怒れば、自分だけ上空に飛んでは避難している一枝さんが「チチチ」とさえずった。

「ありゃあたぶん何も考えてないんだろうよ。だって、ほら、見るからに脳筋っぽいじゃない」

 たしかにその通りにて、ゴリラチームはマスクだけでなく、体格もそれっぽいけれど。
 などと、わたしが考えていたらカクさんがやってくれた。
 隙をついて相手のオールを分捕ることに成功し、逆に「どりゃーっ」と突き、突き。
 元武士の骨格標本、長柄の扱いはお手のものにて。
 電光石火の刺突、オールを槍のごとく操っては、ゴリラチームの者らをボートから突き落とす。
 おかげで迷惑な攻撃がやんだ。
 一枝さんが船首に戻ってきたところで、わたしたちはサッサとその場を離れて、ゴリラチームを置き去りにする。なお鹵獲したオールは使い物にならないように、カクさんがへし折ってから捨てた。

「余計な時間をくった。このままだと追いつけない。少々ペースをあげるぞ」

 ジンさんの提案にうなづき、わたしたちはやや腰をあげては前傾姿勢となり、遅れを取り戻すべく懸命にペダルを漕ぐ。
 チラリと後方を確認すれば、はやくも復帰したゴリラチームもこれに続こうとしていた。
 ちぇ、しぶとい!


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