66 / 106
066 敵のアジトへ潜入せよ!
しおりを挟む夕闇迫る黄昏刻――
ジンさんが駆るジープが南西の工場跡の敷地内へと猛スピードで突っ込んでいく。
とたんにたむろしていたデカアリどもが対処すべく動き出す。
わらわらと近寄ってくる連中へと向けて、銃座を担当するカクさんが「来るならこい! まとめてやっつけてやろうぞ」と吠えては、光線をビビビと放つ。
表の方で戦闘が始まった。
敵勢がそちらに気をとられている隙に、わたしは裏からこっそり侵入する。なお一枝さんは上空からの監視を担当してもらう。今回ばかりは本当にネコの手も借りたいので、ウグイスの手を借りることにした。
ジンさんとカクさんが陽動役となりザコどもを引きつけているうちに、わたしが単身乗り込んでは女王の首を獲る。
という作戦である。
ではどうしてこういう役割分担になったのかとえば、簡単な話だ。
車を上手に運転できるのがジンさんだけ。カクさんではいささか潜入に不向き――骨格標本は動くたびにカタカタ音がするもので。その点、地味な小娘ならばどこにでも隠れられるし、目立たず行動できる。
いささか……いや、かなり無謀なのは百も承知。
だが、それでもやるしかない。
わたしは周囲に敵影がいないことを確認してから「よしっ」と物陰から駆け出した。
〇
夜討ち、朝駆けは戦の基本。
とは元武士であるカクさんの談。
そして意外にも狙い目なのが、夕方時とのこと。
一日が終わる、昼と夜が入れ替わる時刻は、ほっと気が抜けることが多いらしく、心身ともに微妙なズレが生じるせいか、ついぼんやりしてしまいがち。
ジンさんの補足説明によれば「ちょうど交感神経と副交感神経が切り替わるタイミング」とのこと。
ちょっとムズカシイので、わたしはとりあえずわかった振りにて、うなづいておいた。
いざ自分が襲撃する側になってみれば、たしかにいろいろと都合がいい。
まず薄闇のおかげでギリギリ視界が保てながら、それでいて生じる陰影に身を隠しやすいのだ。いちいち物陰に隠れずとも、とっさに影の奥に身を潜めるだけで誤魔化せるのはしめたもの。
表の方から聞こえてくる戦闘音がさらに激しさを増している。
ジンさんとカクさんが張り切っている。
おかげで見張り達の意識もそちらに向いているから、わたしはさして苦労することなく潜入を続けられる。
とはいえ、あんまりモタモタはしていられない。
なのに肝心のレッドクィーンの姿が見当たらないではないか。
「大型の個体だって言ってたけど、外にはいないっぽいね。
とすれば屋内の方か。えっとこの敷地内でそれっぽい規模の建物といったら……」
キョロキョロし、目星をつけたのは敷地の中央にある一番大きな建物。
工場の母家に相当する場所で、あそこならば雨風もしのげるし、少々図体が大きくても余裕で入りそうである。
わたしはその建物を目指して移動を開始した。
〇
素早く周囲を見渡し、敵影がないことを確認したところでシュタタタ。
小走りにて通路を横切り、すぐに建物の蔭に入ってはしゃがみ込む。
じっと息を殺し、聞き耳を立て、待つことしばし。
安全だとわかったところで、ふたたび動き出す。
階段を使って、屋上へと。
ここからならば屋根伝いに目標の建物へと行けそうだ。
途中、見回りとおぼしきアリと鉢合わせしてしまったものの、一枝さんがいち早く報せてくれたおかげで、すみやかに対処できて事無きを得る。
幸いにも以降は他のアリたちと遭遇することもなく、ここまで来れた。
注意を払いつつ、わたしは鉄柵を越えた。
ついに一番大きな建物へと到着した。
「ふぅ」
わたしは壁にもたれながらひと息ついては、装備類の点検がてらちょっと休憩をする。
