55 / 106
055 接戦!混戦!乱闘?
しおりを挟む現時点での順位は以下のとおり――
首位はポメラニアンチームだが、卵機雷のダメージでけっこうボロボロ、飛翔から着水時の影響もあるとおもわれる。
二位はオオカミさんチームだ。出すものを出してスッキリしたのか、小憎らしいことに足取りは軽快である。
これを左サイドから猛追するのが阿蓮とウマさんチーム、ぐんぐん先頭集団へと迫っている。
少し遅れて岸辺寄りのコースを進むのはわたしたち、転覆こそはまぬがれたものの寄せては返す横波に苦しめられる。完全に出鼻をくじかれてしまった。
で、最後尾はゴリラチーム。卵機雷により生じた波に押されて、まさかのスタート地点に逆戻り。だが自慢のパワー、足漕ぎとオールという二刀流により、ガンガン追い上げており、はやくもわたしたちに肉迫しつつある。
「いち、に、いち、に」
カクさんの掛け声に合わせてわたしたちは足を動かす。漕ぐタイミングを合わせることで足にかかる負担がいい感じに軽減されており、まずまずの推進力も得ている。いい調子!
いまは向かい風ということもあり、やや先頭集団から引き離されてしまったけれども、まだまだ挽回可能、だからあせることはない。
とはジンさんの見たてだ。
オオカミさんチームのやらかしにより、スタート直後こそは混乱したものの、その後は各チームともに立て直し順調に進んでいる。
このレース会場はとくに障害となるモノがないひらけた場所。海や川とはちがって閉じた世界ゆえに、自然に発生する波の高さはさほどではない。暗礁する心配もない。
よって競争相手たちを別にしたら、一番の敵は風といっても過言ではないだろう。
そして一番の味方となるのもまた風だ。
折り返し地点の赤いブイを抜ければ、状況は一変する。
とたんに向かい風は追い風となり、ボートを後押しする。
いちはやくこれを味方にできるかどうか。
それが勝敗のカギを握るはず……
とは、これまたジンさんの予想であった。
コースの全長は約1キロメートル。
折り返し地点はその半分だから500メートルのところ。
各艇、目印となる赤いブイを目指して、一心不乱にペダルを漕ぐ。
そのかいあって遠くで豆粒みたいに映っていたブイが、じょじょに輪郭をあらわにしていく。ブイはちょっとつぶれたソフトクリームみたいな形をしている。
スタート地点より300メートルほど進んだところで、ついに先行していたトップ集団に阿蓮とウマさんチームが追いついた。
他チームはどこも複数なのに、阿蓮はたったひとりでの参加にもかかわらずに。
それを可能にしたのは彼女の見事な漕ぎっぷりもさることながら、巧みな操船技術と、ライン読み、コース取りがあったればこそ。
波と波との間を、彼女が駆るマガモボートは縫うように泳いでいく。
オオカミさんチームがハクチョウボートの船体性能に頼りきりであったのに対して、阿蓮はちゃんと水面の状況を読み切っては、自信を持って機首を向けペダルを漕いでいる。
すべては阿蓮の実力、つねに最適解を選び続けているからこその快挙。
そしてそんな彼女のあとをひたすらついていくという、コバンザメ作戦により上位勢に食い込んでいたのがウマさんチームだ。ちゃっかりしている!
先頭集団は四チームが入り乱れて、抜きつ抜かれつのデッドヒート。
比べて、50メートルほど引き離されてしまっているわたしたち第二集団もまた、激しい攻防の真っ最中にて――
「あっ、コラ、危ない、やめないか」
「きゃあきゃあきゃあ」
「おのれ、そちらがそのつもりならばこちらも容赦はせぬぞ」
現在、わたしたちは攻撃を受けている。
やっているのはゴリラチームだ。
わたしたちよりもさらに遅れて、最後尾にいたカヤック型のボートであったが、持ち前のパワー全開にてグングン追い上げてきた。
と、おもったらこちらに横づけし、ブンブン振るってきたのはオールである。
手漕ぎのための道具を打撃武器へと変えては、ビシバシビシバシ。
よもやの乱闘を仕掛けてきた。
こっちも足での応戦を試みるも、いかんせんリーチがちがう。せいぜいオールの一撃を蹴り返すのが関の山にて、それすらも空振りばかり。
それにしたって理解に苦しむ。
ビリッケツの座を巡って醜い争いなんぞをして、どうなるというのか?
「いったい何を考えてるのよぉ、もうっ!」
わたしが頭を庇いながらプリプリ怒れば、自分だけ上空に飛んでは避難している一枝さんが「チチチ」とさえずった。
「ありゃあたぶん何も考えてないんだろうよ。だって、ほら、見るからに脳筋っぽいじゃない」
たしかにその通りにて、ゴリラチームはマスクだけでなく、体格もそれっぽいけれど。
などと、わたしが考えていたらカクさんがやってくれた。
隙をついて相手のオールを分捕ることに成功し、逆に「どりゃーっ」と突き、突き。
元武士の骨格標本、長柄の扱いはお手のものにて。
電光石火の刺突、オールを槍のごとく操っては、ゴリラチームの者らをボートから突き落とす。
おかげで迷惑な攻撃がやんだ。
一枝さんが船首に戻ってきたところで、わたしたちはサッサとその場を離れて、ゴリラチームを置き去りにする。なお鹵獲したオールは使い物にならないように、カクさんがへし折ってから捨てた。
「余計な時間をくった。このままだと追いつけない。少々ペースをあげるぞ」
ジンさんの提案にうなづき、わたしたちはやや腰をあげては前傾姿勢となり、遅れを取り戻すべく懸命にペダルを漕ぐ。
チラリと後方を確認すれば、はやくも復帰したゴリラチームもこれに続こうとしていた。
ちぇ、しぶとい!
0
あなたにおすすめの小説
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる