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064 下出部防衛隊、出動せよ!
しおりを挟む室内に設置されてあるパトランプが点滅した。
ウーウーとサイレンがけたたましく鳴り響く。
続けてスピーカーから流れてきたのは『ガーガー……北東方面にて敵群が出現した。隊員らはすみやかに現地へと向かい、これを迎撃せよ』という指令である。
これを受けて、わたしたちは出撃準備をする。
更衣室へと飛び込み、防衛隊員用のスーツに着替え、装備品一式を身につけては、駆け足で向かうのはガレージだ。
そちらではすでに、ジンさんがブロックでできたジープの運転席へと座り、エンジンをかけてスタンバっていた。
銃座のある後部の荷台にはカクさんが陣取っており「遅いぞ、ミユウ」
「ごめん、ツナギのスーツを着るのにちょっと手間取った」
謝りながら助手席へとわたしは乗り込む。
シートベルトをつけていると、どこからともなく飛んできた一枝さんが肩へと降りてきては「チチチ」とさえずる。「全員そろったね。じゃあ、出動!」
それを合図に前方のシャッターがガラガラと開いていき、わたしたちの乗ったジープは勢いよくガレージより飛び出した。
我ら下出部防衛隊。
その拠点は、町中にある小さな消防署を改造したもの。もちろんすべてブロックで組まれている。再現度は高く、おもいのほか不自由は感じない。
ただし、さすがにトイレの便座までブロックなのはいかがなものかと。
ちなみに方谷と名乗った男は拠点にない。てっきり彼が司令官役なのかとおもいきや、ちがったらしい。
よって司令官代行は勝手に一枝さんがやっている。
もっとも三人と一羽だけの小隊なので、上も下もないけれど。
ジンさんが運転するジープがカラフルなブロックランド内を疾駆し、すぐに現着したのだけれども……
「げっ、何よあれ? 気持ち悪い」
「あれはアリだな」
「おうおう、ワラワラとようけおるわい。これは倒しがいがありそうだな」
「じゃあ、あたいは邪魔にならないように適当に隠れているから、ちゃっちゃと片付けるように。健闘を祈る」
わたしたちを置いてバサバサバサ、ウグイスの司令官代行はさっさと飛び去った。
出現した敵はブロックのアリたちである。これまた再現度が高くて、よくデキている。
ただし大きさは軽トラックほどもあって、そんなのが建物の物陰やら、家の屋根の上、壁越し、街路樹や電柱の裏などに、わらわら、とってもたくさんいるけれど!
あー、そういえば指令放送でも『敵群』って言っていたっけか。
にしたって初出動で、いきなりコレはちょっと難易度が高くない?
なんぞとわたしがぼやいていると「しっかりつかまっていろミユウ。あと口も閉じてろ、舌を噛んでも知らんぞ」と早口にまくし立てては、ジンさんがいきなりジープをバックした。
理由はもちろん敵群が一斉にこちらへと向かってきたから。
ギャギャギャギャ、急発進により路面にタイヤ痕を残しつつ、ジープはけっこうな速度でバックオーライ。
で、たんに逃げるのではなくて、荷台のカクさんは近づいてくる敵を迎撃する。
銃座にあるのは大きな銃だ。ちょっとした砲台のようにいかめしい。
けれども銃口から発射されるのは銃弾の類ではなくて――
シュヴィヴィヴィ~~~~~~ン。
青白くて波打っている怪光線。
それに当たると、相手は「アババババ」
感電したようにビリビリ痙攣してはダメージが蓄積していき、ライフがゼロになったところで、ボン! ガラガラとブロックでデキた体が崩れて、討伐完了となる。
なかなか強力な武器だけど、一度に複数を相手にできないのがネックだ。
攻撃が当てると相手の動きが止まって、継続してダメージを与えられるけれども、ふつうの銃のように弾を当てたらおしまいじゃないだけに、運用には工夫が必要となる。
ジンさんは運転にかかりっきり。
カクさんだけではどうしたって隙が生じる。
その穴埋めをするのがわたしの仕事だ。背負っていた装備から掃除機のヘッドのような部位を取り出し、助手席から身を乗り出しては追いすがるデカアリへと向けて「えいっ」
一見すると掃除機を背負って遊んでいるようにしか見えないけれども、これもまた立派な武器である。防衛隊の標準装備のひとつ。
発射されるのは白緑でちょっと波々している怪光線だ。
効果は荷台の銃座と同じだけど、威力はこちらの方がずっと弱い。
よっていきなり敵をボカンとするほどの力はない。
けど狙いどころによっては、それなりに役に立つから侮れない。
と、本番前のチュートリアルで教わった。
「ミユウ、敵の足首と触覚を狙え」
運転で忙しい合間にジンさんから指示がくる。
わたしはそれに従って狙いを定めた。
どうしてジンさんがそこを狙えと言ったのかは、すぐにわかった。
攻撃を受けたアリが、自重を支え切れずに前のめりに倒れたばかりか、触覚を損傷したとたんに動きがおかしくなったからである。なかには同士討ちをはじめるのまで。
なんでもアリにとって触覚はかなり重要な器官らしく、これが傷つくとおかしくなって日常生活もままならぬことになるらしい。
にしてもそんなところまで本物に準拠しているとは、なんとも芸が細かい。
「へ~、なるほどねえ」と感心しつつ、わたしは援護射撃を続ける。
バックで逃げながら、わたしとカクさんは追ってくるアリどもを片っ端からやっつける。
じきにジープが幅のある通りにまで出たところで、すぐさまUターンして体勢を整え、ひた走ることしばし。
なおもアリたちは執拗に追ってくるが、期せずして戦線が縦長になったもので、これ幸いとわたしたちは追いついてきたヤツからどんどんと倒しては、敵勢を削っていく。
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