そこへ「チチチ」とさえずりながら舞い降りてきたのは一枝さんだ。彼女には空から偵察をお願いしていた。所定の位置であるわたしの肩へととまったところで。
「にらんだ通り、女王さまがいたよ。ここの一番奥だ。えらそうにふんぞりかえっていやがる。護衛らしいのも六体いたけど、そばじゃなくて建物の入り口近くにいたから、あれは門番みたいなもんかねえ。
それから不意打ちをするのに、ちょうどよさげな裂け目もあったよ。あそこから仕掛けよう」
敵勢はあらかた出払っており、女王の周囲は手薄となっている。
こちらの狙い通りにて、わたしはおもわずほくそ笑むもすぐに顔を引き締めては、一枝さんが見つけたという裂け目へと向かった。
0
あなたにおすすめの小説
四尾がつむぐえにし、そこかしこ
月芝
児童書・童話
その日、小学校に激震が走った。
憧れのキラキラ王子さまが転校する。
女子たちの嘆きはひとしお。
彼に淡い想いを抱いていたユイもまた動揺を隠せない。
だからとてどうこうする勇気もない。
うつむき複雑な気持ちを抱えたままの帰り道。
家の近所に見覚えのない小路を見つけたユイは、少し寄り道してみることにする。
まさかそんな小さな冒険が、あんなに大ごとになるなんて……。
ひょんなことから石の祠に祀られた三尾の稲荷にコンコン見込まれて、
三つのお仕事を手伝うことになったユイ。
達成すれば、なんと一つだけ何でも願い事を叶えてくれるという。
もしかしたら、もしかしちゃうかも?
そこかしこにて泡沫のごとくあらわれては消えてゆく、えにしたち。
結んで、切って、ほどいて、繋いで、笑って、泣いて。
いろんな不思議を知り、数多のえにしを目にし、触れた先にて、
はたしてユイは何を求め願うのか。
少女のちょっと不思議な冒険譚。
ここに開幕。
『異世界庭付き一戸建て』を相続した仲良し兄妹は今までの不幸にサヨナラしてスローライフを満喫できる、はず?
釈 余白(しやく)
児童書・童話
毒親の父が不慮の事故で死亡したことで最後の肉親を失い、残された高校生の小村雷人(こむら らいと)と小学生の真琴(まこと)の兄妹が聞かされたのは、父が家を担保に金を借りていたという絶望の事実だった。慣れ親しんだ自宅から早々の退去が必要となった二人は家の中で金目の物を探す。
その結果見つかったのは、僅かな現金に空の預金通帳といくつかの宝飾品、そして家の権利書と見知らぬ文字で書かれた書類くらいだった。謎の書類には祖父のサインが記されていたが内容は読めず、頼みの綱は挟まれていた弁護士の名刺だけだ。
最後の希望とも言える名刺の電話番号へ連絡した二人は、やってきた弁護士から契約書の内容を聞かされ唖然とする。それは祖父が遺産として残した『異世界トラス』にある土地と建物を孫へ渡すというものだった。もちろん現地へ行かなければ遺産は受け取れないが。兄妹には他に頼れるものがなく、思い切って異世界へと赴き新生活をスタートさせるのだった。
連載時、HOT 1位ありがとうございました!
その他、多数投稿しています。
こちらもよろしくお願いします!
https://www.alphapolis.co.jp/author/detail/398438394
生贄姫の末路 【完結】
松林ナオ
児童書・童話
水の豊かな国の王様と魔物は、はるか昔にある契約を交わしました。
それは、姫を生贄に捧げる代わりに国へ繁栄をもたらすというものです。
水の豊かな国には双子のお姫様がいます。
ひとりは金色の髪をもつ、活発で愛らしい金のお姫様。
もうひとりは銀色の髪をもつ、表情が乏しく物静かな銀のお姫様。
王様が生贄に選んだのは、銀のお姫様でした。
生まれたばかりですが、早速赤ちゃんセラピー?始めます!
mabu
児童書・童話
超ラッキーな環境での転生と思っていたのにママさんの体調が危ないんじゃぁないの?
