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62 鎮魂の森の大穴
しおりを挟むルクが広場にあった石碑をいじると、姿を現した大穴。
奥は真っ暗。外からでは中の様子がまるでわかりません。
用心しつつ穴へとちかづいたラナ。ふちから中をのぞけば、ひんやりとした風が彼女の頬をフワリと撫でていきました。
試しに緑氷の玉を造り出して、放り込む。
コロコロところがっていく氷の玉。
穴の中はゆるやかな傾斜になっているらしく、音がどんどん遠ざかっていく。
ですがしばらく待っても、突き当りにたどり着いたような音はしませんでした。
どうやらこの穴の内部はかなり深いようです。
「なんだろうね、これ……」
ややへっぴり腰にて、いっしょになって穴をのぞき込んでいたルクのつぶやきに、わからないと答えたラナ。
「まさかあんな仕掛けになっていたとは。てっきり墓石みたいなものかと思ってたんだけどね」
「まるでガァルディアさんのところの神殿みたい」
「まえに言ってたやつだね。たしかカラクリだったか。私は見たことがないんだけど、そいつに似ていたのかい?」
「うん、ガァルィアさんのところでも、壁を押したら、カチカチ動き出して、入り口があらわれたんだ」
「ふむ。話を聞くかぎりでは同じ類に思えるが、せっかくだしとりあえず中を調べてみるかな。ルクはどうする? こわいんなら外で待っていてもいいぞ」
「ええー、もちろんボクも行くよー」
「そうか、なら私のうしろについてきな。ただし、かってにそこいらをイジらないこと」
こうして二頭は鎮魂の森の大穴へと入って行きました。
一歩、足を踏み入れたとたんに、ボゥっと壁や床が淡く光って、視界がひらけます。
薄闇程度の明るさしかありませんが、水色オオカミの目にはこれで充分。
穴の中は、ゆるやかな坂道でした。
先がまるで見えないほどの、長い長い下り坂がどこまでも続いている。
前を歩く翡翠(ひすい)のオオカミのラナ。ときおり立ち止まっては壁や床などを調べて、眉間にしわを寄せた彼女が「ううむ」とおもわずうなる。
その様子を後ろから眺めていたルク。「どうしたの」とたずねると、ラナは言いました。
「この壁も床も、おそらくは鉄をいじったモノだ。だけど」
「?」
「くわしいことはわからない。けれどもとてつもなく古いモノなのは確かさ。こんなのはあちこちを旅してきた私も知らない。それだけでもおどろかされるってのに、こいつには……」
こいつには、まるでサビや劣化のあとが見られない。
まっかな炎の熱によって鍛えあげられた頑丈な鉄も、時間とともにちょっとずつ傷んでいく。ですが例外があります。
それは純度を高めること。
高めれば高めるほどに、鉄はサビにくくなり頑強さをます。ただしソレをなすのは、とてもムズかしい。ほんのひと握りほどだけでも途方もない技術と労力がかかります。
それをこんな大穴の内部すべてだなんてありえないと語るラナ。
途中から話がややこしくなって、さっぱりのルク。とりあえず話を合わせておいて、「へえー」と感心した声をあげておきました。
大穴はどこまでも続く。
進むほどに幅は広くなり、天井も高くなる。
これまでのところ、とくに危ないワナのようなモノは見当たらず、何かにおそわれることもありません。ただただ退屈な坂道が延々と続いているだけ。
ですが何があるかわからない以上は、無闇に駆けるわけにもいかず、トコトコと歩くしかない。
ルクはとっくに飽きているのですが、ラナは気になることは調べないと気がすまない性分らしく、引き返すつもりはないようです。
お腹が減れば口を開けて、周囲の水気を吸い込み、つかれたらその場で丸まって眠る二頭。
穴の中で眠ること五回。食事の回数が十五を超えたとき、ついに終着点が見えてきました。
「あれは……、鉄の扉?」
ラナといっしょになって見つめるルクの視線の先には、大きな大きな両開きの扉の姿が。
扉の大きさにふさわしい立派な鍵穴もあります。
ただしその鍵穴には、ドロドロの鉄が流し込まれたのか、歪に埋まっており、同様の処置が扉の周辺部にも入念に施されてありました。
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