下出部町内漫遊記

月芝

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059 第六のシークレット機能

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「おりゃあ、そこのけそこのけ、下剋上じゃーっ!」

 カクさんが猛り吠え、ジンさんまでもが「どけどけ、邪魔だ!」といつになく強気な態度にてイケイケゴーゴーである。
 かくいうわたしもまた「きゃはは」と浮かれている。
 原因はもちろん『ハイパーエナジードリンク』だ。
 ごくごく飲んだら、ガツンときたね。
 不安や疲労なんぞはたちまち吹き飛び、どこからともなく湧いてくるパワー。
 異様なテンションにて、衝動のままにペダルを漕ぎまくる。
 そんなわたしたちにジト目を向けては「おいおい……本当に大丈夫なのかい? マズイ成分とか入ってないだろうねえ」と一枝さんがぼそっと。

 わたしたちによる怒涛の追い上げ。
 撥ね飛ばしかねない勢いにて、三位につけていたゴリラチームをあっさり抜き去った。
 これに驚いたのが、その先にいた阿蓮とウマさんチームだ。

「くっ、なんてでたらめな差し足だい。こうなったら――」

 阿蓮のマガモボートがガコンと音を立てて、はずされたのは帆となっていた屋根の部分である。どうやら着脱式であったらしい。
 畳まずに、パージすることを選んだのは追い風が戻ることをスッパリ諦め、かつ船体の重量を少しでも軽くするため。
 オープン状態となったところで、マガモボートがふたたび水面を滑り出す。

 一方でバタンとドアを閉めたのが、現在二位にいるウマさんチームだ。車体を模したボートの扉を開け放つことで帆の代わりをしていたが、後方からの風が止んでしまっては空気抵抗を受けて逆効果にしかならない。
 さりとて阿蓮のところみたいにははずせないので閉じるしかない。
 そして自力にて阿蓮を追いかけ始めたのだけれども。
 ここでポチっとな。
 ウマさんチームもついにシークレット機能を発動させた。

 オオカミさんチームのハクチョウ型ボートには卵型機雷が。
 ポメラニアンチームのアヒルさんボートには飛翔機能が。
 ゴリラチームのカヤック型ボートには魚雷が。
 阿蓮のマガモ型ボートには帆が。
 わたしたちの自転車型ボートには『ハイパーエナジードリンク』が搭載されていた。
 過激なのが多くてどれもクセが強い。一長一短があるシークレット機能たち。

 攻撃系か、はたまた補助系か。
 はたしてウマさんチームのはどのような機能なのか?
 みなが固唾を飲んで見守っていると……

 キコキコキコキコ。

 聞こえてきたのはふつうのペダル音である。

 ………………ん?

 とくに何も起きない。
 ウマさんチームのフォルクスワーゲンタイプのボートは淡々と進んでいくばかり。
 とんだ肩透かしにて、わたしはきょとんとするも、その時のこと。

「あーっ」と叫んだのは、船首にいた一枝さんである。

 いったい何事かとおもいきや、彼女はこう言った。

「よくみてご覧! なんだかんだでアレンとの距離が縮まっているじゃないか。やたらとスムーズに進んでいるとおもったら、あれってば電動アシスト機能のおかげだよ」

 電動アシスト機能とは、モーターが発生する力で人間がペダルを踏むのを手伝う機構のことである。ようは楽ちんにペダルが漕げるということ。
 軽く踏み込んだだけで、グングンとパワフルに進むものだから、初めて電動アシスト付き自転車に乗った人はみないちように「おぉ!」と驚かされるのが、お約束みたいなもの。
 すごいのになると、競輪選手すらもが悲鳴をあげるような傾斜の坂道をもグングン登れちゃうというから驚きだ。

 そんな便利なシークレット機能が搭載されていたというのに、ここまで使用しなかったということは、時間か距離か、おそらくはなんらかの制限が設けられているからだろう。
 温存していた奥の手を使い、ウマさんチームがいっきに阿蓮へと近づいていく。
 それにわたしたちも続く。
 ゴリラチームは、ちょっと置いてけぼりを喰らった格好だ。自慢の筋肉がパンプアップしたせいで見た目がよりムキムキにはなったけれども、かえって動かしにくくなったっぽい。乳酸もたまっており筋肉疲労を起こしている。
 さらに不運なことに、ここにきて彼らのオールがベキリと折れた。
 しかしこれは当然の報いであろう。
 わたしたちに乱闘を仕掛けたりと、余計なことをするからだ。
 オールは人を叩くものじゃない。あくまで水を掻くための道具なのだ。本来の用途とはちがう使い方をすれば、壊れるのも当たり前である。
 これによりカヤック型ボートは、足漕ぎとオールの二刀流という優位性を失った。みるみる失速していく、どうやらゴリラチームはここまでのようだ。
 かくして残った三チームにより、雌雄は決せられることとなった。


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