ママさんが大好きそうなパパさんを闇落ちさせない様に赤ちゃんセラピーで頑張ります。
力を使って魔力を増やして大きくなったらチートになる!
ちょっと赤ちゃん系に挑戦してみたくてチャレンジしてみました。
読みにくいかもしれませんが宜しくお願いします。
誤字や意味がわからない時は皆様の感性で受け捉えてもらえると助かります。
流れでどうなるかは未定なので一応R15にしております。
現在投稿中の作品と共に地道にマイペースで進めていきますので宜しくお願いします🙇
此方でも感想やご指摘等への返答は致しませんので宜しくお願いします。
極甘独占欲持ち王子様は、優しくて甘すぎて。
猫菜こん
児童書・童話
私は人より目立たずに、ひっそりと生きていたい。
だから大きな伊達眼鏡で、毎日を静かに過ごしていたのに――……。
「それじゃあこの子は、俺がもらうよ。」
優しく引き寄せられ、“王子様”の腕の中に閉じ込められ。
……これは一体どういう状況なんですか!?
静かな場所が好きで大人しめな地味子ちゃん
できるだけ目立たないように過ごしたい
湖宮結衣(こみやゆい)
×
文武両道な学園の王子様
実は、好きな子を誰よりも独り占めしたがり……?
氷堂秦斗(ひょうどうかなと)
最初は【仮】のはずだった。
「結衣さん……って呼んでもいい?
だから、俺のことも名前で呼んでほしいな。」
「さっきので嫉妬したから、ちょっとだけ抱きしめられてて。」
「俺は前から結衣さんのことが好きだったし、
今もどうしようもないくらい好きなんだ。」
……でもいつの間にか、どうしようもないくらい溺れていた。
14歳で定年ってマジ!? 世界を変えた少年漫画家、再起のノート
谷川 雅
児童書・童話
この世界、子どもがエリート。
“スーパーチャイルド制度”によって、能力のピークは12歳。
そして14歳で、まさかの《定年》。
6歳の星野幸弘は、将来の夢「世界を笑顔にする漫画家」を目指して全力疾走する。
だけど、定年まで残された時間はわずか8年……!
――そして14歳。夢は叶わぬまま、制度に押し流されるように“退場”を迎える。
だが、そんな幸弘の前に現れたのは、
「まちがえた人間」のノートが集まる、不思議な図書室だった。
これは、間違えたままじゃ終われなかった少年たちの“再スタート”の物語。
描けなかった物語の“つづき”は、きっと君の手の中にある。
星降る夜に落ちた子
千東風子
児童書・童話
あたしは、いらなかった?
ねえ、お父さん、お母さん。
ずっと心で泣いている女の子がいました。
名前は世羅。
いつもいつも弟ばかり。
何か買うのも出かけるのも、弟の言うことを聞いて。
ハイキングなんて、来たくなかった!
世羅が怒りながら歩いていると、急に体が浮きました。足を滑らせたのです。その先は、とても急な坂。
世羅は滑るように落ち、気を失いました。
そして、目が覚めたらそこは。
住んでいた所とはまるで違う、見知らぬ世界だったのです。
気が強いけれど寂しがり屋の女の子と、ワケ有りでいつも諦めることに慣れてしまった綺麗な男の子。
二人がお互いの心に寄り添い、成長するお話です。
全年齢ですが、けがをしたり、命を狙われたりする描写と「死」の表現があります。
苦手な方は回れ右をお願いいたします。
よろしくお願いいたします。
私が子どもの頃から温めてきたお話のひとつで、小説家になろうの冬の童話際2022に参加した作品です。
石河 翠さまが開催されている個人アワード『石河翠プレゼンツ勝手に冬童話大賞2022』で大賞をいただきまして、イラストはその副賞に相内 充希さまよりいただいたファンアートです。ありがとうございます(^-^)!
こちらは他サイトにも掲載しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる