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147 調査開始
しおりを挟む「考えがあまかったみたい」
「あぁ、まさか連中があんなことを考えていただなんて。ある意味、生きてるうちにオレは知らなくてよかったよ」
すっかりグッタリとしている様子のルク。
すっかりげんなりとした調子のフランクさん。
真なる言葉を武器に、水色オオカミは意気揚々と、さっそくウワサの出所の調査を開始。
森の連中を通じて、村にいる連中にも渡りをつけてみたものの、かえってきた答えは、どれもこれもまるで役に立たないものばかりだったのです。
「村のこと? さぁ」とは小鳥さん。
「北の畑がそろそろ食べ頃かな」とはちがう色の小鳥さん。
「うわさって何? それっておいしいの」とはリスたち。
「村には近寄らないよ。毛皮になんてなりたくないからね」とはキツネさん。
「ダメダメ、見つかったら喰われちまうから」とはイノシシさん。
「あいつらオレたちを目の敵にするからな。いくなら人目のない夜中にこっそりだから」とはネズミさん。
「去年、うちのばあさんがやられた」とはウサギさん。
「連中、なんでも食うからおっかないんだよ」とはヘビさん。
「喰われるならまだしも、こっちは遊びで生きながらに足とか羽をむしられるからたまらんよ」とはムシ代表のキリギリスさんのお言葉。
これらは森の動物たちから提供された情報から、ごく一部を抜き出したもの。
辺境の人間たちはとってもたくましく、森の恵みはひとしく貴重な資源と考えているようで、ウサギどころか、ムシですらもモノによっては食べられちゃうんだとか。
わざわざ倒木をひっくりかえしては、地中から幼虫たちをほじくりだすなんて、あんまりだとムシさんたちが泣いていました。
森の民たちの意見をまとめると「村の連中は悪食」なんだそうです。
「フランクかい? ああよくおぼえているよ。あの子のフエやタテゴトは、そりゃあみごとだったからねえ」とは村でも古株のネコさん。
「ジルはいい人だよ。いっつもホネをくれるんだ」とは牧場にて番をしていたイヌさん
「ビグとマーサねえ。ごめんよ。ちょっとわからないね。なにせ人間なんてみんな同じ顔にみえるから」とはニワトリさんたち。
「オレたちは基本的に柵の中からでないから」とは草をむしゃむしゃ食べていたウシさん。
「ビグか。あのオヤジさん、息子が帰らないと知って、すっかりヤケになっていたよ。昼間から酒ビン片手にウロウロしている姿を何度も見たから」とはウマさん。
「たまには高地にはえてるやわらかい草がたべたいねえ」とはヤギさん。
「ウチは干したやつのほうがスキだよ。香りがちがうからねえ」とはヒツジさん。
と、かんじんの村の方もこんな調子ばっかりで、あちこちにて話を聞くほどに、真相からますます遠ざかっている気がしていた水色オオカミの子ども。
ですが、そんな中にあって一つだけ有益な情報がありました。
それをもたらしてくれたのは、村の教会の鐘楼を根城にしていたカラスさん。
「人間についての情報かい? だったら村に一軒だけある酒場をのぞいてみな。あそこには村中の男たちが夜な夜な集まるから、きっと知りたいことがわかるだろうよ」
長いこと村を留守にしていたせいで、すっかり酒場のことを忘れていたフランクさん。カラスの言葉に「あっ」と短い声をあげました。
そんなわけでいったん隠れ家まで戻ってきたルクたち。
しばらく休憩をしてから、日が暮れたらさっそく酒場にくり出してみることにします。
陽が暮れて静まりかえる村の中にあって、にぎやかであったのが、村の中心部にある唯一の酒場の建物。
鐘楼のカラスが言っていたように、ゾロゾロと男たちが建物の中へと入っていく。
酒場は村の男たちの社交の場。女性たちにとっての井戸のそばや商店の軒先と同じ。ここで一日のウサを晴らし、ときにグチをこぼし、女子どもの前ではとても聞かせられないような話に興じたりしながら、盃を交わし、おおいに友好を深めるのです。
酒場のある建物へと近づいた水色オオカミ。
さすがに室内へと足を踏み入れることはかなわない。だから自身は建物の陰に身をひそめて聞き耳をたてるのみ。ですがこれだとあまり声が拾えないので、ちゃんと協力者たちを用意しておきました。
その協力者たちとは、この村に住みついているネズミの一家。
「それじゃあ、たのんだよ。でもくれぐれもムリしないように」
「わかっているって。ドンとまかしといてよ。それよりもお礼の品を忘れないでね」
「それはもちろんだけど、ほんとうに氷の塊なんかでいいの?」
「いいっていいって、夏場に飲み水を確保するのって、けっこうたいへんなんだよ。それを気にしなくていいんだから。こんなにうれしいことはないもの。じゃあいってくるから」
総勢十匹のネズミたちが、サッと散ったかとおもったら、あっという間にいなくなってしまいました。
空を征くドラゴンやグリフォン、草原を駆けるウマや大地を風のごとく走る水色オオカミともちがった速さを持つネズミたち。
しかも人里に住む彼らは森の野ネズミたちとはちがって、建物潜入の達人。
姿を隠し、気配を消して、人間たちの会話を盗み聞きするのなんて、台所から食べ物をとってくるよりも、ずっと楽な仕事と、なんとも心強いお言葉。
頼りになる援軍を得たルクとフランクさん。
あとはいい情報がもたらされればいいのですけれども……。
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